医療保険は貯蓄型と掛け捨て型、自分はどっち?図でわかるベストな選択を専門家が解説
「医療保険の貯蓄型と掛け捨て型は何が違う?」「貯蓄型のメリット・デメリットは?」と、医療保険にはどのようなタイプがあるのか、気になって調べている人も多いのではないでしょうか。
民間の医療保険とは病気や怪我に備えられる保険のことであり、貯蓄型と掛け捨て型があります。
貯蓄型の場合、解約返戻金があり、解約をすると保険料の一部を受け取ることができます。
一方、掛け捨て型には解約返戻金などはないため、支払った保険料は基本掛け捨てとなります。
本記事では「医療保険の貯蓄型と掛け捨て型、どちらを選ぶべき?」と悩んでいる人に向けて、貯蓄型と掛け捨て型の違い、自分に必要な医療保険の選び方について保険のプロがわかりやすく解説します。
- 医療保険の貯蓄型とは保障機能と貯蓄機能が備わった保険のこと
- 医療保険の掛け捨て型とは支払った保険料がほぼ返ってこない保険のこと
- NISAやiDeCoなど、既に資産運用を行っている人が医療保険を検討する場合は「掛け捨て型の医療保険」がおすすめ
医療保険の貯蓄型と掛け捨て型の違い【比較表】
医療保険の貯蓄型と掛け捨て型の主な違いは以下のとおりです。
掛け捨て型の医療保険と貯蓄型の医療保険では、入院や手術などの基本的な保障内容には違いがありません。
ただし、掛け捨て型の場合は、解約返戻金が発生せず、いつ解約しても基本的に戻ってくるお金はありません。
一方で、貯蓄型は解約するとお金が戻ってくるという特徴があります。
解約返戻金の金額や解約できるタイミングなどは、保険会社の商品によって異なります。
医療保険の貯蓄型とは
入院や手術などの万が一のことがあった時の保障機能と、支払ったお金の一部を積み立てることができる貯蓄機能の両面を併せ持つタイプの医療保険のこと
お金が貯められながら医療保険の機能が持てるメリットがあります。しかし、多くの場合、「支払った保険料の一部」が積み立てられるため、全額貯蓄できるわけではないという点には注意しましょう。
1.祝い金タイプ
祝い金タイプの医療保険は、一定の年数が経過するごとにお祝い金がもらえる仕組みです。
通常、お祝い金を受け取る条件として、入院日数が設定されており、「〇日以上入院していなければ」などの条件が課せられています。
受け取れる金額や頻度は、保険会社や商品によって異なりますが、5〜10万円の給付金を3〜5年ごとに受け取るケースが一般的です。
受け取ったお祝い金は使い道が自由であり、生活費などに充てることができます。
2.リターンタイプ
リターンタイプは、契約時に設定した年齢まで保険料を払い続けることで、その期間までに支払った保険料の一部が戻ってくるタイプの医療保険のことです。
支払った保険料のうち、「主契約」といわれるメインの保障部分の保険料のみが対象となる商品が多いため、その点に注意しましょう。
また、入院などで受け取ったお金があった場合には、還付金から受け取ったお金は差し引かれて戻ってきます。
還付金が設定されているため、一般的に保険料は掛け捨て型のものと比べて割高となります。
還付金を受け取る年齢は、55〜75歳で設定できることが多いです。
解約返戻金を受け取るまでに死亡したり、解約した場合は、支払った保険料の総額よりも返ってくる保険料は少なくなるため、この点も注意が必要です。
3.解約払戻金タイプ
解約返戻金タイプの医療保険は、自分のタイミングで解約した際に、これまでに支払った期間や金額に応じてお金が戻ってくる仕組みの保険です。
解約返戻金として受け取れるお金は、支払った保険料全額ではないため注意しましょう。
解約することで解約返戻金を受け取れますが、同時にその後の医療保障も失ってしまうため、解約する際はその点をふまえて検討する必要があります。
医療保険の掛け捨て型とは
いつどのタイミングで解約したとしても、それまでに支払った保険料がほぼ返ってこないタイプの医療保険のこと
保障内容は、貯蓄型と比べても、入院や手術など基本的な部分では変わりませんが、一部の商品では、掛け捨て型の方が選べる特約が多いといった特徴はあります。
また、同じ保障内容で比較した時の保険料は、一般的に貯蓄型に比べると掛け捨て型の方が安い傾向にあります。
そのため、掛け捨て型は保険料を抑えたい人におすすめです。
貯蓄型と掛け捨て型のメリット・デメリット
医療保険の貯蓄型と掛け捨て型について、それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説します。
掛け捨て型のメリット・デメリット
掛け捨て型医療保険のメリットは、同じ保障内容を持つ貯蓄型医療保険よりも保険料が安く済む点です。
複数の保障内容を希望する場合、掛け捨て型を選ぶことで手頃な保険料で加入できます。特に、保険料をおさえながら、しっかり保障を得たい人におすすめです。
一方で、掛け捨て型医療保険のデメリットは、解約時にお金がほとんど戻ってこない点です。
入院給付金や手術給付金を得られる安心感はあるものの、健康状態が一貫して良好で、保険を利用する機会がなかった場合、支払った保険料が戻ってこない場合に「保険料がもったいない」と感じるかもしれません。
貯蓄型のメリット・デメリット
貯蓄型医療保険のメリットは、貯蓄の性質を持っていることです。
支払った保険料の一部または全部が積み立てられ、将来解約する際にはお金が戻ってくるという特徴があります。
祝い金タイプや還付金タイプ、解約返戻金タイプなど、さまざまな種類が存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。
それぞれ特徴が異なるため、保険の加入目的に合わせて選択しましょう。
一方で、貯蓄型医療保険のデメリットは、保険料が高くなりやすいことが挙げられます。
将来的なリターンを期待して保険料を掛ける人もいるかもしれませんが、その場合、月々の保険料負担が大きくなります。
そのため、保障と保険料のバランスを考慮して加入することが大切です。
途中で死亡したり解約した場合、戻ってくるお金が支払った総額よりも少なくなる可能性があるため、この点にも留意する必要があります。
保険と投資を組み合わせることが大切
「保険と投資はどちらを優先すべき?」と疑問を抱く人も多いでしょう。
保険と投資はしばしば比較されますが、商品の性質や目的が異なるため、本質的には比較が難しいものです。
基本的には、両方に備えることをおすすめします。
保険は加入した瞬間から保障が始まり、短期間で万が一のことが発生しても、しっかり保障を受けることができます。
一方、投資は保険と異なり、成果を得るには長期目線での運用が必要になります。
双方をバランスよく組み合わせることが、資産形成において大切なポイントとなります。
貯蓄型がおすすめな人
医療保険の貯蓄型がおすすめなのは、保険料をできるだけ無駄にせず、将来的なリターンも期待したい人です。
医療保険では入院や手術によって給付金が支給されますが、その一方で、実際にそのような状況にならない場合は基本的に給付金を受け取ることがありません。
途中で解約しても戻ってくるお金がないため、これまで支払った保険料がもったいないと感じる可能性があります。
その場合は祝い金タイプやリターンタイプなど、保険料が少しでも戻ってくる仕組みのある貯蓄型医療保険が適しているでしょう。
掛け捨て型がおすすめな人
掛け捨て型の医療保険がおすすめなのは、手頃な保険料で十分な保障を得たいと考える人です。
同じ保障内容を比較した場合、貯蓄型よりも掛け捨て型の方が一般的に保険料は安い傾向があります。
入院や手術だけでなく、通院や三大疾病、女性特定疾病など、広範なリスクに備えたい場合、貯蓄型での加入では月々の負担が大きくなり、家計に圧迫をかけることがあります。
そのような場合、掛け捨て型で毎月の負担を抑えながら、希望する内容に保障を組み合わせることが良いでしょう。
また、掛け捨て型は基本的に解約返戻金がないため、保険の見直しが柔軟に行える点もメリットといえます。
貯蓄型、掛け捨て型…自分はどっち?【選び方チャート】
医療保険について、掛け捨て型と貯蓄型、どちらにするべきか自分で決められない人は以下の選び方チャートを参考にしましょう。
チャートについて、YESの数が多いほど貯蓄型が向いているといえます。
しかし、貯蓄型の医療保険を活用しなくても他の方法でお金を準備できている場合は、必ずしも保険を活用してお金を貯める必要はありません。
NISAやiDeCoと併用する場合は「掛け捨て型の医療保険」の方がおすすめ
NISAやiDeCoなどと医療保険の併用を検討している場合は、「掛け捨て型」の医療保険を選択するのが良いでしょう。
先ほどの選び方チャートでYESが多かった人の場合は貯蓄型の医療保険の方がおすすめだとお伝えしましたが、貯蓄型の医療保険以外での資産運用を同時に検討している場合は、掛け捨て型の保険の方が良いでしょう。
NISAやiDeCoといった資産運用を同時に検討するのであれば、医療保険に貯蓄性を持たせる必要は必ずしもないといえます。
貯蓄型の医療保険は、貯蓄機能がある分だけ月々の保険料が高くなる傾向にあります。
掛け捨て型で医療保険に安く加入し、貯蓄型で加入した時との差額も含めてNISAやiDeCoといった資産運用にお金を回す方が、資金全体のバランスは良くなります。
自分に必要な医療保険の選び方
自分に必要な医療保険を選ぶ時は「どういう保障がほしいか」について考えることが大切です。
医療保険は入院や手術の保障がメインですが、それらに加えて通院や三大疾病、女性疾病など幅広く備えることも可能です。
以下は医療保険でもらえる主な給付金の種類です。
保険期間や保険料払込期間も踏まえて、自分に必要な保障をカスタマイズして加入しましょう。
(参考:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター)
①入院時の保障
入院時の保障は、1日入院するごとに受け取ることができる「入院日額」が基本となり、病気や怪我など理由は問わず、入院した日数分だけ給付金を受け取ることができます。
入院日額は、3000円を最低金額と定めている保険会社が多く、5000円や1万円など、ある程度自由に設定することができます。
一方で、加入時に決めた入院日額は契約途中で変更することは原則できないため、注意が必要です。
また、1回の入院で保障される日数も決まっており、30日や60日、120日、360日など、入院日数自体も保険会社によってさまざまな設定が可能となっています。
参考)入院時の自己負担費用と入院日数の平均
<引用:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター>
<引用:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター>
生命保険文化センターが実施した「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、過去5年以内に入院した20代〜70代の平均入院日数は、17. 7日となっています。
60代以上になると入院日数が延びている傾向も見られます。
また、同じく過去5年以内に入院した人の平均自己負担費用額は19.8万円となっています。
近年、入院が短期化している傾向が見られますが、万一入院が長引いた場合にはさらに費用がかかるため注意しましょう。
②手術時の保障
手術を受けた際の保障は、以下の2通りの受け取り方があります。
⓶倍率タイプ (入院日額×手術の種類によって倍率をかけるタイプ)
定額タイプは、「入院中の手術は日額の10倍、外来の手術は日額の5倍」などのように、手術の種類問わず、受け取れる金額が一定となっているタイプの保障です。
日額保障が5000円の場合、入院中の手術は5万円、外来の手術は2.5万円がそれぞれ受け取れます。
一方で、倍率タイプは入院中の手術の種類によって受け取れる金額が変わるタイプになります。
手術の種類によって、10倍や20倍、40倍などといった倍率を日額に掛けて給付金が受け取れます。
商品によっては、50倍や60倍といった倍率で給付金を受け取れる商品もあるため、手術給付金を重視する場合は、受け取れる金額の倍率について確認しておきましょう。
③その他の保障
入院や手術の保障が決まったら、次はそれ以外の保障をどうするかを考えていきましょう。
備えておきたい保障を付け加えることで、自分に必要な医療保険を作ることができます。
しかし、保障内容を充実させるほど保険料は高くなるため、保障と保険料のバランスはしっかりと考える必要があります。
»必要な保障と保険料のバランスをプロに相談
例)通院保障
病気や怪我で入院し、退院した後の通院に備えることができるのが「通院特約」です。
ごく稀に外来の通院も保障の対象としている商品もありますが、一般的には「退院後の通院」が保障対象になるため、注意が必要です。
退院後の一定期間(180日間など)が保障期間として定められ、その間にした通院回数に応じて、1回あたり5000円の保障を受け取れるのが基本的な保障内容です。
がんを理由とする通院は、退院後5年間を保障期間とする商品もあるため、よく確認しておくと良いでしょう。
例)がんや特定疾病
がんや特定疾病になった場合に給付金を受け取れる特約もあります。
がんの場合、「診断された場合」や「抗がん剤治療を受けた場合」などに該当した場合、給付金を受け取れるといった内容が一般的です。
特定疾病は、保険会社によって保障範囲(三大疾病、七大疾病、八大疾病など)が異なり、給付金を受け取れる条件も異なります。
がんになった初回のみを保障する商品もあれば、複数回保障してくれる商品もあるため、細かい内容は事前に確認してみましょう。
④保険期間(定期・終身)
保険期間には「定期タイプ」と「終身タイプ」があります。
定期タイプは一定期間だけ保障される仕組みであり、10年間や15年間が保険期間となっているケースが多く、若いうちに加入することで保険料を安く抑えることができます。
保険期間が過ぎると「更新」があり、更新するごとにその時の年齢で保険料が再計算されるため、更新の都度保険料が上がっていく点には注意が必要です。
一方、終身タイプでは加入した時点から一生涯の保障を得ることができます。
加入した年齢で支払う保険料が決定され、更新がないため一生保険料が上がることはありません。
若い内に加入した場合の保険料は、定期タイプよりも高くなる傾向にありますが、保険料は一生上がらず、保障を持ち続けられるといった安心感はあります。
⑤保険料払込期間(短期払・終身払)
保険料の払込期間には「短期払」と「終身払」の2種類があります。
短期払いは、「〇歳まで」や「〇年間」といったように、契約時に定めた期間まで保険料を支払う契約です。
短期払いのメリットは、保険料の支払いを早めに終わらせることができる点です。保険料の総支払額がわかる一方で、毎月の保険料は高くなりやすいため注意が必要です。
終身払いは、契約が継続している間は保険料を一生涯払い続ける契約です。
生きている限り保険料を払い続けなければいけない点はデメリットですが、その分毎月の保険料は短期払の契約に比べて安く抑えることができます。
まとめ:目的に合わせて医療保険を選ぼう
医療保険の貯蓄型と掛け捨て型には、それぞれメリットとデメリットがあります。
自分の加入目的に合わせてどちらかを選ぶようにしましょう。
同時に資産運用をするのか、もしくは既に資産運用をしているのかどうかでも貯蓄型と掛け捨て型の優先順位は変わってきます。
保険と投資のバランスを見ながら加入するのがおすすめです。
自分にはどっちが合っているのかわからない場合は、保険のプロに一度相談してみてはいかがでしょうか。
自分の目的に合った商品選びのアドバイスが受けられるでしょう。
※本記事の内容は記事公開時や更新時の情報です。現行と期間や条件が異なる場合がございます
※本記事の内容は予告なしに変更することがあります。予めご了承ください
オススメ記事
監修者
宮澤 顕介
- ファイナンシャルアドバイザー
明治大学商学部卒業後、みずほ銀行、オリックス等をはじめとした金融機関で勤務。現在は、一種外務員、生命保険募集人、FP2級等の資格を保有し、ファイナンシャルアドバイザーとして活動。個人向けマネーセミナーでも登壇。長期・分散・つみたて投資の重要性を発信するとともに医療保険の見直しも得意としている。
執筆者
荻野 樹
- ファイナンシャルアドバイザー
大阪市立大学経済学部卒業後、教育業界を経て、メットライフ生命保険株式会社、株式会社ほけんのぜんぶ入社。生命保険販売を通じ、FPとして主に子育て世代の資産形成や老後資金準備に関するコンサルティングを行う。専門用語を使わず丁寧で分かりやすいアドバイスが強み。現在は個人向け資産運用のサポート業務を行う。AFP(Affiliated Financial Planner)、一種外務員(証券外務員一種)、宅地建物取引士の資格を保有。