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【社労士監修】介護休業給付金がもらえないケースは?受給条件や申請方法を解説

【社労士監修】介護休業給付金がもらえないケースは?受給条件や申請方法を解説

制度2022/04/12 (最終更新:2024/08/01)

    介護休業給付金とは雇用保険の被保険者が要介護状態の家族を介護するために休業した際に、条件を満たせばもらうことができる給付金のことです。

    介護休業の取得がまず前提になりますが、自分がその対象なのか、どのくらい給付金がもらえるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。

    本記事では社労士監修のもと、介護休業、介護休業給付金の条件、支給額の計算方法、申請方法など、詳しく解説しています。

    ※本記事は2022年4月時点の制度内容をもとに作成しています
    ※本記事では一般的な内容かつ一例を記載しています。制度について不明点がある場合はお住まいの市区町村でご確認ください

    介護休業給付金とは

    介護休業給付金とは、家族の介護のために仕事を休んだ場合、給料の約3分の2が保障される制度のことです。

    厚生労働省の雇用動向調査によると、2019年に「介護・看護」を理由に離職した人は男女合わせて約10万人。

    家族の介護が始まると仕事との両立が困難になる場面がありますが、そうした人を支えるための制度なのです。

    雇用保険の被保険者が介護休業を取得すると、一定の条件のもと介護休業給付金を受給することができます。

    介護休業給付金がもらえる条件

    介護休業給付金がもらえる条件は以下のとおりです。

    (参考:介護休業給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省

    ①雇用保険の被保険者であること

    まず、雇用保険の被保険者(65歳未満の一般被保険者、65歳以上の高年齢被保険者)である必要があります。

    雇用保険とは、労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために加入する公的保険で、さまざまなライフイベントに応じた給付があります。

    【主な給付金の例】
    ・求職者給付(失業保険):失業中の収入を保障
    ・教育訓練給付金:教育訓練講座の受講料や入学料などの一部を支給
    ・育児休業給付金:原則1歳未満の子どもを養育する被保険者に支給

    馴染みのある給付金もあるのではないでしょうか。

    これらの雇用保険の給付の一つとして介護休業給付金があるため、雇用保険の被保険者であることが条件になります。

    (参考:第13章失業等給付について


    Q.パート、アルバイト、契約社員でももらえる?

    介護休業給付金の受給資格は雇用形態を問わないため、パートやアルバイト、契約社員であっても受給できる可能性があります。

    ただし、有期雇用(期間を定めて雇用されている)の場合は下記の要件をどちらも満たす必要があります。

    ・入社して1年以上(同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている)※
    ・介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月経過する日までに労働契約(更新される場合には、更新後のもの)の満了が明らかでないこと

    ※育児・介護休業法の改正により、2022年4月1日以降は有期雇用労働者の「入社して1年以上」の要件が撤廃されます。
    ただし、労使協定を締結することで、引き続き除外できるとされているため、会社によって「入社1年以上」が必要かどうかは異なります。

    介護を理由に休職することになっても「介護休業期間が終われば職場に復帰する」ことが明確に示されていることが条件となります。


    ②介護休業取得者であること

    介護休業給付金は介護休業を取得した人に支給される給付金です。

    そもそも介護休業とは、要介護状態にある家族を介護する必要がある場合、労働者が取得することのできる休業です。

    勤務先の就業規則等に記載されていない場合でも、育児・介護休業法における介護休業制度の対象者となる労働者であれば申請する権利があります。

    介護休業の申出は、介護休業を開始する2週間前までに行います。

    下記を記入のうえ、事業主に提出することが必要です。

    (1)申出の年月日
    (2)労働者の氏名
    (3)申出に係る対象家族の氏名及び労働者との続柄
    (4)申出に係る対象家族が要介護状態にあること
    (5)休業を開始しようとする日及び休業を終了しようとする日
    (6)申出に係る対象家族についてのこれまでの介護休業日数

    厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」より引用

    ただし、介護休業を取得しても事業主に給与を支払う義務はないため、原則として無給になることが一般的です。
    そのため、雇用保険としての「介護休業給付金」がとても重要になるのです。


    Q.要介護状態とは?

    では要介護状態とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

    厚生労働省によると、要介護状態は「負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」と定義されます。

    常時介護を必要とする場合」とは、下記のどちらかの基準を満たす場合です。

    1.要介護2以上である
    2.厚生労働省が掲げる12の項目(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること等)に該当し、その状態が継続すると認められること

    これらを満たす場合、要介護状態であると認められます。


    Q.対象家族とは?

    対象となる家族は、具体的には配偶者、父母、子ども、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。血縁を問わないため、事実婚や養子なども対象になります。

    利用できる回数は、対象家族1人につき3回まで、利用期間は、通算93日まで取得できるとされているため、同じ対象家族についても、上限までは分割取得可能です。

    具体例で確認しましょう。

    【例1】
    昨年、父の介護中に介護休業給付金を受け取った。介護休業を取得した後復職したが、今度は母の介護をすることになった
    →改めて介護休業を取得し、介護休業給付金を受け取ることが可能

    【例2】
    昨年、父の介護中に介護休業給付金を93日分受け取った。その後復職したが、今年になり父の要介護状態が変わった。さらに日常生活に支障が出たため、改めて申請したい
    →初回に93日分の給付金を受給しているため、今年になり要介護状態が変わった場合であっても、2回目の休業について再度介護休業給付金の支給を受けることはできない

    介護休業給付金がもらえないケース

    反対に、介護休業給付金がもらえないケースについても確認します。

    ①介護休業を取得していない場合

    介護休業給付金は介護休業とセットとなるため、そもそも介護休業を取得していない場合は受給できません。

    介護休業が取得できない例として、以下の可能性が挙げられます。

    ・日雇い労働者
    ・次➀~➂の理由から労使協定で除外されている場合
    ➀入社1年未満の従業員
    ②申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    ➂1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    ※雇用保険の加入は「介護休業」を取得するための要件には含まれていませんが、介護休業「給付金」については、雇用保険加入者でなければ受給できません

    また、有期契約を結んでいる人で 介護休業開始予定日から起算して93日経過後に、6ヶ月以内に労働契約が満了する見通しの場合も、介護休業が取得できません。

    あくまでも復職(介護と仕事の両立)を応援するための制度であると覚えておきましょう。

    ②入社してから1年未満の場合

    実務上、介護休業が取得できるのは、同一の事業主に1年以上雇用されている従業員となるケースが多いです(労使協定により、入社1年未満の従業員は介護休業を取得できなくなっているケースが多いため)。

    そのため、入社してから1年が経っていない場合は、残念ながら介護休業や介護休業給付金の対象外となる可能性が高いといえます。

    多くのケースでは、入社して1年が経過すれば対象となるため、その期間まで待つことが選択肢となるでしょう。

    また、入社後1年以上経過していても、雇用形態がパートであるなどの理由で、必要な出勤日数が12ヶ月分に満たないというケースがあります。

    このような場合、前職分を通算できる可能性があるため、確認してみてもいいでしょう。

    個々の状況で異なるため、不明な点があれば会社の窓口に相談してみましょう。

    介護休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上、もしくは支払基礎の時間が80時間以上の月を1月とカウントし、通算して12ヶ月以上あることが給付金の受給要件の一つになります。

    ③介護休業期間中に就労し、賃金を80%もらっている場合

    介護休業期間中に就労した場合、受け取った賃金の額によっては介護休業給付金の対象外になります。

    介護休業開始前6ヶ月間の総支給額(賞与は含まず)を180で割った額を休業開始時賃金日額とし、下記の計算式で求めた金額以上の賃金を受け取った場合、介護休業給付金は0円となります。

    休業開始時賃金日額×30日×80%

    また、原則30日で計算しますが、介護休業終了日を含む支給単位期間では、その介護休業終了日までの暦の日数で計算します。

    ④1支給単位期間において、就労している日数が11日以上ある場合

    1つの支給単位期間中に、就労している日数が11日以上ある場合も介護休業給付金の支給対象外となります。

    仮に就労したとしても、10日以下であれば対象になる可能性があります。ただし、先ほど説明した賃金額の条件を満たすことが必要です。

    また、介護休業終了日の属する1ヶ月未満の支給単位期間では条件が異なります。

    就労している日数が10日以下」であり、かつ「全日休業している日が1日以上あること」が必要となるため注意しましょう。

    ⑤退職の予定がある場合

    介護休業を取得する時点で退職が決まっている場合、介護休業給付金は支払われません。

    制度は「介護と仕事の両立」を目指すために設けられたもので、介護休業終了後の職場復帰が前提となった給付金です。

    そのため、既に退職が決まっている場合は制度の対象外です。復職の意思を持って、取得することが必要になります。

    介護休業給付金の対象期間

    介護休業給付金

    介護休業給付金の支払い対象となる期間は、上の図のとおりです。

    介護休業給付金は必ず介護休業とセットとなるため、介護休業の開始日から終了日までの、最大3ヶ月間が対象になります。

    同じ対象家族を介護する場合は分割して取得することも可能で、この場合は93日(土日祝日含む)を限度に3回まで取得できます。

    介護休業を開始した日から起算した1ヶ月ごとの期間を支給単位期間とし、支給単位期間ごとに支給額を計算します。

    次で詳しく見ていきましょう。

    介護休業給付金はいくらもらえる?支給額の計算方法

    介護休業給付金の計算方法

    介護休業給付金は、一括ではなく支給単位期間ごとに計算します。

    具体的な金額は「休業開始時賃金日額※ × 支給日数 × 67 %」で計算します。
    ※原則として、介護休業開始前6ヶ月の賃金を180日で割った額。ただし日額には上限があります。

    月額の給与ごとに、だいたいの受給額例をまとめました。

    ・給与平均が月額15万円程度:支給額は月額10万円程度
    ・給与平均が月額20万円程度:支給額は月額13.4万円程度
    ・給与平均が月額30万円程度:支給額は月額20.1万円程度

    日額を算出する際、賞与額は考慮せずあくまでも直近6ヶ月の月額給与で考えます。

    また、前述したとおり介護休業中に就労した場合は、その賃金の額や就労日数によって受給できません。
    しかし、賃金が一定の額であれば、介護休業給付金を減額して受給することも可能です。

    例えば、賃金が賃金月額の13%以下であった場合は「賃金月額の67%相当額」が支給されることになります。

    もし13%を超えても、80%未満であれば「賃金月額の80%相当額と事業主から支給される賃金の差額」が支給されます。

    賃金月額の80%を超えた時点で支給は停止されるので、就労する際には注意しましょう。

    介護休業給付金の申請方法

    ここからは、具体的な申請の手順を解説します。

    申請期間と期限

    介護休業給付金を申請するには、まずは介護休業の取得に関する申請が必要です。

    介護休業を取得することが決まった時、その2週間前までに会社へ申請します。

    申請する際は2週間以上先の「介護休業開始日」と「介護休業終了日」を決めておかなければなりません。

    これにより介護休業を取得できれば、ようやく介護休業給付金の申請に移ります。

    申請できる期間は、介護休業終了の次の日から2ヶ月後の月末までです。期間が短いので注意しましょう。

    万が一申請が遅れた場合も遡って申請はできますが、この場合の時効は「介護休業終了の次の日から2年」です。

    申請には期限があるということを覚えておきましょう。

    申請方法

    介護休業給付金の申請方法

    事業主を通して介護休業給付金の申請を行う場合、図の手順となります。


    1.必要書類を準備(被保険者・事業主)

    最初に介護休業給付金支給申請書雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書を用意します。

    これに加えて必要となる添付書類を、被保険者と事業主でそれぞれ準備します。

    【被保険者が準備する書類】
    ・ 介護対象となる家族の名前や続柄等が確認できる公的書類(住民票や戸籍謄本など)
    ・手書きで申請書を作成する場合は、通帳やキャッシュカードのコピーなど

    【事業主が準備する書類】
    ・支給申請期間の賃金台帳と出勤簿、タイムカード
    ・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書に記載した内容の証明
    ・介護休業の申出書(様式は会社ごとに異なる)
    ・申請期間中に復職した場合は、復職日まで確認できる出勤簿または復職証明

    介護対象者と同一世帯であり、マイナンバーを届け出た場合などは、必要となる書類が省略できる可能性もあります。

    その他個別で異なるケースもあるため、必ずハローワークなどで確認するようにしましょう。

    (参考:ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付
    (参考:介護休業給付の申請時の必要書類 | 東京ハローワーク


    2.必要書類をハローワークに提出(事業主)

    全ての必要書類を準備できたら、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。

    基本的には事業主が手続きを行いますが、被保険者本人が行うことも可能です。

    また、電子申請による支給申請ができる場合もあります。


    (参考:ハローワークインターネットサービス 雇用継続給付


    介護休業給付金の支給日

    介護休業給付金が支給されるのは、支給決定日から概ね一週間後です。

    支給額は支給単位期間ごとに計算されるものの、実際に振り込まれる金額は一括分です。

    個々の振込日に関してはハローワークも把握していないため、入金日に関する問い合わせは受け付けていないようです。

    支給額等が記載された「支給決定通知書」が郵送されるので、正確な支給日については書面で確認しましょう。

    介護休業と介護休暇の違い

    介護休業と介護休暇の違い

    介護休業と混同しやすい制度として「介護休暇」もあります。

    こちらは年間で最大5日と短いですが、当日でも取得できるというメリットがあります。

    家族の介護をすることになった時は、両方の制度を使い分けることも大切です。

    例えば、病院の付添いや介護の申請などには「介護休暇」を使い、長期に渡る介助や介護には「介護休業」を使うなど、必要な日数で使い分けるなどができます。

    長期と言っても、介護休業は最大でも93日。終わりが決まっていない介護と仕事を両立させるための制度なので「介護をするための制度づくり」期間と考えると良いでしょう。

    (参考:介護休業について|介護休業制度|厚生労働省

    まとめ

    介護休業給付金について解説しました。要点を下記にまとめました。

    ・介護休業給付金とは家族の介護のために仕事を休んだ場合、給料の約3分の2が保障される制度のこと

    雇用保険に加入し、介護休業を取得するなど一定の条件を満たす必要がある

    ・入社してから1年未満の場合や休業期間中に就労した場合など、対象外になるケースもある

    介護の始まりには、ケアマネージャーとケアプランを作成したり住宅を改修したり、あるいは施設入居の手続きを行ったりと、さまざまな手続きが発生します。

    離職を考えることもありますが、まずは公的な制度に頼ることを検討しましょう。

    介護は精神的負担も大きいもの。経済的負担が上乗せされないよう、助成金についてはしっかり情報収集しておきたいですね。


    (監修協力/unite株式会社

    ※本記事の内容は記事公開時や更新時の情報です。現行と期間や条件が異なる場合がございます

    ※本記事の内容は予告なしに変更することがあります。予めご了承ください

    監修者
    山口 雄大
    • 山口 雄大
    • 社会保険労務士

    1989年生まれ、東京都出身。2012年明治大学法学部卒業。2018年社会保険労務士試験合格後、2019年汐留社会保険労務士法人 に入所。各種労働社会保険法令に基づく手続きや給与計算に加え、労働問題の対応やコンサルティングを行う。数多くの労務管理経験をもとに、働き方改革に対応した労務管理やITツール活用にも積極的に取り組んでいる。

    執筆者
    太田 彩子

    京都教育大学卒業。地方自治体にて公務員として「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事。その後、保険代理店にて金融商品の紹介ページ作成に参加。キャリアを生かし、社会保障制度や公的保険、民間保険でバランスよく備える方法を発信。自身も「遠距離結婚」「ハイリスク出産」「小1の壁」で退職した経験から、現在はキャリアとマネープランの両立を目指す女性に向け、LIMO編集部 で金融の情報を広く発信する。

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