元本保証でなくても投資のリスクは抑えられる!損しない金融商品の選び方をプロが解説
「元本保証とはどういう意味?」「元本が保証される金融商品にはどんな種類がある?」と元本割れを避けたい人も多いのではないでしょうか。
元本保証とは、金融商品の購入額や投資した金額が運用期間中に減らないことをいいます。
投資信託では株式や債券など日々値動きがあり、運用していく中で損失の可能性もあるため、元本は保証されません。
一方で元本保証でない場合でも、リスクを最小限に抑えて資産運用をすることは可能です。
本記事では「元本保証について詳しく知りたい」「なるべく損せずに投資をしたい」と思っている人に向けて、元本保証に関する基本知識や金融商品の選び方のポイントなど、投資のプロがわかりやすく解説します。
- 元本保証とは「元本が保証されている=投資した額が運用期間中に減らないこと」
- 元本保証の金融商品は預貯金のみ
- 元本確保を目指す金融商品は「債券」「貯蓄型の保険」
- 元本保証でなくても「長期・積立・分散投資」を意識することでリスクをある程度抑えられる
元本(元本保証・元本割れ)とは
投じたお金(元本)が運用期間中に減らないことを保証すること
一方で、金融商品の価格が日々変動し、元本を下回ることを元本割れといいます。
例えば、外貨預金(円建ての評価の場合)や、投資信託、株式などが元本割れのリスクがあります。
一般的に元本保証のある金融商品は安全性が高い反面、収益性は低くなります。ただ、元本保証がなければ、安全性が低い分、収益性が高いとされています。
(参考:元本(元本保証・元本割れ)とは|知るぽると)
要注意:元本保証と元本確保の違い
元本保証は運用期間中、元本が減らないことを保証するという意味です。
そして、元本確保は当初の投資金額が満額で返ってくることを目指して設計された金融商品などに対して「元本確保型」として用いられるワードです。
したがって元本保証と元本確保は、意味合いが異なります。
元本保証の金融商品は、預貯金(普通預金、当座預金、貯蓄預金、定期預金)です。
元本確保型の金融商品は、個人向け国債などの円建ての債券、一部の貯蓄型保険などがあります。
元本確保型の外貨建ての債券や保険などは為替の影響を受けるため、仮に外貨換算では元本が確保できたとしても、円換算では元本確保ができていない可能性があります。
元本保証の金融商品
元本保証の金融商品についてわかりやすく解説します。
預貯金
預貯金には流動性の高い普通預金や貯蓄預金、預け入れ期間があらかじめ決まっている定期預金があり、さらに円預金だけではなく、外貨預金もあります。
ただ、外貨預金は金利が高い一方で、為替変動のリスクがあり、元本保証とはいえません(外貨預金は預金保険の対象外です)。
預貯金の最大の特徴は、預け入れ先の金融機関が元本保証をしている点です。
よって途中解約時であっても元本割れとはなりません。
ただし、預け入れ先の金融機関が破綻した場合には、ペイオフの適用により、一つの金融機関につき預金者一人あたり元本1000万円とその利息の全額が保証されます。
1000万円を超える分や外貨預金については、保証はありません。
(参考:保護の範囲 : 預金保険機構)
元本確保を目的とした金融商品
元本保証ではないものの、元本確保を目指している金融商品について、わかりやすく解説します。
債券(個人向け国債・社債)
国や企業などの発行体が、投資家から資金調達のために発行する有価証券のこと
種類はいくつかありますが、ここでは元本確保を目指す商品として個人向け国債と社債について紹介します。
個人向け国債
個人向け国債とは、日本国政府が発行する債券です。よって日本が破綻しない限り、元本が保証されます。換金時期も1年経過すれば可能です。
ただし、中途換金すると、直近2回分の利息が差し引かれます。
個人向け国債の種類は、3年・5年・10年です。3年と5年は固定金利、10年は半年毎の変動金利となります。
金利の設定方法は、市場実勢利回りを基にした基準金利を使用し、3年は「基準金利-0.03%」、5年は「基準金利-0.05%」、10年は「基準金利×0.66」となっています。
現在は最低保証利率である0.05%が各期間適用されています。
(参考:中途換金-個人向け国債(変動10年)│個人向け国債│SMBC日興証券)
(参考:個人向け国債の金利についてのよくある質問 : 財務省)
社債
社債とは企業が資金調達のために発行する債券です。
社債には円建てと外貨建てがあり、現在の日本の低金利下では、外貨建て社債の金利の方が高く設定されています。
また、金利は発行体の信用力も反映されます。信用度が高い債券の金利は低くなり、信用度の低い債券は金利が高くなります。
企業が発行する社債は、日本国が発行する個人向け国債より金利が高く設定されるのが一般的です。
つまり、先進国である日本国の信用力と企業の信用力の差には相応の開きがあることを示しています。
債券には信用度を示す格付けがあり、格付けによって信用度が高いと評価された債券は投資適格債と呼ばれ、信用度の低い債券はハイイールド債、ジャンク債などと呼ばれます。
格付けが低い社債は過去にデフォルト(債務不履行)に陥った銘柄もあります。
社債といえども、格付けが低ければデフォルトリスクは高まります。
「社債は償還時に元本が確保されて戻ってくる」と一概に言えないのはこのためです。
貯蓄型の保険(外貨建て終身保険・個人年金保険)
「貯蓄型の保険」は保険の特徴を表した名称です。主に貯蓄性が高い保険をそう呼んでいます。
ここでは外貨建て終身保険と個人年金保険について解説します。
外貨建て終身保険
外貨建て終身保険とは、一生涯保障が続く保険で、保険料の支払いや保険金の受け取りが外貨である点が特徴です(いずれも特約によって円での取り扱いが可能)。
日本円よりも比較的金利の高い海外の金利を活用することで、貯蓄性が高いのがメリットです。
円建て資産よりも大きな保障や解約返戻金が期待できます。
その反面、為替リスクがあるため、保険料や保険金額・解約返戻金が為替レートにより変動することがあります。
円高に進むと保険料は安くなりますが、保険金や解約返戻金は少なくなります。
また、早期の解約には手数料がかかり、解約返戻金が非常に少なくなる場合があります。
個人年金保険
個人年金保険とは、満期まで運用し満期後に確定年金などで受け取る商品です。終身保険とは違い、大きな死亡保証はありません。
通貨は「円建て」と「外貨建て」があり、運用の仕方で「定額」と「変額」に分類されます。
定額年金は満期まで一定の利率で増やしていくので、将来の年金額が概ね確定します。一方、変額年金の場合は運用実績によって将来の年金額が変動します。
保険期間中に必要な費用は、10年以内の解約控除や保険関係費用があります。
参考)投資信託は元本保証ではない
投資信託とは投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資・運用する商品です。
自分の予算だけで株式や債券を購入して分散投資するよりも、投資信託自体が何十~何百種類もの株式や債券などに分散投資をしているため、少額での分散投資が可能となります。
ただし、投資対象の株式や債券の価格は日々変動します。
運用の成果は投資家に帰属し、運用実績が振るわず投資元本を下回っている場合に解約すると、元本割れとなります。
つまり、投資信託に元本保証はありません。
参考)確定拠出年金には元本確保型と元本変動型がある
確定拠出年金には「元本確保型」と「元本確保以外(元本変動型)」があります。
確定拠出年金の元本確保型とは、満期時に積立した元本が確保されるもので、商品は定期預金や保険があります。
ローリスク・ローリターンで、元本割れのリスクは低いですが、大きく資産を増やすことができません。
一方、元本変動型の商品は投資信託になります。
運用実績に応じて大きく増える可能性もありますが、元本割れの可能性もあります。
確定拠出はどれか1商品のみしか選択できないのではなく、決められた掛け金の中であれば複数に分散することが可能です。また、商品の見直しも可能です。
リスクとリターンのバランスを取り、資産に伸びしろをつけて長期運用をしていきましょう。
(参考:確定拠出年金にはどんな運用商品がある?上手な活用法は?(どんなタイプの商品がある? 活用方法は?))
元本保証以外の金融商品を選ぶ時のポイントは3つ
金融商品を選ぶ時におさえておきたいポイントについて、それぞれ解説します。
①「長期・積立・分散」投資を活用する
資産を育てるポイントとして「長期・積立・分散」があります。
ここでの長期は20年以上を指しますが、過去の実績上、運用期間が20年を超えるとリターンが安定かつ向上します。
また、積立については価格の高いときも低いときも一定の金額で毎月購入することで、購入価格の平準化ができ、将来のリターンが大きくなります。
これを「ドルコスト平均法」といいます。
分散については、一回で手持ちの資金を全て投資するより、分散投資をした方が、さまざまなリスクの影響を少なくすることができます。
投資をする際、価格の変動は避けられないものですが、価格が上下しながらも長期的には右肩上がりになっている商品を選ぶと、上手く資産形成できる可能性が高まります。
②リスクとリターンを把握する
※上記はイメージであり、すべての金融商品に該当するものではありません
リスクとリターンにある「リスク」とは、「危険」ではなく「リターンの揺れ幅(マイナスのリターンもあり得る)」を表します。
リスクが大きいと揺れ幅が大きい、つまり大きく利益が出る可能性もあれば、大きく損失となる可能性もあるという意味です。
一般的にリスクが低いとリターンも低く、リスクが高いとリターンも大きくなります。
よってリスクが低く、リターンが大きい商品はありません。
自分に合ったリスクを取ることや、ハイリスク商品(変額保険・株など)やミドルリスク商品(外貨建て保険・外貨預金など)・ローリスク商品(預貯金や債券など)を組み合わせて運用することが大切です。
③金融商品を選ぶ時は仕組みをきちんと理解する
資産運用は20年以上もの長期運用となります。そのため、一時の下落で投資を中止し、元本割れの中での解約といった事態を避けなければなりません。
特に商品の特性や仕組みを理解せずに投資をしている人は、「このまま投資をしていていいのか」といった不安に思い、解約してしまう傾向にあります。
さらにその後、相場が反転上昇時には「あの時解約しておかなければよかった」と後悔します。
そのような失敗を避けるためにも、また長期運用が継続できるためにも、金融商品の仕組みを理解した上で、投資を始めましょう。
特定の金融機関以外で元本を保証して資金を集める行為は違法
世の中には「確実に儲かるから」と言葉巧みに投資をさせ、金銭を騙し取る投資詐欺があります。
特に、株や社債の金融商品を活用した投資詐欺が多いようです。例えば、未公開株や少人数で組成する私募債の募集といった例があります。
投資において「絶対」や「確実」はありません。また特定の金融機関以外で、不特定かつ多数に対し元本を保証して資金を集める行為は違反となります。
免許・許可・登録等を受けている金融機関は金融庁ウェブサイトで確認できます。掲載されていない業者には、くれぐれも注意しましょう。
まとめ:「長期・積立・分散投資」でリスクを抑えよう
元本保証は運用期間中、元本が減らないことを保証するという意味でした。
ただし、元本保証やリスクの低い金融商品(定期預金や個人向け国債)では、リターンが低く将来の資産を増やすことはできません。
投資信託は元本保証がないものの、将来に大きく資産を増やすことができる可能性があります。
元本保証の商品と比べリスクが高いため、「長期・積立・分散」により、変動リスクを抑えて運用します。
将来にわたって成長が期待できる商品は何なのか、どんな特徴があるのかを理解するためにも、プロに相談してみてはいかがでしょうか。
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監修者
泉田 良輔
- 証券アナリスト/経営者/元機関投資家
株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)取締役CCO。2018年にmoneiro(マネイロ)を運営するOneMile Partnersを創業。それ以前は日本生命やフィデリティ投信で外国株式や日本株式運用のファンドマネージャーや証券アナリストとして従事。慶應義塾大学商学部卒。東京工業大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。Amazon「一般・投資読み物」カテゴリで第1位を記録した『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』 など著書多数
執筆者
柴又 順平
- ファイナンシャルアドバイザー
専修大学・経営学部を卒業後、株式会社三井住友銀行に入社。おもに富裕層向けに、約17年間資産運用コンサルティング業務に従事。投信、保険、債券、住宅ローン、遺言信託、資産承継など、幅広い金融商品の取り扱いが可能で深い知識を有している。キャリアの途中からは管理職として部下の育成にも関わる。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社。現在は、金融IT企業で個人向け資産運用のコンサルティング業務を行う。AFP(Affiliated Financial Planner)、一種外務員資格(証券外務員一種)、プライマリーPB(プライベートバンカー)資格を保有