オルカンが円高になったら危険?リターンへの影響と投資戦略をプロがわかりやすく解説
「オルカンは円高になったらどうなる?」「円高の時の投資はどのようなことに気をつければ良い?」など、オルカンが円高の時、どのような影響を受けるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
オルカンとは「オール・カントリー」の略で、特に全世界の株式を投資対象とするインデックスファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のことを指します。
当該ファンドは外国株式の組み入れがほとんどで、特に米国株式の組み入れ比率は6割超となっています(2024年11月末現在)。
本記事ではオルカンが円高の時にどのような影響を受けるのか知りたい人に向けて、円高・円安時のオルカンへの影響、オルカンに投資する時のポイントについてプロがわかりやすく解説します。
※オルカンは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の略称として商標登録されています
※MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)、あるいはACWIに連動する投資成果を目指すインデックス型投資信託を総称して「オルカン」と呼ぶ場合もあります
※本記事のオルカンに関する内容は、注釈等が無い限り、2024年11月29日現在の月次レポートに基づきます
- オルカンの基準価額が変わる主な要因は①株式要因②為替要因
- 円高になるとオルカンの基準価額が下落する
- 円高・円安にとらわれず、オルカン自体の成長性を見込んで、投資を続けることがおすすめ
オルカンとは全世界株式インデックスファンドのこと
(参考:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート2024年11月29日現在|三菱UFJアセットマネジメント)
オルカンとは、オール・カントリーの略で、特に全世界の株式を投資対象とする「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のことを指します。
オルカンのベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(以下、ACWI)」で、この指数自体をオルカンと呼んだり、ACWIに連動する運用成果を目指す他の投資信託のこともオルカンと呼ぶ場合もあります。
ACWIは先進国や新興国の上場株式から構成されている指数で、ACWIに連動する運用成果を目指すファンドに投資をすれば、結果的に世界中の株式に分散投資をすることができます。
最新のレポートによると、組み入れ比率の65.9%が米国株式で占められており、2位の日本(4.7%)と比較しても際立って多いことがわかります。
組み入れ銘柄の入れ替えはありますが、現時点では米国株式の動向に左右されやすいファンドとも言えるでしょう。
オルカンの基準価額は株価と為替レートで変化する
オルカンは、先進国と新興国の株式で運用しています。そのため、オルカンの基準価額は主に「株価」と「為替レート」によって変動します。
投資した企業の株価が上昇すれば、オルカンの基準価額の上昇要因になり、株価が下落すればマイナス要因になります。
また、為替が円安方向に推移すれば、基準価額の上昇要因となり、円高になるとマイナス要因になります。
ファンドの購入時期などにより、リターンを計算する際の単価(個別元本)は異なりますが、株価と為替が主な変動要因になるため、購入後の価格推移が比較的わかりやすいのも特徴です。
オルカンは円高の時にどのような影響を受ける?
オルカンは先進国と新興国に上場する株式、全2615銘柄に投資をしています。そのうち海外株式が95%を占めるため、オルカンは為替の影響を大きく受けることになります。
為替が円安になると基準価額が上昇する要因となり、リターンを得やすくなる半面、円高になると基準価額が下落する要因になります。
ただし、オルカンの基準価額は為替だけでなく、株価の値動きによっても変動します。したがって株価が比較的好調に推移していたとしても、為替が円高であれば基準価額が思ったほど上昇しない可能性もあります。
円高・円安はオルカンにどのくらい影響を与える?
円高や円安など、オルカンは為替の影響をどのくらい受けるのでしょうか。2024年で特に価格変動が大きかった月の為替レートと基準価額を確認してみましょう。
※記載の為替レートに関しては、日本銀行が公表している9時と17時(日本時間)のスポットレートを使用
(参考:eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)月次レポート2024年11月29日現在|三菱UFJアセットマネジメント)
(参考:時系列統計データ検索|日本銀行)
2024年7月の例:日米金利差が意識され、為替は円高に
2024年7月は日米の金利差が縮小するとの見方が広まり、急激に円高が進みました。この間、為替は1米ドル160.93円から150.91円まで円高が進んでいます。約6%の上昇です。
オルカンの月次レポートによると、7月の為替要因による基準価額の変動額はマイナス1332円となっています。これは月初と月末の基準価額を比較した時、基準価額が為替要因により1332円下落したことを示しています。
オルカンの基準価額は2万6442円(6月28日)から2万5027円(7月31日)へ1415円下落しているため、下落した分の大部分が「為替要因」ということになります。
ちなみに翌月の8月には株価の暴落が起きましたが、その後持ち直したことで、8月の株価要因での基準価額の変動はプラス(559円増)となっています。
一方、為替は8月になっても円高が続き、1ドル144円まで上昇、為替要因としては1034円下落しています。
2024年10月の例:為替が一転、円安基調に
9月には140円まで円高が進みましたが、10月になると為替は円安基調となりました。10月月初の143.71円から月末時点の152.25円まで約6%下落したことで、為替要因による基準価額の変動額は月間で1600円のプラスになりました。
基準価額は2万4913円(9月30日)から2万6623円(10月31日)まで、1710円上昇しているので、上昇分のほとんどが為替要因となります。
円高の時にオルカンへ投資するのはNG?
円高時に、米国株式の比率が多いオルカンに投資をすることは決して悪い選択ではありません。今後の為替の推移次第ですが、円安になれば値上がり益も得やすくなるでしょう。
ただし、過去と比較して現在が円高だからといって、今後円安になるとは限らず、さらに円高が進む可能性もあります。
したがって、円高・円安にとらわれて投資の機会を逃すより、オルカン自体の成長性を見込んで、投資を続けることのほうが有意義です。
また、為替は投資信託の基準価額に影響を与える大きな要因のひとつではありますが、オルカンを含む投資信託は為替以外の要因で価格が変動することを理解しておくことも大切です。
大切なのは積立投資で長期にわたって分散投資を行うことです。さまざまなリスクを軽減させるだけでなく、複利効果も得やすくなるでしょう。
為替リスクに備える「長期・積立・分散」の基本戦略
為替リスクに備えるには「長期・積立・分散」を心がけましょう。
長期・積立・分散投資の基本戦略について投資のプロが詳しく解説します。
「長期・積立投資」にはドルコスト平均法が効果的
長期・積立投資はドルコスト平均法を活用しましょう。ドルコスト平均法は、月に一度など定期的に一定の金額を投資し続ける方法です。
投資金額が一定なので、投資信託の基準価額が低い時は数量(口数)を多く購入でき、また基準価額が高い時は購入できる数量(口数)は少なくなります。
これにより、購入単価を平準化させる効果が期待できます。また、円高でも円安でも購入し続けることで、為替リスクの軽減にもつながります。
投資先には「将来にわたって成長が期待できる資産」を選ぶようにしましょう。
「分散投資」でリスクを軽減
「卵はひとつのかごに盛るな」という投資の格言があります。これは、カゴを落とすと卵が全部割れてしまうことから、投資においても、ひとつの資産に投資するより、資産を分けて投資する方がリスクを分散させやすいということを意味しています。
分散投資は資産運用の基本とされ、特に投資先の分散や時間の分散は投資初心者でも実践しやすい方法です。
投資先を分ければ、保有資産の極端な下落を防ぎやすくなり、積立投資などで時間の分散をすれば、購入単価を平準化させる効果も期待できます。
実はオルカンだけでは分散投資は不十分
オルカンは先進国や新興国の株式に投資をするインデックスファンドです。ただし、どの国の株式にも同じ割合で投資されているわけではなく、米国企業が半数以上を占めているのが特徴です。
米国には世界的に有名な大企業が多く、オルカンの米国株の組み入れ比率は約6割に上ります。またGAFAMなどに代表される情報技術セクターやメガバンクなどの金融セクターへの投資比率は合計で約4割にのぼります。(2024年11月末時点)
銘柄の分散投資はできているものの、オルカンに組み入れられているのは米国の株式に偏っており、分散しているとはいえ不十分かもしれません。
オルカンだけを保有することが悪いわけではありませんが、リスクが大きくなりやすいのがデメリットです。米国以外の地域、株式以外の資産を組み合わせて投資をすることも検討してみましょう。
例えば、投資対象が先進国債券などのファンドを一緒に保有すると保有資産のリスクが分散され、安定的な運用につながりやすくなります。
効果的な分散投資が期待できるポートフォリオの作り方
分散投資を意識したポートフォリオを作成する際は以下のポイントをおさえましょう。
①投資の目的を決める
分散投資を効果的に行うには、ポートフォリオの作成が必要ですが、そのポートフォリオを作成するために、あらかじめ投資の目的をはっきりさせておくことが大切です。
何のためにお金を増やしたいか、いつまでにいくら増やしたいのか、これらをきちんと決めておけば、期待リターンを計算することができます。
リターンの目安がわかれば、どのような資産を組み合わせたら良いか、判断しやすくなるでしょう。
②リスク許容度を明確にする
リスク許容度とは、資産運用中に自分がどのくらいの値動き(特に下落時の値動き)を許容できるか、その度合いのことです。
例えば、100万円を株式に投資して20万円以上の損失を避けたい場合なら、上下20%以上に変動する可能性が高いファンドは投資対象から外れることになります。
また、投資において、リスクは一般的に値動きの幅やブレのことを指し、リスクとリターンは比例します。最小のリスクに留める場合は、大きなリターンも期待できないことになります。
自分のリスク許容度がわかれば、投資先を選ぶ時に役立てることができるため確認しておくと良いでしょう。
③目的やリスク許容度に合わせて資産を組み合わせる
自分が許容できるリスクがわかれば、投資すべき商品を決めやすくなります。
分散投資で効率的な資産運用を目指すなら、いくつかの商品を組み合わせるのがおすすめです。
組み合わせてできたポートフォリオは、リスクがどのくらいになるか計算し、自分の投資目的やリスク許容度に合っているかどうかをチェックしてみましょう。
いくつかの商品を組み合わせると、リスクの計算が難しくなる場合もあるので、このような場合は専門家に相談するのもひとつの方法です。
④定期的に見直す
こうして作成したポートフォリオは、運用していくにつれて、それぞれの資産の割合が変わっていくものです。割合が崩れてきた場合は年に1回など、定期的に見直すようにしましょう。
例えば、当初、株式50%と債券50%で運用をスタートし、1年後、株式の比率が70%、債券の比率が30%になった場合、株式の20%を売却して債券を20%買い足します。
元の比率に戻すこと(リバランス)により、リスクが軽減し、パフォーマンスの改善を図ることができます。
ライフステージや年齢によって、とるべきリスクは変化する
資産運用にリスクはつきものですが、投資によって生じるリスクは、投資する商品、あるいは保有するポートフォリオによって異なります。
そのため、ライフイベントや年齢によってポートフォリオが変われば、当然ながら取るべきリスクの大小も変化していきます。
特に年齢が高くなれば、資産を大きく増やす積極的な運用より、資産を減らさない運用が望ましく、リスクの小さいポートフォリオに徐々に移行するのが理想的です。
株式メインのポートフォリオであれば、先進国債券などの割合を多くし、低リスク資産の割合を増やしていくと良いでしょう。
オルカンと組み合わせるなら検討したい金融商品
「オルカンと組み合わせるならどんな商品が良い?」と悩んでいる人も多いかもしれません。
オルカンと組み合わせる際は、以下の商品を検討してみましょう。
①投資対象や運用スタイルが異なる投資信託
オルカンは先進国株式、新興国株式にメインに投資する投資信託です。そのため、保有している資産がオルカンのみの場合、保有資産の多くが米国株式に偏ってしまうため、バランスよく資産を保有しているとは言えないかもしれません。
できれば、債券やREIT、コモディティなど、投資対象が株式以外の投資信託を保有することも検討してみましょう。
また、オルカンはインデックスファンドなので、運用スタイルの異なるアクティブファンドを保有するのもおすすめです。組み入れ銘柄が異なるので分散投資になります。
②債券や保険などを保有する
オルカンは、投資先が株式中心の投資信託なので、分類上はハイリスク商品になります。分散投資の効果を活かすためには、ローリスクの資産を組み合わせて、保有資産全体のリスクを軽減させるようにしましょう。
身近なローリスクの金融商品には、債券や貯蓄型保険などが挙げられます。これらの金融商品は、あらかじめ将来に受け取れる金額が決まっているのが特徴です。
債券や貯蓄型保険は、当面の使途予定がないお金を一括投資すると効率的な運用が可能になります。特に保険などは一時払いにすると、有利な条件で加入できる場合もあります。
まとめ:オルカンだけに頼らない分散投資を心がけよう
先進国と新興国の株式に投資をするオルカンは、世界経済の成長とともに高いリターンが期待される投資信託です。
世界各国の株式に分散して投資をするため、オルカンを保有するだけで世界中の有名企業に投資をしていることになります。
ただし、オルカンに組み入れられる銘柄の6割を米国株式が占めるため、分散投資が十分できているかと言えば、そうとも言えないのがデメリットです。
資金に余裕があれば、保有資産の内訳はオルカンのみにするのではなく、株式以外の資産を保有することをおすすめします。
積立投資、分散投資を長期で継続すれば、リスクを軽減しつつ、効率的な資産形成が行えるようになるでしょう。
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監修
土屋 史恵
- ファイナンシャルプランナー/金融ライター/編集者
神戸市外国語大学卒業後、外資系生命保険会社、都市銀行にてリテール営業、法人営業に携わる。遺言信託など資産承継ビジネスに強み、表彰歴あり。その後は長年の金融機関勤務経験を活かし、金融メディアに転職。記事執筆や編集などを担当。現在はフリーランスとして活動中。AFP、FP2級、証券外務員一種を保有。
執筆
高橋 明香
- ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者
みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。