【早見表】年金はいくらもらえる?今から増やせる?知っておきたい計算方法と仕組み
将来、年金がいくらもらえるのか気になる人は多いでしょう。会社員の場合には、国民年金だけでなく、厚生年金にも加入しています。
毎月厚生年金保険料が給料から天引きされているけれど、年金だけでも生活できるのか、心配になる会社員も多いのではないでしょうか。
年金は働いた後の生活を支えるための社会保障制度であり、会社員にとっては特に厚生年金が重要な役割を果たします。
一方で、年金制度の仕組みは複雑で、どういった種類があるのか、どのようにして年金額が決まるのかなど、疑問を持つこともあるでしょう。
本記事では、知っておきたい年金の基本的な知識や年金は何年で元が取れるのかなどの疑問について、専門家がわかりやすく解説します。
- 国民年金の受給額の計算方法は「満額×納付月数/480ヶ月」
- 厚生年金の受給額の計算方法は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」
- 国民年金の平均受給額は過去5年で大きく変わっていない
年金制度の仕組み
日本の年金制度は3階建て構造で、1階と2階が公的年金、3階が私的年金になります。
1階部分は全員強制加入の国民年金、2階部分は会社員・公務員が必ず加入する厚生年金、3階部分は任意加入の企業年金や個人年金などです。
まずは、それぞれの年金について概要を説明します。
(参考:日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省)
1階部分:国民年金(基礎年金)
国民年金は、20歳以上60歳未満の国民全員が加入するものです。国民年金に加入して国民年金保険料を納めていれば、65歳になった時に老齢基礎年金を受給できます。
厚生年金保険料には国民年金保険料が含まれており、厚生年金に加入している間は国民年金にも加入していることになります。
国民年金保険料は一律(令和6年度は1万6980円)で、受け取れる老齢基礎年金の額は、国民年金保険料の納付月数(受給資格期間)に応じて変わります。
ただし、老齢基礎年金を受給するには、少なくとも10年の受給資格期間が必要です。
40年分の保険料を全額納めた人は、満額の老齢基礎年金(令和6年度は81万6000円)を受給できます。
2階部分:厚生年金
厚生年金は、主に会社員や公務員など厚生年金適用事業所に雇用されている人が加入するもので、国民年金(基礎年金)に上乗せする年金が支給される制度です。
厚生年金には、70歳まで加入できます。
厚生年金に加入している人は65歳になった時、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。ただし、老齢厚生年金を受給するには、国民年金の受給資格期間(10年以上)を満たしたうえで、厚生年金加入期間が1ヶ月以上必要です。
厚生年金保険料は一律ではなく、収入によって変わります。受け取れる老齢厚生年金の額も、現役時代の収入や加入期間によって異なります。
3階部分:企業年金・個人年金
公的年金に上乗せする年金を用意するための私的年金制度があります。私的年金制度に加入していれば、公的年金だけでは不足する老後資金を補うことができます。
私的年金制度には、企業が従業員の福利厚生のために導入しているもの(企業年金)や、個人が任意に加入するもの(個人年金)があります。
企業年金、個人年金の主なものは、次の表のとおりです。
私的年金制度に加入できる条件や受け取れる額は、それぞれの制度で異なります。
年金はいくらもらえる?年金の計算方法とシミュレーション
国民年金、厚生年金の受給額の大まかな計算方法は次の表のとおりです。
それでは、詳しく見ていきましょう。
国民年金の場合
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、その年の満額に納付月数/480ヶ月をかけて算出します。
ただし、国民年金保険料の免除の承認を受けている期間(※全額免除以外は減額された保険料の納付が必要)については、次のとおり一部を納付月数にカウントできます。
例えば、国民年金保険料を全額納めた期間が360ヶ月、全額免除の承認を受けた期間が24ヶ月とすると、老齢基礎年金額は次のとおりです。
厚生年金の場合
老齢厚生年金は「報酬比例部分+経過的加算+加給年金」で算出されます。このうち、メインとなるのが報酬比例部分です。
報酬比例部分とは現役時代の収入(納めた保険料)によって計算される部分で、次の計算式で計算します。
平均標準報酬月額 ×7.125/1000× 平成15年3月までの加入期間の月数
【平成15年4月以降】
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
なお、平均標準報酬月額、平均標準報酬額はどちらも1ヶ月あたりの収入ですが、平均標準報酬額は賞与を含んでいます。
現役時代の平均月収を30万円、平成15年4月以降20年間厚生年金に加入したと仮定してみましょう。
大まかな老齢厚生年金額(年額)をシミュレーションすると、次のようになります。
年金の平均受給額と推移
老後に受給できる年金額は、加入している年金制度の種類や、納付した保険料などによって異なります。
厚生労働省が公表しているデータから、年金の平均受給額や推移を見てみましょう。
(参考:令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局)
国民年金の平均受給額と推移
国民年金受給者(受給資格期間25年以上)の令和4年度の平均年金月額は5万6428円です。国民年金の平均年金月額は、過去5年で大きく変わっていません。
自営業者など国民年金のみの加入で厚生年金を受給できない人は、月5.6万円程度の年金しかもらえないことがわかります。
厚生年金の平均受給額と推移
続いて、厚生年金受給者(会社員)の平均年金月額を見てみましょう。令和4年度の平均年金月額(老齢基礎年金含む)は、14万4982円です。
厚生年金受給者の年金額は、5年前と比べて月1000円程度減っています。しかし、会社員は自営業者の倍以上の年金を受給していることがわかります。
加入年数・年収別の年金受給額【早見表】
厚生年金の加入年数別に、支払う保険料の総額と年金受給額、元が取れる年数を見てみましょう。
上記の表は20歳から40歳までの40年間のうち、厚生年金に加入していた年数を20年、30年、40年とし、残りの期間を国民年金に加入したと仮定して計算したものです。
厚生年金の加入年数が長くなるほど支払う保険料は増えますが、年金受給額もその分増えます。保険料の元が取れるまでの年数は厚生年金の加入期間によって大きな差はありません。
早ければ6年半程度、遅くても10年程度年金を受け取れば、支払った保険料は回収できることがわかります。
職種・ケース別の年金受給額
年金受給額は、職業や働き方によって変わります。ここからは、夫婦の職業等の違いによって、世帯単位での年金受給額がどのように変わるかをシミュレーションしてみます。
会社員単身者
平均年収480万円(月収40万円)で40年間会社員として働きながら厚生年金に加入したと仮定します。
この場合、国民年金(老齢基礎年金)の額は満額の月6.8万円、厚生年金(老齢厚生年金)の額は概算で月8.8万円程度となります。
合計すると、1ヶ月あたりの年金受給額は15.6万円となります。
会社員と専業主婦の夫婦
平均年収480万円(月収40万円)で40年間会社員として働いた夫と、40年間専業主婦やパートでずっと扶養内だった妻という夫婦を仮定してみます。
夫の年金は国民年金と厚生年金、合わせて1ヶ月あたり15.6万円です。一方、妻は国民年金の月6.8万円のみなので、世帯での年金受給額の合計は22.4万円となります。
共働き夫婦
夫の平均年収を480万円(月収40万円)、妻の平均年収を360万円(月収30万円)とし、いずれも40年間厚生年金に加入したと仮定します。
夫の年金は1ヶ月あたり15.6万円です。妻の年金は国民年金が月6.8万円、厚生年金が月6.6万円なので合計13.4万円となります。世帯での年金受給額の合計は月29万円です。
自営業の夫婦
自営業の夫婦で考えてみましょう。自営業で厚生年金加入歴がない場合、国民年金のみになります。国民年金の場合、保険料も受給額も一律で、現役時代の年収は関係ありません。
夫も妻も40年間国民年金保険料を全額納付したと仮定すると、それぞれ年金受給額は月6.8万円です。世帯単位で見ると月13.6万円となります。
年金だけで生活できるかシミュレーション
年金は老後生活の柱となるものですが、年金受給額は生活するのに十分な額ではないこともあります。
年金だけで生活できるかをシミュレーションし、不足額の準備について考えましょう。
老後の主な費用①生活費
総務省が行った2023年度(令和5年度)の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の消費支出の平均額は月25万959円です。
生活費以外に非消費支出として税金や社会保険料も発生します。非消費支出の平均は月3万1538円です。消費支出と非消費支出を合わせると、1ヶ月あたり28.2万円がかかることになります。
65歳以上の単身無職世帯では、消費支出の平均額は月14万5430円です。非消費支出は月1万2243円で、1ヶ月あたりの支出は15.8万円となります。
(参考:家計調査報告家計収支編2023年(令和5年)平均結果の概要|総務省統計局)
老後の主な費用②介護費用
老後にかかる費用は、生活費だけではありません。老後は病気や怪我のリスクが高まり、介護が必要になる可能性もあります。老後の安心のためには、介護費用も準備しておかなければなりません。
要介護認定を受けた場合には介護保険を受けられるサービスもありますが、1割の自己負担は発生します。また、介護保険適用外の費用もあるため、ある程度の自己負担は避けられません。
生命保険文化センターの調査によると、介護費用の自己負担額の平均は月8.3万円となっています。介護費用にも備えておかなければ心配でしょう。
(参考:2021(令和3)年度 生命保険に関する 全国実態調査|生命保険文化センター)
年金だけで生活できるかシミュレーション
老後に必要な金額は、どのような生活を送りたいかによっても変わってきます。
生命保険文化センターの調査では、老後の夫婦2人の最低日常生活費としては月23.2万円、ゆとりある生活をするには月37.9万円が必要とされています。
最低限の生活で良いという場合でも、介護費として月8.3万円かかるとなると、月31.5万円が必要です。仮に夫婦の年金を22.5万円とすると、月9万円不足します。不足額を準備する方法を考えなければなりません。
(参考:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査|生命保険文化センター)
老後の資金計画を立てる時には、老後に求める生活レベルから必要な金額を計算し、年金でカバーされる額を差し引いて考えるようにしましょう。
年金を少しでも増やす方法
年金が少なければ、老後の資金計画も立てにくくなってしまいます。年金はさまざまな方法で増やすことができます。
自分に合った年金を増やす方法がないか、以下を参考に考えてみましょう。
年金の繰下げ制度を利用する
年金の繰下げ制度とは、年金の受給開始を遅らせる制度です。年金は原則65歳から支給されますが、受給開始を65歳よりも早める繰上げ受給や、65歳よりも遅らせる繰下げ受給も可能になっています。
なお、繰上げ受給では年金額は減りますが、繰下げ受給では年金額が増える仕組みになっています。
繰下げ受給の増額率は、1ヶ月ごとに0.7%増えます(※昭和16年4月2日以降生まれの場合)。
繰下げ年齢の上限は、昭和27年4月2日以降生まれの人については75歳となります。75歳まで繰下げした場合には、本来の年金額よりも84%増額します。
本来の年金額を15万円と仮定すると、75歳まで繰下げた場合の年金額は27.6万円となります。
国民年金の追納で満額受給を目指す
国民年金(老齢基礎年金)は、480ヶ月分の国民年金保険料を全額納付すれば、満額受給ができます。追納できる国民年金保険料がある場合、納付することで年金額を増やせます。
国民年金保険料を未納のまま放置している場合でも、2年以内であれば追納できます。国民年金保険料の免除・納付猶予の承認を受けている場合には、10年以内の追納が可能です。
過去に国民年金保険料を納めていない期間がないかをチェックしてみましょう。
国民年金の任意加入をする
国民年金加入は60歳までです。ただし、60歳になった時点で国民年金の受給資格期間が480ヶ月に満たない場合、60歳から65歳までの間に任意で国民年金に加入できる制度があります。
国民年金に任意加入して国民年金保険料を納付すれば、年金を満額に近づけることができます。
なお、年金を受給するには、10年以上の受給資格期間が必要です。65歳時点で受給資格期間が10年に達していない場合には、65歳以降も国民年金に加入できます。
60歳以降も働いて厚生年金に加入する
国民年金は60歳までですが、厚生年金には70歳まで加入できます。60歳以降も働いて厚生年金に加入すれば、年金を増やせます。
近年、高齢者が働きやすいよう制度も整備されてきました。高齢者雇用安定法により、60歳で定年になった後も、希望すれば65歳まで会社に残って働けます。
会社には70歳までの就業機会確保の努力義務も課されています。
元気な間はできるだけ働くつもりでいれば、老後の資金計画も立てやすくなるでしょう。
私的年金制度を活用する
公的年金に上乗せする年金を給付し、老後の生活を保障する制度のこと
企業が導入している企業年金も私的年金の一つです。その他に、個人が任意で加入できる私的年金として、国民年金基金や付加年金、iDeCo、個人年金などがあります。
ここでは、私的年金制度のうち、国民年金基金・付加年金と企業年金について説明します。
国民年金基金・付加年金
国民年金基金と付加年金は、どちらも国民年金第1号被保険者(自営業者等)が加入できる制度です。
ただし、国民年金基金と付加年金は重複して加入できません。
国民年金基金は、給付の型と口数を選んで自由にプランを設計できます。給付の型には終身年金と確定年金があり、1口目は終身年金を選ぶ必要があります。
付加年金は毎月納める国民年金保険料に400円を追加して納めることで、老齢基礎年金を増やせる制度です。
付加年金に加入した場合、「200円×納付月数」の年金を受け取れるため、2年で保険料の元が取れます。
厚生年金に加入している会社員は、国民年金基金や付加年金には入れません。iDeCoなどに加入する方法を考えましょう。
確定拠出年金(DC)・確定給付企業年金制度(DB)
企業年金は、確定拠出型(DC)と確定給付型(DB)の2種類に分かれます。
DCは会社が掛金を拠出し、加入者である従業員自らが資産を運用する制度です。年金資産は原則として60歳まで受け取れず、転職時には持ち運びができます。
DBでは企業が掛金を拠出しますが、運用は年金運用機関が行います。DBの場合は60歳前の早期退職であっても、一時金として年金資産を受け取れます。
DBには規約型と基金型があります。規約型では生命保険会社・信託会社等が管理・運用し、基金型では企業年金基金が管理・運用を行います。
年金制度だけでは不安な時はNISAの活用がおすすめ
公的年金だけでは老後資金が不足する場合でも、私的年金制度を活用して年金を増やせることがあります。
また、国の制度であるNISAを利用して老後資金を準備することも可能です。
一定額までの投資で発生する運用益が非課税になる制度のこと
通常、株式や投資信託の運用益には20.315%の税金がかかりますが、NISAで運用すれば課税されません。
2024年にスタートした新NISA(新しいNISA)では、成長投資枠とつみたて投資枠の2つの枠が設けられており、最大1800万円の資産を非課税で保有できます。
NISAでは引き出し時期の制限などもないため、iDeCoなどの私的年金制度と併せて活用するのがおすすめです。
まとめ
年金がいくらもらえるかは、加入している年金制度や加入していた期間などによって変わってきます。
厚生年金に加入している会社員は、国民年金のみ加入の自営業者等と比べて年金額も多くなります。厚生年金は現役時代の平均年収によっても受給額が変わります。
いずれにしろ、公的年金だけでは老後資金が不足することが多いでしょう。年金受給額を確認し、老後の生活費や介護費を計算すると、不足額がわかります。
老後資金の不足額を準備するために、私的年金が活用できます。また、NISAを利用して老後資金を準備する方法も考えてみましょう。
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森本 由紀
- ファイナンシャルプランナー/AFP(日本FP協会認定)/行政書士
行政書士ゆらこ事務所(Yurako Office)代表。愛媛県松山市出身。神戸大学法学部卒業。法律事務所事務職員を経て、2012年に独立開業。メイン業務は離婚協議書作成などの協議離婚のサポート。離婚をきっかけに自立したい人や自分らしい生き方を見つけたい人には、カウンセリングのほか、ライフプラン、マネープランも含めた幅広いアドバイスを行っている。法律系・マネー系サイトでの記事の執筆・監修実績も多数。