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遺族厚生年金が改正で原則5年間の有期給付に?2025年制度見直しのポイントと影響

遺族厚生年金が改正で原則5年間の有期給付に?2025年制度見直しのポイントと影響

年金2025/06/06

    2025年に遺族厚生年金制度の大幅な見直しが予定されています。

    これまで終身で支給されていた遺族厚生年金が、原則として5年間の有期給付に変更されることで、遺族の生活設計に大きな影響を及ぼす可能性があります。

    本記事では、制度改正の背景具体的な変更内容影響を受ける場合の対応策について詳しく解説します。

    ※本記事の内容は、公開時点での法案や制度の情報をもとに作成しています。今後、国の方針や制度の見直し等により内容が変更される可能性があります。最新の情報は、厚生労働省などの公的機関の発表をご確認ください

    (参考:年金制度改正法案を国会に提出しました|厚生労働省
    (参考:遺族厚生年金の見直しについて|厚生労働省
    (参考:遺族年金制度等の見直しについて|厚生労働省

    この記事を読んでわかること
    • 20代~50代で子のいない配偶者が亡くなった場合、遺族厚生年金は原則として「5年間の有期給付」になる
    • 支給期間が5年に短縮されることへの配慮として、「有期給付加算の創設」などがされる
    • 改正後は「18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の男性」も支給対象となる



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    遺族厚生年金の見直しの背景と目的

    2025年5月30日に衆議院で可決された「年金制度改正法案」において、遺族厚生年金の見直しが行われることとなりました。

    その背景と目的について、あらためて見ていきましょう。

    社会構造の変化と制度の見直し

    近年、共働き世帯の増加や女性の就業率の上昇など、家族の形態社会構造が大きく変化しています。これに伴い、遺族厚生年金制度も現代の実情に合わせた見直しが求められるようになりました。

    ポイントの解説

    特に、配偶者の死亡後の生活再建支援を目的とした制度設計が必要とされています。

    男女差の是正と公平性の確保

    現行制度では、子のいない妻が夫に先立たれた場合、一定要件を満たせば年齢に関係なく遺族厚生年金が支給されます。

    一方、子のいない夫が妻に先立たれた場合、55歳未満では受給できないなど、男女間での不公平が存在していました。

    今回の改正では、こうした男女差を是正し、公平性を確保することが目的とされています。

    見直し内容:遺族厚生年金の有期給付化

    改正後、20代~50代で子のいない配偶者が亡くなった場合、遺族厚生年金は原則として5年間の有期給付となります。配偶者の死亡後の生活再建支援を目的とした制度へと転換されます。

    有期給付加算の創設

    支給期間が5年に短縮されることへの配慮として、遺族厚生年金の給付額が増額される「有期給付加算」が創設されます。

    具体的には、死亡した被保険者の老齢厚生年金の4分の1に相当する額が加算される予定です。現在の遺族厚生年金額は原則死亡者の老齢厚生年金の4分の3相当額であるため、有期給付加算を加えると老齢厚生年金の100%が支給されることになります。

    (参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
    (参考:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案

    年金記録の死亡時分割制度の導入

    配偶者が亡くなった場合、その婚姻期間中に配偶者が厚生年金に加入していた記録を、遺族の年金記録として分割できる「死亡時分割制度」が導入されます。

    これにより、遺族が将来受け取る老齢厚生年金の受給額が増え、老後の生活保障がより手厚くなることが期待されます。

    収入制限の撤廃で受給要件が緩和

    現行制度では、遺族厚生年金の受給には「同一生計要件」と「収入要件」を満たす必要があります。改正後は収入要件が撤廃され、同一生計要件のみで受給可能となります。

    ポイントの解説

    収入の多寡に関係なく、配偶者の死亡による生活の変化に対応できるようになります。

    中高齢寡婦加算の段階的見直し

    40歳から65歳の妻が受給する遺族厚生年金では、一定要件を満たすと年62万3,800円(2025年度)の「中高齢寡婦加算」が支給されます。

    中高齢寡婦加算は順次減額され、法改正後25年かけて廃止となる予定です。

    遺族厚生年金の見直しは誰が影響を受ける?主な対象者

    今回の法改正では、遺族厚生年金の支給が原則5年間の有期給付へと見直されることが盛り込まれました。施行は2028年4月を予定しており、それ以降、一定の条件に該当する方は支給期間が限定されることになります。

    特に影響を受ける可能性があるのは、以下のようなケースです。

    【女性の場合】
    2028年度末時点で40歳未満であり、かつ18歳年度末までの子どもがいない人が、新たに5年間の有期給付の対象となります。

    夫死亡時に20代の女性は現行制度下で有期給付となっているため、今回の見直しによって新たに対象となるのは主に30代の女性です。

    厚生労働省の推計では、年間約250人が該当するとされています。

    【男性の場合】
    これまで子どものいない男性は遺族厚生年金の対象にならないケースが多くありました。今回の改正では、「18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の男性」も、有期での給付対象に加わります。

    該当者は年間約1万6000人と見込まれており、女性以上に多くの影響が想定されています。

    改正により、今後配偶者を亡くした際の生活設計に大きな変化が生じる可能性があります。「遺族年金は終身で受け取れるもの」と思っていた人にとっては、法改正が生活プランに直結する重大なポイントとなるでしょう。

    遺族厚生年金の見直しの影響を受けない人

    以下①~④に該当する場合は、今回の見直しによって受ける影響はありません。

    ①既に遺族厚生年金を受給している
    ②60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する
    ③18歳年度末までの子どもがいる
    ④2028年度末に40歳以上の女性

    そもそも遺族厚生年金とは?対象者と支給条件をおさらい

    遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が亡くなった際、その家族の生活を支えるために支給される年金です。

    対象となるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた「配偶者」「子ども」「父母」「」「祖父母」などです。

    ただし、支給には以下のような条件があります。

    • 亡くなった方が厚生年金に一定期間以上加入していた
    • 遺族が「生計同一関係」にあった
    • 受給権者が所定の年齢条件などを満たしている など

    特に配偶者が受け取る場合は、年齢や子どもの有無により受給条件に違いがあるため注意しましょう。

    まとめ

    2025年からの遺族年金制度の改正は、現行制度の男女間格差の解消と再出発支援の強化が目的ですが、一部の遺族にとっては将来の収入減少につながる可能性もあります。

    影響を受ける可能性がある方は、制度を正しく理解し、今からできる準備を進めることが大切です。


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    ※本記事の内容は記事公開時や更新時の情報です。現行と期間や条件が異なる場合がございます

    ※本記事の内容は予告なしに変更することがあります。予めご了承ください

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    監修
    西岡 秀泰
    • 西岡 秀泰
    • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

    同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。

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    執筆
    マネイロメディア編集部
    • マネイロメディア編集部
    • お金のメディア編集者

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