分散投資のやり方は3つだけ!基本知識やポートフォリオの作り方をわかりやすく解説
「分散投資とはどういう意味?」「分散投資でどのくらいリスクが減らせる?」と投資を行ううえで、分散投資について詳しく知りたい人も多いのではないでしょうか。
分散投資とは投資におけるリスクを減らす方法の一つです。
投資先や時間(時期)を分散させることで、元本割れなどのリスクを軽減させることが期待できます。
分散投資はやり方さえ理解できれば、投資初心者でも実践することができます。
本記事では「分散投資はどうやって行う?」と投資のやり方について悩んでいる人に向けて、分散投資の基本知識とやり方、ポートフォリオの作り方などを証券アナリストやファイナンシャルアドバイザーがわかりやすく解説します。
※本記事では2023年までのNISA制度を「旧NISA」または「旧制度」、2024年から始まる新しいNISAを「新NISA」または「新制度」と表記しております
- 分散投資とは資産や時間を分散させることでさまざまなリスクを軽減させる方法のこと
- 分散投資は「資産の分散」「地域の分散」「時間(時期の分散)」で行うことができる
- 分散投資を行うなら、1つの商品を運用するだけでさまざまな資産に分散投資で行える「投資信託」がおすすめ
分散投資とは?知っておきたい基本知識
投資において、リスクを減らす方法の一つとして「分散投資」があります。
よく耳にする言葉でもありますが、あらためて分散投資の基本知識を理解しましょう。
投資のリスクを減らすには「長期・積立・分散」が必要不可欠
リスクを「危険」という意味で理解している人も多いと思いますが、投資の世界では「変動・振れ幅・ブレ」という意味で使われます。
「長期・積立・分散」を活用すれば、投資のリスク(振れ幅)を減らし、安定した運用成果を残しやすくなります。
そして、これらの要素は親和性が高く、それぞれがリスクを減らすために必要不可欠な投資方法です。
どれか一つだけを実施しても、あまり効果が期待できません。
分散投資の基本「卵を一つのかごに盛るな」
資産運用には「卵を一つのかごに盛るな(Don't put all eggs in one basket)」という格言があります。
卵は壊れやすいため、一つのカゴに全部を盛ってしまうと、カゴを落とせば多くの卵が割れてしまう可能性が高くなります。
しかし、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、他のカゴの卵は影響を受けずに済みます。
資産運用も同じことがいえます。投資先や時間を分散すれば、投資のリスクは減らすことができます。
リスクが減る分、急激に資産を増やすことは難しくなりますが、時間をかけて運用することで、安定した運用成果を得やすくなります。
(参考:分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな|年金積立金管理運用独立行政法人)
(参考:安心して投資するための3つのコツ!長期・積立・分散|投資の時間|日本証券業協会)
分散投資の3つのやり方と具体例
<参考:投資の基本 : 金融庁|分散投資>
①資産・銘柄の分散
資産(アセット)は
外国債券・不動産・コモディティ(金・原油などの商品)
などに分類されます。
これらのアセットを組み合わせて投資を行うのが分散投資です。
また、一つのアセットだけに投資をしたとしても、銘柄を分散させて投資を行うこともあります。
特性が異なるアセットや銘柄を組み合わせて投資をすると、極端な価格の変動を防ぐことができ、リスクを軽減させることにつながります。
分散投資で代表的な金融商品は投資信託です。
投資信託を購入すると、自動的に分散投資を行っていることになるため、分散投資と同じ効果が期待できます。
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例:資産の分散
異なるアセットを組み合わせて投資を行うのが資産の分散です。
例えば、株式や債券などを組み合わせて投資を行うことは資産の分散です。
一般的に、株式と債券は異なる動きをすると考えられています。
どちらか一方が下落傾向にあったとしても、片方がその影響を受けなければ、一方的に価格が下がることを避けることができます。
資産を分散させることで、このような効果が期待できます。
例:銘柄の分散
株式や債券のみに投資をした場合でも、銘柄を複数保有すれば分散投資をしているといえます。
例えば、複数の企業の株を購入して保有することは銘柄の分散投資です。
債券も同様です。銘柄を分散させることは、信用リスクなどの軽減にもつながります。
株式であれば、業種別で銘柄選択をすると良いでしょう。
債券は個人で購入できるものには限りがありますが、投資信託であれば、機関投資家しか購入できない債券にも、手軽に分散投資をすることができます。
②地域の分散(国際分散投資)
米国、北米、欧州、アジア・オセアニアといった地域別の株式や債券などに分けて投資をすることも分散投資の一つです。
世界の国々はそれぞれ経済の状況が異なり、好景気の国もあれば不況の国もあります。
また、新興国のように将来の経済発展が期待できる国々や、既に経済が成熟している国もあります。
各国の経済状況は常に好不況を繰り返しているため、事情の異なる国々に分けて投資を行えば、リスクを分散させることが可能になります。
③時間(時期)の分散
まとめてお金を一度に投資をするのではなく、時間を分散させて投資をすると、効率よく資産を運用することができます。
例えば、投資信託や株式などを、毎月一定額、決まった日に購入し続けることにより、購入価格が平均化され、結果的に平均購入価格を抑えることが可能になります。
この手法を「ドルコスト平均法」といいます。
長期にわたって成長していく資産を購入する場合に、ドルコスト平均法を用いるとその効果が高まります。
短期間の投資や成長が期待できない投資先にドルコスト平均法を用いても、効果はあまり期待できないため注意しましょう。
Q.集中投資より分散投資の方が良い?
長年投資に親しんだ人やデイトレーダー以外は、分散投資の方が良いでしょう。
一度に集中してお金を投じると、投資した後の資産の値動きに気を使わざるを得ないため、心理的な負担も大きく、投資を続けることが難しくなります。
投資は日々値動きがあり、その動きに慣れていない初心者は、結果が出る前に早々と手仕舞いしてしまい、損失を被る場合もあります。
投資先や時間を分散して投資を行えば、資産の動きが集中投資に比べて小さく、そして長期投資を前提とするため、余裕を持って投資を行うことができます。
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Q.銘柄はどのくらいの数を分散すれば良い?
約30銘柄を保有すると分散効果が高いとされています。その際はセクター(業種)別に銘柄を選定すると良いでしょう。
ただ、個人の投資家が30銘柄を購入するにはある程度まとまった資金が必要です。
30銘柄を管理するのも大変ですし、そもそもセクター内のどの銘柄を選ぶかも難しいところでしょう。
投資信託は専門家が銘柄を分析して多数の銘柄に投資を行っています。投資信託であれば、適切な配分の分散投資が可能になります。
分散投資を意識したポートフォリオの組み方
ポートフォリオとは、金融資産の組み合わせのことで、分散投資をするうえで欠かせないものです。
実際にポートフォリオを組む際には分散投資を意識して組むと良いでしょう。
それぞれの金融商品のリスクが分散され、商品の偏りや同じ業種の銘柄ばかりを保有しないように、国内株式や国内債券、外国株式や外国債券などを組み合わせます。
できあがったポートフォリオのリスクが、自分の想定しているリスク・リターンの範囲内に収まれば、それが適切なポートフォリオであり、分散投資の効果が発揮されているといえます。
ポートフォリオは資産の成長と共に当初の配分が崩れる場合があります。
定期的な見直しをして、再配分する必要があります。
(参考:Q.投資初心者も「ポートフォリオ」を考える必要はありますか? | 若手社会人 | 一般社団法人 全国銀行協会)
1.リスクの大きさ・商品特性を踏まえて資産の割合を決める
リターンとは「収益率」のことを指し、リスクは「リターンの振れ幅」のことを指します。
したがって、「リスクが大きい、高い」の意味は損をする可能性が高いではなく、単純に「収益の変動が大きい」ことを示しています。
リスクとリターンは比例する関係にあり、ローリスクの商品はローリターン、ハイリスクの商品はハイリターンとなります。
理論上、ローリスク・ハイリターンの商品は存在しません。
ポートフォリオを組む際は、自分のリスク許容度に沿った金融商品、希望するリターンが実現できる金融商品を選択し、資産の割合を決めていきましょう。
2.年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の比率を参考
私たちの年金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用しています。
GPIFは私達の大切な年金を運用しているため、GPIFがどのようなポートフォリオで運用しているか、そのポートフォリオを参考にすると良いでしょう。
ちなみに、GPIFの運用成果やポートフォリオはホームページから調べることが可能です。
基本のポートフォリオは下記のとおり策定されています。
国内債券25%
外国株式25%
外国債券25%
※それぞれ上下7%程度の変動幅あり
安定した運用成果を追求したポートフォリオで、市場運用開始以降(2001年度~2021年度第1四半期)、収益率は年率3.7%、累積収益額はおよそ100兆円にものぼっています。
(参考:2021年度の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人)
(参考:基本ポートフォリオの考え方|年金積立金管理運用独立行政法人)
ポートフォリオ例:今から老後資産を作る人
今から老後資産を作る人は、成長資産を中心にしてポートフォリオを作成すると良いでしょう。
変動が大きい「ハイリスク・ハイリターン」にはなりますが、長期積立投資で「ドルコスト平均法」を活用すれば、効率的に資産を増やすことができます。
長期の資産運用には成長資産である「世界株式」が向いています。代表的な世界株式ファンドのポートフォリオは、過去23年間で3.2倍、年率6%で運用されています。
今から時間をかけて大きく資産を増やしたい人は検討しても良いかもしれません。
ポートフォリオ例:既に老後資金の準備がある人
既に老後資金の準備がある人は、今から老後資金を作る人とのポートフォリオは異なります。
今ある資産を減らさないように、ポートフォリオを組みましょう。
安定性を重視し、世界株式20%と債券80%などの割合が適当です。
株式の値動きは大きく、一日に5%以上動く場合もあります。株式に全資産を投じてしまうと思わぬ下落に見舞われる可能性も高くなります。
よって老後資産を既に保有している人は、株式の割合を抑えた低リスク・低リターンで安定運用を目指しましょう。
分散投資を活用するなら投資信託がおすすめ
分散投資を行う際は以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 資産の分散
- 地域の分散
- 時間の分散
一方で、上記3つの分散を自分一人で行うのは、なかなか大変な作業です。
例えば、先進国の資産に分散投資をしたいと考えていても、実際に各国企業の株式を購入していくと、膨大な手間とお金がかかってしまいます。
そこで、分散投資をする時には投資信託を活用するのをおすすめします。
投資信託は少額から購入可能で、中にはさまざまな資産に分散投資されているものもあります。
そのため、投資信託を購入することで、資産の分散や地域の分散ができます。
おすすめ①iDeCo
iDeCo(イデコ)は税制優遇を受けられる私的年金制度です。
基本的には下記の3つの税制優遇が受けられます。
②掛金全額が所得控除の対象
③「公的年金等控除」または「退職所得控除」の対象
iDeCoを通じて投資を行う場合、投資する商品は元本確保型商品と投資信託から選択することができます。
元本確保型の商品は定期預金や保険商品となります。
投資信託を選択すると、投資のリスクが生じるため、元本が割れる可能性があります。リスクの許容度に応じて、商品を選択すると良いでしょう。
iDeCoには税制優遇のメリットがある一方、掛金や運用益は60歳まで引き出せない仕組みとなっています。
そのため、60歳まで引き出す必要のない資金で始めましょう。
おすすめ②NISA制度
NISA制度とは、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための少額投資非課税制度のことです。
投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益が非課税になります。
2024年から新NISA(新しいNISA)となり、投資額は毎年360万円が上限であり、口座開設可能期間は恒久化、非課税保有期間は無期限化となりました。
NISAは将来資金を貯めたい人に向いています。
ある程度のリスクが許容でき、長期でじっくり運用したい人は「株式100%型」の投資信託も選択肢のひとつに加えても良いでしょう。
また、NISAでは売却タイミングの見極めが難しいです。
話題の制度ではありますが、比較的手軽に始められるものの、出口戦略が難しい制度といえるでしょう。
まとめ:分散投資は投資に不可欠
分散投資とは、投資先や時間などを分散することで投資のリスクを減らす投資方法のことです。
また、分散投資は長期投資・積立投資と組み合わせて投資を行うことにより、安定した運用成果を得ることが期待できます。
「資産運用で失敗したくない」「リスクをなるべく減らしたい」「お金をコツコツ増やしたい」という人は、長期・積立・分散を意識して運用を行うと良いでしょう。
そして、世界の経済成長は今後も続くと予想されているため、世界株式ファンドなどを活用して運用するのも一案です。
投資を行う際は「長期・積立・分散投資」は不可欠です。できる限り投資のリスクを減らし、上手にお金を増やしていきましょう。
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監修者
泉田 良輔
- 証券アナリスト/経営者/元機関投資家
株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)取締役CCO。2018年にmoneiro(マネイロ)を運営するOneMile Partnersを創業。それ以前は日本生命やフィデリティ投信で外国株式や日本株式運用のファンドマネージャーや証券アナリストとして従事。慶應義塾大学商学部卒。東京工業大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。Amazon「一般・投資読み物」カテゴリで第1位を記録した『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』 など著書多数
執筆者
柴又 順平
- ファイナンシャルアドバイザー
専修大学・経営学部を卒業後、株式会社三井住友銀行に入社。おもに富裕層向けに、約17年間資産運用コンサルティング業務に従事。投信、保険、債券、住宅ローン、遺言信託、資産承継など、幅広い金融商品の取り扱いが可能で深い知識を有している。キャリアの途中からは管理職として部下の育成にも関わる。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社。現在は、金融IT企業で個人向け資産運用のコンサルティング業務を行う。AFP(Affiliated Financial Planner)、一種外務員資格(証券外務員一種)、プライマリーPB(プライベートバンカー)資格を保有
宮内 勇資
- ファイナンシャルアドバイザー
ファイナンシャルアドバイザー。専修大学商学部卒業後、水戸証券株に入社。リテール営業に従事し、国内外株式、投資信託、債券などが得意分野。キャリアの途中からは人材育成にも携わり、主に若手社員の能力向上に大きく貢献した。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社。現在は個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。AFP(Affiliated Financial Planner)、一種外務員資格(証券外務員一種)保有