企業型確定拠出年金(企業型DC)で「だまされるな」は本当?損しないための賢い活用法
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企業型確定拠出年金(企業型DC)は、税制優遇があり将来の資産形成に役立つ制度ですが、一部では「だまされるな」「ひどい」といった声も挙がっており、不安に感じている人も多いかもしれません。
そこでこの記事では、企業型確定拠出年金の基本から、損しないための注意点、賢い活用法までを徹底解説します。ぜひ加入の判断にお役立てください。
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)の基本的な仕組み、メリット・デメリット
- 「だまされるな」といわれる理由とその具体的な落とし穴
- 将来後悔しないための企業型DCの賢い運用方法
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企業型確定拠出年金(企業型DC)とは?
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が従業員の年金口座に毎月掛金を拠出し(払い込み)、その掛金をもとに従業員自身が年金資産の運用を行う制度です。運用成績によって、将来受け取れる退職金や年金の額が変動することが特徴です。
企業型DCへの加入は、従業員が自動的に加入する場合と、加入するかどうかを従業員が選択できる「選択制DC」の2つのパターンがあります。加入者(従業員)は、自身で金融商品(投資信託、定期預金、保険商品など)を選択し、資産配分や運用方針を決定します。
そして、原則として60歳以降に、積み立ててきた年金資産を一時金(退職金)または年金の形式で受け取ることができます。逆にいうと、積み立てた年金資産は原則60歳までは引き出すことができません。
拠出額は企業(事業主)が負担し、役職などに応じて決まることが一般的ですが、法令上の上限も定められています。2024年12月以降、上限額は「5万5000円 − 他制度掛金等」であり、従来の「2万7500円」は経過措置として残るケースがあります。
将来の給付額は運用の成否によって左右されますが、この運用責任は加入者自身が負うことになります。
企業型確定拠出年金のメリット
企業型確定拠出年金には、効率的な資産形成を可能にする手厚いメリットがあります。
手厚い税制優遇
企業型確定拠出年金の最大の魅力は、税制上の大きな優遇を受けられる点です。
積み立てる掛金が非課税
企業が拠出する「事業主掛金」は個人の所得とはみなされません。また、従業員自身が掛金を上乗せする「マッチング拠出」を利用した場合、その掛金は全額所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。さらに、事業主掛金(選択制DCを含む)は、社会保険料の算定からも外れるため、社会保険料の負担軽減も期待できます。
運用益に対して非課税
通常の金融商品で運用益が出た場合、その利益には約20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金がかかります。これに対し、企業型確定拠出年金では運用益が全額非課税となります。そのため、本来であれば税金として支払う分も再投資に回すことができ、大きな複利効果が期待できます。
受け取るときにも税制優遇
積み立てた年金資産は60歳以降、一時金または年金の形式で受け取ることができますが、どちらの形式でも税制優遇が受けられます。一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、受取時の年齢や所得などに応じて税負担を軽減できます。
柔軟な資産運用
企業型DCでは、加入者自身が投資先を選択できるという柔軟性があります。定期預金や投資信託など、多様な運用商品の中から、自分のリスク許容度や目標に合わせて選択することが可能です。運用次第で、将来受け取る年金受給額を増やすことができる可能性も秘めています。
企業負担の軽減
掛金を拠出するだけで運用リスクは加入者(従業員)が負うため、企業の財政負担が軽減されます。掛金は損金として計上でき、税務上のメリットもあります。
また、選択制DCを導入すると、DCの掛金は給与とみなされないため、社会保険料の算定からも外れ、従業員と企業の両方の社会保険料負担が軽減されます。これにより、企業は福利厚生を充実させつつ、社会保険料や税負担を抑えることができます。
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企業型確定拠出年金のデメリット
多くのメリットがある一方で、企業型DCには注意すべきデメリットも存在します。
運用リスクがある
確定拠出年金は、拠出する掛金の額は確定していますが、将来の給付額は運用結果に左右されます。そのため、運用がうまくいかなかった場合には資産が減ってしまうというリスクがあります。元本保証型の運用商品を選ばない限り、元本割れのリスクもゼロではありません。
一方で税制優遇があるため、通常の資産運用に比べて運用益に税金がかからない分、運用上のメリットは大きいといえます。
受給制限がある
企業型DCで積み立てた資産は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。これは、老後の資産形成を目的とした制度であるため、途中で安易に引き出せないように設計されているためです。
一定の要件を満たさない限り、脱退や途中で資産を取り崩すことはできません。そのため、マッチング拠出は、短期的に必要となる資金とは別に、無理のない範囲で行うことが重要です。
企業によって制度差がある
企業型DCの制度は、導入している企業によって内容に差があります。例えば、掛金の上限額が異なる場合や、従業員が追加で掛金を拠出できる「マッチング拠出」の制度を採用しているかどうかが企業によって異なります。
掛金の法令上の上限は、他の企業年金制度がある場合はすべての掛金の合計が月額5万5000円、ない場合は月額5万5000円と定められていますが、実際に会社がどの程度拠出するかは企業ごとに異なります。
また、投資の運用商品は会社が選んだ運営管理機関を通じて提供されるため、提示される商品ラインナップが限定され、自分が希望する商品が含まれない場合もあります。
企業型確定拠出年金に「だまされるな」といわれる理由
企業型確定拠出年金はメリットの多い制度ですが、その特性を理解せずにいると、「だまされた」と感じるような落とし穴にはまってしまうことがあります。
見えない手数料(信託報酬)で資産が目減りする
運用商品を選ぶ際に、目に見えにくい手数料である「信託報酬」が資産を目減りさせる要因となることがあります。信託報酬は、投資信託を保有している間、日々差し引かれる費用であり、一見少額に見えても長期的に見ると大きな金額になる可能性があります。
運用管理手数料などの運営費用は会社負担となるケースが多いですが、信託報酬は運用商品ごとに異なり、加入者自身が選択する商品に含まれています。手数料が高い商品を選んでしまうと、せっかくの運用益が手数料によって相殺されてしまうこともあります。
退職・転職時の「自動移換」の落とし穴
企業型DCに加入している人が退職・転職する際、所定の手続きを行わないと、年金資産が「自動移換」されてしまうという落とし穴があります。
退職後や転職後に企業型DCの資産をiDeCoや他の企業型DCなどに移管しない場合、国民年金基金連合会に自動的に移管される状態を指します。この状態になると運用が停止され、管理手数料が継続的に発生するため、知らず知らずのうちに資産が目減りしてしまう可能性があります。
退職・転職時には速やかに資産を移管する手続き(iDeCoへの移換など)を行うことが大切です。
投資先の選択肢が少ないケースがある
企業型DCでは、企業が選定した運営管理機関が提供する運用商品ラインナップの中から、加入者が投資先を選びます。
しかし、企業や運営管理機関によっては、提供される商品数の選択肢が限られたり、低リスク商品や特定の投資信託に偏ったりする場合があり、個人のリスク許容度や投資目標に合った商品が見つからない可能性があります。
選択肢が少ない場合、自分の運用方針に合わない商品を選ぶことになり、期待通りの資産形成が難しくなる可能性があります。
出口戦略(受け取り方)を考えず税金で損をする
企業型DCは、60歳以降に一時金または年金として受け取ることになりますが、この「出口戦略」(受け取り方)を事前に考えておかないと、税金で損をしてしまう可能性があります。一時金には退職所得控除が、年金には公的年金等控除が適用され、それぞれ税制優遇の仕組みが異なります。
個人のライフプランや他の所得状況などによって、どちらの受け取り方が税金面で有利かは変わるため、受け取り方を考えずに選択すると、本来享受できたはずの税制優遇を最大限に活用できないことになります。
社会保険の等級が下がる場合がある
選択制DCを利用する場合、掛金は給与とみなされないため所得税や住民税がかからず社会保険料の計算から除外されます。
しかし一方で、拠出額に応じて社会保険料や給付の計算基礎となる標準報酬月額が下がるため、将来受け取れる厚生年金の額や、病気・出産時の傷病手当金・出産手当金の額が減少する可能性があります。
企業型確定拠出年金を賢く運用する4つのステップ
企業型確定拠出年金を有効活用し、将来のための資産をしっかり形成するためには、次の4つのステップを実践することが重要です。
ステップ1.自分の手数料と商品ラインナップを確認する
まず最初に行うべきは、自分が加入する企業型DCの手数料体系と、提供されている運用商品ラインナップを詳細に確認することです。
企業が選定した運営管理機関によって、管理手数料や提供される商品の種類、そして各商品の信託報酬は異なります。特に信託報酬は長期的な運用成績に大きく影響するため、必ず確認しましょう。
運用商品の説明書や運用報告書を確認し、どのような商品が提供されているのか、またその手数料がどの程度なのかを把握することが賢い運用の第一歩です。
ステップ2.自分に合った運用商品を選ぶ(ポートフォリオの考え方)
提供されている商品ラインナップを確認したら、次に自分に合った運用商品を選び、ポートフォリオを構築します。ポートフォリオとは、複数の運用商品を組み合わせて、自身の資産全体のリスクとリターンを最適化する考え方です。
初心者におすすめの商品の種類と選び方
企業型DCの運用が初めての場合や、投資経験が少ない場合は、手数料が低めでリスク分散可能な運用商品を選択しましょう。
例えば、世界中の株式や債券に分散投資できる「バランス型投資信託」や、特定の指数(例:日経平均株価、S&P500など)に連動する「インデックスファンド」などが挙げられます。
これらの商品は、個別銘柄を選ぶ手間が少なく、比較的低コストで分散投資ができるため、初心者でも始めやすいでしょう。商品を選ぶ際には、自身がどれくらいのリスクを取れるのか(リスク許容度)を把握し、長期的な視点で資産を増やすことを目指しましょう。
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ステップ3.マッチング拠出を積極的に活用する
企業型DCをさらに有利に活用したいのであれば、「マッチング拠出」の活用を積極的に検討しましょう。マッチング拠出とは、企業が拠出する掛金に加えて、従業員自身が掛金を上乗せして拠出できる制度です。
この制度の大きなメリットは、従業員が拠出する分の掛金が全額所得控除の対象となる点です。これにより、所得税と住民税が軽減されます。
拠出できる掛金には上限があり、「従業員が拠出する掛金の金額が、企業が拠出する掛金の金額を超えないこと」と「企業と従業員双方の掛金合計額が、法定の拠出限度額を超えないこと」という2つの要件を満たす範囲で拠出が可能です。
マッチング拠出の制度はすべての企業が採用しているわけではないため、勤めている会社の担当部署(総務・人事など)に確認してみましょう。また、マッチング拠出を利用する場合、iDeCoとの同時加入はできない点にも注意が必要です。
ステップ4.年に1度は運用状況を見直す(リバランス)
一度ポートフォリオを組んだら終わりではありません。年に1度など定期的に、運用状況を見直す「リバランス」を行うことが重要です。市場の変動によって、当初設定した資産の配分が崩れてしまうことがあります。
例えば、株式が大きく値上がりすると、ポートフォリオ全体に占める株式の割合が高くなり、リスクが増大する可能性があります。このような場合、値上がりした資産の一部を売却し、値下がりした資産を買い増すなどして、当初の資産配分に戻すのがリバランスです。
これにより、リスクを管理し、安定した資産運用を継続することができます。また、自身のライフステージの変化(結婚、出産、住宅購入など)に応じて、リスク許容度が変わることもあるため、その都度ポートフォリオを見直すことも大切です。
【Q&A】企業型確定拠出年金のよくある質問
企業型確定拠出年金に関するよくある質問にお答えします。
Q. 運用中に会社が倒産したら資産はどうなる?
企業型確定拠出年金の資産は、会社が倒産しても完全に保全されます。これは、確定拠出年金法により、年金資産は会社の財産とは完全に分離して管理されているためです。
具体的には、掛金は信託銀行などの資産管理機関に預けられ、個別の口座で管理・運用されています。これにより、万が一会社が倒産しても、債権者がその資産を差し押さえることはできません。
ただし、会社が倒産して加入者資格を失った場合、速やかに転職先のDC制度やiDeCoへの資産移換手続きを行うことが重要です。この手続きを怠り6ヶ月以上放置すると、資産は「自動移換」となり、運用は停止され、管理手数料で目減りするリスクがあります。
Q. お金が必要になったとき、運用途中で引き出すことはできる?
企業型確定拠出年金に積み立てた資産は、運用途中でお金が必要になったとしても、原則として引き出すことはできません。
これは、企業型確定拠出年金は老後の資産形成を目的とした制度であり、原則60歳以降になるまで資産の引き出しや途中の脱退、取り崩しはできないと定められているためです。
Q. iDeCoとの併用はできる?
企業型確定拠出年金とiDeCoの併用は可能です。
ただし、併用する際には拠出限度額に制限があります。企業型DCに加入している方のiDeCo拠出限度額は、「月額5万5000円-(各月の企業型DCの事業主掛金額 + 他の企業年金掛金相当額)」となり、上限は月額2万となります。
また、企業型DCでマッチング拠出を利用している場合、iDeCoに同時加入することはできません。状況に応じて、どちらの制度がより適しているか、あるいは併用するメリットがあるかを検討しましょう。
まとめ
企業型確定拠出年金は、手厚い税制優遇が魅力的な、老後資金形成に非常に有効な制度です。企業が掛金を拠出してくれ、運用益は非課税、受け取り時にも税制優遇が受けられるなど、メリットは多岐にわたります。
しかし、運用リスクは加入者自身が負うこと、原則60歳まで引き出せないこと、そして企業によって制度に差がある点には注意が必要です。
「だまされるな」といわれる理由の多くは、見えない手数料、退職・転職時の手続きの不備、会社任せの運用、そして出口戦略を考えないことによって生じる不利益にあります。これらの落とし穴を避けるためには、ご自身で積極的に制度を理解し、運用に関わっていく姿勢が不可欠です。
企業型確定拠出年金は、主体的に活用することで、将来の安心を着実に築き上げる強力な味方となります。ぜひこの記事で得た知識を活用して、将来の資産形成にお役立てください。
>>あなたは企業型DCをやるべき?最適な資産運用を診断
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西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。