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リーンFIREとは?支出別の必要金額や意外な落とし穴を分かりやすく解説

リーンFIREとは?支出別の必要金額や意外な落とし穴を分かりやすく解説

資産運用2025/10/17
  • #老後資金

≫あなたのリタイア後に必要な金額は?年収・資産から3分で診断

FIRE(経済的自立と早期リタイア)は、多くの人にとって魅力的な選択肢ですが、その中でも生活費を低く抑えながら自由を目指す「リーンFIRE」をご存知でしょうか。「少ない資産で早期に自由を得る」という強力なメリットがある一方で、生活水準の維持やインフレ対策など、特有の課題も存在します。

本記事では、リーンFIREの定義やフルFIREとの違い、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。また、あなたの年間支出から達成に必要な資金額をシミュレーションし、失敗しないためのリスク対策まで具体的にご紹介します。

この記事を読んでわかること
  • 生活費を低く抑えて早期リタイアを実現する「リーンFIRE」の基本的な定義
  • FIREの「4%ルール」に基づく、支出別・リーンFIREのシミュレーション
  • リーンFIRE特有のメリット・デメリット&落とし穴


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リーンFIREとは?

リーンFIREとは、生活費を低く抑えることを前提として、少ない資産でも早期リタイアを実現するライフスタイルを指します。

これは、資産運用から得られる収益だけで生活費の全てを賄うという点で、経済的自立の目標達成を意味する「完全FIRE」の1つです。

一般的なFIREと比べて必要な資金が少なくて済むのが最大の特徴であり、時間的な自由を最大限に追求し、贅沢な生活よりも早期の解放を優先する考え方に基づいています。

2つの「完全FIRE」フルFIRE vs リーンFIRE

生活費のすべてを資産収入で賄う「完全FIRE」は、リタイア後の生活水準によって大きく「フルFIREファットFIRE)」と「リーンFIRE」の2種類に分けられます。

フルFIREは、リタイア後も豊かな生活水準を維持することを目標とします。年間支出が一般的な生活水準よりも高い、あるいは同等であり、目標資産額も1億円以上となるのが一般的です。これにより、旅行や趣味、万が一の出費にも対応できる余裕を持てるのが特徴です。

一方のリーンFIREは、生活コストを最小限に抑え、必要な資産額を大幅に引き下げます。例えば、住居費や食費を徹底的に節約し、年間支出を抑えることで、より早い段階でのFIRE達成を目指します。

フルFIREが「豊かさ」を追求するのに対し、リーンFIREは「早期の自由」と「最低限の生活の保障」を優先するスタイルです。

その他のFIRE

資産収入だけで生活費を賄う「完全FIRE」以外にも、一部の収入を労働で得ることを前提とした多様なFIREの形が存在します。

サイドFIRE

サイドFIREは、資産運用からの収入で生活費の一部を賄いながら、残りを軽労働や趣味を兼ねた仕事で稼ぐライフスタイルです。

完全なリタイアではないため、リーンFIREやフルFIREに比べて必要な資産額はさらに抑えられます。自由な時間を持ちながら、適度な労働によって社会との接点を維持し、資産の目減りリスクも軽減できるというバランスの良さが魅力です。

バリスタFIRE

バリスタFIREはサイドFIREの一形態で、資産収入とパートタイム労働(例:カフェのバリスタのような精神的な負担の少ない仕事)からの収入で生活費を賄うスタイルを指します。

資産がまだ完全FIREを達成する水準ではないが、早期にフルタイム労働の重圧から解放されたい場合に選択されます。働き方によっては労働収入に加えて社会保障も受けることができるのが大きなメリットです。

コーストFIRE

コーストFIREとは、将来の老後資金(例:65歳時点での目標額)の準備が完了した状態を指します。若いうちに形成した資産を、あとは複利の力のみで育てて(Coast=航海させて)いけば目標額に達するため、以降は老後のための貯蓄や投資から解放されるという考え方です。

この目標額に達した後は、老後のための追加投資や貯蓄は不要となり、日々の生活費だけを労働で稼げばよくなります。これにより、労働時間を減らしたり、より好きな仕事に転職したりと、働き方の自由度を高めることができます。

リーンFIREのメリット

リーンFIREを選択することには、生活水準を抑えることと引き換えに、他のFIREにない独自のメリットが存在します。

少ない資産でFIREできる

リーンFIREの最大の魅力は、フルFIREと比較して圧倒的に少ない資産で達成が可能である点です。生活コストを極限まで下げることで、FIRE達成に必要な「目標資産額」を低く設定できます。

これは、より若いうちに、あるいはより短い期間で経済的自由を獲得できることを意味し、自由を追求するまでの期間における精神的な負担も軽減されます。目標資産額が低いことで、投資でリスクを取りすぎる必要もなくなり、精神的な安定につながります。

生活費ための労働・ストレスから解放される

資産収入が生活費のすべてを賄うため、会社での人間関係や残業、満員電車での通勤といった、生活を維持するための労働から発生するストレスから完全に解放されます。早期に自由な時間を得て、本当にやりたいこと、家族との時間を優先する生活を送ることが可能となります。

これは、労働の対価として得られる報酬よりも、時間の自由を重視するリーンFIREの根本的な考え方に基づいています。

サイドFIRE・バリスタFIREへの移行が容易

もしリーンFIREを達成した後に、将来的に生活水準を上げたい、あるいは資産の目減りリスクをさらに下げたいと感じた場合、サイドFIREやバリスタFIREへ容易に移行が可能です。

少しだけ労働による収入を得ることで、資産運用をより安定させたり、趣味や旅行などへの支出を増やしたりすることができます。

リーンFIREは、労働の有無の選択肢を残しつつ、他のFIRE形態への柔軟な足掛かりとなり得る点が強みです。

リーンFIREのデメリット

少ない資産で達成できるリーンFIREですが、その裏側には、生活水準を維持する上での特有の難しさも存在します。

余裕がなく、不測の出費に弱い

リーンFIREは生活費を極限まで切り詰めているため、資産運用において突発的な大きな出費が発生した場合に対応が難しくなります。

例えば、大きな病気や怪我、自動車の買い替え、住宅の大規模修繕など、予期せぬ支出が資産計画を狂わせる可能性があります。資産に余裕がない分、通常のFIRE以上にリスクに対する備え(緊急資金の確保など)をより厳密に行う必要があります。

物価高・インフレの影響が相対的に大きい

必要な資金額が少ないということは、資産運用によるリターンも相対的に少ないことを意味します。そのため、物価高やインフレが発生し生活費が上昇した場合、その影響を吸収する余力が小さくなります。

注意点

フルFIREであれば資産規模が大きいため多少の生活費の上昇は耐えられますが、リーンFIREではインフレが生活費の上限をすぐに超え、生活の維持を困難にするリスクが高まります。

特に生活必需品の値上がりが直撃しやすい点に注意が必要です。

FIREを断念したときに再就職の難易度が上がる

早期リタイア後に経済的な理由で生活が立ち行かなくなり、再就職を試みる場合、難易度が上がる可能性があります。

リタイア期間が長ければ長いほど、スキルや職務経験が陳腐化しやすく、特に40代以降での再就職は厳しい市場環境に直面することが予想されます。

生活費が低いゆえに、万が一の際のセーフティネットが手薄になりやすいのもリーンFIREのデメリットです。

過度な節約による精神的なストレス

リーンFIREの生活は、継続的な節約が前提となります。交際費や趣味・娯楽費を切り詰める生活が長期にわたると、社会的な孤立感や精神的なストレスを感じる可能性があります。

「何のために節約しているのか」という目的意識を失うと、日々の生活の満足度が著しく低下するリスクも考慮する必要があります。

リーンFIREに必要な資金額はいくら?

リーンFIREを達成するために具体的にいくら必要なのかは、多くの人が知りたい点でしょう。その計算には、FIREの根幹をなす「4%ルール」が適用されます。

FIREの「4%ルール」

FIREで目標資金額を計算する際に世界的に用いられるのが「4%ルール」です。これは、年間支出の25倍の資産を築き、その資産を年率4%で取り崩していくことで、資産が30年間以上枯渇しない可能性が高いという理論に基づいています。

この4%は、資産運用による期待利回り(例えば7%)からインフレ率(例えば3%)を差し引いた、実質的な取り崩し率を想定しています。目標資金額は「年間支出 × 25倍」で計算されます。

支出別リーンFIREに必要な金額

4%ルールに基づき、月の支出別にリーンFIREに必要な目標資産額をシミュレーションしてみましょう(この試算では、税金や社会保険料は考慮していません)。

月の支出が12万円の場合

実家を引き継いだ場合などで月の支出を12万円に抑えられる場合、年間支出は144万円です。これに4%ルール(25倍)を適用すると、必要な目標資産額は3600万円となります。

これは、生活費を極限まで切り詰めた、現実的なリーンFIREの目標値の一つです。年間の取り崩し額は144万円、月あたり12万円を想定します。

月の支出が15万円の場合

月の支出が15万円の場合、年間支出は180万円となり、目標資産額は4500万円です。月の支出15万円は、家賃の安い地方であれば、多少は趣味や交際費に回すことも可能な水準です。

この資産額であれば、達成までの期間は比較的現実的であり、多くの人がリーンFIREの目標として設定する目安となるでしょう。

月の支出が18万円の場合

月の支出を18万円と想定した場合、年間支出は216万円となり、目標資産額は5400万円です。この水準は、「不自由なく」というには心許ないですが、一定の節約ができれば、リタイア後も極端な我慢をせずに生活できる可能性があります。

ただし、資産額が増える分、達成までの期間は長くなります。

月の支出が20万円の場合

月の支出が20万円の場合、年間支出は240万円となり、目標資産額は6000万円です。この額は、一般的なフルFIREの目標額と比べると低いものの、リーンFIREの中では比較的余裕を持った水準です。

しかし、6000万円を資産運用だけで賄うには、4%ルールが抱えるリスクへの対策が不可欠となります。

>>リタイア後に必要な金額は?年収・資産から3分で診断

【要注意】シミュレーションは税・社会保険料を引かれる前の金額

上記のシミュレーションで計算された目標資産額は、あくまで税金や社会保険料を支払った後の「手取り額」を基準にしています。

実際には、資産を取り崩して得た利益(譲渡所得)には20.315%の税金がかかります。さらに、リタイア後は会社の健康保険から抜けて国民健康保険に切り替わるため、その保険料も全額自己負担となります。

加えて、原則として国民年金保険料の支払いも発生します。特に注意したいのが、リタイア翌年に請求される住民税です。住民税は前年の所得に対して課税されるため、リタイアした翌年は収入がないにもかかわらず、高額な税金を納めなければならないケースがあります。

したがって、実際にリーンFIREを目指す場合は、目標資産額を「年間支出(税・社会保険料込み)× 25」で計算し直すか、シミュレーションで算出した額に1.2〜1.3倍程度の余裕を持たせることが大切です。


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リーンFIREを目指す上で確認すべき「4%ルール」の落とし穴

4%ルールはFIREの基本ですが、特に生活費を切り詰めるリーンFIREにおいては、このルールに内在するリスクを深く理解しておくことが重要です。

目標資産額が低い分、小さな想定外が致命的になりかねず、この落とし穴が命取りになる可能性もあります。

米国市場を前提としている

4%ルールは、1998年に米国で発表された研究(トリニティスタディ)に基づいており、米国の株価市場の過去のデータが前提となっています。この結果が、将来の日本市場や米国市場以外の市場においても、同様の安定性や高いリターンを保証するものではありません。

特に、歴史的に低金利環境が続いている日本の市場状況では、4%の取り崩し率では資産の枯渇リスクが米国市場を前提とした場合よりも高まる可能性があります。

「引き出し順のリスク」がある

FIRE達成直後など、資産取り崩しの初期段階で大きな市場の下落(暴落)が発生した場合、資産全体の回復が難しくなるリスクがあります。これを「引き出し順のリスクSequence of Returns Risk)」といいます。

資産が少ないリーンFIREの場合、初期の暴落で資産が大きく目減りすると、その後の生活の維持が困難になる可能性が高まります。

このリスクへの有効な対策として、「現金クッション」を準備することが挙げられます。これは、生活費の2〜3年分を、投資資産とは別に現金で確保しておく戦略です。

市場が暴落した際にはリスク資産を売却せず、この現金クッションから生活費を賄うことで、資産が回復するのを待つ時間的余裕が生まれます。

税金が考慮されていない

4%ルールの計算では、資産を売却・引き出しする際に発生する税金(譲渡所得税など)や社会保険料が考慮されていません。

例えば、日本における株式などの売却益には約20%の税金がかかります。税金を考慮せずに年間支出の25倍を目標とすると、実際の手取り額が不足する事態になりかねません。

特にリーンFIREでは、税金社会保険料の支払いが、生活費に対する比率として大きな負担となることがあります。

リーンFIREに関するQ&A

リーンFIREに関するよくある疑問とその回答をご紹介します。

Q. リーンFIREとはどういう意味?

リーンFIRE(Lean FIRE)とは、直訳すると「倹約型の経済的自立と早期リタイア」を意味します。

これは、生活費を極限まで低く抑え、必要最低限の資産(年間支出の約25倍)を運用収益だけで賄うことで、早期に労働から解放されることを目指すライフスタイルです。贅沢をしない代わりに、時間的な自由を最大限に追求します。

Q. サイドFIREやバリスタFIREとの違いは?

リーンFIREは「完全FIRE」であり、生活費の全てを資産収入で賄うことを目標としています。

これに対し、サイドFIREやバリスタFIREは、資産収入だけでは生活費の全てを賄えず、不足分を労働による収入(パートタイムや軽労働)で補う「労働を伴うFIRE」に分類されます。リーンFIREのほうがより早い段階での労働からの解放を目指しますが、その分、生活の柔軟性は低くなります。

Q. リーンFIREにはいくら必要ですか?

リーンFIREに必要な資金額は、あなたの年間支出によって決まります。計算方法は、FIREの「4%ルール」に基づき、年間支出の25倍を目標とします。

例えば、月の支出が15万円(年間180万円)であれば、目標資産額は4500万円が必要です。この金額はあくまで目標値であり、インフレや税金を考慮すると、これより多くの資金を準備することが推奨されます。

まとめ

リーンFIREは、徹底的に支出を管理し、少ない資産で早期に労働から解放されるという、強力なメリットを持つ経済的戦略です。フルFIREと比べて、より短期間で達成できる可能性があるため、時間の自由を最優先する人にとっては非常に有効な選択肢となります。

しかし、リーンFIREを成功させるためには、その前提となる「4%ルール」に潜むリスクを理解し、対策を講じることが不可欠です。

特に、物価高やインフレの影響を受けやすいこと、初期の市場暴落(引き出し順のリスク)に弱いこと、そして税金が考慮されていない点には細心の注意を払う必要があります。

リーンFIREを達成するためには、まず自身の年間支出を正確に把握し、その25倍を目標資産額として設定することから始めましょう。さらに、不測の事態に備えた現金ポジションの確保や、再就職の可能性を考慮したスキル維持の努力も重要となります。


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監修
高橋 明香
  • 高橋 明香
  • ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者

みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。

記事一覧

執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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