
FIREとは?実現に投資が不可欠な理由と達成までのロードマップを解説
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FIREとは、単なる早期リタイアではなく、投資を通じて経済的自立を達成し、労働からの自由を得る生き方です。
本記事では、FIRE(Financial Independence, Retire Early)の定義や目標額の計算方法、そして実現に不可欠な「4%ルール」を日本の制度に落とし込んで解説します。あなたの早期リタイア計画を具体化するため、NISAの活用法から、目標達成後の資産の取り崩し方まで、ロードマップ形式で徹底的に解説します。
- FIREの定義と主要な4類型について
- 「4%ルール」に基づき、目標達成に必要な資産額を計算する方法
- FIREを達成するための具体的な投資戦略ロードマップ
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FIREとは「経済的自立と早期リタイア」を目指す生き方
FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは、経済的な自立(Financial Independence)を達成した上で、早期リタイア(Retire Early)を実現するライフスタイルを指します。
FIREの核は、単に会社を辞める(=リタイアする)ことではなく、「経済的自立」にあります。経済的自立とは、生活費を労働収入に依存せず、投資によって得られる資産収入(配当金や資産の取り崩し益など)で賄える状態を意味します。
「生活のために働く」必要がなくなることで、時間的な自由や場所的な自由、さらに人間関係の自由を手に入れることを目的とします。
FIREを実現するには、まず高額な貯蓄が必要だと誤解されがちですが、本質は資産形成と運用です。経済的自立を達成し、資産収入だけで生活費を賄える状態を構築することがFIREの目標となります。
FIREの4つの種類
FIREは一律のものではなく、目指す生活水準や労働との関わり方によって、主に以下の4つの種類に分けられます。
フルFIRE(ファットFIRE)
投資資産からの収入のみで、贅沢を含む十分な生活水準を維持できる状態を目指します。目標資産額が高くなるため、早期の達成難易度は高いものの、達成後は労働から完全に解放され、もっとも自由度の高い生活を送ることが可能です。
リーンFIRE
徹底した節約を行い、生活費を極限まで抑えることで、最低限の生活に必要な資産収入のみで暮らすスタイルです。4つのFIRE類型の中でも目標資産額がもっと低いタイプですが、生活の質(QOL)を大きく犠牲にする可能性があるため、継続的な節約マインドが不可欠です。
サイドFIRE
投資資産からの収入だけでは生活費全てを賄えないものの、不足分をアルバイトやフリーランスといった比較的負荷の少ない労働(サイドビジネス)で補うスタイルです。フルFIREよりも目標とする資産額が低くなるため、達成難易度が下がり、早期実現しやすいという特徴があります。
バリスタFIRE
投資資産収入と、医療保険や社会保険などの福利厚生を得るためのパートタイム労働を組み合わせるスタイルです。資産からの収入に加え、精神的な余裕や社会とのつながりを維持しながら、早期リタイア生活を送ることを目指します。バリスタ(カフェで働く人)のように、好きな仕事を選んで働くことに由来します。
サイドFIREとバリスタFIREは副収入を必要とする点で、似た概念といえます。
大きな違いは、労働収入に加えて社会保障も享受するか否かです。サイドFIREは個人事業を主とするため、時間の自由度が高い反面、社会保障は期待しないFIREです。
一方のバリスタFIREでは雇用される立場となり、一定の労働の拘束を受け入れる代わりに社会保障のメリットを享受するFIREであるといえます。
FIRE達成の鍵「4%ルール」と目標額の計算方法
FIREを達成するために目標とすべき資産額を算出するもっとも重要な指標が「4%ルール」です。
4%ルールは、アメリカのトリニティ大学による研究に基づいています。このルールでは、投資資産の年間合計額の4%を毎年取り崩して生活費に充てた場合、資産が30年以上持続する確率が非常に高いとされています。
つまり、「年間生活費 ÷ 4% = 必要なFIRE達成資産額」という計算が成り立ちます。これは、いい換えると年間支出の25倍の資産を築けば、理論上、資産が尽きることなく生活できることを意味します。
生活費別・必要額シミュレーション
4%ルールを用いて、日本の一般的な生活費を想定し、FIRE達成に必要な資産額をシミュレーションします。
上記のように、月間の生活費が20万円(年間240万円)であれば、目標資産額は6000万円となります。
目標資産額が高くなればなるほど達成までの期間は長くなりますが、生活の自由度は高くなります。逆にいうと、生活費をコントロールできれば、FIREのハードルもある程度コントロールできるということでもあります。
FIREを目指すためには、まず自身の生活コストを正確に把握し、上記のようなシミュレーションを通じて、目標資産額を具体化することが最初の一歩となります。
FIREの実現には「投資」が不可欠。その理由は?
FIREの達成には、貯金だけでなく「投資」が不可欠といえます。これは、貯金だけで目標資産額(数千万円〜1億円超)を積み上げるのは極めて難易度が高いためです。以下で投資が不可欠な理由を詳しく解説します。
複利効果で達成を早められるから
FIREに投資が不可欠な最大の理由は、複利効果を利用できる点にあります。複利とは、投資によって得られた収益を元本に組み入れ、それを再投資することで、雪だるま式に利益が利益を生む仕組みのことを指します。
例えば、年間4%の利回りを目指した場合、貯金のように元本に対する利息だけを得る単利運用に比べ、複利運用は時間が経つほど加速度的に資産を増やします。
特にFIREで求められる数十年単位の長期的な資産形成において、複利効果は非常に強力な味方となり、目標達成期間を大幅に短縮することができます。
インフレリスクをカバーできるから
日本円の貯金だけを続ける場合、インフレ(物価上昇)リスクに対応できません。インフレとは、モノやサービスの価格が上昇し、お金の価値が相対的に下がることをいいます。
例えば、年2%のインフレ率が続いた場合、1000万円の貯金は10年後には実質的に約820万の価値しか持ちません(計算:1000万円 / (1 + 0.02)^10)。資産を増やすどころか、実質的な購買力は目減りしてしまいます。
株式や不動産といった資産は、インフレに伴い資産価値も上昇する傾向があるため、これらに投資することでインフレによる実質的な資産価値の目減りを防ぎ、購買力を維持・向上させる手段となります。
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働かずに収入を得る仕組みを作れるから
FIREの定義である「経済的自立」は、労働から解放されることを意味します。この実現には、自分が働かなくても継続的に収入を生み出す仕組みが必要です。
投資は、この不労所得(資産収入)を生み出すもっとも主要な手段です。株式の配当金、投資信託の分配金、または家賃収入などは、自分が身体を使って労働することなく、資産が自動的に生み出すキャッシュフローです。
この資産収入が年間生活費を上回る状態こそが、経済的自立、すなわちFIRE達成の状態です。投資を通じてこの仕組みを早期に構築することが、非常に重要です。
FIREを目指すための具体的な投資戦略ロードマップ
ここでは、FIRE達成に向けた具体的な資産形成のステップを解説します。
ステップ1.現状把握と資金捻出
まず、現在の収支を正確に把握し、毎月の貯蓄額を計算します。これにより、FIRE達成に必要な目標資産額(上記で計算した25倍の金額)に対して、どれくらいの期間が必要かという概算が可能です。
特に重要なのは「入金力」、つまり投資元本を多く生み出す力です。生活費の見直し(固定費削減が最優先)、家計の断捨離、副業による収入源の確保などを徹底し、貯蓄率(手取り収入に対する貯蓄・投資に回す割合)を最大限に高めます。貯蓄率が高いほど、FIRE達成までの期間を短縮することができます。
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ステップ2.非課税制度のフル活用
資金を捻出できたら、次は税制上の優遇措置がある非課税制度を最大限に活用します。
NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、投資で得られた利益(売却益や配当金など)が非課税になる制度です。通常、投資で利益を得た場合、約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で運用すれば、この税金がゼロになります。
NISAは2024年に制度が新しくなり、非課税保有期間が無期限化された他、生涯投資枠が1800万円に拡大されました。この制度は、長期的な資産形成を目指すFIRE戦略において、もっとも優先すべき運用枠です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、私的な年金制度であり、以下の3つの税制メリットがあります。
- 掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減される(節税効果)
- 運用益が非課税になる
- 受け取り時にも一定額まで税制優遇がある
ただし、iDeCoは原則60歳まで資金を引き出せないという制約があります。早期リタイアを目指すFIREの観点からは流動性に欠けますが、強力な節税メリットと、60歳以降の生活資金を確保する目的で、NISAに次いで活用を検討すべき制度といえます。
ステップ3.コア・サテライト戦略によるポートフォリオ構築
FIRE達成のための投資ポートフォリオ構築では、コア・サテライト戦略が有効です。
コア(核)資産
資産全体の大部分(7〜9割)を占め、長期・積立・分散投資を基本とします。世界市場に連動するインデックスファンドなど、低コストで広範囲に分散された商品を中心に構成します。コア資産は、その名の通り、安定的な成長と複利効果を最大限に享受するための核となります。
サテライト(衛星)資産
資産全体の一部(1〜3割)を占め、高いリターンを狙うための個別株やテーマ型ETF、またはコモディティなどで構成します。リスクは高いものの、コア資産の成長を補完し、より早いFIRE達成を目指すためのスパイスとなります。
この戦略により、リスクを抑えつつ安定的な成長を目指し、同時に積極的なリターンも追求するバランスの取れた運用が可能になります。
ステップ4.定期的なリバランス
リバランスとは、時間の経過や市場の変動によって崩れた資産配分の比率を、当初設定した目標の比率に戻す作業です。
例えば、目標として「株式80%、債券20%」と設定していたポートフォリオが、株式市場の好調により「株式90%、債券10%」になってしまった場合、株式を売却し、債券を買い増すことで、元の比率に戻します。
リバランスを定期的に行うことで、リスク許容度を超えた運用になることを防ぎ、感情的な売買を防ぐことができます。FIRE達成を目指す長期投資家にとって、リバランスは目標達成に向けた航路を逸脱しないための重要なメンテナンス作業です。
FIREの「出口戦略」~資産の取り崩し方~
FIREを達成し、労働を辞めた後、どのように資産を切り崩して生活費を賄うか、この戦略を「出口戦略」と呼びます。主な取り崩し方法には、定額取り崩しと定率取り崩しの2種類があります。
定額取り崩し
定額取り崩しとは、資産の残高に関わらず、毎年、必要な生活費と同額を一定額で引き出す方法です。
メリット
毎年受け取る金額が変わらないため、家計の予算管理が容易になります。特に生活費が定まっている場合や、キャッシュフローの予測可能性を重視する方に適しています。
デメリット
市場が下落している時期に定額で取り崩しを続けると、資産の減少が加速し、「資産の寿命」が短くなるリスクがあります。特にリタイア直後の市場下落期には注意が必要です。
定率取り崩し
定率取り崩しとは、資産の残高に対して、あらかじめ決めた一定の割合(例:4%)を取り崩す方法です。
メリット
資産残高に応じて取り崩し額が変わるため、市場が下落している局面では取り崩し額が減り、資産の目減りを防ぎやすくなります。資産の寿命を延ばす効果が期待できます。
デメリット
市場が好調な年には生活費が増えますが、市場が低迷した年には生活費も減少するため、年間の生活費が不安定になり、予算管理が難しくなる可能性があります。
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FIRE・投資に関するよくあるQ&A
FIREや投資に関するよくある質問と回答をまとめました。
Q. FIREするにはいくら貯めればいい?
FIREに必要な金額は、目指すライフスタイル(フルFIREかリーンFIREかなど)や、毎月の生活費に依存するため、一概に「いくら」とは断定できません。
一般的な目標金額は「4%ルール」に基づき、「年間生活費の25倍」となります。例えば、年間生活費が300万円であれば、必要な貯蓄額は7500万円です。まずは徹底した現状把握と、月々の生活費を抑えることが、必要額を減らす最大のカギとなります。
Q. FIREに向いているのはどんな人?
FIREに向いているのは、単に収入が高い人ではなく、以下の特徴を持つ人です。
- 節約や効率的な支出管理に意欲がある人:収入の多寡にかかわらず、貯蓄率を高める意志が強い人
- 長期的な視点を持ち、短期的な変動に動じない人:投資は短期で成果が出るものではないため、市場の浮き沈みに耐え、計画を継続できる人
- 労働から解放された後の目標が明確な人:リタイア後に時間を持て余さず、趣味や社会貢献など明確な活動目標を持っている人
Q. 40代からでもFIREは目指せる?
40代からでもFIREを目指すことは十分に可能です。FIRE達成に必要な時間は、年齢よりも「貯蓄率」と「投資利回り」によって決定されます。
40代は、20代や30代に比べて資産形成期間が短くなりますが、その分、すでに高収入を得ているケースや、退職金などのまとまった資金を投入できる可能性があります。
もし目標達成までの期間が短いと感じる場合は、フルFIREではなくサイドFIREやバリスタFIREのように、目標資産額を下げて早期に自由度を高めるスタイルを検討することが現実的です。
まとめ
FIREとは、投資を通じて経済的自立を達成し、労働から解放される生き方です。
FIRE実現のポイントは、「4%ルール」に基づき、年間生活費の25倍の目標資産額を設定することにあります。この目標達成を現実的にするには貯金では難しく、複利効果を活用した投資が不可欠です。
FIRE達成に向けた具体的なロードマップは以下の通りです。
- 現状を把握し、節約と副業で資金を最大限に捻出する
- NISAやiDeCoといった非課税制度をフル活用する
- コア・サテライト戦略でリスクを抑えたポートフォリオを構築し、定期的なリバランスを行う
FIREは決して夢物語ではありません。計画的な行動と制度の有効活用によって、誰でも目指せる目標です。まずは現状の生活費を見直し、目標資産額を具体化することから始めましょう。
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監修
高橋 明香
- ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者
みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。