企業年金のおすすめの受け取り方は?一時金・年金のメリット・デメリットを解説
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「企業年金は一時金と年金、どっちで受け取るのがお得なの?」
「税金や手取り額はどう変わるの?」
そんな疑問をお持ちではありませんか?企業年金の受け取り方は、老後の生活設計に大きく関わる重要な選択です。一方で、制度や税金が複雑で分かりにくいと感じる方も少なくないようです。
この記事では、企業年金の受け取り方である「一時金」と「年金」のそれぞれの仕組み、税金の違い、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。ご自身の状況に合わせて最適な受け取り方を見つけるためのヒントを提供しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 企業年金の種類と自分の加入状況の確認方法
- 企業年金の3つの受け取り方(一時金・年金・併用)のメリット・デメリット
- 税金の違い(退職所得控除・公的年金等控除)とシミュレーション
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企業年金は2種類。まずは自分の企業年金タイプを確認
企業年金には、主に「確定給付企業年金(DB)」と「企業型確定拠出年金(DC)」の2種類があります。受け取り方の選択肢やルールが異なるため、まずはご自身がどちらの制度に加入しているかを確認することが重要です。
確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金(Defined Benefit Plan、DB)は、将来受け取る年金額が、加入期間や給与水準などに基づいてあらかじめ定められている制度です。
多くの場合、企業が掛金を拠出し、運用・管理も企業側の責任で行います。したがって、加入者自身が運用リスクを負うことは基本的にありません。従来の厚生年金基金や適格退職年金に代わり、2000年代になって企業年金の中心的役割を占めるようになりました。
受け取り方は、規約により一時金のみ、年金のみ、または両方選択可能かなどが定められています。
(参考:確定給付企業年金制度|厚生労働省)
企業型確定拠出年金(DC)
企業型確定拠出年金(Defined Contribution Plan、DC)は、企業が拠出した掛金を加入者自身が運用し、その運用成果によって将来の受取額が変動する制度です。
掛金の拠出限度額は他の企業年金の加入状況などによって異なります。加入者は提示された運用商品の中から、自分の判断で資産配分を決定します。
運用次第で受取額を増やせる可能性がある一方、運用リスクは加入者自身が負うことになります。
受け取り方は、原則として一時金、年金、またはその併用が可能です。
(参考:確定拠出年金制度|厚生労働省)
自分の加入状況を確認する方法
ご自身がどちらの企業年金に加入しているか、またその詳細な内容を確認するには、以下の方法があります。
勤務先の担当部署に確認する
もっとも確実な方法は、勤務先の人事部や総務部など、企業年金制度を担当する部署に直接問い合わせることです。制度の種類、加入状況、規約の詳細などを確認できます。退職が近い場合は、受け取り手続きについても案内してもらえるでしょう。
給与明細を確認する
企業型確定拠出年金(DC)の場合、毎月の掛金額が給与明細に記載されていることがあります。「確定拠出年金掛金」や「DC掛金」といった項目がないか確認してみましょう。
確定給付企業年金(DB)からのお知らせを確認する
確定給付企業年金(DB)に加入している場合、制度を運営する企業年金基金(基金型)や企業(規約型)から、年に1回程度、加入状況や年金資産に関するお知らせが郵送などで届くことが一般的です。過去の通知書類を確認してみましょう。
企業型確定拠出年金(DC)の加入者向けWebサイトを確認
企業型確定拠出年金(DC)の加入者には、通常、専用のWebサイトが用意されています。このサイトで、現在の資産残高、運用状況、掛金の拠出状況などを確認できます。ログイン情報が不明な場合は、勤務先の担当部署に確認しましょう。
企業年金の3つの受け取り方
企業年金の受け取り方には、主に「一時金」「年金形式」「一時金と年金形式の併用」の3つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身のライフプランに合った方法を選びましょう。
1.一時金で受け取る
退職時に、それまでの積立金や運用益を一度にまとめて受け取る方法です。
メリット
住宅ローンの一括返済やリフォーム、子供の教育資金など、まとまった資金需要に対応できます。また、税制面で「退職所得控除」という大きな控除が適用され、税負担が軽減される可能性があります。
デメリット
一度に大きな金額を受け取るため、計画的に使わないと浪費する可能性があります。また、退職所得控除額を超える部分には所得税・住民税がかかり、退職金と合算されると税負担が大きくなることもあります。
2.年金形式で受け取る
一定期間(例:5年、10年、20年など)または終身にわたって、分割して定期的に受け取る方法です。
メリット
公的年金に上乗せする形で、毎月または毎年など定期的な収入源となり、老後の生活費を安定させることができます。特に企業型DCの場合、年金として受け取る間も残りの資産を運用し続けられる可能性があります。
デメリット
年金収入は「雑所得」として扱われ、公的年金等控除の対象となりますが、他の所得と合算して所得税・住民税が課税されます。
また、年金額によっては、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料が増加する可能性もあります。
3.一時金と年金形式を併用する
受け取る企業年金の一部を一時金で受け取り、残りを年金形式で受け取る方法です。制度によっては併用が認められない場合もあります。
メリット
当面のまとまった資金需要(一時金)と、将来の安定収入(年金)の両方を確保できます。また、税制面でも、退職所得控除と公的年金等控除の両方を活用できる可能性があります。
デメリット
手続きが一時金のみの場合、年金のみの場合よりも複雑になることがあります。また、税金の計算もやや複雑になる点がデメリットといえます。
【ケース別】企業年金のおすすめの受け取り方
どの受け取り方が最適かは、個人の状況やライフプランによって異なります。ここでは、ケース別に考えられるおすすめの受け取り方を紹介します。
一時金で受け取るのがおすすめのケース
以下のような人は一時金で受け取るのがおすすめです。
・家のリフォームや建て替えを予定している人
・子供の学費や結婚資金など、まとまった支出が近い将来に見込まれる人
・独立・起業するための資金が必要な人
・自分で資産運用をしたいと考えている人
・勤続年数が長く、退職所得控除額が大きい人
一時金は、まとまった資金が必要な場合に有効です。ただし、受け取った後の資金計画をしっかり立てることが重要です。
年金形式で受け取るのがおすすめのケース
以下のような人は年金形式で受け取るのがおすすめです。
・大きな資金需要は特になく、計画的にお金を使いたい人
・企業型DCで、年金受給中も運用を継続したい人
・退職所得控除の枠を退職金で使い切ってしまう人
年金形式は、老後の安定した生活基盤を作りたい場合に適しています。
一時金と年金形式の併用がおすすめのケース
以下のような人は一時金と年金形式の併用で受け取るのがおすすめです。
・一時金のメリット(退職所得控除)と年金形式のメリット(公的年金等控除)の両方をバランスよく活用したい人
・将来の状況変化に備えて、受け取り方に柔軟性を持たせたい人
・税負担を分散させたいと考えている人
併用は、一時金と年金の「いいとこ取り」ができる可能性がある選択肢ですが、制度的に可能かどうか、また手続きや税金がどうなるかを事前に確認することが大切です。
将来資金が気になるあなたへ
この先、お金の不安なく暮らすために、老後資金の必要額を早めに把握して準備を始めましょう。マネイロでは、将来資金の準備をかんたんに進められる無料ツールを利用できます。
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▶年金の基本と老後資金準備:年金を増やす方法や制度の落とし穴を学ぶ
税金はどう違う?一時金vs年金受け取り方別シミュレーション
受け取り方によって税金の計算方法が大きく異なります。どちらが有利かは一概にはいえませんが、基本的な仕組みを理解しておきましょう。
一時金にかかる税金(退職所得)
一時金で受け取る場合、税法上「退職所得」として扱われます。
退職所得は、長年の勤労に対する報償的な意味合いから、他の所得と分離して税額が計算され、税負担が軽減される配慮がなされています。その大きな柱が「退職所得控除」です。
なお、この退職所得控除については、勤続年数による有利不利を是正する方向での見直しが政府内で議論されています。今後の税制改正の動向に注意が必要です。
退職所得控除の計算方法
退職所得控除額は勤続年数に応じて以下の通り計算されます。
なお、課税退職所得金額は以下の計算式で算出します。
この課税退職所得金額に所得税率を乗じて所得税額を計算します(別途、復興特別所得税と住民税もかかります)。
具体的な税額シミュレーション例
例として、勤続30年、退職一時金2000万円の場合でシミュレーションしてみましょう。
・課税退職所得金額:(2000万円-1500万円)×1/2=250万円
・所得税額(速算表より):250万円×10%-9万7500円=15万2500円
・復興特別所得税:15万2500円×2.1%=3202円(1円未満切り捨て)
・住民税額:250万円×10%=25万円
・合計税額:15万2500円+3202円+25万円=40万5702円
※上記は概算。実際の税額は個別の状況により異なります。
年金にかかる税金(雑所得)
年金形式で受け取る場合、公的年金等に係る「雑所得」として扱われます。毎年受け取る年金額から「公的年金等控除」を差し引いたものが雑所得となり、他の所得(給与所得など)と合算して総所得金額を求め、所得税・住民税が計算されます。
(参考:公的年金等の課税関係|国税庁)
雑所得の計算方法
公的年金等控除額は、受給者の年齢と公的年金等の収入金額で決まります。65歳未満の人は60万円(収入130万円未満)、65歳以上の人は110万円(収入330万円未満)です。
なお、公的年金に係る雑所得は以下の計算式で求めます。
他の所得との合算、税金・社会保険料への影響
年金所得(雑所得)に給与所得や事業所得など他の所得を合算して総所得金額を計算し、累進課税(所得が多いほど税率が高くなる)を適用します。そのため、他に収入が多い場合は税負担が重くなる可能性があります。
また、所得が増えることで、国民健康保険料(75歳未満の場合)や後期高齢者医療保険料(75歳以上の場合)、介護保険料の負担額が増える可能性があります。さらに、医療費の自己負担割合(1割・2割・3割)にも影響することがあります。
具体的な税額シミュレーション例
例として、65歳以上、公的年金収入200万円、企業年金100万円(合計300万円)、他に所得なしの場合でシミュレーションしてみましょう。
・雑所得:(200万円+100万円)-110万円=190万円
・所得税額(基礎控除などを考慮せず単純計算):190万円×5%=9万5000円
・住民税額(基礎控除などを考慮せず単純計算):190万円×10%=19万円
・合計税額(概算):約28万5000円
※実際には社会保険料控除や各種控除(基礎控除、配偶者控除など)により変動します。社会保険料の負担増も考慮する必要があります。
結局どっちがお得?税金面での比較ポイント
税金面だけで見ると、以下の点が比較ポイントになります。
どちらが絶対的に得とは言えず、個々の状況に応じたシミュレーションと比較検討が不可欠です。不安がある場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもよいでしょう。
企業年金の受け取り方に関するQ&A
企業年金の受け取り方に関して、よくある質問とその回答をまとめました。
Q. 企業年金は一時金と年金形式、どちらの受け取り方が得?
一概にどちらが得とはいえません。個人の状況(勤続年数、退職金の総額、退職後の収入見込み、健康状態、ライフプランなど)によって有利不利が大きく変わるためです。
ただし、税制面では、勤続年数が長いほど「退職所得控除」の額が大きくなるため、一時金で受け取る方が税負担を抑えられるケースが多い傾向にあります。一方で、老後の安定収入を重視する場合や、計画的な資金管理をしたい場合は年金形式にメリットがあります。
両方のメリットを活かせる併用も選択肢です。ご自身の状況を整理し、必要であれば専門家への相談も検討しながら、最適な方法を選択することが重要です。
Q. 企業年金と厚生年金は両方もらえる?
両方とも受け取れます。
企業年金(DBやDC)は、企業が任意で設ける私的年金制度であり、厚生年金は国の公的年金制度の一部です。両者は全く別の制度であり、それぞれの受給要件を満たしていれば、両方から年金を受け取ることが可能です。
多くの会社員は、老後に厚生年金と企業年金の両方を受け取ることになります。
(参考:日本の年金制度の体系|企業年金連合会)
Q.企業年金は一生涯もらえる?
受け取り方が「終身年金」であれば、一生涯受け取れますが、そうでない場合もあります。
確定給付企業年金(DB)
制度の規約によります。終身年金を選択できる場合もありますが、「10年確定年金」のように期間が決まっている有期年金のみの場合もあります。
企業型確定拠出年金(DC)
原則として、積み立てた資産を取り崩していく形になるため、一時金または有期年金(5年~20年の間で選択など)での受け取りが一般的です。終身年金として受け取れる商品は限定的です。
ご自身の加入している制度の規約を確認することが重要です。
まとめ
企業年金の受け取り方は、老後の生活設計において非常に重要な選択です。主な受け取り方である「一時金」と「年金形式」、「併用」には、それぞれメリット・デメリット、そして税金の扱い方に違いがあります。
どの方法が最適かは、ご自身の勤続年数、退職金の額、老後のライフプラン、健康状態、税金・社会保険料の負担などを総合的に考慮して判断する必要があります。まずはご自身の企業年金制度の種類(DBかDCか)を確認し、受け取り方の選択肢やルールを把握しましょう。
不明な点や判断に迷う場合は、勤務先の担当部署や、税理士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するとよいでしょう。
将来資金が気になるあなたへ
この先、お金の不安なく暮らすために、老後資金の必要額を早めに把握して準備を始めましょう。マネイロでは、将来資金の準備をかんたんに進められる無料ツールを利用できます。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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