
FIREはやめとけ?そういわれる理由とよくある失敗パターンを解説
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「早期リタイアして自由な生活を送りたい」とFIREに憧れを抱く一方で、「やめとけ」という声をSNSなどで見聞きして不安になっている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、FIRE達成後によくある失敗パターンや、失敗しやすい人の特徴を徹底解説します。デメリットを正しく理解し、本当にFIREを目指すべきなのかを冷静に判断できるようにしましょう。
- FIREのよくある失敗パターン7つ
- FIREで後悔・失敗する人に共通する特徴
- 後悔しないFIREを実現するための重要戦略
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FIRE(Financial Independence, Retire Early)とは?
FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった言葉で、「経済的自立と早期リタイア」を意味する話題のライフスタイルです。
具体的には、資産運用によって得られる資産収入(配当金や家賃収入など)で日々の生活費を賄える状態を築き、定年を待たずに会社などのフルタイム労働から解放されることを目指します。
従来の貯蓄や退職金を取り崩して生活する早期リタイアとは異なり、FIREは資産元本を維持、あるいは長持ちさせながら運用益で生活する点が大きな特徴です。これにより、長期的に安定した生活基盤を築くことが可能とされています。
なぜ「FIREはやめとけ」といわれる?よくある7つの失敗
そんなFIREですが一部では「やめとけ」といった声が挙がることもあり、その「落とし穴」は多岐にわたります。ここでは、FIREを目指す上で知っておくべき、よくある7つの失敗パターンを具体的に解説します。
失敗1.想定外の支出やインフレで資産が尽きる
FIRE計画における最大の誤算の一つが、想定外の支出です。人生には、結婚や出産、子供の教育費、住宅の購入やリフォーム、親の介護費用など、予測が難しい大きな出費が伴います。
月々の生活費のみを試算し、これらのライフイベント費用を計画に盛り込んでいないと、その都度資産を取り崩すことになり、計画が根本から崩れる危険性があります。
さらに、インフレ(物価上昇)も無視できないリスクです。FIREの資産計画は、特定の物価上昇率を前提に立てられますが、それを上回るインフレが発生すると、資産の実質的な価値は目減りします。同じ金額でも購入・利用できるモノやサービスが減るため、生活水準を維持するためには計画以上の資金が必要となり、結果的に資産の枯渇を早めてしまうことになります。
失敗2.投資リターンの過大な期待
FIRE計画の根幹をなす資産運用ですが、リターンに対する過大な期待は失敗の元になります。FIREにおける資金計画が、資産の永続的な成長をベースに考えられている場合(特にリターンが楽観的な試算に基づいている場合)、市況が悪くなった途端に計画が崩れ去ることにもなりかねません。
投資のリターンを想定しておくことは非常に重要ですが、リターンは毎年一定ではありません。資産が減少した局面で生活費のための資産取り崩しを行った場合、元本が大きく減少し、その後の回復がより困難になるという悪循環に陥るリスクもあります。
FIRE後の資金計画は、保守的かつ現実的な想定を行うことが成功の可能性を高めるポイントです。
失敗3.社会的信用(ローンや賃貸契約)を失う
会社員という立場を離れることは、毎月の給与だけでなく「社会的信用」を失う可能性も意味します。この影響が顕著に現れるのが、ローンや賃貸物件の契約です。
金融機関は融資の審査において、返済能力を測るために収入の安定性を重視します。そのため、定期的な給与収入がないFIRE達成者は、住宅ローンや自動車ローンなどの審査に通りにくくなるのが一般的です。
十分な資産があったとしても、安定したキャッシュフローがないと判断されれば、融資を断られるケースも少なくありません。同様に、賃貸物件を借りる際の入居審査でも、無職であることが不利に働く可能性があります。
失敗4.「やることがない」時間を持て余し、幸福度が下がる
FIRE達成後の生活で直面する意外な課題が、精神的な充実感の欠如です。多くの人が仕事から解放されれば幸せになれると考えがちですが、実際には仕事が与えてくれていた目的意識や日々の張り合いを失い、深刻な目標喪失感に陥ることがあります。
特に、これまで多忙な日々を送ってきた人ほど、有り余る時間をどう使えばよいかわからず、無気力になってしまう傾向があります。経済的な自由を手に入れても、やりがいや情熱を注げる対象が見つけられない場合、幸福度が下がってしまう可能性もあります。
失敗5.社会との繋がりがなくなり孤独を感じる
仕事は収入を得る手段であると同時に、社会との重要な接点でもあります。FIREによって職場というコミュニティを離れると、同僚や取引先との日常的な交流がなくなり、社会的な孤立感を深めることがあります。
また、生活スタイルや価値観の変化から、現役で働く友人との関係が希薄になる可能性もあります。「1日中ゲームをやって過ごしている」「妻以外の人と話す機会がない」といったケースも珍しくなく、人とのつながりがなくなることで精神的な潤いを失い、孤独を感じてしまうのはFIREの大きなリスクの1つです。
失敗6.「4%ルール」の誤用
FIREの基本的な考え方である「4%ルール」は、年間支出の25倍の資産を築き、その4%を毎年取り崩しても資産が枯渇する確率が低い、というものです。これはあくまで過去の米国株式市場データに基づいた経験則であり、将来の投資成果を保証するものではありません。
そのため、このルールを日本の市場や現在の低金利環境にそのまま適用すると、リスクが高まる可能性があります。また、インフレ率や税金、手数料などを考慮せずに単純に4%を取り崩すと、資産の目減りが想定よりも早くなることもあります。
4%ルールはあくまで目安であり、自身の状況や市場環境に合わせて柔軟に調整し、より保守的な取り崩し率を設定するなどの工夫が必要です。
失敗7.家族やパートナーの理解を得られない
FIREは個人の決断ですが、その影響は家族やパートナーにも及びます。特に、家族の十分な理解と合意を得ずに計画を進めると、深刻な関係悪化を招く可能性があります。
パートナーがFIRE後の収入の不安定さや将来設計に不安を感じ、価値観の対立が生じることは少なくありません。特に、子どもの教育費や住宅ローンといった継続的な支出がある家庭では、収入減が大きなストレスとなり得ます。
FIREというライフスタイルがもたらすリスクとメリットについて事前に丁寧に説明し、家族全員が納得できる共通の目標を築かなければ、FIREが家庭崩壊の引き金になることさえあり得ます。
FIREで後悔・失敗する人に共通する特徴
FIREを達成したものの、結果的に後悔してしまう人々には、いくつかの共通した特徴があります。ここでは、失敗や後悔につながりやすい人に共通する特徴について掘り下げて解説します。
FIREの目的が「会社を辞めること」になっている
FIREで後悔する人にもっとも多いのが、「会社を辞めること」自体が目的化してしまっているケースです。現状の仕事への不満やストレスから逃れたいというネガティブな動機が先行し、退職後の人生をどう過ごしたいかという具体的なビジョンが欠けています。
その結果、念願のFIREを達成した途端にやることがなくなり、社会との繋がりや仕事の充実感を失って、かえって虚無感に襲われてしまいます。
FIREはゴールではなく、あくまで自分らしい人生を送るための手段です。退職後に何をしたいのか、というポジティブな目的意識がなければ、本当の幸福は得られません。
資産計画が楽観的すぎる(甘いシミュレーション)
FIREの失敗は、楽観的すぎる資産計画に起因することが非常に多いです。例えば、常に高い投資リターンが得られることを前提にしたり、将来起こりうる大きな支出(医療、介護、住宅修繕など)を考慮していなかったりするケースです。
また、市場の暴落といったリスクを過小評価し、資産が大きく目減りした際の対応策を準備していないことも問題です。
シミュレーションを行う際は、もっとも良いケースだけでなく、もっとも悪いケースも想定し、それでも計画が破綻しないかというチェックが不可欠です。
収入源を完全に断ってしまう
FIREを「一切働かないこと」と定義し、収入源を資産運用だけに限定してしまうのは、非常にリスクが高い考え方です。市場の暴落や想定外のインフレが起きた際に、収入が途絶え、資産を取り崩すしかなくなります。
成功しているFIRE実践者の多くは、完全に労働から離れるのではなく、サイドFIREやバリスタFIREといった柔軟なスタイルを選択しています。これは、資産収入をベースにしながらも、好きなことや得意なことで副業的に働き、追加の収入を得る生き方です。
これにより、必要な資産額のハードルが下がるだけでなく、経済的な安定性が増し、社会との繋がりも維持できるという精神的なメリットも生まれます。
健康や人間関係への投資を怠っている
お金の計算に集中するあまり、人生の幸福度を左右する他の重要な要素を見過ごしてしまうのも、後悔につながる特徴です。FIRE達成のために極端な節約を続けると、友人との交際費や趣味、自己投資のためのお金を削ってしまいがちです。その結果、人間関係が希薄になったり、新しい知識やスキルを学ぶ機会を失ったりします。
また、健康への投資を怠れば、将来的に高額な医療費が必要になり、FIRE計画そのものが破綻しかねません。お金はあくまで人生を豊かにするための1つのツールです。健康や大切な人との時間、自己成長といった、お金では買えない資産への投資を怠ると、たとえ経済的に自立できても、味気ない人生になってしまうでしょう。
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後悔しないFIREを実現するための重要戦略
「FIREはやめとけ」という意見は、数々の失敗事例に基づいています。しかし、それらの失敗要因を事前に理解し、対策を講じることで、後悔のないFIREを実現することは十分に可能です。ここでは、成功への道を切り拓くための重要な戦略を解説します。
事前に綿密な(そして現実的な)計画を立てておく
後悔しないFIREの第一歩は、綿密かつ現実的な計画を立てることです。まずは家計簿アプリなどを活用して現在の収支を正確に把握し、自分の生活にいくら必要かを可視化しましょう。
その上で、将来起こりうる結婚、出産、住宅購入、介護といったライフイベントの費用も考慮に入れた長期的な支出シミュレーションを行います。これにより、FIREに必要な資金額がより明確になります。
さらに、楽観的すぎる計画は立てず、時には下落することも想定した資金計画を立てることが大切です。
また、計画は一度立てて終わりではなく、経済状況やライフステージの変化に応じて定期的に見直し、柔軟に修正していく姿勢が重要です。
「守りの資産」に軸足を移す
FIRE達成後の資産運用は、資産を積極的に「増やす」フェーズから、着実に「守りながら使う」フェーズへと移行します。そのため、ポートフォリオの中心を「守りの資産」に移す戦略が重要です。
具体的には、価格変動の大きい株式などの割合を減らし、低リスクな債券や、定期的な分配金が見込めるREIT(不動産投資信託)などのインカムゲイン資産の比率を高めたり、分散投資先として金(ゴールド)などに資産を振り分けたりするのも有効です。
これにより、株式市場の暴落時でも全体の資産の減少を防ぎ、かつ一定のキャッシュフローも確保しやすくなるため、精神的な安定にも繋がります。
資産全体のリスクを管理し、元本を大きく損なわない安定運用を心掛けることが、長期的なFIRE生活のカギとなります。
働きながらのFIREも視野にいれる
「FIRE=完全なリタイア」という固定観念に縛られる必要はありません。働きながら生活費の一部を賄いつつ、FIREの恩恵も受ける「サイドFIRE」も、現実的で魅力的な選択肢です。
この方法の最大のメリットは、FIRE達成に必要な資産額のハードルを大幅に下げられる点です。また、完全に社会から離れるわけではないため、社会との接点や適度な仕事のやりがいを維持でき、精神的な安定にも繋がります。経済的・精神的な余裕を持ちながら、自分らしい働き方を追求できるのが、このアプローチの強みです。
FIRE後のコミュニティや居場所を見つけておく
FIRE後の生活の質は、お金だけでなく「居場所」の有無に大きく左右されます。会社というコミュニティを失った後の孤独感を避けるため、FIREを計画している段階から、意識的に社外のコミュニティに参加しておくことが重要です。
趣味のサークル、ボランティア活動、地域のイベントなど、自分の興味関心に合った場所を見つけ、人間関係を築いておきましょう。こうした活動は、FIRE後の生活に目的と張り合いを与えてくれます。経済的自立を達成した後に自己実現や社会貢献に取り組むことは、人生の満足度を高める上で非常に効果的です。お金の準備と並行して、心の充足を満たすための居場所作りも進めていきましょう。
家族と徹底的に話し合い、ライフプランを共有する
FIREは個人の夢であると同時に、家族全体の人生を左右する大きな決断です。一方的な決断は家族間の亀裂を生む原因になりかねないため、計画段階から家族やパートナーと徹底的に話し合い、ライフプランを共有することが不可欠です。
家族というチームで共通の目標に向かって協力体制を築くことができれば、FIREはより実現可能性が高く、そして幸福度の高いものになるでしょう。
FIREの失敗に関するよくある質問
FIREの失敗・後悔に関するよくある質問にお答えします。
Q. FIREに向いている人はどんな人?
FIREに向いているのは、第一に計画性があり、長期的な視点で、かつ現実的に物事を考えられる人です。また、達成の道のりにおいては、支出を管理し、節約を苦としない忍耐力や、そんな状況を楽しめるマインドも不可欠です。さらに、お金だけでなく、FIRE後に増える自由な時間を有意義に使うための自己管理能力も求められます。
Q. FIREするためにいくら必要?
FIREの「4%ルール」では、一般的に「年間の生活費の25倍」が必要資金の目安とされます。例えば、年間支出が300万円なら7500万円が必要ということになります。ただし、これは資産運用のみで生活する「ファットFIRE(フルFIRE)」の場合です。副業などで収入を得る「サイドFIRE」であれば、目標額はより低くなります。
「4%ルール」では、日本の税金やインフレ率が考慮されていません。計画を立てる際は、そのことも踏まえた現実的なプランニングを行うことが大切です。
Q. FIRE達成後に資金が足りなくなった場合の対策は?
まずは支出を再度見直し、生活レベルを調整することが基本です。それでも不足する場合は、副業などで収入を補う「サイドFIRE」への移行を検討しましょう。
まとめ
「FIREはやめとけ」という意見には、資産計画の甘さや精神的な準備不足といった、もっともな理由が背景にあります。楽観的な資金目標や投資リスクの過小評価による計画破綻や、会社を辞めたことによる社会との断絶などは、FIREが失敗に終わる典型的なパターンです。
しかし、これらのリスクを事前に理解し、対策を講じることで、FIREは十分に実現可能な目標となります。重要なのは、「会社を辞めること」をゴールにせず、FIRE後の豊かな人生を具体的に設計することです。また、完全なリタイアにこだわらず、サイドFIREなど柔軟な働き方を視野に入れることも有効な戦略といえるでしょう。
FIREは、単なる経済的自由の追求ではなく、人生全体の幸福を考える壮大なライフプランです。この記事で解説した失敗例や重要戦略を参考に、自分にとって最適なFIREの形を冷静に判断し、後悔のない豊かな人生を築いていきましょう。
>>いくら貯めればいい?あなたの将来の必要額を3分で診断
早期リタイアが気になるあなたへ
現在の収入や資産で、FIREできるのか、また将来の生活にはどれくらい足りないのかを早めに把握して準備を始めましょう。マネイロでは、将来資金の準備を便利に進められる無料ツールを利用できます。
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監修
高橋 明香
- ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者
みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。