

FIREするならいくら必要?年代・世帯別の必要資金と現実的な達成プランを徹底解説
»FIREするならいくら必要?まずは将来資金をシミュレーション
「早期リタイアして自由な生活を送りたい」と考えるものの、FIRE(経済的自立と早期リタイア)に一体いくら必要なのか、具体的なイメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、FIRE達成の目安となる「4%ルール」の基本から、年代や世帯構成ごとの詳細な必要資金額まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。
自身の状況に合わせた現実的な目標設定のヒントが見つかるはずです。
- FIREに必要な資金は「年間支出の25倍」が目安(4%ルール)
- 必要額は年代や世帯構成で大きく異なり、30代は約1億円以上、50代では4000万円から6000万円程度が目安
- 完全リタイアが難しい場合でも、労働収入と組み合わせる「サイドFIRE」という現実的な選択肢がある
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FIREとは?基本的な考え方と4つのタイプ

FIREとは、資産運用によって経済的な自立を実現し、定年を待たずに早期リタイアを目指すライフスタイルです。近年、働き方の多様化とともに日本でも注目を集めています。
ここでは、FIREの概念と4つのタイプの早期リタイアについて解説します。

FIREの基本概念
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉で、「経済的自立と早期リタイア」を意味します。
この考え方の核心は、労働収入に依存せず、資産からの不労所得(配当金、分配金、不動産収入など)で生活費をまかなえる状態を築くことにあります。
従来の早期リタイアが、退職金や貯蓄を切り崩しながら生活することを指すのに対し、FIREは資産を運用し続けることで元本を維持、あるいは増やしながら生活する点が違いです。
これにより、資産が枯渇するリスクを抑え、長期にわたる安定した生活を目指すことが可能になります。
4つのFIREタイプ
FIREは、生活水準や働き方によって、主に4つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解し、自分に合ったスタイルを見つけることが欠かせません。
ファットFIRE
資産運用による収益だけで、現役時代と変わらないか、それ以上に裕福な生活を送るスタイルです。完全に労働から解放されるため、理想的ですが、必要となる資金額も多くなります。
リーンFIRE
生活費を切り詰め、質素な暮らしをすることで、比較的少ない資産でFIREを達成するスタイルです。節約を重視し、ミニマムな生活を送ることに価値を見出す人に向いています。
サイドFIRE(バリスタFIRE)
資産運用による不労所得に加え、パートタイムや副業などである程度の労働収入を得ながら生活するスタイルです。完全なリタイアではないため、必要な資金額を抑えることができ、社会とのつながりを保ちやすいというメリットもあります。「バリスタFIRE」もほぼ同じ意味で使われます。
コーストFIRE
老後のための資産形成が完了し、後は資産が複利で増えていくのを待つ状態のことです。目標額に達するまでは、日々の生活費を稼ぐために働き続けます。将来の安心を確保した上で、キャリアチェンジなど自由な働き方を選択しやすくなります。
FIREに必要な資金の計算方法「4%ルール」
FIREを計画する上で、広く知られているのが「4%ルール」です。
これは、FIRE達成に必要な資金額を算出するための基本的な考え方であり、多くの人が目標設定の際に参考にしています。
このルールを理解することで、自身のライフプランに合わせた具体的な目標額が見えてきます。

4%ルールとは

4%ルールとは、年間の生活費を投資元本の4%以内に抑えることができれば、資産を減らすことなく生活を続けられるという考え方です。
このルールは、米国のトリニティ大学の研究が基になっており、過去の米国株式市場の成長率(約7%)からインフレ率(約3%)を差し引いた「4%」という数値を根拠としています。
つまり、資産を年率4%で運用し、運用収益の範囲内で生活費を賄うことで、元本に手を付けずに済むという理論です。
必要資金の計算式
4%ルールに基づくと、FIREに必要な資金額はシンプルな計算式で算出できます。
FIREに必要な資金 = 年間支出 × 25
この「25倍」という数字は、4%の逆数(1 ÷ 0.04 = 25)から来ています。年間支出の25倍の資産があれば、4%がちょうど年間支出額と同額になるためです。
例えば、年間の生活費が300万円の場合、必要な資金額は以下のようになります。
- 300万円 × 25 = 7500万円
同様に、生活費ごとの必要資金額の目安は以下の表の通りです。
4%ルールの前提条件と注意点
4%ルールはFIREの目標設定に便利な指標ですが、いくつかの前提条件と注意点があります。日本でFIREを目指す際には、これらの点を理解しておくことが欠かせません。
米国市場が前提
4%ルールは、過去の米国株式市場のデータに基づいています。日本の市場環境や経済成長率とは異なるため、必ずしも同じ結果が得られるとは限りません。
税金が未考慮
投資で得た利益(配当金や売却益)には、通常約20%の税金がかかります。4%の運用益をすべて生活費に充てられるわけではなく、税引き後の手取り額で計画を立てる必要があります。
インフレ率の変動
ルール算出の前提となった米国のインフレ率と、日本のインフレ率は異なります。物価上昇が続けば、実質的に必要な生活費は増えていきます。
市場の変動リスク
4%という利回りはあくまで平均値であり、毎年安定して得られる保証はありません。株式市場の下落局面では資産が目減りする可能性も考慮し、余裕を持った資金計画が求められます。
これらの点から、4%ルールはあくまで「目安」として捉え、自身の状況に合わせて3%ルールで計算するなど、より保守的な計画を立てることも有効な選択肢です。
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世帯構成別のFIRE必要資金
FIREに必要な資金額は、個人のライフスタイルだけでなく、世帯構成によっても変動します。
単身世帯、夫婦2人世帯、子育て世帯では、それぞれ生活費の構造が異なるため、目標とすべき金額も変わってきます。
ここでは、各世帯の平均的な支出を基に、FIRE達成に必要な資金の目安を見ていきましょう。
(参考:家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2025年(令和7年)平均結果の概要 | 総務省 )


単身世帯の必要資金
単身世帯の場合、生活費をコントロールしやすいため、比較的FIREの計画を立てやすいといえます。
総務省の家計調査によると、単身世帯の平均的な消費支出は月約16万1000円ですが、住居費やライフスタイルによって個人差があります(リタイア後の生活費の目安として、「65歳以上の単身無職世帯」のデータを参考にしています)。
物価上昇などを考慮し、少しゆとりのある月25万円(年間300万円)の生活を想定した場合、4%ルールに基づくと必要な資金額は7500万円となります。
- 300万円(年間支出) × 25 = 7500万円
生活費を月20万円(年間240万円)に抑えることができれば、必要資金は6000万円となり、目標達成のハードルは下がります。
夫婦2人世帯の必要資金

夫婦2人世帯の場合、生活費は単身世帯より増加しますが、1人あたりの負担は軽減される傾向にあります。
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の平均消費支出は月額約29万7000円前後です(リタイア後の生活費の目安として、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」のデータを参考にしています)。
夫婦で旅行や趣味を楽しむなど、少しゆとりのある月40万円(年間480万円)の生活を想定した場合、4%ルールに基づくと必要な資金額は1億2000万円となります。
- 480万円(年間支出) × 25 = 1億2000万円
一方で、日々の支出を見直し、生活費を月30万円(年間360万円)に抑えることができれば、必要資金は9000万円となり、目標達成のハードルは下がります。
子育て世帯の必要資金
子育て世帯がFIREを目指す場合、夫婦2人の生活費に加えて、子どもの教育費という支出を考慮する必要があります。
夫婦の生活費として月30万円(年間360万円)を想定すると、基本的な必要資金額は9000万円です。
- 360万円(年間支出) × 25 = 9000万円
これに加えて、子ども1人あたり幼稚園から大学卒業までにかかる教育費を別途準備する必要があります。教育費の目安は、進路によって異なりますが、一般的に約1000万円から2500万円とされています。
- すべて国公立の場合:約853万円
- すべて私立の場合:約2375万円
教育費は、FIREのための運用資産とは別に、学資保険や安全性の高い預貯金などで計画的に準備することが推奨されます。
そのため、子育て世帯のFIREは、他の世帯に比べて計画性とより多くの資金が求められます。
(参考:令和5年度子供の学習費調査の結果|数値修正20260116差替|文部科学省 )
(参考:国公私立大学の授業料等の推移|令和3年|文部科学省 )
(参考:令和5年度子供の学習費調査の結果|数値修正20260116差替|文部科学省 )
(参考:国公私立大学の授業料等の推移|令和3年|文部科学省 )
年代別のFIRE必要資金と達成難易度
FIREを達成するために必要な資金額は、リタイアを目指す年代によって異なります。若い年代ほど、リタイア後の期間が長くなるため、より多くの資金が必要となり、達成難易度は高くなります。
ここでは、30代、40代、50代それぞれの年代でFIREを目指す場合の必要資金の目安と、達成に向けたポイントを解説します。
30代は会社員時代の平均年収500万円、40代は会社員時代の平均年収600万円、50代は会社員時代の平均年収700万円で厚生年金を試算
(参考:公的年金シミュレーター | 厚生労働省)
(参考:令和8年4月分からの年金額等について | 日本年金機構)


30代でのFIRE

30代でFIREを達成する場合、年金受給開始の65歳まで約30年から35年、その後の人生も考えると約60年分の生活費を資産運用で賄う必要があります。そのため、必要資金額は多くなり、達成難易度は高いといえます。
例えば、夫婦2人(子なし)で月28万円の生活を想定すると、90歳までの総生活費は約1億8480万円。年金受給総額を約3018万円と仮定すると、約1億5462万円の自己資金が必要という試算もあります。
この金額を達成するには、年収の半分以上を投資に回すような高い貯蓄率が求められます。しかし、30代は投資期間を長く確保できるため、複利効果を最大限に活かせるというメリットがあります。
米国株式インデックスファンドなどを活用した長期・積立・分散投資を若いうちから始めることが、達成への鍵となります。
40代でのFIRE
40代でのFIREは、30代に比べるとリタイア後の期間が短くなるため、必要資金額は少し現実的になります。しかし、それでも1億円前後の資産が必要となるケースが多く、達成難易度は依然として高いといえます。
例えば、夫婦2人(子なし)で月28万円の生活が90歳まで続くと想定した場合、約1億5120万円が必要という試算になります。仮に、年金受給総額を3993万円と仮定しても、約1億1127万円の自己資金の準備が必要です。
40代はキャリアのピークを迎え、収入が最大化される時期でもあります。昇進や転職、副業などを通じて収入を増やし、集中的に投資に回すことが欠かせません。
住宅ローンが低金利であれば、繰り上げ返済よりも投資を優先し、レバレッジ効果を狙う戦略も有効です。
また、子どもの教育費がかかる時期と重なるため、教育資金とFIRE資金を両立させる計画性が求められます。
50代でのFIRE
50代でのFIREは、年金受給開始までの期間が10年程度と短くなるため、現実的に達成可能な目標といえます。厚生年金への加入期間が長く、退職金の活用も見込まれるため、必要な自己資金額は大幅に減少します。
例えば、夫婦2人で月28万円の生活が90歳まで続くと想定した場合、必要な自己資金は約1億1760万円です。仮に、年金受給総額が5143万円と仮定し、さらに退職金が2000万円受け取れた場合、実質的に必要な金額は約4617万円となります。
50代の資産形成では、リターンを狙う「攻めの投資」よりも、資産を守りながら安定的に運用する「守りの投資」が鍵となります。
債券の比率を高めたポートフォリオを組むなど、リスク管理を徹底しましょう。
また、子どもの独立や住宅ローンの完済により、家計の固定費が下がるため、最後のラストスパートとして集中的に貯蓄・投資に回しやすい時期でもあります。
現実的な選択肢:サイドFIREとコーストFIRE
完全な労働からの解放を目指す「ファットFIRE」は、多額の資産が必要となり、多くの人にとってハードルが高いのが現実です。
しかし、FIREにはより柔軟で達成しやすいスタイルも存在します。それが「サイドFIRE」と「コーストFIRE」です。
これらは、働き方と資産形成のバランスを取ることで、より現実的に経済的自由を目指す選択肢といえます。
サイドFIRE(バリスタFIRE)
サイドFIREとは、資産運用による不労所得と、ある程度の労働収入を組み合わせて生活するライフスタイルです。
完全に仕事を辞めるのではなく、働く時間や頻度を減らし、好きな仕事やパートタイムの仕事などを続けることで、生活費の一部をまかないます。
最大のメリットは、完全なFIREに比べて必要な資金額を大幅に抑えられる点です。
例えば、年間生活費300万円のうち100万円を労働で稼ぐ場合、資産運用で賄うのは200万円で済みます。4%ルールを適用すると、必要な資産は7500万円から5000万円に減少します。
また、社会とのつながりを維持できるため、孤独感を感じにくく、万が一資産運用が上手くいかなくても労働収入でカバーできるという精神的な安定感も得られます。
カフェのバリスタのような、福利厚生が充実したパートタイムの仕事を続けるスタイルを「バリスタFIRE」と呼ぶこともあります。
コーストFIRE
コーストFIREは、「老後のための資産形成は完了した」状態を指します。
具体的には、将来(60歳や65歳など)の老後生活に必要となる資金額が、現在の投資資産の複利運用だけで達成できる見込みが立った状態のことです。
この状態に達すれば、それ以上老後のために追加で投資をする必要がなくなります。後は資産が時間をかけて自然に増えていく(Coast=惰性で進む)のを待つだけです。
コーストFIRE達成後は、日々の生活費さえ稼げればよいため、働き方の自由度が格段に上がります。
例えば、収入は減るけれどやりがいのある仕事に転職したり、労働時間を減らして趣味の時間を増やしたりといった選択が可能になります。
完全なリタイアではありませんが、お金の心配から解放され、より自分らしいキャリアを歩むための1つの現実的なゴールといえるでしょう。
FIREを達成するための5つのステップ
FIREは壮大な目標に思えるかもしれませんが、具体的なステップに分解して計画的に進めることで、誰にでも実現の可能性があります。
闇雲に節約や投資を始めるのではなく、しっかりとしたロードマップを描くことが成功への近道です。ここでは、FIREを達成するための基本的な5つのステップを解説します。


現在の生活費を正確に把握する

FIRE計画の第一歩は、自身の現在の支出を正確に把握することです。毎月何にいくら使っているかを知らなければ、リタイア後に必要な生活費を見積もることはできません。
家計簿アプリやクレジットカードの明細を活用し、最低でも3ヶ月から半年間の支出を記録してみましょう。
支出は「住居費」「食費」「水道光熱費」などの項目に分け、固定費と変動費を区別すると、どこに無駄があるかが見えやすくなります。
この作業を通じて、自身のリアルな金銭感覚を掴むことが大事です。
目標とする生活水準を決める
現在の支出を把握したら、次にFIRE後にどのような生活を送りたいかを具体的にイメージし、目標とする生活水準を決めます。
- リーンFIRE: 節約を重視し、ミニマムな生活で満足できるか。
- ファットFIRE: 旅行や趣味を楽しみ、ゆとりのある生活を送りたいか。
- サイドFIRE: 好きな仕事を続けながら、自由な時間を確保したいか。
リタイア後のライフスタイルによって、必要な年間支出額は変わります。
例えば、現在の生活費から、退職後に不要となる通勤費や交際費を差し引く一方で、趣味や旅行にかかる費用が増える可能性も考慮する必要があります。
理想の生活を具体的に描くことが、モチベーション維持にもつながります。
必要資金を計算する
目標とする生活水準が決まり、年間の支出額を見積もったら、いよいよFIREに必要な総資産額を計算します。ここで活用するのが「4%ルール」です。
FIREに必要な資金 = 目標とする年間支出 × 25
例えば、リタイア後に年間400万円の生活を送りたいと計画した場合、必要な資金額は1億円となります。
- 400万円 × 25 = 1億円
この金額が、あなたのFIRE達成に向けた具体的な目標となります。サイドFIREを目指す場合は、労働で得る予定の年収を差し引いてから計算します。
例えば、年間100万円を副業で稼ぐ計画なら、資産運用で賄うのは300万円となり、必要資金は7500万円に下がります。
貯蓄と投資の計画を立てる
目標資金額が定まったら、それを達成するための具体的な貯蓄と投資の計画を立てます。
まず、収入を増やし、支出を減らすことで、投資に回せる資金(入金力)を最大化します。固定費の見直しや副業などが有効です。
次に、資産運用の戦略を決めます。長期的な資産形成には、リスクを分散しながら複利効果を狙える積立投資がおすすめです。
NISAやiDeCoといった税制優遇制度を最大限に活用し、全世界株式や米国株式のインデックスファンドなどをコアに据えたポートフォリオを構築するのが一般的なアプローチの1つです。
投資信託の購入には手数料がかかり、元本割れのリスクがある点に留意が必要です。
目標達成までに必要な毎月の積立額を算出し、無理なく継続できる計画を立てることが必須です。
定期的に見直しと調整を行う
FIREへの道は長期にわたります。その間に、自身のライフステージ(結婚、出産、転職など)や収入、市場環境は変化する可能性があります。そのため、一度立てた計画を定期的に見直し、必要に応じて調整することが不可欠です。
年に1回程度、資産状況やポートフォリオのバランスを確認し、目標との乖離がないかをチェックしましょう。
もし計画通りに進んでいない場合は、支出の見直しや投資戦略の微調整を行います。柔軟に計画を修正していくことが、長期的な目標達成の成功率を高めます。
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FIREを目指す上での注意点とリスク
FIREは魅力的なライフスタイルですが、実現と維持にはいくつかのリスクが伴います。
計画段階でこれらのリスクを十分に理解し、対策を講じておくことが、長期的に安定したFIRE生活を送るための鍵となります。
経済環境の変化やライフステージの変化に対応できる、柔軟な計画が求められます。
インフレリスク

インフレとは、物価が継続的に上昇し、お金の価値が相対的に下がることです。FIRE生活においてインフレは、生活費の増加という形で直接的な影響を及ぼします。
例えば、年率2%のインフレが続けば、現在年間300万円で送れている生活も、20年後には約446万円が必要になります。4%ルールで資産を取り崩している場合、支出の増加は資産の枯渇を早める要因となります。
対策としては、インフレ率を上回る運用利回りを目指すことや、物価上昇に強いとされる株式や不動産といった資産をポートフォリオに組み入れることが考えられます。
また、生活費にバッファを持たせた計画を立てることも欠かせません。
医療・介護費用の増加
FIRE計画を立てる際に見落とされがちなのが、将来的に増加する医療費や介護費用です。若いうちは健康でも、年齢を重ねるにつれて病気や怪我のリスクは高まります。
公的医療保険制度があるとはいえ、先進医療や長期の入院、介護サービスなどには想定外の自己負担が発生する可能性があります。これらの突発的な支出は、運用益だけで生活するFIREの計画を狂わせる要因となり得ます。
対策としては、生活費とは別に、緊急時用の資金(生活費の半年〜1年分など)を確保しておくことや、民間の医療保険・介護保険への加入を検討することが挙げられます。
FIRE後の生活設計には、こうした将来の健康リスクも織り込んでおく必要があります。
社会保障の減少リスク
会社員がFIREして退職すると、社会保障の面でいくつかの変化が生じます。これらは支出の増加や将来の収入減につながるため、事前に理解しておく必要があります。
- 健康保険: 会社の健康保険から脱退し、国民健康保険に切り替えるか、任意継続被保険者制度を利用することになります。多くの場合、保険料の自己負担額は増加します。
- 年金: 厚生年金から国民年金(第1号被保険者)に切り替わります。これにより、将来受け取る老齢年金の額は、会社員を続けた場合に比べて減少します。
FIRE計画では、退職後の国民健康保険料や国民年金保険料の支払いを年間支出に含めて計算する必要があります。
また、将来の年金受給額が減ることも見越して、より多くの自己資金を準備することが求められます。
孤独や社会的つながりの喪失
FIREは経済的な側面だけでなく、心理的・社会的な側面でのリスクも伴います。仕事を辞めることで、これまで職場を通じて得られていた社会との接点や人とのつながりが希薄になる可能性があります。
毎日のように顔を合わせていた同僚との関係がなくなったり、社会的な役割を失ったりすることで、孤独感や目的喪失感を抱く人も少なくありません。仕事が生きがいだった人ほど、リタイア後の生活に物足りなさを感じる場合があります。
対策としては、リタイア後の生活で何をしたいのか、明確な目的や趣味を持つことが鍵となります。
地域のコミュニティ活動やボランティアに参加したり、新たなスキルを学んだりするなど、自ら積極的に社会と関わる機会を作ることが、充実したFIRE生活につながります。
サイドFIREを選択し、好きな仕事を続けることも有効な解決策の1つです。
FIREに関するよくある質問
FIREというライフスタイルに関心が高まる中で、多くの人が具体的な疑問を抱いています。
ここでは、FIREを目指すにあたってよく寄せられる質問について、専門家の視点から簡潔にお答えします。


Q. 独身でFIREするにはいくら必要?
独身の人がFIREを目指す場合、必要な資金額は自身の生活水準によって変わります。
総務省の「家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2025年(令和7年)平均結果の概要 」によると、単身世帯の平均的な消費支出は月16万1000円程度です。これを基に計算すると、年間支出は約193万円となり、4%ルールを適用した場合の必要資金額は約4830万円となります。
もう少しゆとりのある生活を送り、月25万円(年間300万円)を想定する場合は、7500万円が目標となります。
自身の理想のライフスタイルに合わせて、まずは年間の支出額を見積もることから始めましょう。
Q. 5000万円でセミリタイアできる?
結論からいうと、5000万円の資産でセミリタイア(サイドFIRE)は十分に可能です。
5000万円の資産を年率4%で運用できた場合、税引き前で年間200万円の不労所得が見込める計算です。税金を約20%とすると、手取りは約160万円(月額約13.3万円)です。
もし年間の生活費が300万円必要であれば、不足分の140万円(月額約11.7万円)をアルバイトや副業などの労働収入で補うことになります。
完全なリタイアは難しいかもしれませんが、働く時間を大幅に減らし、自由な時間を確保するライフスタイルは実現できるでしょう。
Q. NISAだけでFIREは可能?
NISA(少額投資非課税制度)は、運用益が非課税になる制度ですが、NISAだけで完全なFIREを達成するのは現実的には難しいでしょう。
2024年から始まったNISAでは、生涯にわたって非課税で保有できる上限額が1人あたり1800万円です。夫婦2人で満額利用したとしても、非課税枠は合計で3600万円となります。
この3600万円を年率4%で運用した場合、年間の非課税収入は144万円(月12万円)の計算です。
これだけで生活するのは困難なため、完全なFIREを目指すには、NISAに加えて課税口座(特定口座など)でも資産運用を行い、より多くの資産を築く必要があります。
ただし、NISAは資産形成の中核を担う強力なツールであることは間違いありません。まずは非課税枠を最大限活用することから始めるのが、FIREへの第一歩です。
まとめ

FIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成するために必要な資金額は、「年間支出の25倍」という4%ルールが1つの目安となります。
しかし、具体的な金額は、目指す年代や世帯構成、理想のライフスタイルによって異なります。
30代での達成は可能ですが難易度が高く、50代に近づくほど年金や退職金を活用できるため現実味を帯びてきます。また、完全なリタイアが難しい場合でも、労働収入と組み合わせる「サイドFIRE」という柔軟な選択肢もあります。
FIREは夢物語ではありません。自身の支出を正確に把握し、現実的な目標を設定した上で、NISAやiDeCoを活用しながら長期的な視点で資産形成に取り組むことが成功への鍵です。
まずは自身のライフプランを見つめ直し、具体的な第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
自身の状況に合わせたFIRE計画を立てるために、まずは専門家に相談してみるのも1つの方法です。
将来のお金の不安を解消し、理想のライフプランを実現するための第一歩を踏み出しましょう。
»老後資金の不足リスクとあなたに合う運用方法を3分で診断
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監修

高橋 明香
- ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者
みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。
執筆

マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。






