厚生年金の増額方法と2027年からの制度変更・改定による保険料増額の影響を解説

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「厚生年金を少しでも増やしたい」と考える人は多いでしょう。厚生年金の受給額は、現役時代の年収や加入期間、働き方によって決まるため、仕組みを理解せずにいると将来受け取れる金額に差が出てしまいます。

実は、働き方の選び方や制度の活用次第で、厚生年金を増やす余地はあります。

本記事では、厚生年金が増える仕組みを整理したうえで、今から意識しておきたいポイントをわかりやすく解説します。

この記事を読んでわかること
  • 厚生年金の受給額を増やす3つの方法
  • 60歳以降の就労による年金増加額シミュレーション
  • 2027年から始まる高所得者の保険料増額の詳細

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厚生年金の「増額」には2つの意味がある

厚生年金の「増額」には、2つの意味合いがあります。一つは、自身の選択や行動によって将来の受給額を増やすことです。

もう一つは、法律の改正や経済状況に応じて制度として年金額や保険料が改定されることです。

前者は、60歳以降も長く働く、あるいは受給開始を遅らせる「繰下げ受給」といった方法が挙げられます。能動的に老後資金を厚くするための選択といえるでしょう。

後者は、毎年の物価や現役世代の賃金の変動に応じて年金額が見直される「年金額改定」や、年金制度の持続可能性を高めるための「制度改正」が該当します。これらは個人の意思とは関係なく、年金財政の状況などによって決まるものです。

両方の側面から厚生年金の「増額」について詳しく解説していきます。

厚生年金の受給額を増やす3つの方法

将来の老齢厚生年金の受給額を増やすためには、いくつかの具体的な方法があります。自身のライフプランや働き方の希望に合わせて検討することが欠かせません。

主な方法は以下の3つです。

  • 60歳以降も厚生年金に加入して働く
  • 繰下げ受給で受給開始を遅らせる
  • 厚生年金に44年以上加入し長期加入者特例の対象となる

これらの方法は、それぞれメリットや注意点が異なります。次のセクションから、それぞれの方法について詳しく解説していきます。

60歳以降も厚生年金に加入して働く

60歳以降も厚生年金の適用事業所で働き続けることは、将来の年金額を増やすための確実な方法の一つです。厚生年金は70歳になるまで加入できるため、その間の加入期間と報酬額に応じて、生涯受け取る老齢厚生年金が増額されます。

2022年4月から導入された「在職定時改定」により、働きながら年金を増やすメリットがより実感しやすくなりました。この制度では、65歳以降に納めた保険料が毎年計算され、その年の10月分の年金から反映されます。

以前のように退職や70歳到達を待つ必要がなく、働いた成果が翌年には年金額の増加という形で享受できます。

ポイントの解説

さらに、厚生年金に加入し続けることで、万が一病気や怪我で障害状態になった場合、所定の要件を満たせば「障害厚生年金」を受給できるというメリットもあります。

(参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構)

繰下げ受給で最大84%増額

老齢年金の受給開始時期を、本来の65歳からではなく66歳以降に遅らせる「繰下げ受給」も、年金額を増やすための有効な手段です。

受給開始を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額され、その増額率は生涯変わりません。最大で75歳まで繰り下げることができ、その場合の増額率は84%(0.7% × 120ヶ月)にもなります。

例えば、65歳時点で年額180万円の年金を受け取れる人が70歳まで繰り下げた場合、増額率は42%(0.7% × 60ヶ月)となり、年金額は約255万円に増えます。

ただし、繰下げ受給を選択する際には注意点もあります。繰り下げている期間中は年金を受け取れないため、その間の生活費をどう賄うかを考える必要があります。

また、増額された年金を受け取ることで所得が増え、税金や社会保険料の負担が増加する可能性も考慮する必要があります。

自身の健康状態や貯蓄、働き方のプランと照らし合わせ、慎重に判断することが推奨されます。

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60歳以降の加入でいくら増える?具体的なシミュレーション

60歳以降も厚生年金に加入して働いた場合、将来の年金がどのくらい増えるのかは気になるところです。年金の増加額は、加入期間中の給与や賞与によって決まります。

老齢厚生年金の報酬比例部分は、主に「平均標準報酬額 × 一定の乗率 × 加入月数」で計算されます。60歳以降に働いて納めた保険料も、その計算式に基づいて年金額に加算されます。

仮に60歳から65歳までの5年間(60ヶ月)、厚生年金に加入して働いた場合の年金増加額の目安は以下の通りです。

60歳以降の平均年収の目安
1年間の加入で増える年金額(年額)
5年間の加入で増える年金額(年額)
約240万円(月収20万円)
約1万3200円
約6万6000円
約360万円(月収30万円)
約1万9700円
約9万9000円
約480万円(月収40万円)
約2万6300円
約13万2000円
約600万円(月収50万円)
約3万2900円
約16万4000円

※計算式:平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 12ヶ月(または60ヶ月)で算出。賞与は含まず、あくまで概算です

このように、働き続けることで生涯受け取る年金を着実に増やすことができます。自身の収入に応じた増加額を把握し、ライフプランを検討することが鍵となります。

2027年9月から高所得者の保険料が増額される

2025年6月に成立した年金制度改正法により、厚生年金保険料の計算の基礎となる「標準報酬月額」の上限が、2027年9月から段階的に引き上げられることになりました。

その改正は、主に高所得の会社員や役員が対象となります。保険料の負担が増える一方で、その分将来受け取る老齢厚生年金も増額されるという影響があります。

具体的な対象者やスケジュール、影響額について詳しく見ていきましょう。

対象者と増額スケジュール

今回の標準報酬月額の上限引き上げの対象となるのは、給与や役員報酬が高い方です。現在の厚生年金保険の標準報酬月額は、第32等級の65万円が上限となっています。月収が65万円以上の場合は、収入がそれ以上増えても保険料は変わりませんでした。

その上限が、2027年9月から3段階で引き上げられます。具体的なスケジュールは以下の通りです。

等級
標準報酬月額の上限
引き上げ時期
32等級(現行)
65万円
2027年8月まで
33等級(新設)
68万円
2027年9月から
34等級(新設)
71万円
2028年9月から
35等級(新設)
75万円
2029年9月から

この改正により、これまで上限の65万円に該当していた高所得者層の保険料負担が、実際の報酬額に応じて増加することになります。

保険料増額の影響額

標準報酬月額の上限が最終的に75万円に引き上げられた場合、対象となる従業員と事業主の保険料負担は増加します。

厚生年金保険料率は現在18.3%で、これを労使で折半するため、本人負担分は9.15%です。

  • 現行(上限65万円)の本人負担額
  • 65万円 × 9.15% = 5万9475円/月
  • 改定後(上限75万円)の本人負担額
  • 75万円 × 9.15% = 6万8625円/月

最終段階の75万円が適用された場合、標準報酬月額が75万円以上の方の保険料負担は、月額で9150円(6万8625円 - 5万9475円)、年額で10万9800円の増加となります。

事業主も同額の負担増となるため、企業にとっては人件費の増加につながります。

保険料が増えれば将来の年金も増える

保険料の負担が増えることはデメリットに感じられますが、納めた保険料は将来の年金受給額に反映されるというメリットがあります。

厚生年金の受給額は現役時代の平均標準報酬額に基づいて計算されるため、標準報酬月額の上限が引き上げられることで、高所得者層はより多くの保険料を納めることになり、その結果として将来の年金額も増加します。

試算によると、標準報酬月額が上限の75万円の状態で10年間加入した場合、将来の年金受給額は月額で約5500円(年額で約6万5800円)増えるとされています。

短期的に見れば手取り収入の減少につながりますが、長期的に見れば老後の生活を支える年金額が増えることになり、より手厚い保障につながるといえるでしょう。

2025年度の年金額は1.9%引き上げ

公的年金の額は、物価や賃金の変動を反映して毎年度改定されます。2025年度(令和7年度)の年金額は、2024年度から1.9%の引き上げとなりました。

これは、年金額改定の指標となる名目賃金変動率がプラスとなり、かつ物価変動率を上回ったためです。ただし、少子高齢化に対応して年金の給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」が発動したため、賃金の伸びほどには年金額は増加していません。

次のセクションで、この改定によって国民年金と厚生年金の額が具体的にいくらになったのかを見ていきます。

国民年金・厚生年金の具体的な増額

2025年度の1.9%の引き上げにより、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)の受給額は以下のようになりました。

年金の種類
2024年度(令和6年度)
2025年度(令和7年度)
増額分(月額)
国民年金(老齢基礎年金・満額)
月額 6万8000円
月額 6万9308円
+1308円
厚生年金(モデル世帯※)
月額 22万8372円
月額 23万2784円
+4412円

※モデル世帯:夫が平均的な収入で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

この改定は2025年4月分の年金から適用され、実際の振り込みは同年6月13日からとなります。物価上昇が続く中、年金生活者の家計を支えるための改定といえます。

年金を月20万円もらうには年収いくら必要?

老後の生活設計を考える上で、「年金を月20万円」というのを一つの目安にしている方は多いのではないでしょうか。この金額を達成するためには、現役時代にどのくらいの収入が必要になるのか、気になるところです。

年金受給額は、国民年金から支給される「老齢基礎年金」と、厚生年金から支給される「老齢厚生年金」の合計で決まります。

老齢厚生年金は現役時代の収入(平均標準報酬額)と加入期間に応じて変動するため、ここが目標達成の鍵となります。

具体的な計算方法と年収の目安を見ていきましょう。

厚生年金の計算式

老齢厚生年金の受給額(年額)は、主に「報酬比例部分」と呼ばれる金額で決まります。この報酬比例部分は、加入期間と、その間の給与や賞与の平均額に基づいて計算されます。

計算式は少し複雑ですが、簡略化すると以下のようになります。

報酬比例部分(年額) = 平均標準報酬額 × 給付乗率(5.481 / 1000) × 平成15年4月以降の加入月数
  • 平均標準報酬額:加入期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入月数で割ったもの。現役時代の平均的な月収(賞与込み)に近いイメージです。
  • 給付乗率:生年月日によって異なりますが、平成15年4月以降の期間については、基本的に「5.481/1000」が用いられます。

この計算式から、現役時代の収入が高く、加入期間が長いほど、将来受け取る年金額が増えることがわかります。

月20万円に必要な年収の目安

年金月額20万円(年額240万円)を達成するために必要な現役時代の平均年収の目安を考えてみましょう。

まず、年金の内訳として、国民年金から支給される老齢基礎年金があります。2025年度の満額は約6.9万円(年額約83万円)です。

したがって、目標の月20万円を達成するには、老齢厚生年金で月額約13.1万円(年額約157万円)を確保する必要があります。

これを厚生年金の加入期間別に、必要な平均年収(賞与込み)に換算すると、以下のようになります。

厚生年金の加入期間
必要な平均年収の目安
40年(480ヶ月)
約720万円
35年(420ヶ月)
約820万円
30年(360ヶ月)
約960万円

※計算式:年額157万円 ÷ (5.481/1000 × 加入月数) × 12ヶ月 で算出。あくまで概算です

このシミュレーションからわかるように、加入期間が短いほど、より高い平均年収が必要となります。自身のキャリアプランと照らし合わせて、目標設定の参考にしてください。

厚生年金を増やすために今からできること

将来の厚生年金を増やすためには、漠然と考えるだけでなく、具体的な行動に移すことが必須です。

まずは自身の現状を正確に把握し、それに基づいて将来の計画を立て、シミュレーションを行うというステップを踏むことが推奨されます。

ねんきん定期便で現状を確認

厚生年金を増やすための第一歩は、自身の年金記録を正確に把握することです。毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」や、いつでもオンラインで確認できる「ねんきんネット」を活用しましょう。

これらのツールでは、以下の情報を確認できます。

  • これまでの保険料納付記録
  • 厚生年金の加入期間
  • 現時点での加入実績に基づいた将来の年金見込額

「ねんきんネット」では、今後の働き方などの条件を変えて、より詳細な年金見込額のシミュレーションも可能です。まずは自身の現状を客観的な数値で確認し、将来設計の土台とすることが大切です。

60歳以降の働き方を考える

自身の年金見込額を確認したら、次に60歳以降の働き方を具体的に計画しましょう。年金額を増やすためには、60歳以降も厚生年金に加入して働くことが有効です。

「何歳まで働くか」「どのくらいの収入を目指すか」といったキャリアプランを立てることが鍵となります。その際、年金を受給しながら働く場合には「在職老齢年金制度」についても考慮する必要があります。

現在の制度では、給与と年金(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)の合計額が月51万円を超えると年金が一部支給停止されますが、この基準は2026年4月から62万円に引き上げられる予定です。

この制度変更も踏まえ、自身の希望する生活水準と働き方のバランスを考え、最適なプランを検討しましょう。

繰下げ受給のシミュレーション

65歳以降も働く予定があり、当面の生活資金に余裕がある場合は、「繰下げ受給」を検討する価値があります。受給開始を遅らせることで、年金額を大幅に増やすことが可能です。

ただし、何歳まで繰り下げることが自身にとって最適かは、個々の状況によって異なります。「ねんきんネット」を使えば、受給開始年齢をさまざまに設定して、年金額がどのように変わるかを簡単にシミュレーションできます。

シミュレーションを行う際には、単に増額率だけでなく、何歳まで生きれば65歳から受給した場合の総額を上回るかという「損益分岐点」も確認しておくと良いでしょう。

ポイントの解説

自身の健康状態や家族構成、貯蓄額などを総合的に考慮し、最適な受給開始時期を見極めることが必要となります。

厚生年金の増額に関するよくある質問

ここでは、厚生年金の増額に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。制度のポイントを簡潔に確認するのにお役立てください。

厚生年金の増額はいつから?

厚生年金の増額が反映されるタイミングは、増額の理由によって異なります。65歳以降に働いて納めた保険料分は「在職定時改定」により、毎年10月分の年金から反映されます。

年金の受給開始を遅らせる「繰下げ受給」の場合は、繰下げを申し出た月の翌月分から増額された年金が支給されます。

また、毎年度の年金額改定は、4月分(6月15日振込)から適用されます。

2025年の老齢厚生年金はいくら上がる?

2025年度(令和7年度)の老齢厚生年金を含む公的年金額は、2024年度に比べて1.9%引き上げられました。

これにより、夫婦2人分の老齢基礎年金を含むモデル世帯の厚生年金受給額は、月額23万2784円となりました。これは、前年度から月額で4412円の増額に相当します。

厚生年金が急に増額された理由は?

年金額は、物価や現役世代の賃金の変動に基づいて毎年改定されます。

近年の物価上昇を反映し、年金生活者の生活水準を維持するために、2023年度から3年連続で年金額が増額改定されています。

注意点

ただし、将来の年金財政の安定化を図る「マクロ経済スライド」という仕組みにより、物価や賃金の上昇ほどには年金額は増えない調整が行われています。

まとめ

厚生年金の受給額を増やすためには、「60歳以降も長く働く」「繰下げ受給を利用する」といった主体的な行動が有効です。

毎年10月に年金額が改定される「在職定時改定」は、65歳以降も働きながら年金増額を実感できる制度として活用が期待されます。

また、2027年からは高所得者層の保険料が段階的に引き上げられますが、これは将来の年金受給額の増加にもつながります。さらに、在職老齢年金制度の支給停止基準額も引き上げられる予定で、高齢者がより働きやすい環境が整いつつあります。

まずは「ねんきんネット」などを活用して自身の年金記録を確認し、将来の働き方や受給開始時期について具体的な計画を立ててみることが大切です。

自身のライフプランに合った最適な選択をし、豊かな老後生活を実現しましょう。

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ご留意事項

  • 本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品の取引を勧誘するものではありません。
  • 本記事の内容は記事公開時または更新時点の情報に基づいています。制度・法令・税制等の変更により、現在の情報と異なる場合があります。
  • 本記事の内容の正確性、完全性、最新性を保証するものではなく、予告なく変更または更新する場合があります。
  • 投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任とご判断のもとで行っていただきますようお願いいたします。

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監修
西岡 秀泰
  • 西岡 秀泰
  • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。


執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。