
FIREムーブメントとは?「経済的自立と早期リタイア」の定義とよくある誤解
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「FIREムーブメントに興味があるけど、具体的に何をすればいいかわからない」「経済的に自立して、早期リタイアなんて本当に実現できるの?」といった疑問をお持ちではありませんか?
近年、働き方や生き方の多様化に伴い、「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という考え方が注目されています。
本記事では、FIREの基本的な考え方から具体的な実現方法まで、その全貌を解説します。自分らしい人生を設計するための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
- FIREの基本的な考え方と2つの柱
- FIREに必要な資産額の計算方法と注意点
- FIREのメリット・デメリットと向いている人の特徴
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FIREムーブメントとは何か?基本的な考え方
FIREムーブメントとは、経済的な自立を達成し、従来の定年よりも早く退職することを目指すライフスタイルや考え方のことです。単に仕事を辞めるだけでなく、資産からの収入で生活費を賄える状態を築くことが核となります。
ムーブメントは、1992年に出版された書籍『お金か人生か』が源流とされ、近年ではSNSやブログを通じて多くの人々に広まりました。働き方の価値観が多様化する現代において、時間や場所に縛られない自由な生き方を求める人々から強い支持を得ています。
FIREの2つの柱:経済的自立と早期リタイア
FIREは、その名の通り「Financial Independence(経済的自立)」と「Retire Early(早期リタイア)」という2つの要素で構成されています。
経済的自立とは、給与所得のような労働収入に頼らなくても、資産からの不労所得(株式の配当金、不動産の家賃収入、投資信託の分配金など)で生活費を賄える状態を指します。これにより、お金のために働く必要がなくなります。
早期リタイアとは、経済的自立を達成した上で、一般的な定年年齢(65歳など)よりも早く退職することを意味します。退職後は、趣味や旅行、社会貢献活動など、自分が本当にやりたいことに時間を使うことが可能になります。2つを両立させることが、FIREムーブメントの基本的な目標です。
なぜFIREが注目されているのか
FIREムーブメントが近年急速に注目を集めている背景には、いくつかの社会的要因があります。
1つは、インターネットとSNSの普及です。多くのブロガーやインフルエンサーが自身のFIRE達成までの道のりやライフスタイルを発信し、それを見た人々が「自分にもできるかもしれない」と考えるきっかけとなりました。
また、働き方の価値観が変化したことも大きな要因です。終身雇用制度が揺らぎ、1つの会社で働き続けることが当たり前ではなくなった現代において、会社に依存しない生き方を模索する人が増えています。さらに、将来の年金制度に対する不安から、自助努力による資産形成の重要性が認識されるようになったことも、FIREへの関心を高める一因となっています。
FIREには主に5つのタイプ
FIREとひと言でいっても、そのスタイルは1つではありません。目指すライフスタイルや資産状況によって、いくつかのタイプに分類されます。ここでは、代表的な5つのFIREのタイプを紹介します。それぞれの特徴を理解し、自分に合った目標設定の参考にしてみてください。
フルFIRE(ファットFIRE):余裕ある生活を維持したまま早期リタイア
フルFIRE、またはファットFIREは、多くの人が理想とするFIREの形態です。これは、早期リタイア後も現役時代と同等、あるいはそれ以上に裕福な生活水準を維持することを目指します。
生活費のすべてを資産からの不労所得で賄うため、達成には多額の資産が必要です。例えば、年間1000万円以上の生活費を想定する場合、目標資産額は数億円に達することもあります。旅行や趣味に惜しみなくお金を使いたい、生活レベルを一切落とさずに自由な時間を満喫したいと考える人に適したスタイルです。
リーンFIRE:支出を抑えてミニマルに生きる
リーンFIREは、生活費を切り詰め、質素でミニマルな生活を送ることを前提としたFIREのスタイルです。物質的な豊かさよりも、自由な時間を重視する価値観を持つ人に適しています。
生活費を低く抑えることで、フルFIREに比べて少ない資産額で早期リタイアが可能になります。例えば、年間の生活費を200万円程度に設定すれば、目標資産額は5000万円ほどとなり、達成のハードルは下がります。ただし、リタイア後も継続して節約生活を送る必要があるため、自分にとって快適な最低限の生活レベルを見極めることが欠かせません。
サイドFIRE:副収入と資産収入で自由度の高い暮らし
サイドFIREは、資産からの不労所得と、自身の裁量でコントロールできる労働収入(副業など)を組み合わせて生活するスタイルです。完全に労働から離れるわけではありませんが、生活のために嫌な仕事を続ける必要がなくなります。
例えば、生活費の半分を資産収入で、残りの半分を好きなことや得意なことを活かしたフリーランスの仕事で賄う、といった形です。これにより、フルFIREよりも低い資産額でFIREを達成でき、社会とのつながりを保ちながら自由度の高い生活を送ることが可能になります。まったく働かなくなることに不安を感じる人や、自分のペースで仕事を続けたい人に人気のスタイルです。
バリスタ FIRE:パートタイム労働と資産収入の組み合わせ
バリスタFIREは、サイドFIREの一形態で、特に企業などに雇用される形のパートタイム労働で収入の一部を補うスタイルのことを指します。その名称は、福利厚生が充実しているカフェのバリスタとして働くイメージから来ています。
最大のメリットは、短時間勤務でも要件を満たせば企業の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる点です。国民健康保険料や国民年金保険料の負担を抑えつつ、安定した医療保障や将来の年金を得られるため、日本では現実的な選択肢として注目されています。資産収入だけでは少し心許ないけれど、社会保障の恩恵は受け続けたいという人に適しています。
コーストFIRE:老後資金を確保して現役を楽しむ
コーストFIREは、他のFIREとは少し異なる新しい概念です。これは「早期リタイア」を直接の目的とせず、「将来の老後資金の準備が完了した状態」を指します。
具体的には、一般的な定年退職時に必要となる資産額を、追加の投資なしに複利効果だけで達成できるだけの元本を若いうちに築き上げることを目指します。例えば、30歳で1500万円を投資し、それが複利で増えて65歳には目標の老後資金に到達する見込みが立てば、その時点でコーストFIRE達成です。
達成後は、老後のための貯蓄や投資に追われる必要がなくなるため、日々の収入を趣味や自己投資、旅行など、現在の生活を豊かにするために自由に使えるようになります。キャリアを続けながらも、お金の心配から解放されたいと考える人に最適なスタイルです。
FIREに必要な資産額の計算方法
FIREを実現するためには、まず目標となる資産額を具体的に設定することが不可欠です。その計算の基礎となるのが、FIREムーブメントで広く知られている「4%ルール」です。ルールを理解し、自身の生活費に当てはめることで、現実的な目標額が見えてきます。ここでは、その計算方法と、日本で適用する際の注意点を解説します。
4%ルールとは?FIREの基本となる考え方
「4%ルール」とは、FIREの目標資産額を算出するための基本的な考え方です。これは、アメリカのトリニティ大学の研究に基づいたもので、「年間支出の25倍の資産を築けば、その資産を年率4%で取り崩していっても、30年以上にわたって資産が尽きる可能性は低い」という理論です。
ルールの背景には、株式や債券で構成されたポートフォリオの長期的な平均リターンがインフレ率を上回るという前提があります。つまり、資産を取り崩しても、残りの資産が運用によって成長することで、元本が減るのを防ぐという仕組みです。
考え方を用いることで、FIREに必要な資産額を簡単に計算できます。計算式は以下の通りです。
FIREに必要な資産額 = 年間生活費 × 25
例えば、年間の生活費が400万円であれば、必要な資産は1億円(400万円 × 25)となります。
年間生活費別の必要資産額一覧
4%ルールを基に、FIRE達成に必要な資産額を年間の生活費別にシミュレーションすると、以下のようになります。ご自身の現在の生活費や、FIRE後に理想とする生活レベルを当てはめて、目標額の目安を確認してみてください。
ように、生活費を抑えることができれば、目標資産額も下がることがわかります。リーンFIREを目指すか、ファットFIREを目指すかによって、準備すべき金額が異なるため、まずは自分がどの程度の生活水準を望むのかを明確にすることが鍵となります。
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日本でFIREする場合の注意点
4%ルールはアメリカの研究に基づいたものであり、日本でFIREを目指す際にはいくつかの注意点を考慮する必要があります。
第1に、税金と社会保険料です。投資で得た利益(配当金や売却益)には、日本では20.315%の税金がかかります。また、退職後は国民健康保険や国民年金に自身で加入する必要があり、これらの保険料も生活費に含めて計算しなければなりません。4%ルールは税引き前のリターンを前提としているため、税金や社会保険料を考慮すると、手元に残る金額は想定より少なくなる可能性があります。
第2に、市場の変動リスクです。4%ルールはあくまで過去のデータに基づく平均値であり、将来も同じリターンが保証されるわけではありません。リタイア直後に市場が暴落すると、資産が減少し、計画が破綻するリスクが高まります。専門家の中には、運用収益の変動性を考慮すると「4%ルールは幻想」と指摘する声もあります。
これらのリスクを考慮し、日本ではより保守的に3%ルール(年間支出の33倍の資産)を目安にしたり、生活防衛資金を別途確保したりするなど、余裕を持った計画を立てることが賢明です。
日本ではNISA(少額投資非課税制度)を活用することで、運用益にかかる税金をゼロにすることができます。そのため、FIREを目指す資産形成において、まずはNISAの枠を最優先で埋めることが鉄則といえます。
FIREを目指す上でよくある誤解
FIREムーブメントが広まるにつれて、その言葉のイメージだけが先行し、いくつかの誤解が生まれています。FIREを正しく理解し、現実的な目標を立てるために、ここではよくある3つの誤解について解説します。
誤解1:FIREは完全に働かないこと
FIREの「RE(Retire Early)」という言葉から、「完全に仕事から引退すること」と捉えられがちですが、これは必ずしも正しくありません。実際には、FIREを達成した多くの人々が、何らかの形で仕事を続けています。
FIREの本質は「経済的自立」、つまり「お金のために働く必要がない状態」を達成することにあります。そのため、生活費の心配から解放された上で、自分が本当に情熱を注げる仕事や、社会貢献につながる活動を続けるという選択肢が生まれます。サイドFIREやバリスタFIREのように、意図的に労働収入を得るスタイルも存在します。FIREは労働からの完全な解放ではなく、仕事との関わり方を自分で選択できる自由を手に入れること、と捉えるのがより正確です。
誤解2:若いうちに達成しないと意味がない
FIREは「早期リタイア」を意味するため、30代や40代といった若いうちに達成しなければならないというイメージが強いかもしれません。しかし、リタイアのタイミングに決まったルールはありません。
現代は「人生100年時代」といわれ、多くの人が65歳以降も働き続ける社会になりつつあります。そのような状況において、例えば55歳や60歳でリタイアすることも、十分に「早期リタイア」といえるでしょう。このような少し遅めの60歳前後のFIREは「FIRA60(Financial Independence, Retire Around 60)」とも呼ばれます。
FIRA60には、40代でのFIREに比べて資産形成の期間を長く取れる、退職金や厚生年金をより多く受け取れるといったメリットがあります。年齢に固執せず、自身のライフプランに合わせて柔軟な目標を設定することが欠かせません。
誤解3:極端な節約生活が必須
FIREを目指す過程では、収入の大部分を貯蓄や投資に回すため、ある程度の節約は必要です。しかし、それが必ずしも極端な切り詰め生活を意味するわけではありません。
FIREには、支出を最小限に抑える「リーンFIRE」だけでなく、現役時代と同等かそれ以上の生活水準を目指す「ファットFIRE」というスタイルも存在します。また、FIRE達成者のなかには、普段は倹約を心がけつつも、旅行や食事など、自分が価値を感じることには惜しまずお金を使うという人もいます。
重要なのは、自分にとって何が大切かを見極め、メリハリのある支出を心がけることです。現在の幸福を過度に犠牲にしてしまうと、資産形成のモチベーションを維持することが難しくなります。持続可能な範囲で、楽しみながら資産形成に取り組むことが成功の鍵です。
FIREのメリットとデメリット
FIREは多くの自由をもたらす一方で、見過ごせないリスクや課題も存在します。経済的自立と早期リタイアという目標に向かう前に、その光と影の両面を正しく理解しておくことが欠かせません。ここでは、FIREがもたらすメリットと、直面する可能性のあるデメリットや注意点を具体的に解説します。
FIREのメリット
FIREを達成することで得られる最大の恩恵は、人生の主導権を自分自身に取り戻せることです。お金や時間に縛られない生活は、精神的な豊かさや新たな可能性をもたらします。
時間的自由の獲得
FIREを達成すると、1日24時間、1年365日をすべて自分の裁量で使えるようになります。これは最大のメリットと言えるでしょう。
通勤や労働に費やしていた時間を、趣味、旅行、自己研鑽、家族との団らんなど、自分が本当に価値を置く活動に充てることができます。時間に追われることのない、ゆとりのある日々を送ることで、心身ともに健康的な生活が期待できます。
人生の選択肢が広がる
経済的自立は、人生における様々な選択肢を広げます。収入を気にすることなく、住む場所や仕事を選ぶことが可能になります。
例えば、現在の高給な仕事にやりがいを感じていなくても、FIREを達成していれば、収入は低くても情熱を注げる仕事に転職したり、起業に挑戦したりすることができます。また、地方への移住や海外での長期滞在など、ライフスタイルそのものを自由に変えることも可能です。人生の可能性を広げられる点は、FIREの大きな魅力です。
ストレスからの解放
多くの現代人が抱えるストレスの根源は、仕事上の人間関係や過度な業務、そして経済的な不安です。FIREは、これらのストレスから解放される道筋を示してくれます。
経済的な基盤が安定することで、日々のやりくりに追われる金銭的なストレスが軽減されます。また、働くかどうか、どのような仕事をするかを自分で決められるため、職場の人間関係やノルマといった精神的な負担からも解放されます。心に余裕が生まれることで、より穏やかで充実した毎日を送ることができるでしょう。
家族との時間の増加
FIREによって得られる時間的な余裕は、家族との関係をより豊かにする機会をもたらします。日々の仕事に追われていた頃には難しかった、家族とゆっくり過ごす時間を確保できるようになります。
子供の成長を間近で見守ったり、パートナーと共通の趣味を楽しんだり、高齢になった親の介護に時間を充てたりと、大切な人々とのかけがえのない時間を過ごすことが可能です。家族との絆を深めることは、人生の満足度を高める上で重要な要素です。
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FIREのデメリット・注意点
FIREは魅力的なライフスタイルですが、その実現と維持にはいくつかのデメリットや注意すべき点が存在します。計画段階でこれらのリスクを十分に認識し、対策を講じておくことが必須です。
社会的つながりの減少リスク
会社を辞めるということは、単に収入源を失うだけでなく、長年築いてきた社会的基盤や人間関係を失うことでもあります。多くのFIRE達成者が、退職後に社会とのつながりが希薄になり、孤独感や目標喪失感に直面すると指摘しています。
仕事を通じて得られる同僚との交流や、社会の一員としての役割意識は、人が精神的な充実感を得る上で重要な要素です。FIREを目指す際は、退職後の新たなコミュニティへの参加や、社会貢献活動など、意識的に社会との接点を持つ計画を立てておくことが大切です。
市場暴落時の精神的負担
FIRE後の生活は、資産運用からの収入に依存します。そのため、株式市場の暴落などによって資産価値が大幅に減少した場合、精神的な負担は計り知れません。
給与所得という安定した収入源がない中で、資産が日々目減りしていく状況は、大きな不安とストレスをもたらします。当初の計画通りに資産を取り崩すことが困難になり、生活水準の見直しを迫られる可能性もあります。
このような事態を避けるため、株式だけでなく債券やゴールドなどを組み合わせてポートフォリオの変動幅を抑えることや、「現金クッション」として、生活費の2〜5年分を無リスク資産(現金・預金)で確保しておくのがおすすめです。暴落時は資産を売却せず、この現金を生活費に充てることで、資産が回復するのを待つことができます。
目的のない生活への不安
「仕事からの解放」はFIREの大きな目標ですが、同時に「人生の目的」を失うきっかけにもなり得ます。仕事に大きなやりがいや自己実現の価値を見出していた人ほど、退職後に深刻な虚無感や目標喪失感に陥ることがあります。
毎日が「日曜日」のような生活は、最初のうちは楽しいかもしれませんが、次第に刺激がなくなり、時間を持て余してしまう可能性があります。経済的な自由を手に入れた後、その自由な時間を何に使って生きるのか、という新たな問いに直面します。FIREを計画する段階で、リタイア後の人生で何を成し遂げたいのか、明確なビジョンを持っておくことが欠かせません。
再就職の難しさ
万が一、資産運用の失敗や想定外の支出によって資金が不足し、再び働く必要が生じた場合、再就職は容易ではありません。FIREのために数年間のブランク期間があると、キャリアの復帰の難易度は大きく上がります。
技術の進歩が速い業界では、数年の間に知識やスキルが陳腐化してしまうリスクがあります。また、日本の雇用市場では、年齢が上がることや職歴に空白期間があることが不利に働く傾向が依然として存在します。
その結果、以前と同等の待遇や職種で再就職することは難しく、収入が大幅に減少する可能性が高いことを覚悟しておく必要があるでしょう。
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FIREに向いている人・向いていない人
FIREは誰にでも適したライフスタイルというわけではありません。個人の価値観や性格、スキルによって、向き不向きが分かれます。ここでは、FIREの達成やその後の生活を楽しむために求められる資質を、向いている人と向いていない人の特徴として整理しました。ご自身がどちらのタイプに近いか、自己分析の参考にしてみてください。
FIREに向いている人の特徴
FIREを成功させる人々には、いくつかの共通した特徴が見られます。経済的な目標達成だけでなく、その後の人生を豊かに生きるための資質が求められます。
明確な目標や夢がある
FIREに向いている人は、単に「働きたくない」という動機だけでなく、リタイアした後の人生で成し遂げたい明確な目標や夢を持っています。
例えば、「世界中を旅したい」「趣味の創作活動に没頭したい」「社会貢献活動に時間を使いたい」といった具体的なビジョンがある人は、FIRE後の生活で目的を失うことなく、充実した日々を送ることができます。この目標が、資産形成期のモチベーション維持にも繋がります。
自己管理能力が高い
FIREの達成と維持には、高い自己管理能力が不可欠です。資産形成期においては、収入と支出を厳しく管理し、計画的に貯蓄や投資を実行する必要があります。
また、FIRE後も、資産の取り崩し計画を守り、予期せぬ市場の変動にも冷静に対処しなければなりません。会社という組織に管理されることなく、自分自身で生活のすべてを律することができる人、つまり自律性の高い人がFIREに向いていると言えます。
計画的に行動できる
FIREは、思いつきや勢いで達成できるものではありません。何十年にもわたる長期的な視点での計画立案と、その計画を着実に実行していく行動力が求められます。
目標資産額から逆算して毎月の積立額を設定し、投資ポートフォリオを定期的に見直し、ライフプランの変化に応じて計画を修正するなど、常に先を見越した行動が必要です。ゴールまでの道のりを具体的に描き、マイルストーンを設定して一歩ずつ進んでいける人が、FIREという大きな目標を達成することができます。
リスクを受け入れられる
FIREの資産形成は、主に株式投資などのリスク資産への投資によって行われます。市場は常に変動しており、資産価値が一時的に減少する可能性も受け入れなければなりません。
市場の短期的な動きに一喜一憂せず、長期的な視点で資産の成長を信じ、冷静に投資を継続できる精神的な強さが求められます。リスクを正しく理解し、それがリターンの源泉であることを認識した上で、不確実性と共に歩んでいける人がFIREに向いています。
FIREに向いていない人の特徴
一方で、特定の価値観や性格を持つ人は、FIREを目指す過程や達成後の生活で困難に直面する可能性があります。以下のような特徴に当てはまる場合は、FIREというライフスタイルが本当に自分に合っているのか、慎重に考える必要があるかもしれません。
計画を立てるのが苦手
FIREは長期にわたる緻密な計画とその実行が成功の鍵です。家計管理や資産運用の計画を立てることが苦手で、行き当たりばったりな行動を好み、将来のために現在の楽しみを我慢することに強い抵抗を感じる人は、FIREのプロセス自体が大きなストレスになる可能性があります。
消費が生きがい
最新のトレンドを追いかけたり、ショッピングをしたりすることに大きな喜びを感じる、いわゆる「消費が生きがい」というタイプの人にとって、FIREを目指すための節約生活は苦痛かもしれません。FIREは、物質的な所有欲よりも、時間的な自由や経験に価値を置くライフスタイルであるため、価値観の転換が必要になります。
仕事にやりがいを感じている
現在の仕事に大きなやりがいを感じ、自己実現の場として捉えている人は、無理にFIREを目指す必要はないかもしれません。FIRE達成者の中にも、結局は仕事の場に戻り、社会とのつながりや貢献に喜びを見出す人は少なくありません。仕事が人生の重要な一部である場合、早期リタイアが必ずしも幸福に繋がるとは限りません。
不確実性に耐えられない
FIRE後の生活は、資産運用の成果という不確実なものに依存します。市場の暴落で資産が目減りする可能性は常にあり、そのような状況に強い不安やストレスを感じる人は、精神的に安定した生活を送ることが難しいかもしれません。安定した給与収入がある会社員生活に安心感を覚えるタイプは、FIREには向いていない可能性があります。
FIREムーブメントに関するQ&A
ここでは、FIREムーブメントに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。多くの人が抱く疑問を解消し、FIREへの理解をさらに深めましょう。
Q. FIREに失敗することはある?
はい、FIREに失敗する可能性はあります。主な失敗要因として、資産運用の失敗、リタイア直後の市場暴落、インフレや増税による想定外の支出増、病気や介護といったライフイベントによる計画破綻などが挙げられます。計画の甘さや過度な楽観視は失敗につながるため、余裕を持った資金計画とリスク管理が不可欠です。
Q. 独身と既婚でFIREの難易度は変わる?
独身と既婚では、FIREの難易度にそれぞれ異なる側面があります。独身者は支出をコントロールしやすく、高い貯蓄率を維持しやすいメリットがあります。一方、既婚者は共働きであれば収入源が2つになり、資産形成を加速できる可能性があります。ただし、子供の教育費や住宅ローンなど支出が増える要因も多く、家族全員の理解と協力が不可欠です。どちらが有利とは一概には言えません。
Q. FIREを目指す過程で挫折しそうになったらどう考えればいい?
FIREは長期的な目標であり、途中で挫折しそうになることもあります。その際は、完璧なFIREに固執せず、目標を柔軟に見直すことが大切です。例えば、完全なリタイアではなく、労働収入を組み合わせる「サイドFIRE」や、リタイア時期を少し遅らせる「FIRA60」に目標を切り替えるのも1つの方法です。資産形成の努力は決して無駄にはならず、将来の経済的な自由度を高めることにつながります。
まとめ
FIREムーブメントは、経済的自立と早期リタイアを通じて、自分らしい人生を手に入れるための新しいライフスタイルです。その実現には、ファットFIREやリーンFIRE、サイドFIREなど多様な選択肢があり、それぞれに必要な資産額や生活スタイルが異なります。
目標資産額の算出には「4%ルール」が基本となりますが、税金や市場変動リスクなど、日本で実践する上での注意点も理解しておく必要があります。また、FIREは時間的自由という大きなメリットをもたらす一方で、社会的孤立や目的喪失といったデメリットも存在します。
FIREは誰にでも適した道というわけではありません。自己管理能力や計画性、そしてリタイア後の明確なビジョンを持つことが成功の鍵となります。まずはこの記事で紹介した知識を参考に、自身の価値観やライフプランと照らし合わせ、現実的で持続可能な計画を立てることから始めてみましょう。FIREは、人生の選択肢を広げるための強力な手段となるでしょう。
≫あなたはいくら必要?リタイア後の不足額をシミュレーション
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監修
高橋 明香
- ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者
みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。
