iDeCoはいつ引き出せる?60歳以降の受け取り方と損しないための注意点を徹底解説
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iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金づくりに有効な制度ですが、「途中でお金を引き出せるのか?」「60歳以降はどのように受け取れば有利か?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、iDeCoが原則60歳まで引き出せない理由や、例外的に受け取れるケースをわかりやすく解説します。さらに、60歳以降の受け取り方法(3つのパターン)と税制メリット、ケース別の有利な選び方、手続きの流れについてご紹介します。
(税金関連 監修:中川 美佐子|税理士)
- iDeCoの引き出しが原則60歳までできない理由
- 例外的に資産を受け取れる3つのケース
- 税負担を抑えるための最適な受け取り方法
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iDeCoは原則60歳まで引き出せない
iDeCoは、公的年金だけでは不足しやすい老後資金を補うために設計された私的年金制度です。そのため、原則として60歳になるまで資産を引き出すことはできません。
もし途中で自由に引き出せる仕組みだと、本来の目的である老後資金が確保できなくなる恐れがあります。そこで、安易な引き出しを防ぎ、加入者が計画的に老後資金を準備できるよう、60歳まで資金を拘束するルールが設けられています。
例外的に受け取れるケース(脱退一時金・障害給付・死亡一時金)
iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せませんが、特定の条件下では例外的に給付を受けることが可能です。これには「脱退一時金」「障害給付金」「死亡一時金」の3つのケースが存在します。
障害給付金は、加入者が75歳になる前に所定の高度障害状態になった場合に、年金または一時金として受け取ることができる制度です。
死亡一時金は、加入者が亡くなった場合に、その遺族が積み立てた資産を一時金として受け取るものです。受取人はあらかじめ指定できますが、指定がない場合は法令で定められた順位の遺族が受け取ります。
脱退一時金は、iDeCoを中途解約して資産を受け取る制度ですが、受給するためには厳しい条件をすべて満たす必要があります。そのため、この制度を利用できるケースは極めて限定的です。
脱退一時金の条件に注意
iDeCoを途中で解約して受け取れる「脱退一時金」は、すべての条件を満たす必要があります。
主な条件は以下の通りです。
- 60歳未満であること
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)の加入者でないこと
- 国民年金保険料の納付が免除されているなど、iDeCoに加入できない者であること
- 障害給付金の受給権者でないこと
- 通算の掛金拠出期間が5年以内、または個人別管理資産額が25万円以下であること
- 企業型DCまたはiDeCoの資格を喪失してから2年以内であること
特に、掛金の拠出期間や資産額に関する条件があり、長期間加入している場合や資産が一定額を超えている場合は対象外となります。
これらの条件を一つでも満たせない場合は脱退一時金を受け取れないため、基本的にiDeCoは途中解約できない制度と言われています。
受け取り開始年齢は加入年数によって変わる
iDeCoの老齢給付金は、原則として60歳から受け取ることが可能ですが、誰でも60歳から受け取れるわけではありません。
受け取りを開始できる年齢は、iDeCoの「通算加入者等期間」によって変動します。
この期間が短い場合、受け取り開始年齢が61歳以降に繰り下げられる点に注意が必要です。
60歳で受け取れる人/65歳以降になる人
iDeCoの資産を60歳から受け取るためには、通算加入者等期間が10年以上必要です。この期間は、iDeCoに加入して掛金を拠出していた期間だけでなく、企業型DCに加入していた期間なども合算されます。
iDeCoへの加入が50代など遅い年齢からだった場合、60歳時点での通算加入者等期間が10年に満たないことがあります。その場合、受け取り開始可能年齢は61歳から最大65歳まで段階的に繰り下げられます。
例えば、52歳で初めてiDeCoに加入した場合、60歳時点での加入期間は8年です。このケースでは、60歳から受け取ることはできず、61歳から受け取りが可能になります。
自身の加入期間を正確に把握し、いつから受け取れるのかを確認しておくことが重要です。
加入期間と受け取り開始年齢の対応表
iDeCoの老齢給付金を受け取れるようになる年齢は、通算加入者等期間に応じて以下のように定められています。
自身の加入期間と照らし合わせて、いつから受け取りが可能になるかを確認しましょう。
なお、60歳以降に初めてiDeCoに加入した場合は、加入日から5年が経過した日以降に受け取りが可能となります。
iDeCoの受け取り方法は3種類
iDeCoで積み立てた資産は、受け取り開始年齢に達した後、「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3つの方法から受け取り方を選択できます。
どの方法を選ぶかによって税金の計算方法が異なるため、それぞれの特徴を理解し、自身の状況に合った受け取り方法を選ぶことが大切です。
一時金で受け取る場合(退職所得控除)
一時金での受け取りは、iDeCoで運用してきた資産を一括で全額受け取る方法です。この方法を選択した場合、受け取る資産は税法上「退職所得」として扱われます。
退職所得の大きなメリットは、「退職所得控除」という税制優遇が適用される点です。退職所得控除とは、課税対象となる所得から一定額を差し引ける制度で、控除額はiDeCoの加入年数(掛金拠出期間)に応じて大きくなります。
加入期間を基に控除額を算出するので、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。さらに、控除額を差し引いた後の金額も、その2分の1の金額が課税対象となるため、他の所得に比べて税制上非常に優遇されています。
年金形式で受け取る場合(公的年金等控除)
年金形式での受け取りは、iDeCoの資産を5年以上20年以下の期間で分割して定期的に受け取る方法です。公的年金のように、毎月や隔月など、金融機関が定めるサイクルで受け取ることができます。
この方法で受け取る場合、給付金は税法上「雑所得」に分類されます。雑所得のうち「公的年金等」には「公的年金等控除」が適用され、課税対象となる所得を計算する際に一定額を差し引くことができます。
ただし、この控除はiDeCoの給付金と国民年金や厚生年金といった公的年金の収入も合算した上で適用されます。
そのため、公的年金の受給額が多い場合は、控除枠を超えてしまうことが考えられます。
一時金+年金の併用で受け取る場合
iDeCoの受け取り方法として、一時金と年金を組み合わせて受け取ることも可能です。この方法では、積み立てた資産の一部をまず一時金として一括で受け取り、残りの資産を年金形式で分割して受け取ります。
この併用方式のメリットは、それぞれの受け取り方法に適用される税制優遇を両方活用できる点にあります。
- 一時金として受け取る部分:退職所得控除の対象。
- 年金として受け取る部分:公的年金等控除の対象。
例えば、会社の退職金とiDeCoの一時金を合わせると退職所得控除の枠を超えてしまう場合に、超える部分を年金形式で受け取ることで、税負担を分散・軽減するといった活用が考えられます。
自身の退職金や公的年金の状況に合わせて、柔軟に設計できるのが特徴です。
どの受け取り方法が有利?ケース別に解説
iDeCoの受け取り方でどれが最も有利かは、個人の状況によって異なります。特に、勤務先からの退職金の有無や金額、公的年金以外の収入状況などが大きく影響します。
自身のライフプランや資産状況を整理し、最適な選択をすることが重要です。
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退職金がある人は控除枠を確認
会社員や公務員の方で退職金を受給する予定がある場合は、iDeCoを一時金で受け取る際に注意が必要です。会社の退職金とiDeCoの一時金はどちらも「退職所得」として扱われ、退職所得控除の枠を合算して計算するためです。
退職金の金額が大きい場合、それだけで退職所得控除を使い切ってしまい、iDeCoの一時金に控除が適用されず課税対象が増えるケースがあります。
従来は「5年ルール」により、iDeCoを先に受け取った後退職金の受け取りを5年以上ずらせば別々に控除を計算できました。
しかし、2026年からは「10年ルール」に変更され、iDeCoを受け取ってから10年以内に退職金を受け取ると控除枠が通算されます。そのため、控除を満額受けられないケースが増える可能性があります。
なお、退職金を先に受け取って後でiDeCoを受け取る場合には、例外的に「19年ルール」が適用されます。この場合には、退職金を受け取った後20年経たないと、控除の重複適用が認められません。
公的年金以外の収入がある人は年金形式に注意
iDeCoを年金形式で受け取る場合、公的年金(国民年金・厚生年金)以外の収入がある方は注意が必要です。
年金形式で受け取るiDeCoの給付金は「雑所得」として扱われ、他の所得と合算して課税所得金額を算出する「総合課税」の対象となります。
不動産収入や個人事業の収入など、公的年金以外の所得が多い方がiDeCoを年金形式で受け取ると、全体の所得額が大きくなります。日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、所得額が大きくなるほど高い税率が適用されるので、結果として税負担が増加することが考えられますます。
さらに、所得金額は住民税だけでなく、国民健康保険料や介護保険料の算定基準にもなります。総所得金額が増えることで、これらの社会保険料の負担も増える可能性があることを念頭に置いておく必要があります。
専業主婦や退職金が少ない人は一時金が有利なケースも
専業主婦(夫)や、自営業者、あるいは勤務先に退職金制度がないなど、会社の退職金を受け取る予定がない、または金額が少ない人にとっては、iDeCoを一時金で受け取る方法が税制上、有利になる可能性が高いです。
その理由は、税負担の軽減効果がある「退職所得控除」の枠を、iDeCoの加入期間で計算するため、控除の枠を有効活用できるためです。
iDeCoの受取額がこの控除額の範囲内であれば、所得税は一切かかりません。退職所得は他の所得と分離して計算されるため、他に収入があっても影響を受けにくいのが大きな利点です。
そのため、退職所得控除の枠を他に利用する予定がない場合は、一時金での受け取りを検討すると良いでしょう。
iDeCo受け取りの手続きと流れ
iDeCoの資産を受け取るためには、自動的に給付が始まるわけではなく、自身で手続きを行う必要があります。
受け取り可能年齢が近づいたら、加入している金融機関からの案内に注意し、計画的に準備を進めることが大切です。
手続きには一定の時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
受け取り開始の申請先と必要書類
iDeCoの受け取り手続きを開始してから、実際に給付金が振り込まれるまでには、一般的に1ヶ月から2ヶ月程度の期間を要します。提出された書類を金融機関や国民年金基金連合会が確認し、審査する時間が必要なためです。
書類に不備があった場合は、再提出が必要となり、さらに時間がかかります。そのため、60歳の誕生日を迎えたらすぐに受け取りたい、あるいは特定の時期から受け取りを開始したいといった希望がある場合は、その時期から逆算して、余裕を持って手続きを開始することがおすすめです。
受け取り可能年齢が近づいてきたら、早めに金融機関に連絡を取り、手続きのスケジュール感を確認しておくことを推奨します。
手続きの注意点とよくある失敗例
iDeCoの受け取り手続きをスムーズに進めるためには、いくつかの注意点があります。よくある失敗例として、登録情報の不備が挙げられます。
特に、長期間にわたって加入していると、引越しなどで住所が変わっているにもかかわらず、登録住所の変更手続きを忘れているケースが少なくありません。
この場合、金融機関からの重要な案内書類が届かず、手続きの開始が大幅に遅れてしまう原因となります。受け取りが近づいたら、まずは登録情報が最新の状態になっているかを確認しましょう。
また、提出書類の記入漏れや押印ミス、必要書類の添付漏れなども、手続きが滞る一般的な原因です。書類を提出する前には、記載内容に誤りがないか、すべての必要書類が揃っているかを複数回確認することが大切です。
些細なミスが原因で給付金の受け取りが遅れることのないよう、慎重に手続きを進めましょう。
まとめ
iDeCoは老後の資産形成を目的とした制度であり、原則として60歳になるまで資産を引き出すことはできません。ただし、例外的に加入者の死亡や高度障害、あるいは厳しい条件を満たした場合の脱退などは受け取りが可能です。
受け取り方には「一時金」「年金」「併用」の3種類があり、それぞれ税金の計算方法が異なります。一時金は税制上優遇された「退職所得控除」が、年金は「公的年金等控除」が適用されます。
どの受け取り方が最も有利かは、会社の退職金の有無や他の収入状況によって大きく変わるため、ご自身の状況をよく確認し、最適な方法を選択することが重要です。受け取り手続きには時間がかかるため、早めに準備を始めるようにしましょう。
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森本 由紀
- ファイナンシャルプランナー/AFP(日本FP協会認定)/行政書士
行政書士ゆらこ事務所(Yurako Office)代表。愛媛県松山市出身。神戸大学法学部卒業。法律事務所事務職員を経て、2012年に独立開業。メイン業務は離婚協議書作成などの協議離婚のサポート。離婚をきっかけに自立したい人や自分らしい生き方を見つけたい人には、カウンセリングのほか、ライフプラン、マネープランも含めた幅広いアドバイスを行っている。法律系・マネー系サイトでの記事の執筆・監修実績も多数。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。




