個人年金保険とiDeCoの違いは?どっちが得?後悔しない選び方をプロが徹底解説
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個人年金保険とiDeCo(個人型確定拠出年金)、年金形式で受け取る点が共通しているため、老後資金作りをするにあたってどちらを利用するべきか、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
個人年金保険とiDeCo、それぞれ仕組みやメリット・デメリットが異なります。
本記事では2つを徹底比較し、どちらを選ぶべきか、併用した方が良いのか、目的別の選び方についてファイナンシャルアドバイザーが解説します。
- 個人年金保険とは支払った保険料を年金形式で受け取る保険商品のこと
- iDeCoとは自ら掛金を拠出し運用を行う私的年金制度のこと
- 老後資金を目的とした場合、個人年金保険とiDeCoの併用がおすすめ
- 個人年金保険は「資産運用についてあまり知識がない人」「貯金が苦手な人」におすすめ
- iDeCoは「資産運用について少し知識がある人」「60歳まで決まった金額を拠出できる人」におすすめ
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個人年金保険とiDeCoの違いとは?特徴や仕組みを徹底比較!
個人年金保険は民間の保険会社が取り扱っている保険商品のひとつです。
60歳や65歳など、一定の年齢まで保険料を支払い、概ね既払込保険料を上回る金額を年金として受け取れる仕組みです。
一方、iDeCo(イデコ)は個人型確定拠出年金ともいい、自ら掛金を拠出し運用を行うことで、老後の資産形成が可能となる私的年金制度です。
個人年金保険とiDeCoは老後資金作りの方法として比較されることも多く、どちらが自分に適しているか、悩んでいる人も多いかもしれません。
個人年金保険とiDeCo、両方の特徴や仕組みを下記のシミュレーションをもとに比較していきましょう。
比較①支払う・拠出できる金額
個人年金保険の場合は、保険会社や商品によって支払う保険料は異なります。
一方、iDeCoの掛金は国民年金の加入区分によって拠出できる金額が変わります。
自営業は月額6.8万円、会社員は月額2.3万円程度、公務員は月額1.2万円、専業主婦(夫)などは月額2.3万円を拠出することが可能です。
公務員は以前まで確定給付年金(DB)に加入が認められず、掛金上限額が1.2万円と会社員や自営業者と比べると拠出できる金額が少ない状況でした。
しかし制度改定により、2024年12月から公務員の掛金上限額が変更になり、2万円まで拠出ができるようになります。
(関連記事:法改正により、公務員がさらにiDeCoを利用しやすくなる|マネイロメディア)
比較②加入可能期間
個人年金保険は保険会社、商品や保険料の払い方によって加入できる期間は異なります。
一般的に保険料を月払、年払などで払う場合は60歳〜70歳、一時払の場合は70〜80歳を加入年齢の上限とする生命保険会社が多いようです。
iDeCoの場合、加入可能年齢は原則60歳までとされていましたが、2022年5月から60歳以上でも国民年金被保険者であれば65歳まで加入ができるようになりました。
(参考:個人年金保険は何歳くらいまで加入できるの?|公益財団法人 生命保険文化センター)
比較③節税効果(所得税・住民税)
個人年金保険とiDeCoは節税効果も異なります。
一定の条件を満たした個人年金保険は個人年金保険料控除の対象となり、税の負担を軽減することができます。所得税は4万円まで、住民税は2.8万円までの控除を受けることが可能です。
毎月1万円の保険料を支払った場合、税軽減効果がどのくらいあるのか計算してみましょう。
4万円×10%=4000円
【住民税】
2.8万円×10%=2800円
個人年金保険で所得税、住民税が控除された場合、節税効果は年間6800円となります。
一方、iDeCoの場合、個人年金保険とは異なり、控除額に上限はなく、積み立てた金額がすべて控除対象となります。
この場合の税軽減効果を計算してみましょう。
12万円×10%=1.2万円
【住民税】
12万円×10%=1.2万円
節税効果は年間2.4万円となり、iDeCoの方が個人年金保険よりも節税効果が高いことがわかりました。
比較④受け取り時の税金の取り扱い
個人年金保険は保険の契約者と保険金の受取人が同じ場合は受け取る年金は「雑所得」となります。
雑所得とは
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得のこと
<引用:No.1500 雑所得|国税庁>
契約者と受取人が異なる場合は、1年目は贈与税が、2年目以降は所得税(雑所得)がかかります。
贈与税とは
個人から贈与により財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税のこと
<引用:「相続税」と「贈与税」を知ろう---もっと知りたい税のこと 令和元年10月 : 財務省>
ちなみに個人年金保険の場合、年金受取時の税優遇はありません。
一方iDeCoの場合、一括で受け取る場合は退職所得控除、分割で受け取る場合は公的年金等控除の対象となります。
また、運営管理期間によっても異なりますが、一部を一時金で受け取り、残りを年金として受け取る場合は退職所得控除と公的年金等控除、両方の対象となります。
iDeCoは年金の受け取り時に所得控除を受けられるため、個人年金保険よりも高い節税効果を期待できます。
比較⑤各種手数料
個人年金保険は保険会社によって手数料の額は異なりますが、保険の契約、管理にかかる保険関係費用や10年以内に解約する場合に必要となる解約控除など、各種手数料が発生する場合があります。
一方、iDeCoでは、口座管理の手数料として、事務手数料、資産管理手数料、運営管理手数料が発生します。
事務手数料は年間1260円(毎月105円)、資産管理手数料は年間792円(毎月64円)、運営管理手数料は金融機関によって異なります。
このほかにも、加入時や移換時の手数料、年金の受取時に発生する給付事務手数料などが必要となります。
比較⑥流動性
iDeCoは原則60歳まで積み立てたお金を引き出すことはできません。
一方、個人年金保険はいつでも引き出すことが可能です。ただし、10年以内に解約してお金を引き出してしまうと、解約控除費用が発生します。
この解約控除費用は契約時からの経過年数に応じて控除する金額が異なり、経過年数が短いほど金額が高くなる傾向があります。
そのため、10年以上継続して保険料を支払うことが難しい場合は、個人年金保険に加入しても損をしてしまう可能性があるため注意しましょう。
比較⑦メリット・デメリット
次に個人年金保険とiDeCo、それぞれのメリットとデメリットについて見てみましょう。
個人年金保険のメリット・デメリット
個人年金保険のメリットには、個人年金保険料控除が受けられること、老後資金を着実に貯められることなどが挙げられます。
個人年金保険料控除は所定の条件はあるものの、条件を満たせば控除を受けることができます。
老後の資産形成にも役立つため、加入を検討するのも一案です。毎月、保険料を支払うことで老後資産を確実に貯めることもできるので、先取り貯蓄のように資産形成が可能になるでしょう。
一方、個人年金保険のデメリットはインフレに弱いこと、途中解約すると元本割れをする可能性が高いことなどが挙げられます。
定額の個人年金保険は、将来受け取れる金額が加入時に概ね決まっているため、途中でインフレが起こっても、それに対応することができません。
また、早期に解約すると解約控除などの費用が発生するため、支払った保険料を下回ってしまう可能性が高くなります。
iDeCoのメリット・デメリット
iDeCoの主なメリットは拠出時、運用時、受取時に受けられる3つの控除です。
拠出時には掛金全額が所得控除の対象となり、運用時には利益に対する税金が非課税となります。また、年金資産の受け取り時も公的年金等控除や退職所得控除の対象となります。
一方、iDeCoで運用する場合には加入時、拠出時、年金給付時、移管時など、各種の手数料が必要となります。
途中解約が原則できないため、60歳まで引き出すことができないのもデメリットのひとつといえるでしょう。
iDeCoを投資信託で運用する場合は投資に関するさまざまなリスクがあります。元本割れの可能性があることも覚えておくと良いでしょう。
個人年金保険とiDeCo、自分はどっち?目的別の選び方
個人年金保険とiDeCo、どちらに加入するべきか検討している人に向けて、目的別の選び方を解説していきます。
老後資金を貯めたい場合
iDeCoは多くの節税効果があり、老後資金作りに特化した国の制度です。
ただし、iDeCoだけで老後資金を準備しようとしても、老後に必要な額を貯められない可能性があります。
資金に余裕のある場合はiDeCoだけでなく、個人年金保険も併せて利用すると良いでしょう。
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教育資金を貯めたい場合
iDeCoと個人年金保険は、老後の資産形成が目的のため、教育資金づくりには向きません。
iDeCoは原則60歳まで引き出せず、個人年金保険は解約控除などの手数料で短期間の運用の場合、元本を割る可能性が高くなります。
ただし、個人年金保険の保険料を一時払いで支払った場合、商品によっては将来の教育資金として活用することも可能です。
保険商品の設計書などで、年ごとの解約返戻金を確認すると良いでしょう。
Q.教育資金を貯めるのは学資保険がベスト?
学資保険で教育資金を備えるメリットは3つあります。
- 契約者に万が一のことがあった場合、以後の保険料の支払いは不要
- 子どもの進学に合わせた受け取り方ができる
- クレジットや口座引落で保険料を支払うため、自動的に積み立てができる
ただし、現在の学資保険の返戻率は以前よりも低い状況にあります。また、途中解約すると元本割れのリスクがあります。
そのため、効率よく教育資金を貯めていくのであれば学資保険ではなく、貯蓄性のある終身保険などを検討する方が、より現実的でしょう。
終身保険は満期がなく、教育資金として使わなかった場合は将来の老後資金などにも充てることができます。
さまざまな資金需要に対応できる保険商品といえるでしょう。
節税対策をしたい場合
節税対策をしたい場合は個人年金保険よりもiDeCoを活用すると良いでしょう。
iDeCoは拠出時、運用時、受取時に税制優遇を受けられます。
拠出時は掛金の全額が所得控除の対象となり、運用時に生じた利益は非課税となります。受取時にも公的年金等控除や退職所得控除を受けられるため、高い節税効果が期待できます。
Q.住宅ローン控除を使っている場合はどっちがいい?
住宅ローン控除を受けています。この場合、節税効果にどのような影響がでますか?
住宅ローン控除が既に適用されている場合はiDeCoの節税効果を受けられない可能性があります。
住宅ローン控除は、住宅ローンのうち0.7%を所得税額から控除する制度です。
そのため住宅ローン控除で実質、所得税の負担がなくなっている場合は、iDeCoを活用しても税メリットを享受することができないでしょう。
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個人年金保険が向いている人
個人年金保険が向いている人の特徴を見てみましょう。
資産運用についてあまり知識がない人
資産運用についてあまり知識がない人は定額個人年金保険など、値動きのほとんどない金融商品が向いているかもしれません。
お金を増やそうとして、投資信託などリスクの高い商品を購入しても、心配ですぐに解約してしまっては本末転倒です。
あらかじめ将来のリターンが決まっている商品なら、資産運用の初心者でも安心して長く保有することができるでしょう。
貯金があまりできていない人
個人年金保険はあまり貯金ができていない人におすすめです。
毎月の保険料をクレジットカードや口座引落しで自動的に支払う仕組みなので、自然とお金を積み立てることができるでしょう。
貯める仕組みさえ整えられれば、着実にお金を貯めることができるはずです。
iDeCoが向いている人
次に、iDeCoが向いている人はどういう人なのか、特徴を見てみましょう。
資産運用について少し知識がある人
iDeCoは資産運用についてある程度知識がある人に向いています。
iDeCoは投資信託などの金融商品を自分で選んで運用していく制度です。
資産運用におけるリスクが理解できていれば、日々の値動きで一喜一憂せず、長期間積み立てを続けることができるでしょう。
安定した収入がある人
運用を成功させるには長期で拠出することがとても大切です。
無理のない範囲で掛金を支払うためにも、安定した収入を得てから運用をスタートするようにしましょう。
iDeCoは原則、途中解約をすることができません。
年金受取が可能な年齢まで資産を引き出すことができないため、iDeCoに頼らない資産を保有しておくことも重要です。
60歳まで決まった金額を拠出できる人
iDeCoは原則60歳まで、60歳以降も国民年金に任意加入している場合は65歳まで毎月積み立てをすることができます。
投資信託などで長期間運用するため、途中で拠出を止めたり頻繁に掛金を変更したりすると、長期投資で得られる複利効果のメリットが薄れてしまいます。
そのため60歳、または65歳まである程度決まった金額を拠出し続けられる人は、iDeCoを活用すると良いでしょう。
まとめ:個人年金保険とiDeCoを上手く併用しよう
個人年金保険は払い込んだ保険料を年金として受け取ることができるため、老後資金作りとして活用できる保険商品です。
個人年金保険料控除が受けられるなどのメリットがある一方で、途中解約をすると既払込保険料を下回る可能性が高いなどのデメリットもあります。
一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)は自分で年金を拠出・運用していく私的年金制度です。
拠出時、運用時、受取時に節税効果があるため、効率よくお金を増やすことができます。
ただし、投資信託で運用した場合は元本割れのリスクがあったり、原則60歳まで引き出すことができないなどのデメリットがあります。
個人年金保険とiDeCoは老後資金づくりに特化している保険商品と制度です。
どちらが自分に合うのか、併用した方が良いのかなど、老後資金作りに悩んでいる方はお金のプロに無料相談してみてはいかがでしょうか。
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監修者
伊藤 亮太
- ファイナンシャルプランナー/CFP®認定者
慶應義塾大学大学院商学研究科経営学・会計学専攻修了。在学中にCFPを取得する。その後、証券会社にて営業、経営企画、社長秘書、投資銀行業務に携わる。2007年11月に「スキラージャパン株式会社」を設立。現在、富裕層個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランの提案・策定・サポート等を行う傍ら、資産運用に関連するセミナー講師や講演を多数行う。著書に『図解即戦力 金融業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)、『ゼロからはじめる!お金のしくみ見るだけノート』(宝島社)など多数。
執筆者
宮内 勇資
- ファイナンシャルアドバイザー
ファイナンシャルアドバイザー。専修大学商学部卒業後、水戸証券株に入社。リテール営業に従事し、国内外株式、投資信託、債券などが得意分野。キャリアの途中からは人材育成にも携わり、主に若手社員の能力向上に大きく貢献した。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社。現在は個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。AFP(Affiliated Financial Planner)、一種外務員資格(証券外務員一種)保有