
社会保険料はいつの給与から計算される?給与支払い日のケース別に解説
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「給与明細を見ると社会保険料が引かれているけど、これっていつの給料をもとに計算されているの?」そんな疑問を持ったことはありませんか?
社会保険料は、私たちの生活を支える健康保険や年金制度などを維持するために、給与から納める大切なお金です。しかし、その計算方法や、いつの給与から、どのタイミングで控除されるのかについては、意外と複雑で分かりにくい部分もあります。
社会保険料がいつの給与を基に計算されるのか、また、いつ控除されるのか。この基本的な仕組みを分かりやすく解説します。
- 給与の締め日・支払日ごとの社会保険料控除のタイミング
- 社会保険料計算の基礎となる「標準報酬月額」の仕組み
- 健康保険、厚生年金保険など、各社会保険料の計算方法
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社会保険料はいつの給与をもとに計算される?
社会保険料がいつの給与をもと計算され、いつ控除されるのかを知るには、まず「控除の原則」と「給与計算期間と支払日のパターン」を理解することが重要です。
給与計算期間と社会保険料の控除月の関係
社会保険料は、「資格を取得した月から資格を喪失した月の前月まで」の月単位で発生します。そして、原則として、発生した月の翌月に支払われる給与から控除されます。これを「翌月徴収」と呼びます。例えば、4月分の社会保険料は、5月に支払われる給与から控除されるのが基本です。
給与の締め日と支払日の組み合わせによって、給与計算の対象となる期間と、実際に社会保険料が控除される給与月との関係性が変わってきます。ここでは、代表的な3つのケースについて、「翌月徴収」を原則として解説します。
当月締め当月払いの場合
当月締め翌月払いの場合
前月締め当月払いの場合
※上記は原則である「翌月徴収」の場合です。「当月徴収」を採用している企業では、控除タイミングが1ヶ月早まります
社会保険料と標準報酬月額との関係
毎月の給与から控除される社会保険料ですが、その計算には、「標準報酬月額」という特別な基準が用いられます。
社会保険料は「標準報酬月額」で決まる
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、毎月の給与額そのものではなく、「標準報酬月額」に基づいて計算されます。
被保険者が受け取る報酬を一定の幅で区分したもの
例えば、報酬が29万円から31万円の範囲にある場合、標準報酬月額は「30万円」となり、この30万円をもとに保険料が計算されます。
(参考:標準報酬月額・標準賞与額とは?|全国健康保険協会)
4~6月の給与が重要?定時決定の仕組み
「4月から6月の給与が多いと社会保険料が高くなる」と聞いたことがあるかもしれません。これは、標準報酬月額を年に一度見直す「定時決定」という手続きが、原則として毎年4~6月に支払われた給与をもとに行われるためです。
この3ヶ月間に残業が多く給与が増えると、結果として決定される標準報酬月額が高くなります。
標準報酬月額が高くなると社会保険料負担が増えることから、「4~6月の給与が重要」といわれるわけです。
(参考:定時決定(算定基礎届)|厚生労働省)
標準報酬月額はいつからいつまで適用される?
定時決定によって決定された新しい標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年の8月までの1年間、適用されます。つまり、毎年9月に社会保険料も見直される(控除されるのは10月支給の給与から)のが基本です。
ただし、年の途中で給与額に大幅な変動があった場合は、「随時改定」によって標準報酬月額が見直されることもあります。随時改定に該当した場合、変動があった月から4ヶ月目に新しい標準報酬月額に改定されます。
(参考:随時改定(月額変更届)|厚生労働省)
社会保険料の計算方法
社会保険には、主に以下の5つの種類があります。それぞれの保険料の計算方法と特徴を見ていきましょう。なお、雇用保険と労災保険は労働保険と呼ぶこともあります。
健康保険
病気やケガ、出産、死亡などに備える医療保険制度です。保険料は、標準報酬月額に健康保険料率を掛けて計算され、会社と従業員で半分ずつ負担(労使折半)します。
厚生年金保険
会社員などが加入する公的年金制度です。老齢、障害、死亡に備えます。保険料は、標準報酬月額に厚生年金保険料率を掛けて計算され、会社と従業員で折半します。
(参考:厚生年金保険料額表|日本年金機構)
介護保険
介護が必要になった場合に備える保険制度です。40歳以上64歳以下の健康保険加入者が対象となります。保険料は、標準報酬月額に介護保険料率を掛けて計算され、会社と従業員で折半します。
雇用保険
失業した場合や育児・介護で休業した場合などに、生活や雇用の安定を図るための給付を行う保険制度です。保険料は、毎月の賃金総額に雇用保険料率を掛けて計算されます。
(参考:雇用保険料率について|厚生労働省)
労災保険
業務中や通勤中の事故によるケガ、病気、障害、死亡などに対して補償を行う保険制度です。保険料は、賃金総額に労災保険料率を掛けて計算されますが、全額会社が負担します。従業員の給与から控除されることはありません。
社会保険料計算の注意点
社会保険料の計算において、特に入社時、退職時、賞与支給時には注意が必要です。
入社時の保険料について
- 資格取得:社会保険の資格は入社日に取得します。
- 保険料発生:入社した月から保険料が発生します。日割り計算はありません。例えば4月15日に入社した場合でも、4月1ヶ月分の保険料がかかります。
- 控除タイミング:原則として、入社月の翌月に支払われる給与から控除が始まります。4月入社であれば、5月支払いの給与から4月分の保険料が引かれ始めます。入社月の給与からは控除されません。
退職時の保険料について
退職時の社会保険料は、退職日によって取り扱いが異なります。資格喪失日は「退職日の翌日」となり、保険料は「資格喪失日が属する月の前月分」まで発生します。
月の途中で退職した場合(例:4月15日退職)
- 資格喪失日:4月16日
- 保険料が発生する最後の月:3月分(資格喪失日が属する月の前月)
- 退職月の保険料は発生しません。したがって、退職月の給与からは、原則として前月分の保険料のみが控除されます。
月末に退職した場合(例:4月30日退職)
- 資格喪失日:5月1日
- 保険料が発生する最後の月:4月分(資格喪失日が属する月の前月)
- 退職月の保険料が発生します。退職月の給与から、通常の前月分に加えて、退職月分の保険料も控除される場合があります。
賞与の保険料について
賞与(ボーナス)が支払われる際にも健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料が控除されます。
賞与に対する保険料は、税引前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた「標準賞与額」(雇用保険は額面金額)をもとに計算します。ただし、標準賞与額には上限があります(健康保険・介護保険は年度累計573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円)。
計算式は以下のとおり(企業負担分と従業員負担分の合計)です。
厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率
介護保険料=標準賞与額×介護保険料率
雇用保険料=賞与額面金額×雇用保険料率
社会保険料に関する「よくある質問」Q&A
ここでは社会保険料について、よく聞かれる質問について解説します。
社会保険料は日割り計算される?
いいえ、社会保険料は日割り計算されません。
資格を取得した月(入社月)や資格を喪失した月(退職日の翌日が属する月)の前月は、たとえ月の途中であっても1ヶ月分の保険料がかかります。例えば、4月30日に入社しても、4月1日に入社しても、4月分の保険料は同じ1ヶ月分です。
給与が変動した場合、社会保険料もすぐに変わる?
いいえ、給与が変動しても、社会保険料はすぐには変わりません。
社会保険料は「標準報酬月額」に基づいて決まり、これは原則として年に1回の「定時決定」(4~6月の給与に基づき、9月から適用)で見直されます。
ただし、昇給や降給などで固定的賃金が大きく変わり、標準報酬月額が2等級以上変動するなどの一定の条件を満たした場合は、「随時改定」が行われ、変動があった月から4ヶ月目に保険料が改定されます。残業代などの非固定的賃金の変動だけでは、通常、随時改定の対象にはなりません。
社会保険料を安くする方法はある?
社会保険料は法律で定められた計算方法と料率に基づいて算出されるため、意図的に安くすることは基本的にできません。しかし、結果的に社会保険料の負担を抑えることにつながる可能性のある方法がいくつか考えられます。
1.4~6月の残業を減らす
前述の通り、標準報酬月額は4~6月の給与をもとに決定されます(定時決定)。この期間の残業を減らし、支払われる給与額を抑えることができれば、9月からの標準報酬月額が低くなり、結果的に社会保険料の負担が軽減される可能性があります。ただし、従業員の都合で残業を増やしたり減らしたりするのは難しいでしょう。
2.賞与(ボーナス)で受け取る
月々の給与(標準報酬月額の対象)を抑え、その分を賞与(標準賞与額の対象)で受け取るように給与体系を設計できる場合、社会保険料の計算上有利になることがあります。これは、厚生年金保険の標準賞与額には月150万円の上限があるためです。
ただし、賞与の支給は会社の業績等に左右されるため、確実な方法ではありませんし、給与体系の変更は会社との合意が必要です。
3.扶養に入る(パート・アルバイト)
パート・アルバイトで働く場合、年収が一定額未満であれば、配偶者などの社会保険の扶養に入ることができます。扶養に入れば、自身で社会保険料を支払う必要はありません。
ただし、扶養に入るには収入以外にも条件があるため注意しましょう。
4.退職のタイミングを調整する
前述の通り、月末以外に退職すれば、その月の社会保険料はかかりません。一方、月末に退職すると、その月の社会保険料が発生します。退職時期を選べる状況であれば、月末を避けることで1ヶ月分の保険料負担をなくすことができます。ただし、新たに加入する社会保険(国民年金保険や国民健康保険料など)については、退職月の保険料が必要です。
また、退職に伴う失業保険の給付日数などに影響が出る可能性もあるため、総合的に判断する必要があります。
まとめ
今回は、社会保険料がいつの給与をもとに計算され、いつ控除されるのかについて、給与の支払いパターンや標準報酬月額の仕組み、各種保険料の計算方法、注意点などを解説しました。
社会保険料は、4~6月の給与をもとに算出した標準報酬月額に保険料率を掛けて計算します。算出した標準報酬月額は原則9月から翌年8月まで適用され、社会保険料は10月から翌年9月の給与から控除されます。
社会保険料の仕組みは複雑に感じるかもしれませんが、基本的なルールを理解すれば、給与明細の内容をより深く把握できるようになります。もし不明な点があれば、会社の給与担当者や人事労務担当者に確認することをおすすめします。
今後、給与明細を受け取った際には、本記事のポイントを思い出して確認してみるとよいでしょう。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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