厚生年金保険料が急に上がったのはなぜ?考えられる原因と確認方法を解説
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給与明細を見て「厚生年金保険料が急に上がった?なぜ?」と驚いたことはありませんか。その理由はさまざまです。
この記事では、保険料が上がる主な原因と計算の仕組み、ご自身の保険料の確認方法まで、わかりやすく解説します。
- 厚生年金保険料の基本的な仕組みと計算方法
- 保険料が急に上がる主な原因(昇給、40歳到達、賞与など)
- 自身の厚生年金保険料を確認する具体的な方法
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厚生年金保険料はなぜ急に上がる?3つの原因
厚生年金保険料が変動する主な理由は、その計算基礎となる「標準報酬月額」が変わるためです。特に「急に上がった」と感じる場合には、いくつかの典型的な原因が考えられます。ここでは主な3つの原因について解説します。
原因1.給与が大幅に増えた
厚生年金保険料は、原則4~6月の給与(基本給だけでなく、残業代や各種手当なども含む)をもとに計算される「標準報酬月額」によって決まります。
そのため、給与が大幅に増えると、標準報酬月額の等級が上がり、結果として厚生年金保険料も上がることになります。
給与が増える要因としては、昇給や役職手当の付与などが考えられますが、標準報酬月額が見直されるタイミングは主に以下の2つです。
標準報酬月額の「定時決定」
毎年1回、7月1日時点の全加入者について、その年の4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた報酬の平均額に基づいて、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定する仕組みです。これを「定時決定」といい、定時決定した標準報酬月額を年金事務所に報告することを算定基礎届と呼びます。
原則として、4~6月の報酬に基づいて決定された新しい標準報酬月額は、9月分の保険料(通常10月支給の給与から天引き)から適用されます。
この期間に残業が多かった場合なども標準報酬月額が上がる要因となります。年に一度の見直しであるため、「急に上がった」と感じる原因になります。
標準報酬月額の「随時改定」
昇給などで基本給や役職手当といった「固定的賃金」に変動があり、その後の3ヶ月間の平均給与(残業代など非固定的賃金も含む)から算出した標準報酬月額が、従来の標準報酬月額と比べて2等級以上差が出た場合に、年の途中でも標準報酬月額が見直される仕組みです。これを「随時改定」といいます。
例えば、4月に昇給して随時改定の条件に該当した場合、変動月から4ヶ月目にあたる7月分の保険料(通常8月支給の給与から天引き)から新しい保険料が適用されます。
2等級以上の大きな標準報酬月額の変動があるため、「急に上がった」と感じる原因になります。
転職などで給与が変わった
転職して新しい会社に入社した場合、厚生年金保険の加入手続き(資格取得)が行われ、その時点での報酬の見込み額などに基づいて最初の標準報酬月額が決定されます。これを「資格取得時決定」といいます。
転職によって給与水準が前の会社よりも大幅に上がった場合、新しい会社で支払われる最初の給与から、以前よりも高い厚生年金保険料が徴収されることになります。
原因2.賞与が支給された
厚生年金保険料は、毎月の給与だけでなく、賞与(ボーナス)からも徴収されます。
賞与に対する保険料は、「標準賞与額」(税引き前の賞与額から1000円未満を切り捨てた額、上限150万円)に保険料率(18.3%)を掛けて計算され、会社と折半した額が賞与から天引きされます。
賞与が支給された月は、通常の給与から引かれる保険料に加えて、賞与分の保険料も引かれることになります。そのため社会保険料の控除額が普段より多くなり、「保険料(天引き額)が急に増えた」と感じるかもしれません。
原因3.40歳になった
日本の公的医療保険制度では、40歳になると介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料の納付義務が生じます。会社員の場合、この介護保険料は健康保険料と合わせて給与から天引きされます。
厚生年金保険料そのものが上がるわけではありませんが、給与明細上では健康保険料と介護保険料が「社会保険料」などとして合算されるのが一般的です。
そのため、40歳になった月(正確には40歳到達日=誕生日の前日が属する月、給与控除は翌月)から介護保険料の分だけ控除額が増え、「保険料が急に上がった」と感じることがあります。
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厚生年金の保険料率は?今後上がる?
厚生年金保険料は、保険料の計算基礎となる「標準報酬月額」や「標準賞与額」に、定められた「保険料率」を掛けて計算されます。そのため、この保険料率自体が変更されれば、当然、納める保険料の額も変動します。
現在の保険料率と、今後の見通しについて見ていきましょう。
厚生年金の保険料率は18.3%
日本の年金制度は、少子高齢化の進展など社会経済情勢の変化に対応するため、定期的に見直しが行われてきました。その一環として、厚生年金保険料率は、平成16年(2004年)の年金制度改正に基づき、平成29年(2017年)9月まで段階的に引き上げられてきました。
しかし、この計画的な引き上げ期間が終了し、平成29年(2017年)9月以降、厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。
この保険料率は、会社と従業員(被保険者)が半分ずつ負担する「労使折半」が原則です。つまり、従業員が給与から実際に天引きされる保険料率は、18.3%の半分の9.15%となります。
今後も「保険料率の引き上げ」によって厚生年金保険料が上がる可能性はありますが、現時点ではこれが原因で急に大幅に上がる、ということは考えにくいでしょう。
厚生年金保険料の引き上げも
保険料率自体は現在18.3%で固定されていますが、今後の制度改正により、保険料負担が増える可能性はあります。
例えば、厚生年金保険料の計算基礎となる「標準報酬月額」の上限(現在は第32級・65万円)を、2027年9月から引き上げる方向で調整が進められています。
これが実現した場合、報酬が高い層の人にとっては、厚生年金保険料の負担が増えることになります。
上記は2025年5月16日に与党が国会に提出した年金制度改正法案の内容であり、今後の国会での議論により変更される可能性があります。
自分の厚生年金保険料の確認方法
ご自身の厚生年金保険料がいくらなのか、また、どのように計算されているのかを確認するには、いくつかの方法があります。
給与明細をチェックする
もっとも簡単な確認方法は、毎月の給与明細です。「控除」の項目に「厚生年金保険料」として、その月に天引きされた金額が記載されています。不明な点がある場合は、会社の給与計算担当者に確認しましょう。
「ねんきん定期便」で確認する
毎年誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」は、ご自身の年金加入記録を確認できる重要な書類です。
- 50歳未満の方
「最近の月別状況」欄で、直近1年間の標準報酬月額や保険料の納付状況を確認できます。
- 50歳以上の方
これまでの加入実績に応じた年金額の見込み額などが記載されており、直近1年間の標準報酬月額の推移も把握できます。標準報酬月額の変動履歴を見ることで、保険料が変わったタイミングや理由を推測できます。
「ねんきんネット」で確認する
日本年金機構が提供するウェブサービス「ねんきんネット」を使えば、いつでもオンラインでご自身の年金記録を詳細に確認できます。利用登録が必要ですが、以下の情報を確認可能です。
- 年金加入記録(加入期間、加入制度など)
- 標準報酬月額・標準賞与額の履歴
- 月別の保険料納付状況
- 将来の年金見込み額シミュレーション
標準報酬月額の推移を月単位で追えるため、保険料が変動した時期や原因を特定するのに役立ちます。
疑問が解決しない場合の問い合わせ先
「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」などを確認しても、厚生年金保険料が上がった理由がはっきりしない、あるいは計算方法に疑問が残る場合は、状況に合わせて以下の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
会社の担当者に確認する
最初に検討したいのが、勤務先の給与計算や社会保険の手続きを担当している部署への確認です。標準報酬月額の改定は担当部署が計算して決定し、日本年金機構に報告するからです。
「いつから、どのくらい保険料が変わったのか」「その原因は何なのか」を具体的に質問してみましょう。
年金事務所に相談する
会社の担当者に確認しても疑問が解決しない場合や、より専門的な説明、あるいは過去の記録も含めた詳細な情報を確認したい場合は、お近くの年金事務所の窓口で相談するという方法があります。
相談に行く際は、スムーズな対応のため、事前に相談内容を整理しておくとよいでしょう。また、基礎年金番号がわかるもの(年金手帳、基礎年金番号通知書、ねんきん定期便など)と、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を忘れずに持参しましょう。
年金事務所によっては予約が必要な場合もあるため、事前に電話などで確認することをおすすめします。
電話相談窓口「ねんきんダイヤル」に相談する
日本年金機構では、電話での相談窓口「ねんきんダイヤル」を設けています。一般的な年金相談に対応しており、気軽に問い合わせることができます。ただし、標準報酬月額や保険料の推移など具体的な数値を教えてもらうことはできません。
時間帯によっては電話が混み合ってつながりにくいこともあるため、日本年金機構のウェブサイトで受付時間や比較的つながりやすい時間帯などを確認してからかけるとよいでしょう。
厚生年金保険料に関するQ&A
厚生年金保険料に関してよくある疑問についてお答えします。
Q.「4~6月に残業すると手取りが減る」というのは本当?
本当です。これは「定時決定」の仕組みに関係しています。
定時決定では、4〜6月に支払われた報酬(残業代を含む)の平均額をもとに、9月からの標準報酬月額が決まります。この期間に残業が多いと標準報酬月額が増え、保険料が高くなる可能性があります。その結果、社会保険料の負担が増え、手取り収入が減ることがあるため、「4〜6月の残業は損」といわれることがあります。
ただし、保険料負担が増えるということは将来受け取る厚生年金額が増えることにもつながるため、一概に「損」とはいえません。
Q.給与が下がると、厚生年金保険料も下がる?
給与が下がった場合でも、すぐに保険料が下がるとは限りません。
【定時決定】
毎年9月の定時決定のタイミングで見直され、保険料が下がる可能性があります。
【随時改定】
基本給などの固定的賃金が下がり、かつ一定の条件(変動後の3ヶ月平均の標準報酬月額が2等級以上下がるなど)を満たした場合に、随時改定によって保険料が下がることがあります。
残業時間が減っただけなど、非固定的賃金の変動のみでは、原則として随時改定の対象にはならず、次の定時決定まで保険料は変わりません。
Q.退職すると厚生年金保険料が倍になることがある?
この表現は少し誤解を招きやすいですが、状況によっては負担感が倍増するように感じることがあります。
会社員の場合、厚生年金保険料は会社と折半(労使折半)しています。退職して自営業者などになった場合、国民年金(第1号被保険者)に加入することになります。国民年金保険料は全額自己負担です。
また、再就職せず、配偶者の扶養にも入れない場合は、健康保険を国民健康保険に切り替えるか、元の会社の健康保険を任意継続する必要があります。
国民健康保険料や任意継続の健康保険料も、原則として全額自己負担となるため、社会保険料全体の負担額が、在職中の本人負担額と比べて大幅に増える(結果的に倍近くに感じる)ケースがあります。
まとめ
厚生年金保険料が急に上がったと感じる主な原因は、「定時決定」や「随時改定」による標準報酬月額の変更、賞与の支給、40歳到達に伴う介護保険料の徴収開始などが考えられます。保険料率は18.3%で固定されているため、現在では料率変更が原因である可能性はありません。
もし保険料が上がった理由が気になる場合は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で標準報酬月額の履歴を確認するか、勤務先の給与担当者に問い合わせるとよいでしょう。
保険料の増加は手取り収入の減少につながりますが、将来受け取る年金額の増加にもつながる可能性があります。仕組みを理解し、ご自身の状況を正しく把握することが大切です。
将来資金が気になるあなたへ
将来、お金の不安なく暮らすために、老後資金の必要額を早めに把握して準備を始めましょう。マネイロでは、将来資金の準備をかんたんに進められる無料ツールを利用できます。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。