
年金受給者が住民税非課税世帯になる条件は?年金額の基準と受けられる支援を解説
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年金生活を迎えるにあたり、「住民税非課税世帯に該当するかどうか」は、家計に大きな影響を与える重要なポイントです。
住民税非課税世帯になると、住民税がかからないだけでなく、医療費の負担が軽減されたり、国民健康保険料(税)や介護保険料が減免されることがあるほか、各種給付金や支援制度の対象になるなど、老後の負担を大きく抑えられる可能性があります。
一方で、年金収入がいくらまでなら非課税になるのか、単身と夫婦で基準はどう違うのかなど、仕組みは複雑です。
本記事では、住民税非課税世帯の基本的な判定基準を年金収入ベースで整理し、該当した場合のメリットや注意点をわかりやすく解説します。
- 住民税非課税世帯になるための年金収入の基準額
- 受けられる医療費負担の軽減措置や社会保険料の減免措置
- 各種支援制度を利用するための手続き
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住民税非課税世帯とは?年金受給者が知っておくべき基本
住民税非課税世帯とは、世帯に属する全員の住民税が課税されない世帯を指します。年金収入が主な収入源となる高齢者にとって、制度を正しく理解することは、医療費や社会保険料といった日々の経済的負担を軽減する上で欠かせません。
まずは住民税非課税世帯の基本的な定義と、なぜ年金受給者にとってこの制度が重要なのかを解説します。
住民税非課税世帯の定義
住民税非課税世帯とは、その世帯に属する全員が、住民税の「均等割」と「所得割」の両方とも非課税である状態を指します。単身者であれば本人が非課税であること、夫婦世帯であれば夫婦ともに非課税であることが条件となります。
判定は、前年1月1日から12月31日までの1年間の所得に基づいて行われます。その所得が、お住まいの自治体が定める基準額以下である場合に非課税と判定されます。
年金受給者にとっての重要性
年金受給者にとって住民税非課税世帯に該当するかどうかは、経済的な負担に直接影響します。住民税そのものの負担がなくなるだけでなく、国民健康保険料(税)や介護保険料の減免、高額療養費制度の自己負担限度額の引き下げといった、さまざまな優遇措置を受けられるためです。
さらに、「年金生活者支援給付金」のような公的な支援制度の中には、支給要件として「住民税非課税世帯であること」を定めているものがあります。
これらの制度を活用できるかどうかが、生活の安定に関わってきます。
年金受給者が住民税非課税世帯になる条件
年金受給者が住民税非課税世帯になるかどうかは、前年の所得が自治体の定める基準を下回るかによって決まります。その基準は、所得の種類だけでなく、世帯構成や住んでいる地域によっても変動します。
ここでは、住民税が非課税になるための具体的な所得基準、ご自身の年金収入から所得を計算する方法、そして世帯構成ごとの基準額の目安を詳しく解説します。
住民税が非課税になる所得基準
住民税は、所得に応じて課税される「所得割」と、所得にかかわらず一定額が課税される「均等割」で構成されています。住民税非課税となるためには、両方が非課税になる必要があります。
一般的に、以下のいずれかの条件を満たすと住民税が非課税になります。
- 生活保護法による生活扶助を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下
- 前年の合計所得金額が、自治体の定める金額以下
重要なのが3つ目の「合計所得金額」の基準です。その基準額は、お住まいの市区町村の「級地区分(1級地・2級地・3級地)」によって異なります。一般的に、東京23区などの都市部(1級地)ほど基準額が高く、地方(3級地)では低くなる傾向があります。
年金収入と所得の計算方法
住民税の計算の基になる「所得」は、収入から必要経費を差し引いた金額です。年金収入については、「公的年金等控除額」が必要経費に相当します。
年金所得は以下の式で計算されます。
- 年金の所得金額 = 年金の収入金額 - 公的年金等控除額
公的年金等控除額は、受給者の年齢(65歳以上か65歳未満か)と年金収入額によって定められています。65歳以上の場合、年金収入が330万円未満であれば、最低でも110万円の控除が適用されます。
例えば、年金収入が200万円の65歳以上であれば、所得は「200万円 - 110万円 = 90万円」と計算されます。
世帯構成別の非課税基準額の目安
住民税の均等割・所得割がともに非課税となる合計所得金額の基準は、世帯構成によって変わります。
多くの自治体(東京23区などの1級地)では、以下の計算式が用いられます。
- 単身世帯の場合
45万円以下
- 同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合
35万円 × (本人・同一生計配偶者・ 扶養親族の合計人数) + 31万円
この式に基づくと、世帯構成ごとの所得基準額の目安は以下のようになります。
計算式や加算額(31万円の部分)は自治体によって異なるため、正確な情報は必ず住んでいる市区町村のウェブサイトなどで確認しましょう。
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住民税非課税世帯に該当するかの判定【年齢|世帯別】
年金収入が住民税非課税の基準内に収まるか、具体的なケースを通じて確認していきましょう。年齢や世帯構成によって、基準となる年金収入額は異なります。
65歳以上の単身世帯と夫婦世帯、65歳未満の単身世帯と夫婦世帯、そして年金以外に給与などの収入がある場合の5つのパターンに分けて、非課税となる年金収入のボーダーラインを解説します。
65歳以上・単身世帯のケース
65歳以上で単身の場合、多くの自治体(1級地)では前年の合計所得金額が45万円以下であれば住民税が非課税となります。
この所得基準を年金収入に換算します。65歳以上の人の公的年金等控除額は最低110万円です。
- 年金収入 - 110万円 = 45万円
上記の式を解くと、年金収入は155万円となります。
したがって、65歳以上の単身世帯では、年金収入が155万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当する可能性が高いです。
65歳以上・夫婦世帯のケース
65歳以上の夫婦世帯で、夫婦が生計を一にしている場合、多くの自治体(1級地)では世帯主の前年の合計所得金額が101万円以下であれば住民税が非課税となります。
ただし、配偶者の合計所得金額が58万円以下(年金収入のみなら168万円以下)であることが条件です。
世帯主の所得基準101万円を年金収入に換算します。
- 年金収入 - 110万円 = 101万円
これを解くと、年金収入は211万円となります。
よって、65歳以上の夫婦世帯では、配偶者の年金収入が168万円以下で、かつ世帯主の年金収入が211万円以下の場合、住民税非課税世帯に該当する可能性が高いです。これは「年金211万円の壁」とも呼ばれます。
65歳未満・単身世帯のケース
65歳未満の場合、公的年金等控除額が65歳以上の場合と異なり、最低60万円となります。このため、非課税となる年金収入の基準額は65歳以上よりも低くなります。
所得基準45万円以下を適用すると、年金収入は105万円以下が非課税の目安となります。
- 年金収入 - 60万円 = 45万円
65歳未満・夫婦世帯のケース
65歳未満の夫婦世帯で、所得基準101万円以下を満たすには、年金収入が約171万円以下であることが目安となります。
65歳以上の場合(211万円)と比較して、基準額が低くなる点に注意が必要です。
その他の収入がある場合の注意点
年金の他に給与収入や不動産収入などがある場合、住民税非課税の判定は、年金収入の金額ではなく、すべての所得を合算した「合計所得金額」で行われます。
計算の手順は以下の通りです。
- 年金収入から公的年金等控除額を引いて「年金所得」を計算
- 給与収入から給与所得控除額を引いて「給与所得」を計算
- 年金所得と給与所得、その他の所得をすべて合計して「合計所得金額」を算出
- 算出した合計所得金額が、住んでいる自治体の非課税基準額(例:単身なら45万円、夫婦なら101万円)以下であるかを確認
収入の種類が増えると計算が複雑になるため、年金収入のみの場合の「155万円の壁」や「211万円の壁」といった単純な基準は適用できなくなる点に注意が必要です。
住民税非課税世帯の年金受給者が受けられる支援制度
住民税非課税世帯に該当する年金受給者は、住民税が非課税になるだけでなく、医療や介護、その他の生活に関わる多様な公的支援を受けられます。
これらの制度を理解し活用することが、安定した老後生活を送る上で鍵となります。
具体的にどのような支援制度があるのか、主要なものを解説します。
医療費や国民健康保険料(税)の負担軽減
住民税非課税世帯は、医療費の負担が軽減される制度があります。
1ヶ月の医療費が一定額(自己負担額)を超えた場合に、超えた分が払い戻される高額療養費制度において、住民税非課税世帯は、この自己負担限度額が一般の所得世帯よりも低く設定されているため、大きな病気や怪我をした際の医療費負担を抑えることができます。
また、国民健康保険料(税)の「均等割額」と「平等割額」が、所得水準に応じて7割、5割、2割のいずれかで減額されます。これにより、毎月の保険料負担が軽減されます。
介護保険サービスや介護保険料の負担軽減
介護が必要になった際の経済的負担も、住民税非課税世帯は軽減されます。
介護サービスを利用した際の1か月の自己負担額にも上限が設けられていますが、住民税非課税世帯は、この自己負担限度額も低く設定されており、介護サービスの利用に伴う経済的負担が軽くなります。
また、65歳以上の人が支払う介護保険料(第1号保険料)は、所得段階に応じて基準額が設定されています。住民税非課税世帯の場合は、低い所得段階に区分されるため、保険料が安くなります。
給付金・支援金の対象
住民税非課税世帯は、国や自治体からの給付金の対象となることがあります。
年金生活者支援給付金
公的年金等の収入やその他の所得が一定基準以下の年金受給者を対象に、年金に上乗せして支給される制度です。
支給要件の一つに「世帯員全員が住民税非課税であること」が含まれており、老齢基礎年金受給者の場合、月額5450円を基準とした給付金を受け取れます。
臨時特別給付金など
政府が物価高騰対策などで行う臨時的な給付金は、住民税非課税世帯を対象とすることが多くあります。これらの支援策の対象となることで、家計の助けとなります。
住民税非課税世帯の判定と手続きの流れ
自身が住民税非課税世帯に該当するかどうかは、自治体から送付される通知書などで確認できます。各種支援制度を利用するには、多くの場合、制度ごとに定められた申請手続きが必要です。
住民税非課税世帯かどうかの確認方法
ご自身の世帯が住民税非課税に該当するかどうかを確認するには、いくつかの方法があります。
住民税決定通知書で確認する
毎年6月頃に自治体から送られてくる「住民税決定通知書」を確認します。この通知書に記載されている住民税の年税額が0円であれば、自身が住民税非課税であることがわかります。
世帯全員がこの状態であれば、住民税非課税世帯となります。
住民税課税(非課税)証明書を取得する
市区町村の役所の窓口や郵送、コンビニ交付サービスなどで「住民税課税(非課税)証明書」を取得することで、課税状況を正確に確認できます。各種手続きで証明が必要な場合にも利用します。
役所の窓口で問い合わせる
不明な場合は、住んでいる市区町村の税務担当課の窓口で直接問い合わせることも可能です。
支援制度を利用するための手続き
住民税非課税世帯向けの支援制度は、自動的に適用されるものと、個別に申請が必要なものがあります。多くの場合、給付金やサービスの利用には申請手続きが求められます。
例えば、「年金生活者支援給付金」は、初めて対象となる方には日本年金機構から請求手続きの案内が送付されます。この案内に従って請求書を提出することで、受給が開始されます。一度手続きを行えば、翌年以降は所得状況が基準内であれば原則として手続きは不要です。
手続きの窓口は制度によって異なり、年金関連は年金事務所、介護保険関連は市区町村の介護保険担当課など、それぞれの担当部署に問い合わせる必要があります。
世帯分離を検討する場合の注意点
世帯分離とは、同じ住所に住みながら、住民票上の世帯を分ける手続きです。例えば、親と子が同居している場合に、それぞれの世帯を独立させることを指します。
世帯分離を行うと、分離後の各世帯の所得で住民税非課税かどうかが判定されるため、住民税非課税世帯に該当することで国民健康保険料(税)や介護保険料の負担が軽減される可能性があります。
一方で、勤務先が支給する家族手当の対象から外れたり、各世帯の世帯主がそれぞれ国民健康保険料(税)を負担する(健康保険の扶養に入ることができなくなる)デメリットも考えられます。
世帯分離は、単に税金や社会保険料の負担を軽減するためだけに行うべきではありません。生活の実態とかけ離れた世帯分離は認められない場合もあります。
実行する前に、メリットとデメリットを総合的に比較検討し、専門家やお住まいの自治体に相談することをおすすめします。
住民税非課税世帯と年金に関するよくある質問
年金と住民税非課税世帯の関係については、多くの人が疑問に思う点があります。ここでは、質問の多い3つの点について、専門家の視点から分かりやすく回答します。正しい知識を持つことで、将来の不安を解消しましょう。
年金を繰り下げ受給すると住民税非課税世帯から外れる?
年金の繰り下げ受給を選択すると、受け取る年金額が増額されるため、住民税非課税の基準となる所得や年金収入の上限を超える可能性があります。
その結果、これまで住民税非課税世帯だった人が課税世帯に変わることがあります。
繰り下げ受給を検討する際は、増額される年金額と、課税世帯になることによる税金や社会保険料の負担増を総合的に比較し、慎重に判断することが必須です。
遺族年金や障害年金は住民税非課税世帯の判定に含まれる?
遺族年金や障害年金は、所得税法および地方税法上、非課税所得として扱われます。そのため、住民税非課税世帯かどうかを判定する際の所得計算には含まれません。
老齢年金と合わせて遺族年金や障害年金を受け取っている場合でも、判定の対象となるのは老齢年金部分の収入のみです。
この点は、年金生活者支援給付金の所得判定においても同様です。
住民税非課税世帯から外れるとどうなる?
住民税非課税世帯から課税世帯になると、これまで受けていた優遇措置が受けられなくなります。
具体的には、住民税の納税義務が発生するほか、国民健康保険料(税)や介護保険料の減額措置が適用されなくなり、負担額が増加します。
また、高額療養費の自己負担限度額も引き上げられます。
年金生活者支援給付金など、非課税世帯であることが条件の支援も対象外となるため、家計への影響を事前に把握しておくことが大切です。
まとめ
住民税非課税世帯の制度は、年金で生活する方々の経済的負担を軽減するための重要な仕組みです。ご自身の年金収入や世帯の状況を正しく把握し、非課税の基準に該当するかどうかを確認することが第一歩となります。
非課税となる所得の基準額は、お住まいの自治体や世帯構成によって異なります。そのため、正確な情報については、必ず市区町村のウェブサイトや窓口で確認するようにしましょう。
受けられる支援制度を理解し、必要な手続きを適切に行うことで、医療費や社会保険料などの負担を抑え、より安定した生活を送ることが可能です。
また、年金でどこまで生活できるのか、どれくらい不足するのかを把握することが大切です。
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監修
黒澤 伸
- 税理士/社会保険労務士/CFP®認定者
東京都出身。中央大学商学部会計学科を卒業後、東京国税局に入局。国税庁、東京国税局等に38年間勤務し、2023年に高松国税局長を最後に退官。同年、黒澤伸税理士事務所を開設し、2024年には社会保険労務士としても登録。現在は、税務・会計、社会保険、労働保険等の士業務を中心に、CFPとして事業者のトータルサポートを行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。
