

在職老齢年金とは?2026年改正で何が変わる?仕組みと計算方法をわかりやすく解説
»あなたの年金はいくら?老後に不足する金額を3分でシミュレーション
「60歳以降も働き続けたいけど、年金が減らされるって本当?」「せっかく働いても『働き損』になるなら意味がないのでは…」と、在職老齢年金の仕組みに疑問や不安を感じていませんか。
本記事では、働きながら年金を受け取る「在職老齢年金」の仕組みを、専門家がわかりやすく解説します。
年金が減額される基準や計算方法、損をしないための働き方のポイントまで理解できるので、自身の老後の働き方を考える参考にしてください。
- 在職老齢年金は、厚生年金に加入しながら働く60歳以上の人が対象で、老齢厚生年金のみが減額される仕組み
- 年金と月収の合計が月額65万円(2026年度)を超えると、超えた額の半分が年金から減額される
- 年金が減っても世帯収入は増え、将来の年金額も増えるため、必ずしも「働き損」にはならない
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在職老齢年金とは?3つのポイントで理解する

在職老齢年金とは、60歳以降に厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合に、収入に応じて年金額が調整(一部または全額が支給停止)される仕組みです。
まずは、この制度を理解するための3つの基本ポイントを押さえましょう。


対象は厚生年金だけ
在職老齢年金による減額・支給停止の対象となるのは「老齢厚生年金」の部分のみです。
日本の公的年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」の2階建て構造になっています。
在職中の収入によって調整されるのは、2階部分にあたる老齢厚生年金(報酬比例部分)です。また、報酬比例部分の全額が支給停止になった場合、加給年金は支給されません。
1階部分の老齢基礎年金は、収入にかかわらず減額されることなく全額受け取ることができます。
支給停止されても損ではない理由
在職老齢年金によって年金が減額されると「働き損」と感じる人もいるかもしれません。しかし、必ずしも損をするわけではありません。
65歳以降に厚生年金に加入しながら働くと、納めた保険料に応じて将来の年金額が増える仕組みがあります。
具体的には、毎年1回、10月分から年金額が改定される「在職定時改定」が適用されます。これにより、働いた分が翌年の年金額に反映されるため、生涯にわたって受け取る年金総額を増やすことができます。
退職時や70歳到達時にも年金額は改定されるため、長く働くほど将来の年金受給額は増えていく計算になります。
また、給与収入が増えるため、支給停止があっても給与と年金の総額は多くなります。
目先の支給停止額だけでなく、生涯にわたる総受給額などを含めて考えることが欠かせません。
2026年4月から基準が引き上げ
2026年度(令和8年度)の在職老齢年金の基準額(支給停止調整額)は65万円です。この基準額は毎年度の賃金の変動に応じて改定されますが、2026年度4月には年金制度改正により51万円から65万円に大幅に引き上げられました。
なお、60歳代前半と65歳以上で異なっていた基準額は、2022年4月に65歳以上の基準に統一されました。
(参考:在職老齢年金の計算方法 | 日本年金機構)
(参考:令和4年4月から年金制度が改正されました|日本年金機構)
年金が減る基準と計算方法

在職老齢年金で年金が減額されるかどうかは、毎月の給与や賞与と、受け取る老齢厚生年金の月額によって決まります。
ここでは、減額の基準となる金額と具体的な計算方法について詳しく見ていきましょう。


減額の基準は月額65万円(2026年度)
年金が減額されるかどうかのボーダーラインは、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が65万円(2026年度)を超えるかどうかです。この金額は「支給停止調整額」と呼ばれ、毎年度の賃金の変動に応じて改定されます。
合計額が65万円以下であれば、老齢厚生年金は全額支給されます。65万円を超えた場合に、超えた金額に応じて年金の一部または全部が支給停止となります。
計算式と減額の仕組み
「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が65万円を超えた場合、以下の計算式で支給停止額が算出されます。
支給停止額(月額) = (基本月額 + 総報酬月額相当額 - 65万円) ÷ 2
この計算式は、基準額である65万円を超えた金額の「半分」を支給停止するという意味です。例えば、合計額が75万円だった場合、超過分の10万円の半分である5万円が、毎月の老齢厚生年金から減額されます。
このように、収入が増えても給与と年金の合計額は一定程度増える仕組みになっています。
総報酬月額相当額の計算方法
在職老齢年金の計算で重要な「総報酬月額相当額」は、毎月の給与だけでなく賞与(ボーナス)も含めて計算します。具体的な計算方法は以下の通りです。
総報酬月額相当額 = 当該月の標準報酬月額 + (当該月以前1年間の標準賞与額の合計) ÷ 12
- 標準報酬月額: 4月から6月の報酬(定時改定の場合)の平均額を一定の等級に区分したもので、社会保険料の計算の基礎となります。基本給だけでなく、残業代や各種手当なども含まれます。
- 標準賞与額: 税引き前の賞与額から1000円未満を切り捨てた額で、1か月あたり150万円が上限です。
高所得者を除くと、総報酬月額相当額は年収を12か月(月額換算した額)で割って概算できます。
(参考:標準報酬月額 | 日本年金機構)
(参考:標準賞与額 | 日本年金機構)
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年金が減るケース・減らないケースの判断基準

在職老齢年金の仕組みでは、収入と年金の合計額によって、年金の支給額が3つのパターンに分かれます。自身の状況がどのケースに当てはまるかを確認してみましょう。
なお、「基本月額」とは老齢厚生年金の報酬比例部分の月額のことです。


年金が減らないケース
老齢厚生年金が減額されず、全額支給されるのは以下のケースです。
「基本月額」+「総報酬月額相当額」 ≦ 65万円
基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下であれば、年金は1円も減らされません。
多くの人はこのケースに該当し、働きながら年金を満額受け取っています。
年金が一部減額されるケース
老齢厚生年金の一部が支給停止となるのは、以下の2つの条件を両方満たすケースです。
- 「基本月額」+「総報酬月額相当額」 > 65万円
- (基本月額 + 総報酬月額相当額 - 65万円)÷ 2 < 基本月額
基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えているものの、計算された支給停止額が自身の基本月額よりも少ない場合です。
この場合、基本月額から支給停止額を差し引いた金額が支給されます。
年金が全額停止されるケース
老齢厚生年金が全額支給停止となるのは、以下の条件を満たすケースです。
(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 65万円)÷ 2 ≧ 基本月額
基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超え、支給停止額が自身の基本月額以上になる場合、当該月の老齢厚生年金は全額支給されなくなります。
この場合、老齢厚生年金に付随する「加給年金」も支給停止となるため注意が必要です。ただし、経過的加算は全額支給されます。
年収・年金額別シミュレーション
実際に、年収と年金額の組み合わせによって、在職老齢年金の支給額がどのように変わるのかをシミュレーションしてみましょう。
ここでは、賞与(ボーナス)がないケースを想定して計算します。自身の状況に近いパターンを参考にしてください。
※支給停止額 = (合計額 - 65万円) ÷ 2 (合計額が65万円を超える場合のみ)
※支給停止額が基本月額を上回る場合、年金は全額支給停止
表からわかるように、給与と年金の合計が65万円を超えても、年金が全額停止になるわけではありません。
超過額の半分が減額されるため、収入が増えるほど世帯全体の手取り額は増加します。
本シミュレーションは賞与がないなど特定の条件下での試算であり、実際の支給額を保証するものではありません。


在職老齢年金で知っておくべき注意点

在職老齢年金の仕組みを理解する上で、いくつか知っておくべき重要なポイントがあります。
働きながら年金を受け取る際の注意点を押さえて、自身のライフプランに活かしましょう。


退職後・70歳到達後に年金額が増える
在職中に納めた厚生年金保険料は、将来の年金額にしっかりと反映されます。年金額が改定されるタイミングは主に3つあります。
- 在職定時改定: 65歳以上70歳未満で在職中の人が対象。毎年9月1日を基準日として、前年9月から当年8月までの加入実績を反映し、10月分の年金から改定されます。
- 退職改定: 70歳未満で退職した場合、退職して厚生年金被保険者の資格を喪失してから1ヵ月が経過すると、退職までの加入期間を加えて年金額が改定されます。改定は退職した月の翌月分(月末退職の場合は翌々月)からです。
- 70歳到達時: 厚生年金に加入しながら70歳に到達した場合、70歳到達月の翌月分から年金額が改定されます。
このように、働いて保険料を納めた分は、定期的に、または働き方が変わるタイミングで年金額に上乗せされる仕組みになっています。
個人事業主・フリーランスは対象外
在職老齢年金は、厚生年金保険に加入している人が対象の制度です。そのため、個人事業主やフリーランスとして働き、厚生年金に加入していない場合は、在職老齢年金の対象にはなりません。
したがって、個人事業主やフリーランスの人は、事業収入がどれだけあっても老齢厚生年金が減額されることはありません。
ただし、法人を設立して役員となり、役員報酬を受け取る場合は厚生年金の被保険者となるため、在職老齢年金の対象となります。
働き方によって制度の適用が変わる点を理解しておくことが大切です。
在職老齢年金を踏まえた働き方の考え方
在職老齢年金の仕組みを理解した上で、60歳以降の働き方をどのように考えるべきでしょうか。
年金の減額を避けるべきか、それとも気にせず働くべきか、いくつかの視点から解説します。

年金が減っても働くメリット
年金が一部減額されたとしても、それを上回る給与収入があれば、世帯全体の手取り収入は増加します。
在職老齢年金は、収入が増えた分以上に年金が減ることはない(超過分の半額が減額)ように設計されているため、「働き損」にならない仕組みになっています。
また、厚生年金に加入し続けることで、将来受け取る年金額が増えるメリットがあります。
年金を減らさない働き方の選択肢

どうしても年金の減額を避けたい場合は、働き方を調整する方法があります。
1つ目は、収入を調整することです。「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が65万円以下になるように、勤務時間や日数を減らして働く方法です。4月から6月の給与が標準報酬月額の算定基礎となるため、この期間の残業を抑えるなどの工夫が考えられます。
2つ目は、厚生年金の加入対象から外れる働き方を選ぶことです。会社員やパートタイマーではなく、個人事業主として業務委託契約を結ぶなどの方法があります。厚生年金に加入しなければ在職老齢年金の対象外となるため、収入にかかわらず年金は満額支給されます。
ただし、会社の健康保険からも外れるため、保障内容などを比較検討する必要があります。
支給停止される人の繰下げ受給
在職老齢年金で支給停止される人が、年金の受給開始を66歳以降に遅らせる「繰下げ受給」を行う際には注意が必要です。
繰下げ受給をすると、1ヵ月あたり0.7%ずつ年金額が増額されますが、この増額の対象となるのは、在職老齢年金の仕組みによって支給停止されなかった部分のみです。
例えば、本来の年金月額が20万円の人が、在職老齢年金で5万円支給停止され、実際に受け取れるはずだった年金額が15万円だったとします。この人が70歳まで5年間繰り下げた場合、増額されるのは15万円に対してです。支給停止された5万円分は増額の対象にはなりません。
在職老齢年金に関するよくある質問
在職老齢年金について、多くの人が抱く疑問にお答えします。


Q. 年金が減ると損をする?
一概に損とは言えません。
年金が減額されても、税金や社会保険料の影響を除くと給与収入と合わせた世帯収入は増えます。また、厚生年金保険料を納め続けることで、将来受け取る年金額が増えるメリットもあります。
目先の減額だけでなく、生涯にわたる収支で判断することが大切です。
Q. 65万円を少し超えたらどうなる?
急に手取りが減ることはありません。基準額の65万円を超えた金額の「半分」が年金から減額される仕組みです。
例えば、合計額が66万円になった場合、超過額1万円の半分である5000円が年金から引かれます。収入の増加分がすべて年金の減額で相殺されるわけではありません。
Q. パート・アルバイトも対象?
はい、対象になる場合があります。
パートやアルバイトであっても、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8万8000円以上など、一定の条件を満たすと厚生年金の加入対象となります。
厚生年金に加入すれば、在職老齢年金の仕組みが適用されますが、一般的なパート収入で在職老齢年金の支給停止に該当するケースは多くありません。
まとめ

在職老齢年金は、働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、収入などに応じて年金額が調整される仕組みです。年金と月収の合計が65万円(2026年度)を超えると、超過額の半分が年金から減額されます。
年金が減額されると聞くと「損」と感じるかもしれませんが、給与と合わせた世帯収入は増えますし、納めた保険料は将来の年金額に反映されるため、一概に損とは言えません。
年金の減額を避けたい場合は、収入を調整したり、厚生年金に加入しない働き方を選んだりする方法もあります。自身のライフプランや価値観に合わせて、60歳以降の働き方を検討してみましょう。
自身の収入や年金額で、将来の生活が成り立つか不安な方は、一度専門家に相談してみるのもよいでしょう。
お金のプロに相談すれば、自身の状況に合わせた具体的なアドバイスがもらえます。
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ご留意事項
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監修

西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆

マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。







