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特別支給の老齢厚生年金とは?対象者や金額計算などを分かりやすく解説

特別支給の老齢厚生年金とは?対象者や金額計算などを分かりやすく解説

年金2025/10/24
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特別支給の老齢厚生年金とはなんのこと?」「60代前半で受け取れるらしいけど、自分は対象?」そんな不安を抱えていませんか?

本記事では、少し複雑な特別支給の老齢厚生年金の制度の仕組みを、分かりやすく徹底解説します。対象者金額計算手続き、そして申請しない場合の時効リスクまで、受給前に知っておくべき情報を網羅しています。ぜひ受給の前の参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること
  • 特別支給の老齢厚生年金の対象者、受給条件、および制度の概要
  • 特別支給の老齢厚生年金と老齢年金の繰上げ受給との決定的な違い
  • 年金額の計算要素、手続きの注意点、申請を忘れた場合の時効のリスク


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特別支給の老齢厚生年金とは?分かりやすく解説

特別支給の老齢厚生年金とは、公的年金制度の改正により老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに伴い、段階的な移行のための激変緩和措置経過措置)として設けられた制度です。

原則として65歳から支給される老齢厚生年金が、特例として60歳から65歳になるまでの間に特定の条件を満たした人に対して支給されます。

特別支給の老齢厚生年金は、「報酬比例部分」と「定額部分」の2つで構成されており、生年月日・性別に応じてそれぞれの受給開始年齢が異なります。

特別支給の老齢厚生年金について

画像参照:特別支給の老齢厚生年金|日本年金機構

特別支給の老齢厚生年金の受給条件

特別支給の老齢厚生年金を受け取るためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

生年月日と性別

特別支給の老齢厚生年金は、年金支給開始年齢の引き上げに伴う経過措置であるため、受給対象者は厳密に生年月日と性別によって定められています。具体的な要件は以下です。

  • 男性昭和36年4月1日以前に生まれたこと
  • 女性昭和41年4月1日以前に生まれたこと

厚生年金の加入期間が1年以上

特別支給の老齢厚生年金を受給するためには、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あることが必要です。この期間の要件は、厚生年金の加入実績があることを示します。

保険料の納付期間(受給資格期間)が10年以上

老齢年金を受け取るための基本的な要件として、保険料の納付済期間や免除期間、そして合算対象期間などを含む「受給資格期間が10年以上あることが必要です。

ポイントの解説

この受給資格期間10年以上の条件は、特別支給の老齢厚生年金だけでなく、原則65歳から受け取る老齢基礎年金および老齢厚生年金にも共通する重要な要件です。

【参考】共済年金の加入期間も厚生年金加入期間として計算

2015年10月に共済年金制度は厚生年金制度に統一されました。そのため、それ以前に公務員や私立学校教職員として共済組合に加入していた期間がある場合でも、その期間は厚生年金に加入していた期間とみなされ、特別支給の老齢厚生年金の加入期間や年金額の計算に合算されます。

特別支給の老齢厚生年金と繰上げ受給の違い

特別支給の老齢厚生年金も、本来65歳からもらう老齢基礎年金・老齢厚生年金の繰上げ受給も「65歳前にもらえる制度」という点では共通していますが、制度の仕組みや65歳以降の年金額に与える影響はまったくの別物です。

制度の目的

特別支給の老齢厚生年金は、年金支給開始年齢の引き上げに対する「経過措置」として設けられた制度であり、対象者が限定されています。

一方、老齢基礎年金や老齢厚生年金の「繰上げ受給」は、本来65歳から受け取る年金を、本人が希望することで前倒し(60歳から64歳までの間)で受け取る手続きです。

65歳からの年金額

特別支給の老齢厚生年金を受け取っても、65歳以降に受け取る本来の老齢基礎年金や老齢厚生年金の年金額は減額されません

しかし、老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰上げ受給した場合、年金額は一生涯にわたって一定の割合1ヶ月繰り上げるごとに0.4%で減額された状態が続きます。繰上げ請求を行うと、請求時期に応じた減額率が適用され、年金額が永久に減額されます。

対象者

特別支給の老齢厚生年金の対象者は、年金制度の改正時に定められた生年月日を迎えた人に限定されています。

これに対し、老齢年金の繰上げ受給は、受給資格期間を満たした65歳未満の希望者全員が選択できる制度であり、60歳になっていれば生年月日による限定はありません。

他の年金への影響

老齢厚生年金を繰上げ受給すると、受給権を得た以降は障害基礎年金障害厚生年金を請求(事後重症請求のみ。認定日請求は可能)することができなくなったり、寡婦年金の受給資格を失ったりするなど、他の公的年金制度に大きな影響を与える可能性があります。

特別支給の老齢厚生年金は経過措置的な年金であるため、繰上げ受給ほど他の年金制度への影響は大きくありませんが、他の年金や給付金との関連については、個別のケースで確認が必要です。

いくらもらえる?特別支給の老齢厚生年金の計算方法と目安

特別支給の老齢厚生年金の金額は、個々の厚生年金加入期間の長さ現役時代の報酬額によって大きく異なります。

金額の内訳

特別支給の老齢厚生年金の年金額は、原則として過去の報酬額と厚生年金の加入期間に基づいて計算される「報酬比例部分」と、厚生年金の加入期間に応じて計算される「定額部分」の合計額となります。

  • 報酬比例部分:現役時代の報酬の平均額や加入期間によって計算され、老齢厚生年金の基本部分です。
  • 定額部分:厚生年金加入期間に応じて一律に計算される部分です。生年月日による支給開始年齢の段階的引き上げの影響により、現在は長期加入者特例(坑内員・船員など)や障害者特例を除き、定額部分を含む特別支給の受給該当者はほぼ存在していません。

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特別支給の老齢厚生年金の手続き

特別支給の老齢厚生年金は、支給開始の条件を満たしても自動的に振り込まれるわけではありません。受け取るためには、自身で請求手続きを行う必要があります。

支給開始年齢前に届く「年金請求書」で申請

年金の支給開始年齢となる誕生日の約3ヶ月前に、日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」が届きます。

年金は、申請主義」であるため、この請求書に必要事項を記入し、住民票や戸籍謄本など必要書類を添えて提出することで、支給が開始されます。

【重要】申請しないとどうなる?

年金を受け取る権利は、年金法に基づき、年金の支払日の翌月の初日から5年が経過すると、時効によって消滅してしまいます。

仮に60歳から年金を受け取れる資格があったにもかかわらず、手続きを忘れていた場合、5年を経過した分から順次時効となります。

例えば、66歳に請求手続きをした場合、61歳までの1年分(5年以上経過した過去の権利)は時効により受け取れず、直近の過去5年分までさかのぼって受け取ることになります。

ポイントの解説

受給できる権利がある場合は、年金請求書が届いたら速やかに申請することが重要です。


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特別支給の老齢厚生年金の受給中の注意点

特別支給の老齢厚生年金を受給しながら働く場合、年金額が調整されたり、税金の対象となったりすることに注意が必要です。

働きながらもらうと減額(停止)される?

特別支給の老齢厚生年金を受け取りながら、厚生年金に加入して働く場合、「在職老齢年金制度」が適用されます。

この制度では、毎月の給与(総報酬月額相当額)と年金(報酬比例部分)の月額の合計額が一定の基準額支給停止調整額を超えると、年金の一部または全額が支給停止減額)されます。この基準額は毎年見直されますが、現行(2025年度)では51万円が基準額となっており、これを超えると年金が調整される仕組みです。

ポイントの解説

在職老齢年金制度の支給停止調整額は、年金制度改正により、2026令和8年4月から62万円に引き上げられます。これにより、高齢者が働きながら年金を受給しやすくなります。

参照:在職老齢年金について知りたい|公益財団法人 生命保険文化センター

特別支給の老齢厚生年金にかかる税金

特別支給の老齢厚生年金は「雑所得」として扱われ、所得税および住民税の課税対象となります。

年金支払いの際には「公的年金等の源泉徴収制度」が適用され、源泉徴収義務者である日本年金機構などによって、一定額以上の年金を受け取る人からはあらかじめ税金が源泉徴収されます。

注意点

ただし、給与所得(再雇用など)など、年金以外の所得がある場合は、源泉徴収だけでは納税が完結しないため、原則として確定申告を行い、所得全体に対して正しく納税額を計算し直す必要があります。

特別支給の老齢厚生年金に関するQ&A

特別支給の老齢厚生年金についてよくある質問とその回答をまとめました。

Q. 特別支給の老齢厚生年金は、満額だといくら?

20歳から60歳までの40年間、年金保険料を全て納付した場合、老齢基礎年金は満額支給されます。

しかし、特別支給の老齢厚生年金の金額は、厚生年金の加入期間の長さや現役時代の報酬額に依存するため、「満額」という考え方は存在せず、個人によって大きく異なります

もし自分の年金額の目安を知りたい場合は、毎年届く「ねんきん定期便」や、オンラインの「ねんきんネット」、または年金事務所への相談を通じて、個別具体的な金額を確認するとよいでしょう。

Q. 65歳になったら特別支給の老齢厚生年金はどうなる?

特別支給の老齢厚生年金は65歳までの期間に限定された経過措置的な年金であるため、受給者が65歳になると、特別支給の老齢厚生年金を受け取る権利は終了します。そして、65歳からは本来の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取る権利が発生します。

特別支給の老齢厚生年金を受けていた人には、65歳になる誕生月の約3ヶ月前に日本年金機構から「年金請求書(65歳時)」が送付されます。その請求書を用いて、改めて65歳からの年金を請求する手続きを行うことで、本来の年金の支給が開始されます。

Q. 特別支給の老齢厚生年金の繰下げ受給はできる?

特別支給の老齢厚生年金は、制度の性格上、60歳から65歳までの期間に限定して支給される経過措置的な年金です。したがって、老齢基礎年金や老齢厚生年金のように、受給開始時期を遅らせて年金額を増やす「繰下げ受給を選択することはできません

まとめ

特別支給の老齢厚生年金は、年金支給開始年齢引き上げに伴う、60歳から65歳までの間の生活を支えるために設けられた重要な経過措置です。受給するには、対象となる生年月日や厚生年金加入期間の要件を満たす必要があります。

この年金制度は、年金額が一生涯減額される老齢年金の繰上げ受給とは異なり、65歳以降の年金額に原則として影響を与えない点が大きな特徴です。

しかし、受給するためには必ずご自身で請求手続きを行う必要があり、手続きを怠ると5年の時効によって年金を受け取る権利が消滅するリスクがあります。

また、在職中に受給する場合は、在職老齢年金制度による支給停止リスクも理解しておくことが肝心です。

もし、自分の受給資格や正確な年金額について不明点がある場合は、速やかに年金事務所や社会保険労務士などの専門家への相談を検討しましょう。

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監修
西岡 秀泰
  • 西岡 秀泰
  • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。

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執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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