
ボーナスの所得税が倍になった?高く感じる理由と手取りを増やす対策を専門家が解説
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「ボーナスが出たのに、所得税が異常に高い」「所得税が急に倍になって手取りが減った」そんな風に感じている人もいるかもしれません。
実は、賞与にかかる所得税や社会保険料は、給与と異なる特別な計算方法が用いられています。
また、前年よりも多く引かれている場合、昇給による社会保険料の増加や扶養人数の変更などの影響があります。
本記事では、ボーナスの所得税が「倍になった」と感じる理由、具体的な計算の仕組み、手取りを最大化するための賢い節税対策まで、専門家がわかりやすく解説します。
※社会保険料 監修:西岡 秀泰(社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー)
- ボーナスの所得税が高く感じる理由・タイミングは「前月の給与が少ない、なかった場合」「ボーナスが前月の給与を大幅に超えた場合」など
- ボーナスの所得税が高いと感じた時は「明細と源泉徴収票を見比べて確認」「心配な時は経理、人事に相談する」
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ボーナスの所得税が高く感じる理由
「今回のボーナス、手取りが予想より少ない…」「所得税が倍になった気がする」と感じた経験がある人もいるかもしれません。
ボーナスにかかる所得税は、月々の給与とは異なる計算方法が適用されるため、手取りが少なく感じやすい特性があります。
ボーナスの所得税が高く感じられる主な理由を見ていきましょう。
前月の給与が少ない、なかった場合
ボーナスにかかる所得税の源泉徴収額を計算する際、実は前月の給与額が大きく影響します。
所得税法では、ボーナスの源泉徴収税額は「前月の社会保険料控除後の給与額」と「扶養親族等の数」に基づいて決まる「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて算出されます。
前月の給与が通常よりも高かったり、休職などで給与がなかったりすると、ボーナスの源泉徴収税額が不自然に高くなることがあります。
その理由は、算出率の表が前月の給与額が多いほど、高い税率を適用するように設計されているためです。
ボーナスが前月の給与を大幅に超えた場合
通常の計算方法では所得税額が著しく不均衡になる場合として、「賞与の金額が、前月の給与の10倍を超える場合」には、税額の算出の仕方が異なります。
ボーナス(賞与)に対する税額の算出は、毎月の給与の所得税と異なり、「賞与に対する源泉徴収の算出率」の表を用いて算出します。
ボーナスに対する税率はボーナス額が大きい場合に、通常の計算方法よりも所得税額が高く算出されるケースがあります。
これも「倍になった」と感じる一因かもしれません。
扶養、保険料控除の変更があった場合
ボーナスの所得税額は、その人の扶養親族の数や社会保険料控除後の金額によって変わります。
例えば、以下のようなケースでは、ボーナスにかかる所得税額に影響が出ることがあります。
- 年の途中で扶養親族が増減した:扶養親族の数によって適用される税率が変わるため、変更があったタイミングのボーナスで税額に差が出ることがあります
- 社会保険料控除額が変わった:育児休業からの復帰などを理由に社会保険料の支払いが再開・変更した場合、その月の社会保険料控除額が変わることで、ボーナスにかかる所得税額に影響が出ることがあります
サラリーマンの場合、通常、年末調整で一年間の所得税を精算します。ボーナスの段階で「なぜか税金が高い」と感じる場合は、扶養している人数や、社会保険料などの変動が影響している可能性も考えられます。
ボーナスの所得税の計算方法
ボーナス(賞与)にかかる所得税は、月々の給与とは少し異なる独自のルールで計算されます。
この仕組みを理解することが、「税金が高い」と感じる疑問を解消する第一歩です。
賞与にかかる所得税の基本の仕組み
賞与から差し引かれる所得税の源泉徴収額は、主に以下のステップで計算されます。
1.社会保険料等控除後の賞与の金額を出す
賞与の総支給額から、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料を差し引きます。
2.「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめる
源泉徴収税額の算出率は、「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」と「扶養親族等の数」に応じて求めます。
表を参照し、適用される税率(算出率)を確認します。
3.所得税額を計算する
「社会保険料等控除後の賞与の金額」に、上記で確認した「算出率」を乗じて、所得税の源泉徴収額を算出します。
計算方法のポイントは、「前月の社会保険料控除後の給与額」と「扶養している人数」が算出率を決める基準となる点です。
前月の給与が少なかったり、ボーナスが極端に多かったりすると、実態と異なる算出率が適用されてしまうことがあるため、「税金が高い」と感じやすくなります。
Q.給与とボーナスの所得税の計算は同じ?
基本的には異なります。 月々の給与にかかる所得税の源泉徴収額は、「源泉徴収税額表」の「月額表」を用い、その月の社会保険料等控除後の給与額と扶養親族等の数に応じて税額が算出されます。
一方、ボーナスにかかる所得税の源泉徴収額は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使い、前月の社会保険料控除後の給与の額を参照して算出率を決めます。
「前月の社会保険料控除後の給与の額」が基準となる点が、給与とボーナスで計算方法が異なる大きな理由です。
ただし、最終的に年間の所得税額は、年末調整や確定申告で精算します。
社会保険料・住民税も差し引かれる
ボーナスから差し引かれるのは所得税だけではありません。主に以下の社会保険料と、前年の所得に基づいて計算される住民税も天引きされます。
住民税は前年の所得に対して課税されるため、ボーナスの支給月に関わらず、通常は6月から翌年5月にかけて12分割で毎月の給与から天引きされます。
上記の社会保険料や住民税も天引きされることで、手取り額がさらに少なく感じられることがあります。
シミュレーションで見る手取りの変化
実際にボーナスが支給された際、手取り額がどのように変化するのか、具体的なシミュレーションで見ていきましょう。
ここでは、社会保険料率を一般的なものとして概算し、わかりやすく解説します。
【シミュレーション条件】
- 年齢:40歳未満(介護保険料なし)
- 健康保険料率:5.0%(労使折半、協会けんぽ全国平均を参考に仮定)
- 厚生年金保険料率:9.15%(労使折半)
- 雇用保険料率:0.6%(労働者負担分)
- 前月の社会保険料控除後の給与額:30万円(賞与の所得税算出率の基準)
- 扶養親族:0人
賞与が30万円の場合
社会保険料(概算)
- 健康保険料:30万円 × 5.0% = 15,000円
- 厚生年金保険料:30万円 × 9.15% = 27,450円
- 雇用保険料:30万円 × 0.6% = 1,800円
- 合計:15,000 + 27,450 + 1,800 = 44,250円
社会保険料控除後の賞与額: 300,000円 - 44,250円 = 255,750円
所得税源泉徴収税額(概算)
- 前月の社会保険料控除後の給与が30万円、扶養0人の場合、賞与の所得税算出率は約8.168%(※税額表による)
- 255,750円 ×8.168% =18,439円
住民税(目安):前年の所得によるため一概には言えませんが、例えば1万円程度と仮定
賞与が60万円の場合
社会保険料(概算)
- 健康保険料:60万円 × 5.0% = 30,000円
- 厚生年金保険料:60万円 × 9.15% = 54,900円
- 雇用保険料:60万円 × 0.6% = 3,600円
- 合計:30,000 + 54,900 + 3,600 = 88,500円
社会保険料控除後の賞与額: 600,000円 - 88,500円 = 511,500円
所得税源泉徴収税額(概算)
- 前月の社会保険料控除後の給与が30万円、扶養0人の場合、賞与の所得税算出率は約8.168%(※税額表による)
- 511,500円 × 8.168% = 41,779円
住民税(目安):例えば2万円程度と仮定
賞与が100万円の場合
社会保険料(概算)
- 健康保険料:100万円 × 5.0% = 50,000円
- 厚生年金保険料:100万円 × 9.15% = 91,500円
- 雇用保険料:100万円 × 0.6% = 6,000円
- 合計:50,000 + 91,500 + 6,000 = 147,500円
社会保険料控除後の賞与額: 1,000,000円 - 147,500円 = 852,500円
所得税源泉徴収税額(概算)
- 前月の社会保険料控除後の給与が30万円、扶養0人の場合、賞与の所得税算出率は約8.168%(※税額表による)
- 852,500円 ×8.168% = 69,632円
住民税(目安):例えば3万円程度と仮定
ボーナス額が増えるほど、社会保険料や所得税が占める割合が大きくなり、手取り額が支給額よりも少なくなることがわかります。
特に、所得税は累進課税のため、金額が大きくなるほど税の負担が多くなるので、「手取りが少ない」「税金が高い」と感じやすい要因となります。
所得税が「倍になった」と感じた時の確認ポイント
ボーナスの所得税が予想以上に高かったと感じた時、まずは落ち着いて状況を確認することが大切です。
どこに原因があるのか、自分でチェックできるポイントを紹介します。
明細と源泉徴収票を見比べて確認する
支給されたボーナスの給与明細をしっかり確認することが大切です。
主に以下の項目をチェックしましょう。
- 総支給額:実際に支給されたボーナスがいくらだったか
- 所得税額:今回天引きされた所得税額
- 社会保険料額:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料のそれぞれの金額
- 住民税額:天引きされた住民税額
- 控除額:扶養控除や社会保険料控除など、給与から天引きされている控除額
次に、前年の源泉徴収票や、前回のボーナス明細と比較してみましょう。
- 過去と比べて、所得税額や社会保険料額の割合が大きく変わっていないか?
- 扶養親族の数や、保険料控除の対象となる支出(生命保険料など)に変化はないか?
特に、ボーナスの所得税は前月の給与額に影響されるため、前月の給与が少なかったり、変動があった場合は、その影響を考慮して比較することが重要です。
経理、人事に相談した方が良いケース
自分で確認しても理由が分からない場合や、あきらかに計算がおかしいと感じる場合は、会社の経理部や人事部に相談しましょう。
以下のようなケースでは、専門的な確認が必要です。
- 計算ミスが疑われる場合:上記で解説した計算方法と大きく異なる金額が引かれている場合
- 前月の給与が異常に少なかった・なかった場合:イレギュラーな給与状況だったにもかかわらず、高額な所得税が天引きされている場合
- 扶養控除や社会保険料控除が正しく適用されているか不安な場合:自分の状況と明細の控除額が合わないと感じる場合
- 特別な計算方法(ボーナスが前月の給与を大幅に超える場合など)が適用された可能性があり、その説明が必要な場合
経理・人事担当者は、個々の従業員の給与・賞与計算の仕組みを熟知しています。不明な点は遠慮なく相談し、納得できる説明を求めましょう。
所得税を抑えるには?今からできる対策
ボーナスで手取りが少ないと感じるなら、合法的な方法で所得税や社会保険料の負担を軽減できないか検討してみましょう。
今からできる対策をいくつかご紹介します。
①iDeCo・ふるさと納税などの活用
iDeCo・ふるさと納税などの活用することで、保険料控除や寄付金控除が増えて、税金負担を軽減する効果があります。
寄附金控除は、ワンストップ特例以外の場合は、確定申告が必要です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用
iDeCoは、自分で掛金を積み立てて運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象になります(上限額あり)。
所得税や住民税の計算のもとになる課税所得を減らせるため、所得税・住民税の負担を軽減できます。ボーナスからまとめて拠出する「年単位拠出」も可能です。
ふるさと納税の活用
ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすることで、寄付額に応じて所得税や住民税から控除が受けられる制度です。
実質2000円の自己負担で、全国各地の魅力的な返礼品を受け取ることができます。ボーナスが出たタイミングで、寄付上限額を確認して活用を検討しましょう。
②年末調整・住宅ローン控除の対応
会社員の場合、通常は年末調整で所得税の過不足を精算します。この際に控除漏れがないか確認することが大切です。
以下の控除は、会社から配布される年末調整の書類に沿って正確に記入し、必要な証明書を添付して提出することが大切です。
住宅ローン控除(住宅資金借入金控除)
住宅ローンを利用してマイホームを購入、増改築した場合に適用される控除です。
年末残高に応じて所得税が控除され、控除しきれない場合は住民税からも控除されます。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で住宅借ローン控除を受けることができます。
生命保険料控除、地震保険料控除
年末調整時に、生命保険や地震保険の控除証明書を提出することで保険料控除を受けられるので、所得税・住民税の負担が軽減されます。
③控除対象(扶養・配偶者)を見直す
扶養親族の状況や、配偶者の所得状況に変更があった場合は、速やかに会社に届け出ましょう。
扶養親族の増減
結婚や出産、親の扶養開始など、扶養親族の数が増えれば、扶養控除が適用され、所得税・住民税の負担が軽減されます。
一方、扶養から外れる人がいれば、控除が減少するので税負担が増える可能性があります。
配偶者の所得状況の変化
配偶者が働き始めたり、パートの勤務時間が増えたことで所得が一定額を超えると、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されなくなる場合があります。
これにより、世帯全体の税負担が増える可能性があります。
ボーナスの税金が戻るケースはある?
ボーナスで多く税金が引かれたように感じても、最終的に税金が戻ってくるケースはあります。
会社員は「年末調整」で、個人事業者や二か所以上の給与がある場合、給与以外に収入がある場合は「確定申告」することで、税金が戻ることがあります。
減税の仕組みと対象者の条件
所得税は、1年間の所得に基づいて最終的な税額が決まります。しかし、月々の給与やボーナスから天引きされる所得税(源泉徴収税額)は、あくまで概算で計算されたものです。
そのため、年末に正確な年間の所得と控除を計算することで、払いすぎた税金が戻ってくることがあります。これが「還付」です。
税金が戻る主なケース:年末調整
以下は年末調整を行うことで還付されるケースです。
年の途中で扶養親族が増えた場合
年末調整で扶養控除が正しく適用され、払いすぎた税金が戻ります。
住宅ローン控除の2年目以降
年末調整で住宅ローン控除を申請することで、税金が還付されます。
税金が戻る主なケース:確定申告
以下は確定申告を行うことで還付されるケースです。
医療費控除を適用する場合
年間10万円(または所得の5%)を超える医療費を支払った場合、確定申告で医療費控除を適用すると税金が戻ることがあります。
ふるさと納税を行った場合
ワンストップ特例制度を利用しない場合は、確定申告が必要です。
iDeCoの掛金を全額所得控除として申告する場合
年末調整で申告しきれなかった場合や、自営業者の場合は確定申告が必要です。
年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
年間の所得が確定し、税額が再計算されることで還付されることがあります。
副業などの所得がある場合:本業の給与以外に所得がある場合は、原則として確定申告が必要です。
災害・盗難などで損失が出た場合(雑損控除)
特定の損失があった場合に控除が適用され、還付されることがあります。
まとめ
ボーナスにかかる所得税が「倍になった」と感じる背景には、月々の給与とは異なる計算方法や、前月の給与額、累進課税の影響など、複数の理由があります。
社会保険料や所得税・住民税も天引きされるため、額面と手取りのギャップに驚くことは珍しくありません。
もし「なぜ?」と感じたら、まずは給与明細を確認し、経理や人事部に相談してみましょう。
そして、iDeCoやふるさと納税の活用、年末調整での控除漏れの確認、扶養親族の見直しなど、今からできる対策を講じることで、将来的な税負担を軽減し、手取り額を増やすことも可能です。
「税金が高い」と感じることは、多くの人が経験する共通の悩みです。しかし、仕組みを理解し、適切な対策を行うことで、不安を解消できるでしょう。
将来必要なお金が気になるあなたへ
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