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企業年金はいつまでもらえる?種類別の受給期間と最適な受け取り方を解説

企業年金はいつまでもらえる?種類別の受給期間と最適な受け取り方を解説

年金2025/10/03
  • #老後資金
  • #会社員

>>老後の資金は足りる?あなたの不足額が分かる診断ツール

企業年金はいつまでもらえる?」そんな疑問をお持ちではないでしょうか。公的年金に加えて、企業年金は老後の生活設計において極めて重要な役割を果たしますが、その受給期間や受け取り方は制度によって大きく異なります

本記事では、そんな疑問に対し、終身年金や確定年金といった受給期間の種類、さらに確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金(企業型DC)の違いによる受給期間の違いを分かりやすく解説します。ぜひ、本記事を企業年金の最適な受け取り方を見つけるための具体的なガイドとしてご活用ください。

この記事を読んでわかること
  • 企業年金の受給期間の2つの形態「終身年金」と「確定年金」
  • 主要な2つの企業年金と、その選択による受給期間の違い
  • 企業年金の最適な受け取り方を見つけるためのチェックポイント


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企業年金がいつまでもらえるかは人によって違う

企業年金を「いつまでもらえるか」という質問に対する答えは、残念ながら一律ではありません。この答えは、個々人が加入している企業年金の制度内容(年金規約)と、退職時に本人が選択する受け取り方(年金か一時金か)の2つの要素によって決定されます。

そのため、まずはご自身の加入している制度がどのような仕組みになっているのかを正確に把握することが、賢明な老後資金計画の第一歩となります。

企業年金の受給期間は主に「終身年金」と「確定年金」の2種類

企業年金の受け取り期間の形態は、大きく分けて「終身年金(一生涯もらえる)」と「確定年金(一定期間もらえる)」の2種類が存在します。これらの違いを理解することが、自身の受給計画を立てる上での基礎知識となります。以下で詳しく解説します。

終身年金:一生涯受け取れる究極の長生き保険

終身年金は、被保険者(年金を受け取る本人)が生きている限り、一生涯にわたって年金を受け取り続けることができる仕組みです。

これは、老後の「長生きリスク」(予想以上に長生きしてしまい、貯蓄が尽きてしまうリスク)に対する究極の保険であると言えます。

特に企業年金で採用されていることが多いのは「保証期間付き終身年金」です。

これは、例えば「10年」といった保証期間が設定されており、もし本人がこの保証期間中に死亡した場合でも、残りの期間に対応する年金や一時金が遺族に支払われる仕組みです。これにより、仮に受給開始直後に万が一のことがあっても、遺族の生活保障として機能する安心感があります。

なお、保証期間付き終身保険は、保証期間はありますが「終身年金」ですので、年金は保証期間が終了した後も生きている限り生涯にわたって支給されます。

確定年金:受給期間と総額が明確な計画的な受け取り方

確定年金は、あらかじめ定められた期間(例:5年、10年、15年など)にわたり、本人の生死にかかわらず年金が支払われる形態です。受給期間と総額が明確であるため、老後の資金計画を立てやすく、計画的に資産を取り崩したい人に向いています。

もし受給期間中に本人が死亡した場合、残りの期間分(残存期間)の年金が死亡一時金として遺族に支払われます。この性質から、確定年金は、死亡時の資金計画や相続対策の一つとしても利用できる側面があります。

ポイントの解説

一般的に、終身年金と比較して、受け取り期間が限定されている分、年間の受取額が多くなる傾向にある点も特徴です。

企業年金の制度別の受給期間

企業年金の受給期間の選択肢は、加入している制度が「確定給付企業年金(DB)」か「企業型確定拠出年金(企業型DC)」かによって大きく異なります。それぞれの制度における受給期間の特徴を把握することで、将来の受給計画の精度を高められます。

確定給付企業年金(DB)の場合

確定給付企業年金(DB:Defined Benefit Plan)は、従業員が受け取る将来の給付額があらかじめ(年金規約によって)約束されている制度です。企業が年金資産の運用責任を負います。

受給期間については、会社の年金規約によって受け取り方の選択肢が定められています。規約によっては「終身年金」または「確定〇年(例:10年、15年)」のどちらかを選択できる場合が多いですが、選択肢は会社ごとに異なります。

近年のDB制度においては、従来の給与連動型ポイント制に加え、「キャッシュバランスプラン」と呼ばれる制度が増加傾向にあります。これは、仮想個人勘定を設定し、運用利息を付与していくことで、将来の給付額を算定する仕組みです。

自分が加入しているDB制度がこれらのどのタイプに近いかを知ることで、退職時にどの程度の年金受給が見込めるか、イメージしやすくなります。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の場合

企業型確定拠出年金(企業型DC:Defined Contribution Plan)は、従業員自身が拠出された掛金を運用し、その運用結果によって将来の給付額が変動する(自己責任)年金制度です。このため、積み立てた資産の総額を原資として給付が行われます。

DCの年金受給は、積み立てた資産を取り崩していく「有期年金」の形式をとるのが原則です。これは、受給期間を5年以上20年以下の範囲(1年刻み)で選択することが一般的です。

ただし、受給の選択肢は企業の年金規約によって異なります。規約によっては、年金として受け取ることができず「一時金のみ」の取り扱いとなる場合や、ごく稀にですが、資産の一部を原資として外部の保険会社などで「終身年金」への移行を選択できる例外的な規約も存在します。

いずれにしても、まずは勤務先の規約を確認することが重要です。

【参考】iDeCoの場合は?

企業年金ではありませんが、似た仕組みとして、iDeCo(個人型確定拠出年金)のケースも把握しておくとよいでしょう。iDeCoも、企業型DCと同様に、自己の運用結果に基づいた積み立て資産を給付の原資とします。したがって、受け取り方は原則として「有期年金」または「一時金」の選択となります。

iDeCoの大きな特徴は、受給開始時期の柔軟性です。受給開始時期は60歳から75歳までの間で選択できるため、公的年金(老齢厚生年金・老齢基礎年金)の受給戦略と組み合わせた応用的な活用が可能です。

例えば、公的年金を75歳まで繰り下げ受給(遅らせて受給)することで年間の受給額を最大化したい場合、その公的年金を受給しない期間(60歳から75歳まで)の生活費をiDeCoの有期年金で賄う、といった戦略が考えられます。これにより、公的年金繰り下げによるメリットを享受しながら、キャッシュフローを確保することができます。


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自分の企業年金の受給期間を確認する方法

企業年金の受給期間や受け取り方法の選択肢は個々の年金規約に依存するため、まずは自分の状況を正確に把握することが不可欠です。以下に確認すべき主な方法を解説します。

会社の「年金規約」や「退職金規程」を確認する

確定給付企業年金(DB)の場合、受給期間や年金受給の要件は、会社が定めている「企業年金規約」や「退職金規程」に明記されています。通常、これらの規程は、社内のイントラネットや人事部門を通じて確認できます。

特に、年金規約には、終身年金、確定年金、一時金といった具体的な受け取りのオプションや、それぞれの選択に必要な手続きが詳しく記載されています。不明点がある場合は、人事や福利厚生部門に問い合わせるとよいでしょう。

「ねんきん定期便」や年金事務所では確認できない

企業年金は、国が運営する公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)とは別の、企業独自の私的年金制度です。そのため、毎年送られてくる公的年金に関する通知書である「ねんきん定期便」には、企業年金に関する具体的な情報、特に受給期間や選択肢の詳細については記載されていません。

同様に、公的年金の窓口である年金事務所も、企業年金の規約の詳細や運用状況について把握していません。企業年金に関する詳細情報を確認するためには、必ず勤務先の人事部門や、後述の運営管理機関に問い合わせる必要があります。

企業型DCなら運営管理機関のサイトを確認

企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している場合、年金資産の運用状況や残高、そして受給時の選択肢に関する情報は、そのDC制度を運営している「運営管理機関」(証券会社や銀行など)の専用Webサイトやアプリで確認できます。

DC制度では、加入者個人に対して定期的に「資産残高通知書」が送付されます。この通知書や運営管理機関のサイトを通じて、これまでに積み立てた資産額、運用実績、そして60歳以降にどのような期間(有期年金)や方法(一時金)で受け取ることが可能であるかを確認できます。

退職時に受け取る書類や企業年金連合会からの通知を確認する

転職や退職をした後で、企業年金資産が前の会社に残っていた場合、その資産は「企業年金連合会」に移管されている場合があります。この連合会からは、移管された資産に関する通知や、将来の給付に関する情報が送付されます。

また、退職時には、会社から企業年金に関する詳細な説明書や、今後の手続きに必要な書類一式を受け取ります。

ポイントの解説

これらの書類には、受給開始年齢、年金資産の状況、そして選択可能な受給期間に関する重要な情報が記載されているため、大切に保管し、必ず目を通すようにしましょう。

一時金という選択肢も?それぞれのメリットをチェック

企業年金の受け取り方には、定められた期間に分割して受け取る「年金形式」のほかに、全額を一括で受け取る「一時金形式」も重要な選択肢となります。最終的な手取り額を最大化するためには、税制や社会保険料の取り扱いを理解した上で、最適な方法を選ぶ必要があります。

年金で受け取るメリット

企業年金を年金形式で受け取る最大のメリットは、公的年金に上乗せされる定期収入を確保し、老後の生活設計を立てやすくする点にあります。

税制面でも公的年金等控除の対象となり、課税負担が軽減される場合があります。

注意点

一方で、年金額が固定されているとインフレで実質的な価値が目減りするリスクや、急にまとまった資金が必要になっても引き出せない流動性の低さが大きなデメリットです。

一時金で受け取るメリット

一時金で受け取るメリットは、まずその資金使途の自由度が非常に高いことです。退職直後の住宅ローンの繰り上げ返済や、まとまった額が必要な車の購入、あるいは新たな投資の原資など、目的に応じて自由に利用できます。

税制面においては、一時金は「退職所得控除」という非常に優遇された控除が適用されます。この控除額は勤続年数に応じて大きくなるため、特に勤続年数が長い場合、年金形式で受け取るよりも、税金の負担が圧倒的に有利になるケースが多いといえます。

具体的には、勤続20年までは年間40万円、20年超では年間70万円が控除額に加算されます。

さらに、年金を受け取ることで、公的年金と合算されて所得税の負担が予期せず増加する可能性を避けられる点もメリットです。

年金・一時金の併用という手も

多くの企業年金制度では、年金と一時金の併用が可能です。この併用は、税制優遇の最大化を図る上で非常に有効な手段となり得ます。

例えば、退職所得控除の非課税枠を最大限に活用するために、勤続年数に基づく控除額までの金額を一時金として受け取り、非課税枠を超えた残りの資産を年金として分割して受け取る方法が考えられます。

この併用により、退職時のまとまった資金ニーズに対応しつつ、残りの老後資金を計画的な年金収入として確保できるため、それぞれのメリットをバランスよく享受することができます。

自身の資金計画と税制優遇の最大化を両立させる、もっとも柔軟性の高い受け取り方の1つといえます。

企業年金はいつまでもらえるかに関するQ&A

企業年金の受給に関して、読者からよく寄せられる疑問点とその回答をまとめました。

Q. 企業年金の受け取りは65歳から?

企業年金の受給開始時期は、公的年金の原則的な受給開始年齢(65歳)と連動するケースが多いですが、制度や個人の加入期間によって異なります

確定給付企業年金(DB)では、会社の規約によって定められますが、多くの場合、退職時または60歳、65歳などが選択肢となります。確定拠出年金(DC/iDeCo)の場合は、原則として60歳から受給が可能となります。

ただし、DCでは加入期間が10年に満たない場合、受給開始年齢が繰り下げられるルールがあります。
また、iDeCoでは75歳まで受給開始を遅らせることも可能です。自身の規約を確認することが必須です。

Q. 企業年金をもらっている途中で死亡したらどうなる?

年金形式で受け取っている途中で本人が死亡した場合、その後の扱いは年金の種類によって異なります

  1. 終身年金の場合:保証期間付き終身年金であれば、保証期間の残りの期間に応じた一時金または年金が遺族に支払われます。しかし、保証期間が過ぎていた場合は、原則として給付は終了します。
  2. 確定年金の場合:確定年金は期間が定められているため、残りの期間分の年金や一時金が、遺族に対して確実に支払われます。
  3. 確定拠出年金(DC)の場合:年金資産の残高が残っていた場合、その残高は「死亡一時金」として遺族に支払われます。

Q. 会社の業績が悪化したり、倒産したりしたら企業年金はどうなる?

会社の業績悪化や倒産は不安要素ですが、企業年金は法律によってその資産が厳重に保護されています。

確定給付企業年金(DB)の場合

DBの年金資産は、信託銀行や生命保険会社といった外部の機関に積み立てることが法律で義務付けられており、会社の資産とは分別管理されています。

これにより、会社が倒産しても、年金資産が直接差し押さえられることはありません

また、国は企業に対し、将来の給付に必要な資産を積み立てるよう厳しい基準を課しています。

注意点

ただし、万が一、会社が倒産し制度が解散する時点で積立金が約束した給付額に満たない場合(積立不足)、給付額が減額される可能性はあります。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の場合

DCは、拠出された掛金が拠出時点で完全に従業員個人の資産となり、外部の信託銀行等で分別管理されます。これはDB以上に厳格な個人資産としての保護であり、会社の経営状態から完全に切り離されています。

したがって、会社が倒産してもご自身の年金資産が影響を受けることは一切なく、全額保全されます。資産保全の観点では、もっとも安全性の高い仕組みです。

まとめ

企業年金がいつまでもらえるかは、「終身年金」か「確定年金」かという制度の選択肢、およびご自身がDBかDCのどちらに加入しているかによって決まります。DBは規約によって終身年金が選べる可能性がありますが、DCは原則として有期年金であり、期間が定められています。

最適な受け取り方、すなわち手取り額を最大化する方法は、年金か一時金か、またはその併用を選択するかにかかっています。特に、退職所得控除は税制上の優遇が大きいため、勤続年数と合わせて控除額を算出し、非課税枠を最大限に活かせるよう、一時金との併用を慎重に検討する必要があります。

まずは会社の「年金規約」や「退職金規程」、DCであれば「運営管理機関のサイト」を確認し、自身の選択肢と資産状況を正確に把握することから始めましょう。

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監修
山本 務
  • 山本 務
  • 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者

東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。

記事一覧

執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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