
遺族基礎年金と遺族厚生年金の違いとは?受給資格・金額・対象者を徹底比較
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一家の大黒柱に万が一のことがあった場合、「遺された家族の生活はどうなるのだろう」と不安に感じる方は少なくないでしょう。そのような時に、家族の生活を経済的に支える公的な仕組みが「遺族年金」です。
しかし、遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、名称が似ているため違いが分かりにくいと感じるかもしれません。
そこで本記事では、2つの制度の具体的な違いや、自身の状況でどちらをいくら受け取れるのかを詳しく解説します。
もしもの時に備え、制度の基本をしっかり理解しておきましょう。
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金の5つの重要な違い
- それぞれの制度の受給資格、金額、期間の詳細
- 両方の年金を受け取れるケースと金額シミュレーション
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遺族年金の基本|2つの制度の全体像
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者(または被保険者であった人)が亡くなった際に、この人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる公的年金です。遺された家族の生活を経済的に支えることを目的としています。
この遺族年金は、日本の公的年金制度の基本的な構造を理解すると、仕組みが分かりやすくなります。
遺族年金は「2階建て構造」
日本の公的年金制度は、全国民共通の「国民年金(基礎年金)」を1階部分、会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金」を2階部分とする「2階建て構造」になっています。
遺族年金もこの構造に準じており、1階部分にあたるのが「遺族基礎年金」、2階部分にあたるのが「遺族厚生年金」です。
どちらの年金が支給されるかは、亡くなった人がどの年金制度に加入していたかによって決まります。
亡くなった人の加入状況で決まる
亡くなった人の職業によって、加入している年金制度が異なります。この加入状況が、遺族が受け取れる遺族年金の種類を決定します。
- 自営業者・フリーランスなど(国民年金のみに加入):亡くなった場合、遺族は原則として「遺族基礎年金」のみを受け取れます。
- 会社員・公務員など(国民年金と厚生年金に加入):亡くなった場合、遺族は要件を満たせば「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方を受け取れる可能性があります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金|5つの項目で比較
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、どちらも遺族の生活を支える制度ですが、この内容にはいくつかの重要な違いがあります。
ここでは、知っておくべき5つの項目を比較しながら解説します。
①受給できる遺族の範囲
一番の違いは、受給できる遺族の範囲です。
遺族基礎年金は、子の養育を支援する目的が強いため、受給対象者が「子のある配偶者」または「子」に限定されています。したがって、子どもがいない配偶者は受け取ることができません。
一方、遺族厚生年金は対象範囲が広く、亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母が対象となります。
ただし、受給には優先順位があり、一番順位の高い遺族が受け取ります。一般的には配偶者が最優先されます。
②「子」の定義と年齢制限
遺族年金制度における「子」の定義は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で共通です。対象となるのは、以下のいずれかに該当する子です。
- 18歳になった年度の3月31日までにある子
- 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子
この条件を満たす子どもがいるかどうかで、遺族基礎年金の受給資格や遺族厚生年金の優先順位が決まります。
③受給金額の計算方法
受給できる年金額の決まり方も、両制度で異なります。
遺族基礎年金は、受給者の状況にかかわらず金額が決まっている定額制です。
令和7年度の金額は、基本額が年額83万1700円で、これに対象となる子の人数に応じた加算額が上乗せされます。
一方、遺族厚生年金は、亡くなった人の生前の収入(平均標準報酬額)や厚生年金への加入期間に応じて金額が変動します。
具体的には、亡くなった人が受け取るはずだった老齢厚生年金の「報酬比例部分」の4分の3が支給額の基本となります。そのため、生前の収入が高く、加入期間が長いほど受給額は多くなります。
④受給期間
年金を受け取れる期間にも違いがあります。
遺族基礎年金は、一番年下の子が18歳になった年度の3月31日を迎えるまでの有期給付です。すべての子がこの年齢を超えると、受給権は消滅します。
対照的に、遺族厚生年金は、受給権を失う事由(再婚など)に該当しない限り、原則として終身にわたって受け取ることができます。
ただし、例外として夫が亡くなった時に30歳未満で子どもがいない妻の場合、遺族厚生年金の支給は5年間の有期給付となります。
また、2028年4月からは制度が改正され、60歳未満で子のない配偶者への給付は原則として5年間の有期給付となる見込みです。
⑤支給要件(保険料納付要件)
遺族年金を受給するためには、亡くなった人が生前に保険料をきちんと納めていたことが条件となります。この「保険料納付要件」は、両制度で共通のルールが基本です。
原則として、死亡日の前日において、国民年金加入期間のうち保険料を納付した期間と免除された期間を合わせた期間が3分の2以上あることが必要です。
ただし、この要件を満たせなくても、令和18年3月末日までに亡くなった場合は特例があります。
死亡時に65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡月が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ、要件を満たしたものとみなされます。このルールは「短期要件」と呼ばれます。
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遺族基礎年金|子がいる家庭向けの制度
遺族基礎年金は、国民年金に加入している人が亡くなった場合に、遺された「子のある配偶者」または「子」の生活を支えるための制度です。
この名の通り、国民年金(基礎年金)を土台としており、子育て世帯への保障という側面が強いのが特徴です。
受給できる人
遺族基礎年金を受給できるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた、以下のいずれかに該当する遺族です。
- 子のある配偶者
- 子
ここでの「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある子を指します。
重要な点は、子どもがいない配偶者は対象外であることです。また、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間は、この子自身には支給されません。
受給金額の計算方法
遺族基礎年金の金額は、定額で決まっています。令和7年度の年金額は以下の通りです。
基本額:83万1700円
この基本額に、対象となる子の人数に応じて以下の金額が加算されます。
- 1人目および2人目の子の加算額:各23万9300円
- 3人目以降の子の加算額:各7万9800円
例えば、子のある配偶者が受給する場合の年金額は以下のようになります。
- 子どもが1人の場合:83万1700円 + 23万9300円 = 107万1000円
- 子どもが2人の場合:83万1700円 + 23万9300円 + 23万9300円 = 131万300円
受給期間と失権
遺族基礎年金は、永続的に受け取れるわけではありません。受給期間は、対象となる子どもが以下の条件を満たすまでとなります。
- 子どもが18歳になった年度の3月31日を迎えるまで
- 子どもが障害等級1級・2級の状態にある場合は、20歳になるまで
すべての子どもがこの年齢に達すると、遺族基礎年金の受給権は消滅(失権)します。
また、受給期間中であっても、受給者である配偶者が再婚した場合(事実婚を含む)には、この時点で受給権を失います。これは、新たな配偶者によって生計が維持されるとみなされるためです。
遺族厚生年金|子がいなくても受給できる制度
遺族厚生年金は、会社員や公務員など、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、遺族の生活を支えるための制度です。
遺族基礎年金とは異なり、子の有無にかかわらず配偶者が受給できる可能性がある点が大きな特徴です。また、対象となる遺族の範囲も広く設定されています。
受給できる人と優先順位
遺族厚生年金を受給できるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族のうち、以下のうち一番優先順位が高い人です。
- 配偶者(妻、または死亡時に55歳以上の夫)と子
- 父母(死亡時に55歳以上)
- 孫(18歳年度末まで、または障害等級1・2級の20歳未満)
- 祖父母(死亡時に55歳以上)
一番の特徴は、子のいない配偶者も対象となる点です。
ただし、夫が受給する場合、妻の死亡当時に55歳以上であるという年齢要件があります(支給開始は原則60歳から)。妻にはこの年齢要件はありません。
受給金額の計算方法
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった人の厚生年金加入実績に基づいて計算され、原則として老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。
報酬比例部分とは、厚生年金に加入していた期間の給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)に応じて決まる金額です。つまり、生前の収入が高く、加入期間が長いほど、遺族が受け取る年金額も多くなります。
また、特定の条件を満たす妻には、遺族厚生年金に加えて以下の加算給付があります。
- 中高齢寡婦加算:夫が亡くなった時に40歳以上65歳未満で子のいない妻などに、65歳になるまで年額62万3800円が加算されます。
- 経過的寡婦加算:中高齢寡婦加算を受けていた昭和31年4月1日以前生まれの妻が65歳になった時、老齢基礎年金額との差額を調整するために加算されます。
受給期間と2025年改正の影響
遺族厚生年金の受給期間は、受給権を失う事由(再婚など)がない限り、原則として終身です。
ただし、以下の例外があります。
- 夫の死亡時に30歳未満で子のない妻:支給期間は5年間の有期給付となります。
さらに、2025年に成立した年金制度改正法により、2028年4月からは60歳未満で子のない配偶者への遺族厚生年金は、原則として5年間の有期給付となる見込みです。
これは、男女間の支給要件の差を解消し、受給者が自立するまでの期間を支援するという考え方に基づいています。
この改正は今後の生活設計に影響を与える可能性があるため、動向に注意が必要です。
両方もらえるケースとは?
特定の条件下では、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることができます。これにより、遺族の生活保障はより手厚くなります。
ここでは、両方を受給できる条件と、具体的なケースでの受給額をシミュレーションします。
両方受給できる条件
遺族基礎年金と遺族厚生年金を両方受給できるのは、以下の条件をすべて満たす場合です。
- 亡くなった人が厚生年金の被保険者(または被保険者であった)であること
- 遺族が「子のある配偶者」または「子」であること
つまり、亡くなった人が会社員や公務員で、18歳年度末までの子ども(または障害のある20歳未満の子)がいる家庭の場合、1階部分の遺族基礎年金と2階部分の遺族厚生年金をあわせて受け取ることができます。
遺族年金を受給するための手続き
遺族年金は、自動的に支給が開始されるものではなく、遺族自身が請求手続きを行う必要があります。
大切な家族を亡くした直後で大変な時期ですが、手続きには期限があるため、落ち着いて準備を進めることが欠かせません。
請求の流れと期限
遺族年金の請求権には時効があり、死亡日の翌日から5年以内に手続きを行う必要があります。この期限を過ぎると、時効により年金を受け取る権利が消滅してしまうため注意が必要です。
一般的な請求の流れは以下の通りです。
- 死亡届の提出:まず市区町村役場に死亡届を提出します。
- 年金事務所等での相談:最寄りの年金事務所や街角の年金相談センターで、受給資格や必要書類について相談します。
- 必要書類の準備:戸籍謄本や住民票、所得証明書など、指示された書類を収集します。
- 年金請求書の提出:すべての書類を揃え、指定の窓口に年金請求書を提出します。
手続きには時間がかかる場合があるため、できるだけ早めに動き出すことが推奨されます。
必要書類と提出先
遺族年金の請求には、状況に応じてさまざまな書類が必要となります。事前に確認し、漏れなく準備しましょう。
主な必要書類
- 年金請求書
- 亡くなった人の年金手帳または基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本(死亡の事実と請求者との続柄がわかるもの)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 請求者の収入が確認できる書類(所得証明書など)
- 受取先金融機関の通帳等
提出先
提出先は、請求する年金の種類や亡くなった人の最後の加入状況によって異なります。
- 遺族基礎年金のみ:お住まいの市区町村役場の年金担当窓口、または年金事務所
- 遺族厚生年金(遺族基礎年金も含む):最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
どの窓口に行けばよいか分からない場合は、まずはお近くの年金事務所に問い合わせるのが確実です。
遺族年金でよくある疑問
遺族年金制度は複雑なため、不明な点も多いかもしれません。ここでは、よくある疑問・質問について簡潔に回答します。
Q. 遺族基礎年金と遺族厚生年金は両方同時に受け取れる?
はい、受け取れる場合があります。
亡くなった人が会社員や公務員などの厚生年金加入者で、かつ遺族が「18歳年度末までの子がいる配偶者」または「子」である場合に、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を同時に受給できます。
亡くなった人が自営業者であったり、遺族に該当する子がいない場合は、どちらか一方のみ、もしくはいずれも受給できないことになります。
Q. 子がいないと受給できない?
年金の種類によります。
遺族基礎年金は、子の養育を目的としているため、18歳年度末までの子(または障害のある20歳未満の子)がいない場合は受給できません。
一方、遺族厚生年金は、亡くなった人が厚生年金に加入していれば、子のいない配偶者でも受給できます。ただし、夫が受給する場合は妻の死亡時に55歳以上であるという年齢要件があります。
Q. 再婚したら受給できなくなる?
はい、その通りです。
遺族年金の受給者が再婚した場合、受給権は消滅します。これは法律上の婚姻届を提出した場合だけでなく、事実婚(内縁関係)と認められる場合も同様です。
一度受給権が消滅すると、その後離婚したとしても再び遺族年金を受け取ることはできません。
ただし、配偶者が再婚して受給権を失った場合でも、要件を満たす子どもがいれば、この子どもが遺族年金を受け取れるようになることがあります。
まとめ
遺族基礎年金と遺族厚生年金は、どちらも遺された家族の生活を支える重要な制度ですが、この仕組みには大きな違いがあります。
- 遺族基礎年金:国民年金を基盤とし、「子のある配偶者」または「子」を対象とした、子の成長までの有期の年金です。
- 遺族厚生年金:厚生年金を基盤とし、子のいない配偶者も対象となる、原則として終身の年金です。
どちらの年金を受け取れるかは、亡くなった人の年金加入状況と、遺族の家族構成によって決まります。会社員や公務員で子がいる家庭の場合は、両方の年金を受け取れる可能性があり、保障は手厚くなります。
万が一の事態はいつ訪れるかわかりません。自身の年金加入状況を確認し、家族がどのような保障を受けられるのかを事前に把握しておくことが、将来の安心につながります。
遺族年金の請求には5年という期限があるため、手続きは早めに行うことをおすすめします。
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監修
山本 務
- 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者
東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。
