
遺族年金は夫が死亡後70歳以上でももらえる?社労士が受給要件と手続き方法を解説
»あなたの年金はいくら?老後に不足する金額を3分でシミュレーション
「夫が亡くなったら70歳以上の妻は遺族年金を受け取れる?」「65歳以降は遺族年金がなくなるって本当?」と気になる人もいるでしょう。
70歳以上でも、要件を満たせば遺族厚生年金を受け取ることができます。ただし、65歳以降は自身の老齢年金との調整(併給調整)が行われるため、遺族年金を全額受け取れるとは限りません。
受給額は、亡くなった配偶者の年金加入状況や自身の年金額によって異なるため、仕組みを理解しておくことが大切です。
本記事では、70歳以上の人が受け取れる遺族年金の仕組みや受給額の目安、老齢年金との関係についてわかりやすく解説します。
- 70歳以上でも夫が厚生年金に加入していれば遺族厚生年金は受給可能
- 自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金を比較し、差額分が支給される仕組み
- 遺族年金は自動で支給されず、死亡から5年以内に請求手続きが必要
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夫死亡後70歳以上でも遺族年金は受給できる?

夫が亡くなった後、自身が70歳以上であっても、遺族年金を受け取れる可能性は十分にあります。受給できるかどうかは年齢で決まるのではなく、亡くなった夫の年金加入状況などが要件となります。
夫が会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間があれば、妻は遺族厚生年金の対象となるのが一般的です。
年齢を理由に諦めず、自身の状況が受給要件に当てはまるかを確認することが欠かせません。


年齢による受給制限はない
遺族年金の受給資格において、受け取る側の年齢に上限はありません。したがって、夫が亡くなった時に妻が70歳、80歳、あるいはそれ以上の年齢であっても、年齢だけを理由に受給資格がなくなることはありません。
重要なのは、亡くなった夫が遺族厚生年金の支給要件を満たしているかどうかです。
夫が厚生年金に加入していた実績があれば、妻は原則として生涯にわたり遺族厚生年金を受け取ることが可能です。
「高齢だから対象外」ということはありませんので、まずは制度の基本要件を確認しましょう。
受給の可否を決める3つの要件
遺族厚生年金を受給できるかどうかは、主に3つの要件によって決まります。
1つ目は、亡くなった夫の年金加入状況です。厚生年金の被保険者であった期間中に亡くなった場合や、老齢厚生年金の受給資格期間(原則25年以上)を満たしていた場合などが該当します。
2つ目は、妻の状況です。夫の死亡時に、夫によって生計を維持されていたことが必要です。法律上の婚姻関係にあることが原則ですが、生計を共にしていれば、別居していても認められる場合があります。
3つ目は、受け取る遺族の優先順位です。遺族厚生年金を受け取れる遺族には順位があり、配偶者と子は最優先とされています。子がいない場合でも、妻は受給対象者となります。
(参考:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額) | 日本年金機構)
70歳以上・80歳以上・専業主婦…ケース別の受給可否早見表
夫が亡くなった際の遺族年金の受給可否は、夫の職業や妻の状況によって異なります。自身の状況がどのケースに当てはまるか、以下の表で確認してみましょう。
70歳以上で子どもがいない場合、遺族基礎年金の対象にはなりません。受給のポイントは、夫に厚生年金の加入歴があるかどうかです。
夫が自営業で国民年金のみに加入していた場合は、遺族厚生年金は支給されませんが、条件を満たせば60歳から65歳までの間、寡婦年金が受け取れる可能性があります。
遺族年金の種類と70歳以上が対象となるケース
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。どちらが受け取れるかは、亡くなった人の年金加入状況や、遺族の家族構成によって決まります。
70歳以上で夫を亡くし、すでに子どもが独立している場合、主に関係するのは「遺族厚生年金」です。ここでは、それぞれの年金の基本的な違いと、どのような場合に70歳以上の人が対象となるのかを解説します。

遺族基礎年金は「子のいる配偶者」が対象
遺族基礎年金は、国民年金に加入している人が亡くなった場合に、亡くなった人によって生計を維持されていた「18歳年度末までの子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)がいる配偶者」または「子」に支給される年金です。
この「子」の要件が重要で、子どもがいない場合や、子どもが成人している場合は、原則として遺族基礎年金を受け取ることはできません。
そのため、夫が亡くなった時点で妻が70歳以上である多くのケースでは、子どもがすでに成人しているため、遺族基礎年金の対象外となります。
(参考:老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額 | 日本年金機構)
遺族厚生年金は「子のいない妻」も対象
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に支給される年金です。遺族基礎年金とは異なり、「子の有無」は受給の必須要件ではありません。
亡くなった夫に生計を維持されていた妻であれば、子どもがいない場合や、子どもが成人している場合でも受給対象となります。
したがって、70歳以上で夫を亡くした妻の生活を支える中心的な役割を果たすのは、この遺族厚生年金となります。
ただし、30歳未満で子のない妻の場合は5年間の有期給付となるなど、年齢による条件も一部存在します。
夫が会社員・公務員だった場合は対象になる

夫が現役時代に会社員や公務員として勤務していた場合、厚生年金に加入していたことになります。
そのため、亡くなった夫が所定の要件を満たしていれば、妻は遺族厚生年金を受け取ることができます。
70歳以上で夫が亡くなった場合でも、夫が老齢厚生年金を受給していた、あるいは受給資格期間を満たしていたのであれば、妻は遺族厚生年金の請求が可能です。
夫の年金加入歴が、残された家族の生活保障に直接つながる重要なポイントとなります。
夫が自営業(国民年金のみ)だった場合と寡婦年金
夫が自営業者などで、国民年金の第1号被保険者としてのみ保険料を納付していた場合、厚生年金への加入歴がないため、妻は遺族厚生年金を受け取ることができません。
ただし、この場合でも「寡婦年金」という制度の対象になる可能性があります。
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者としての保険料納付期間が10年以上ある夫が亡くなった場合に、10年以上継続して婚姻関係にあり、夫に生計を維持されていた妻が、60歳から65歳になるまでの間受け取れる年金です。
70歳以上の妻は、寡婦年金の支給対象年齢(60歳~65歳未満)を超えているため、残念ながらこの制度の対象にはなりません。
(参考:寡婦年金 | 日本年金機構)
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70歳以上で受給できる遺族年金の金額
70歳以上で夫を亡くした場合、遺族厚生年金がいくらもらえるのかは、生活設計において重要な関心事です。年金額は、亡くなった夫の現役時代の収入や厚生年金の加入期間によって決まります。
また、自身がすでに老齢年金を受け取っているため、老齢年金との調整が行われます。
ここでは、遺族厚生年金の基本的な計算方法から、65歳以上の人に適用される併給ルール、さらに年金額を増やす可能性がある加算制度まで、順を追って解説します。

遺族厚生年金の基本計算式
遺族厚生年金の基本的な年金額は、亡くなった夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
報酬比例部分とは、現役時代の給与や賞与の平均額と、厚生年金に加入していた期間に基づいて計算される部分を指します。つまり、夫の収入が高く、加入期間が長いほど、遺族厚生年金の額も多くなります。
例えば、夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)が年額120万円だった場合、遺族厚生年金の基本額は、報酬比例部分の4分の3である年額90万円(月額7万5000円)が目安となります。
これが、自身の年金と調整される前の基本の金額です。
65歳以上の併給ルール

65歳以上の人が自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金の両方の受給権を持つ場合、年金の受け取り方には特別な調整ルールが適用されます。
まず、自身の老齢基礎年金は全額受け取れます。次に、老齢厚生年金と遺族厚生年金の調整が行われます。原則として、自身の老齢厚生年金が優先的に全額支給されます。
その上で、遺族厚生年金の額が自身の老齢厚生年金の額を上回る場合に、差額分が遺族厚生年金として支給されます。
例えば、自身の老齢厚生年金が年額60万円で、計算上の遺族厚生年金が年額90万円の場合、差額の30万円が遺族厚生年金として上乗せされます。結果、受け取る厚生年金部分は合計で90万円(自身の老齢厚生年金60万円+差額30万円)となります。
なお、年金額の計算には特例があり、①「夫の老齢厚生年金の4分の3」と、②「夫の老齢厚生年金の2分の1と妻の老齢厚生年金の2分の1の合計額」を比較し、高い方が採用される場合もあります。
(参考:年金の併給または選択 | 日本年金機構)
中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算
遺族厚生年金には、特定の条件を満たす妻に対して年金額が上乗せされる「加算制度」があります。70歳以上の人に主に関係するのは「経過的寡婦加算」です。
経過的寡婦加算は、昭和31年4月1日以前生まれの妻が65歳以上で遺族厚生年金を受け取る場合に加算されるものです。
これは、かつての年金制度の変更に伴い、老齢基礎年金の額が低くなる世代の女性の年金額を補う目的で設けられています。加算額は生年月日に応じて異なり、年齢が若いほど少なくなります。
もう1つの「中高齢寡婦加算」は、夫が亡くなった時に40歳以上65歳未満で子のない妻などに支給されるもので、65歳になると終了します。
中高齢寡婦加算の対象者には65歳から経過的寡婦加算が支給される仕組みになっています。自身が対象となるか、生年月日を確認してみましょう。
(参考:経過的寡婦加算 | 日本年金機構)
遺族厚生年金の金額|夫の年金額×妻の年金額【早見表】
夫が亡くなった後に妻が受け取る年金の総額は、夫の年金額だけでなく、妻自身の年金額によって変わります。65歳以上の場合、自身の老齢厚生年金との調整(差額支給)が行われるため、仕組みが複雑に感じられるかもしれません。
以下の表は、夫の老齢厚生年金額と妻の老齢厚生年金額の組み合わせによって、妻が受け取る厚生年金部分の合計額(自身の老齢厚生年金+遺族厚生年金の差額分)がどのように変わるかを示したものです。
自身の状況に近いケースを参考に、受給額の目安を確認してみてください。
【妻が受け取る厚生年金部分の月額早見表(単位:円)】
表の見方
- 横軸:夫の老齢厚生年金(月額)
- 縦軸:妻自身の老齢厚生年金(月額)
- 表の中:妻が受け取る厚生年金部分の月額目安
例
- 妻の老齢厚生年金が 6万円、夫の老齢厚生年金が 12万円 の場合→ 妻が受け取る厚生年金部分の目安は 9万円
この表は、妻の老齢基礎年金や経過的寡婦加算を含まない、厚生年金部分のみの受給額の目安です。
計算方法:夫の遺族厚生年金(夫の老齢厚生年金×3/4)と妻の老齢厚生年金を比較し、高い方の金額が支給されます。ただし、特例計算(夫の老齢厚生年金の1/2+妻の老齢厚生年金の1/2)の方が高くなる場合は、当該金額が支給されます。
具体例で見る受給額シミュレーション
遺族年金の制度や計算式を理解しても、自身のケースで具体的にいくらになるのかイメージするのは難しいものです。ここでは「専業主婦だった妻」と「共働きだった妻」の2つのモデルケースを取り上げ、受給額がどのように変わるかをシミュレーションします。
自身の状況と照らし合わせながら、年金額の目安を掴んでいきましょう。
【専業主婦の妻】夫の年金月15万/20万の場合

専業主婦(または国民年金のみ加入)だった妻の場合、自身の老齢厚生年金がないか、あっても少額です。そのため、夫の遺族厚生年金が老後の収入の重要な柱となります。
【条件】
- 妻:70歳、老齢基礎年金を満額(月額約7万1000円)受給、老齢厚生年金は0円
ケース1:夫の老齢厚生年金が月15万円(年額180万円)の場合
- 遺族厚生年金の基本額:15万円 × 3/4 = 月額11万2500円
- 妻の受給総額(月額):7万1000円(老齢基礎年金) + 11万2500円(遺族厚生年金) = 約18万3500円
ケース2:夫の老齢厚生年金が月20万円(年額240万円)の場合
- 遺族厚生年金の基本額:20万円 × 3/4 = 月額15万円
- 妻の受給総額(月額):7万1000円(老齢基礎年金) + 15万円(遺族厚生年金) = 約22万1000円
このように、専業主婦の妻は自身の老齢基礎年金に、夫の遺族厚生年金がほぼ上乗せされる形になります。
【共働きの妻】自分の老齢厚生年金がある場合
共働きで自身も厚生年金に加入していた妻の場合、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金の調整が行われます。
【条件】
- 妻:70歳、老齢基礎年金を満額(月額約7万1000円)受給
- 夫:老齢厚生年金が月15万円(年額180万円)
ケース1:妻の老齢厚生年金が月5万円の場合
- 遺族厚生年金の基本額:15万円 × 3/4 = 月額11万2500円
- 妻の老齢厚生年金(5万円)が遺族厚生年金(11万2500円)より少ないため、差額(6万2500円)が支給されます。
- 妻の受給総額(月額):7万1000円(老齢基礎年金) + 5万円(自身の老齢厚生年金) + 6万2500円(遺族厚生年金の差額) = 約18万3500円
ケース2:妻の老齢厚生年金が月12万円の場合
- 遺族厚生年金の基本額:15万円 × 3/4 = 月額11万2500円
- 妻の老齢厚生年金(12万円)が遺族厚生年金(11万2500円)より多いため、差額支給はありません。
- 妻の受給総額(月額):7万1000円(老齢基礎年金) + 12万円(自身の老齢厚生年金) = 約19万1000円
共働きの場合、自身の老齢厚生年金額によって、遺族厚生年金からの上乗せ額が変わることがわかります。
妻自身の年金額による受給額の違い【比較表】
夫の年金額が同じでも、妻自身の老齢厚生年金額によって、最終的に受け取る年金の総額は変わります。
以下の比較表は、夫の老齢厚生年金を月額12万円(遺族厚生年金の基本額は月額9万円)に固定し、妻の老齢厚生年金額を変動させた場合の月額受給総額の試算です。
※夫の老齢厚生年金:月額12万円(遺族厚生年金 月額9万円)で固定
※妻の老齢基礎年金は満額(約7万1000円)で計算
この表から、妻の老齢厚生年金が遺族厚生年金の基本額(この例では9万円)を下回る間は、合計の受給額(厚生年金部分)が遺族厚生年金の額に揃うように調整されるため、総額はほぼ変わりません。
しかし、妻の老齢厚生年金が遺族厚生年金の額を上回ると、差額支給がなくなるため、総額が増加していくことがわかります。
2025年の年金制度改正で遺族厚生年金はどう変わる?
年金制度は定期的に見直しが行われており、遺族年金についても将来的な変更が予定されています。
ここでは、議論されている改正の背景や内容、そして現在70歳以上の人への影響について解説します。将来の制度変更を理解しておくことで、現在の制度への理解も深まります。


見直しの背景と対象になる人・ならない人
遺族年金制度の見直しの背景には、女性の就労形態の多様化や、男女間の制度差の解消といった社会の変化があります。
現行制度は、夫が主な稼ぎ手で妻が専業主婦という世帯を前提とした部分が多く、現代のライフスタイルとの間にずれが生じていると指摘されています。
議論されている主な変更点は、夫を亡くした妻だけでなく、妻を亡くした夫も年齢に関係なく遺族厚生年金を受け取れるようにする男女差の解消や、子のいない若い世代の受給期間を5年間の有期とするなどです。
これらの改正は、主にこれから年金を受け取る将来の世代を対象としており、法改正が施行される2028年(令和10年)4月以降に受給権が発生する人が中心となります。
したがって、すでに遺族年金を受給している人や、改正前に受給を開始する方は、原則として新しいルールの対象にはなりません。
現在70歳以上の受給者への影響
現在70歳以上で、すでに遺族厚生年金を受給している人や、これから受給権が発生する人については、将来の制度改正による直接的な影響は基本的にないと考えてよいでしょう。
法律の改正では、すでに確定した権利を遡って変更する「不利益遡及」は原則として行われません。
したがって、子のいない若い世代の受給期間を5年に限定するといった見直しも、これから新たに受給権が発生する世代が対象となります。
現在70歳以上の人は、現行の制度に基づいて年金額が計算され、生涯にわたって支給されるという原則に変わりはありません。
将来の制度改正のニュースに、過度に不安を感じる必要はないでしょう。
遺族年金を受給するための手続き
遺族年金は、受給要件を満たしていても、自動的に支給が始まるわけではありません。自身で年金事務所などに請求手続きを行う必要があります。
夫が亡くなった直後は、さまざまな手続きに追われて大変な時期ですが、年金の手続きは今後の生活に直結する重要なものです。
ここでは、申請の期限から必要書類、手続きの窓口と大まかな流れについて、順を追って解説します。


申請期限は死亡日の翌日から5年
遺族年金を請求する権利には、時効があります。原則として、夫が亡くなった日の翌日から5年以内に請求手続きを行わないと、権利が消滅してしまう可能性があります。
5年を過ぎてしまうと、過去に遡って年金を受け取ることができなくなるため、注意が必要です。夫の死亡後は、気持ちの整理がつかない中でも、できるだけ早めに手続きの準備を始めることが大切です。
万が一、手続きが遅れてしまった場合でも、時効が成立する前であれば請求は可能ですので、諦めずに年金事務所へ相談しましょう。
申請に必要な書類一覧

遺族年金の請求手続きには、いくつかの書類を揃える必要があります。事前に準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。一般的に必要となる主な書類は以下の通りです。
- 年金請求書(年金事務所または街角の年金相談センターの窓口で入手)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書(亡くなった夫と請求者自身の両方)
- 戸籍謄本(死亡の事実と、夫との続柄が確認できるもの)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡診断書(または死体検案書)のコピー
- 請求者の収入が確認できる書類(所得証明書など)
- 受取先金融機関の通帳など(請求者本人名義のもの)
これらの書類は基本的なものであり、個別の状況によっては追加で書類が必要になる場合があります。手続きを始める前に、管轄の年金事務所に必要な書類を問い合わせておくと安心です。
申請窓口と相談先
遺族年金の申請手続きは、亡くなった夫が加入していた年金制度によって窓口が異なります。
- 遺族厚生年金:お近くの年金事務所または街角の年金相談センターが窓口となります。
- 遺族基礎年金のみ:住んでいる市区町村役場の国民年金担当窓口で手続きします。
70歳以上で夫が会社員だった場合など、遺族厚生年金の対象となるケースでは、主に年金事務所が手続きの窓口となります。年金事務所は予約制のことが多いので、訪問する前に電話で予約を取るようにしましょう。
手続きや必要書類について不明な点があれば、まずは「ねんきんダイヤル」に電話で問い合わせるか、年金事務所に直接相談することをおすすめします。
手続きの流れと所要期間
夫が亡くなってから遺族年金を受け取るまでの大まかな流れは以下の通りです。
書類の準備から実際の支給開始までには、数ヶ月程度の時間がかかるのが一般的です。手続きは早めに進めるようにしましょう。
いつからいつまでもらえる?
遺族年金は、夫が亡くなった月の翌月分から支給が開始されます。そして、妻が受け取る遺族厚生年金は、原則として生涯にわたって受け取ることができます。
ただし、受給権を失うケースもあります。例えば、妻が再婚した場合(事実婚を含む)や、亡くなった夫以外の人の養子になった場合などです。
これらの事由に該当すると、受給権を失った時点で遺族厚生年金を受け取る権利はなくなります。
基本的には、自身の状況に変化がなければ、一度受給が始まると生涯続く生活の支えとなります。
遺族年金を受給する際の注意点

遺族年金の受給が始まると、その後の生活においていくつか知っておくべき注意点があります。
税金の扱いや、自身の状況が変わった場合の影響など、正しく理解しておくことで、安心して年金を受け取り続けることができます。
ここでは、遺族年金が非課税であることや、受給権を失うケース、届け出が必要な場合など、重要なポイントを解説します。
遺族年金は非課税
遺族基礎年金および遺族厚生年金は、所得税や住民税の課税対象とはなりません。したがって、遺族年金として受け取った金額については、確定申告をする必要はありません。
自身の老齢年金は雑所得として課税対象になりますが、遺族年金は全額が非課税所得として扱われます。この点は、家計を管理する上で重要なポイントです。
ただし、年金以外の所得がある場合や、医療費控除などで確定申告を行う際には、遺族年金の収入を申告書に記載する必要はありません。
再婚・養子縁組で受給権を失う
遺族厚生年金は、一度受給が始まっても、特定の状況になると受け取る権利がなくなります(失権)。主な失権事由は以下の通りです。
- 死亡した時
- 婚姻した時(法律上の婚姻だけでなく、事実上の婚姻関係と同様の事情にある場合も含む)
- 直系血族または直系姻族以外の方の養子になった時
注意が必要なのは「婚姻」です。籍を入れない事実婚の状態でも、生計を共にするパートナーができた場合は受給権を失う可能性があります。
状況に変化があった場合は、速やかに年金事務所に届け出る必要があります。
(参考:遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき | 日本年金機構)
年金額改定の届出が必要なケース
遺族年金を受け取っている間に、自身の状況に変化があった場合は、年金額が変更されたり、支給が停止されたりすることがあります。そのため、所定の届け出が必要になります。
例えば、自身が障害年金を受け取れるようになった場合や、65歳に到達して自身の老齢年金の受給が始まる(または変更になる)場合などです。
自身の老齢厚生年金額が変わると、遺族厚生年金の差額支給分にも影響が出る可能性があります。
また、生計を維持されていた子どもが18歳年度末に達した場合など、家族構成の変化によっても年金額が変わることがあります。
状況の変化があった際には、速やかに年金事務所に相談し、必要な手続きを確認しましょう。
年金生活者支援給付金など併せて確認したい制度
遺族年金を受給していても、所得が一定基準額以下の場合には、年金に上乗せして「年金生活者支援給付金」を受け取れる可能性があります。
これは、公的年金などの収入金額やその他の所得額が一定基準以下の年金受給者の生活を支援するために設けられた制度です。
対象となる人には、日本年金機構から請求手続きの案内が送付されます。遺族年金を受け取るようになったことで新たに対象となる場合もありますので、案内が届いた際には忘れずに手続きを行いましょう。
住んでいる自治体によっては高齢者向けの独自の支援制度がある場合もあります。
年金収入だけでは生活が厳しいと感じる場合は、市区町村の窓口で相談してみることも1つの方法です。
夫死亡後の遺族年金に関するよくある質問
遺族年金については、制度が複雑なため、多くの人がさまざまな疑問をお持ちです。
ここでは、70歳以上の人が抱きやすい質問と回答をQ&A形式でまとめました。
Q 80歳以上でも受給できる?
はい、受給できます。遺族厚生年金には、受け取る人の年齢の上限はありません。
亡くなった夫が厚生年金の受給要件を満たしていれば、妻が80歳以上であっても遺族厚生年金を受け取ることが可能です。年齢を理由に受給資格がなくなることはありません。
Q 夫が自営業だった場合は?
夫が自営業者で、国民年金(第1号被保険者)のみに加入していた場合、遺族厚生年金は支給されません。
遺族厚生年金は、厚生年金の加入者を対象とした制度だからです。
また、70歳以上の妻は、国民年金の独自給付である「寡婦年金」の支給対象年齢(60歳から65歳未満)も超えているため、こちらも対象外となります。
Q 自分の年金と両方もらえる?
65歳以上の場合、自身の老齢年金と遺族年金を両方満額で受け取ることはできません。
まず、自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金が優先して全額支給されます。その上で、計算された遺族厚生年金の額が自身の老齢厚生年金の額を上回る場合に、差額分が上乗せで支給される仕組みになっています。
Q 共働きだった場合は損する?
「損する」というわけではありません。
共働きで自身も高い老齢厚生年金を受け取っている場合、遺族厚生年金との差額が小さくなるため、上乗せされる金額が少なくなるか、ゼロになることがあります。
しかし、それは自身の年金が手厚いことの裏返しです。制度上は、まず自身の年金が確保され、それでも足りない部分を遺族年金が補うという考え方になっています。
Q 遺族年金はいつまでもらえる?
妻が受け取る遺族厚生年金は、原則として生涯にわたって支給されます。
ただし、再婚(事実婚を含む)をしたり、直系血族・直系姻族以外の人の養子になったりした場合は、受給権を失った時点で受給する権利がなくなります。
これらの状況に変化がなければ、終身で受け取ることができます。
Q 2025年の改正で減額される?
2028年(令和10年)に予定されている制度改正は、主にこれから受給権が発生する若い世代を対象としています。
現在70歳以上で、すでに遺族年金を受給している人や、改正前に受給を開始する人が、この改正によって年金額を減額されることは基本的にありません。
法律の不利益な変更は、過去にさかのぼって適用されないのが原則です。
まとめ

本記事では、70歳以上で夫を亡くした場合の遺族年金について解説しました。
年齢を理由に受給を諦める必要はなく、夫が厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金を受け取れる可能性が高いです。
ただし、受給額は自身の老齢年金との調整が行われるため、必ずしも年金収入が大幅に増えるとは限りません。
自身の年金加入状況と、亡くなった夫の年金記録を確認し、どのくらいの金額が受け取れるのかを把握することが、今後の生活設計の第一歩となります。
遺族年金は請求しなければ受け取れません。手続きには5年の時効があるため、早めに年金事務所へ相談することをおすすめします。制度を正しく理解し、自身の権利をしっかりと活用しましょう。
自身の正確な年金額や、今後の生活設計についてさらに詳しく知りたい方は、専門家への相談も有効です。
まずは簡単なシミュレーションで、自身の状況を客観的に把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
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監修

山本 務
- 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者
東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。
執筆

マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。








