
厚生年金は10年未満だともらえない?受給資格の真実と今からできる対策
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「厚生年金の加入期間が10年未満だと、将来年金は1円ももらえないのだろうか」と、自分自身の年金記録を見て不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。結論からいうと、その心配は多くの場合、誤解です。
本記事では、厚生年金の加入期間が10年未満でも年金を受け取れるケースや、年金の受給資格に関する正しい知識を解説します。
- 厚生年金と国民年金を合算する「受給資格期間」の仕組み
- 加入期間が短い場合の年金額への影響
- 今からでも年金額を増やすための具体的な5つの対策
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「厚生年金10年未満だともらえない」は本当?
「厚生年金の加入期間が10年未満だと、将来年金がもらえない」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは必ずしも正しくありません。
年金の受給資格は、厚生年金だけの加入期間で判断されるわけではないためです。多くの方が誤解しやすい「10年ルール」の正しい仕組みについて、以下で詳しく解説します。
受給資格期間は「すべての年金制度を合算」して判断
老齢年金を受け取るために必要な「受給資格期間」は、厚生年金の加入期間だけでなく、国民年金や共済組合など、すべての公的年金の加入期間を合算して10年(120ヶ月)以上あるかどうかで判断されます。
例えば、厚生年金の加入期間が5年(60ヶ月)しかなくても、国民年金保険料を5年以上納めた期間があれば、合計で10年以上となり、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取る権利が発生します。
このルールには、2017年8月に、それまで原則25年必要だった受給資格期間が10年に短縮されたことで、より多くの方が年金を受け取りやすくなったという経緯があります。したがって、厚生年金単独の期間が短くても、諦める必要はありません。
厚生年金の加入期間が短くても年金はもらえる
受給資格期間の10年を満たしていれば、厚生年金の加入期間がたとえ1ヶ月だけでも、その期間に応じた老齢厚生年金は支給されます。
つまり、厚生年金の加入期間が短い場合、年金がもらえなくなるのではなく、「老齢厚生年金の受給額が少なくなる」ということです。
老齢厚生年金の金額は、加入期間の長さと、その間の給与や賞与の額(平均標準報酬額)に基づいて計算されます。そのため、加入期間が短いほど、将来受け取る年金額は少なくなりますが、ゼロになるわけではありません。
「受給資格の有無」と「受給額の大小」は別の問題として捉える必要があります。
厚生年金の受給に必要な「受給資格期間10年」の正しい理解
年金を受け取るための鍵となるのが「受給資格期間」です。ここでは、どの期間が受給資格期間に含まれるのか、また自分自身の加入期間を確認する方法について具体的に解説します。
受給資格期間にカウントされる期間
受給資格期間の10年(120ヶ月)には、以下の期間がすべて合算されます。自分自身の経歴を振り返りながら、どの期間が該当するか確認してみましょう。
受給資格期間にカウントされない期間
注意すべきなのは、国民年金の保険料を支払う義務がありながら、支払わなかった(免除や猶予の手続きをしなかった期間を含む)「未納期間」です。この未納期間は、受給資格期間には一切カウントされません。
ただし、未納期間があるからといって、直ちに年金がもらえなくなるわけではありません。他の納付済期間や免除期間などを合算して10年以上あれば、受給資格そのものは満たすことができます。しかし、未納期間は年金額の計算にも反映されないため、将来の受給額が減る原因となります。
自分の加入期間を確認する方法
自身の正確な年金加入期間を確認するには、主に3つの方法があります。いずれかの方法で、まずは現状を把握しましょう。
ねんきん定期便
ねんきん定期便は毎年誕生月に日本年金機構から郵送される書類です。「これまでの年金加入期間」の欄で、国民年金と厚生年金の加入月数を確認できます。
ねんきんネット
日本年金機構のWebサイトで、24時間いつでも自分自身の年金記録を確認できるサービスです。加入期間の詳細な内訳や、将来の年金見込額のシミュレーションも可能です。利用にはねんきんネットのユーザーID取得、またはマイナポータルでの利用登録が必要です。
年金事務所または街角の年金相談センター
窓口で直接相談することもできます。本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)と基礎年金番号またはマイナンバーがわかるもの(年金手帳やねんきん定期便など)を持参するとよいでしょう。また、来訪の際は事前に予約しておくとスムーズです。
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厚生年金の加入期間が10年未満の場合の年金額への影響
受給資格期間10年をクリアしても、厚生年金の加入期間が短いと、将来受け取る年金額、老齢厚生年金が少なくなります。
ここでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれにどのような影響があるのか、具体的な計算方法を交えて解説します。
老齢基礎年金への影響
老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)の国民年金保険料をすべて納付することで満額が支給されます。2025年度の満額は年額83万1700円(月額6万9308円)です。
厚生年金に加入している期間は、同時に国民年金(第2号被保険者)にも加入している扱いになるため、老齢基礎年金の計算期間に含まれます。
保険料の納付期間が40年に満たない場合、年金額は以下の式で計算され、満額よりも少なくなります。
老齢基礎年金の年金額 = 満額(83万1700円) × (保険料納付済月数 + 全額免除月数 × 1/2 など) ÷ 480ヶ月
老齢厚生年金への影響
老齢厚生年金は、厚生年金に加入していた期間の給与や賞与の額(平均標準報酬額)と加入月数に応じて計算されます。計算式は以下の通りです(2003年4月以降の加入期間の場合)。
老齢厚生年金の年金額 = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
この式からわかるように、加入月数が短いほど、受け取れる年金額は比例して少なくなります。
例えば、加入期間中の平均月収(賞与込み)が30万円だった人が5年間(60ヶ月)厚生年金に加入した場合、年間の老齢厚生年金額は約9万8658円(月額約8221円)と試算できます。
30万円 × 5.481/1000 × 60ヶ月 = 9万8658円
たとえ加入期間が1ヶ月でも、受給資格期間を満たせば将来年金を受け取ることができます。
加入期間別の年金額シミュレーション
厚生年金の加入期間と平均標準報酬額によって、老齢厚生年金の受給額がどの程度変わるのか、以下の表でシミュレーションしてみましょう。
【老齢厚生年金の年額シミュレーション(概算)】
※2003年4月以降の加入期間のみで計算した概算値です。実際の年金額は、これに老齢基礎年金が加わります。
その表からも、加入期間が短いと老齢厚生年金額は少なくなることがわかります。自身の状況に近いパターンを参考に、将来の収入イメージを持つことが大切です。
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厚生年金10年未満の人が年金を増やす方法
厚生年金の加入期間が短い場合でも、将来の年金額を増やすために今からできる対策がいくつかあります。公的年金制度を活用する方法から、自身で準備する私的年金まで、5つの具体的な方法をご紹介します。
国民年金の免除・猶予期間を追納する
過去に保険料の免除や猶予を受けた期間がある場合、後から納付することで年金額を増やすことができます。その制度を「追納」といいます。
追納ができるのは、厚生労働大臣から追納の承認を受けた月から遡って10年以内の免除・猶予期間です。追納することで、その期間が保険料を納付した期間として扱われ、老齢基礎年金の額が増額されます。
手続きはお近くの年金事務所で行えます。未納期間がある方は、まず追納を検討するのが有効な手段です。
60歳以降も厚生年金に加入して働く
60歳以降も厚生年金の適用事業所で働き続けることで、加入期間を延ばし、将来の老齢厚生年金額を増やすことができます。要件を満たせば厚生年金には原則として70歳になるまで加入しなければなりません。
長く加入すればするほど、老齢厚生年金の計算式における「加入月数」が増えるため、受給額も着実に増加します。
ただし、60歳以降に老齢厚生年金(特別支給を含む)を受け取りながら厚生年金に加入して働くと、「在職老齢年金制度」が適用されます。その制度では、給与や賞与と年金(老齢厚生年金の報酬比例部分)の合計額が一定基準を超えると、年金の一部または全額が支給停止となるため注意が必要です。
国民年金の任意加入制度を利用する
60歳になった時点で国民年金の納付期間が40年(480ヶ月)に満たない場合や、受給資格期間が10年に満たない場合、60歳から65歳までの間、国民年金に任意で加入して保険料を納めることができます。
その制度を利用することで、納付月数を増やし、老齢基礎年金を満額に近づけることが可能です。また、受給資格期間が足りない方は、その制度で期間を満たして年金を受け取る権利を確保することもできます。
ただし、厚生年金に加入している間は任意加入できません。60歳以降に退職した方などが対象となる制度です。
付加年金・国民年金基金で上乗せする
自営業者など国民年金の第1号被保険者の方は、老齢基礎年金に上乗せできる制度を利用できます。厚生年金に加入していない期間の選択肢として有効です。
- 付加年金: 毎月の国民年金保険料に400円を上乗せして納付すると、将来「200円 × 付加保険料を納付した月数」の金額が毎年、老齢基礎年金に加算されます。2年以上受け取れば、支払った保険料以上のリターンが期待できます。
- 国民年金基金: 掛金が全額所得控除の対象となる私的年金制度です。掛金額や給付の型を自分で選ぶことができ、終身にわたって年金を受け取れます。
これらの制度は、厚生年金のような2階部分がない第1号被保険者の老後所得を厚くするための選択肢となります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で自分年金を作る
iDeCoは、公的年金とは別に、自分自身で掛金を拠出して運用し、将来の資産を形成する私的年金制度です。厚生年金の加入期間が短い人にとって、老後資金を補うための有力な手段となります。
iDeCoのメリット
- 掛金が全額所得控除: 掛金の全額が所得から控除され、所得税・住民税の負担が軽減されます。
- 運用益が非課税: 通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの運用で得た利益は非課税です。
- 受取時にも控除: 年金または一時金として受け取る際にも、公的年金等控除や退職所得控除が適用されます。
原則として60歳まで引き出せない点はデメリットですが、税制上のメリットを活用しながら、計画的に自分年金を準備することができます。
厚生年金10年未満に関するQ&A
最後に、厚生年金の加入期間が10年未満であることに関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。細かな疑問点を解消し、より理解を深めましょう。
Q. 厚生年金に1ヶ月だけ加入した期間も年金額に反映されますか?
はい、反映されます。
他の国民年金加入期間などと合算して受給資格期間(10年以上)を満たしていれば、たとえ1ヶ月だけの厚生年金加入期間であっても、その期間と報酬額などに応じた老齢基礎・厚生年金が計算され、将来の年金額に上乗せされます。
短期間の加入記録も無駄にはなりませんので、自身の年金記録を正確に確認することが必須です。
Q. 厚生年金の加入期間が10年未満で退職した場合、脱退一時金はもらえますか?
いいえ、日本国籍の方は脱退一時金を受け取れません。
脱退一時金は、公的年金の加入期間が短いまま日本を出国する外国人のための制度です。日本国籍の人は、将来的に他の年金期間と合算して受給資格を満たす可能性があるため、この制度の対象外となります。
支払った厚生年金保険料が掛け捨てになることはなく、加入記録は生涯残ります。受給資格期間を満たせば、必ず将来の年金として受け取ることができます。
Q. 厚生年金の加入期間が短いと、遺族年金や障害年金ももらえませんか?
いいえ、必ずしもそうとは限りません。遺族厚生年金や障害厚生年金は、老齢厚生年金とは受給するための要件が異なります。
- 障害厚生年金: 障害の原因となった病気やけがの初診日に厚生年金に加入していれば、加入期間の長さにかかわらず対象となる可能性があります(別途、保険料の納付要件を満たす必要あり)。
- 遺族厚生年金: 亡くなった方が厚生年金に加入中であった場合や、老齢厚生年金の受給資格期間(原則25年、特例あり)を満たしていた場合などに、遺族が受け取れます。
したがって、老齢厚生年金の受給額が少ない、あるいは厚生年金の加入期間が短いからといって、万一の場合の保障である遺族厚生年金や障害厚生年金が受け取れないと決まるわけではありません。
まとめ
今回の記事では、厚生年金の加入期間が10年未満の場合の年金受給について解説しました。重要なポイントは以下の通りです。
- 「厚生年金は10年未満ではもらえない」は誤解。国民年金など他の公的年金と合算して10年以上あれば受給資格を得られます。
- 厚生年金の加入期間が短いと「もらえない」のではなく、「老齢厚生年金の額が少なくなる」のが正しい理解です。
- 受給資格期間が10年に満たない場合でも、国民年金の任意加入や追納といった対策で、今からでも受給権を確保できる可能性があります。
- iDeCoなどを活用し、公的年金を補う自分年金を準備することも有効な手段です。
大切なのは、自身の年金記録を正確に把握することです。「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で加入期間を確認し、もし不明な点や不安なことがあれば、お近くの年金事務所に相談することをおすすめします。正しい知識を身につけ、計画的に将来の準備を進めましょう。
≫老後は年金で足りる?あなたのケースでシミュレーション
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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