
厚生年金は意味ない?加入する3つのメリットと今後の持続可能性を解説
≫あなたの老後資金はどうする?将来の不足額を診断
「給与から毎月引かれる厚生年金保険料。これって本当に意味があるの?」「将来、ちゃんともらえないなら払うだけ損なのでは?」給与明細を見るたびに、そんな疑問や不安を感じている方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、厚生年金は「意味ない」と感じてしまう理由を紐解きながら、制度に加入する具体的なメリットや、多くの方が見落としがちな価値について、専門家の視点から客観的なデータをもとに解説します。
- 厚生年金に加入する3つの大きなメリット
- 「意味ない」と感じる人が見落としがちな制度の仕組み
- 年金制度の将来性と、老後資金の現実的な考え方
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「厚生年金は意味ない」といわれるのはなぜ?
多くの方が厚生年金に対して「意味がない」と感じてしまう背景には、主に2つの心理的な要因があります。
1つは、毎月の給与から天引きされる保険料の負担感、もう1つは少子高齢化が進む中で「将来、本当に年金をもらえるのか」という制度そのものへの根強い不信感です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
給与明細を見るたびに感じる保険料の重さ
厚生年金保険料は、給与や賞与(正式には標準報酬月額と標準賞与額)に対して定率で課されます。現在の保険料率は18.3%で、これを会社と従業員が半分ずつ負担(労使折半)します。
例えば、月収30万円(標準報酬月額30万円)の場合、保険料の総額は5万4900円となり、その半分の2万7450円が毎月の給与から天引きされます。
年間で見ると30万円以上の負担となり、その金額が手取り収入を直接圧迫するため、「高い保険料を払っている」という負担感が不満につながっていると考えられます。
「将来もらえなくなるのでは」という制度への不安感
少子高齢化と人口減少が進む日本では、「自分たちが高齢者になった時に、年金制度が破綻しているのではないか」という不安が広がっています。背景には日本の年金制度の仕組みがあります。
日本の年金制度は、現役世代が納めた保険料が高齢者世代の年金を支える「賦課方式」で運営されています。そのため、現役世代が減り、高齢者が増え続ければ、制度の維持が困難になるのではと不安感が大きくなっていると考えられます。
本当に意味ない?厚生年金に加入する3つのメリット
このように、「意味ない」と感じる人も増えている厚生年金ですが、制度を正しく理解すると、個人で備えるのが難しいリスクに対応できる、合理的な仕組みであることがわかります。
ここでは、厚生年金に加入することで得られる3つの大きなメリットを、具体的な数字とともに解説します。
メリット①:保険料の半分を会社が負担
厚生年金に加入する最大のメリットの1つが、保険料の労使折半です。これは、被保険者(従業員)が負担する保険料と同額を、事業主(会社)が負担してくれる仕組みです。
例えば、月収30万円(標準報酬月額30万円)の場合、毎月の厚生年金保険料は約5.5万円ですが、本人が給与から支払うのはその半分の約2.75万円です。残りの約2.75万円は会社が負担してくれています。
メリット②:受給額が国民年金のみの約2.5倍
厚生年金に加入していると、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。これにより、将来受け取れる年金額が大幅に増加します。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、受給者平均年金月額は以下の通りです。
- 厚生年金受給者(国民年金含む):約15.1万円
- 国民年金のみの受給者:約5.9万円
このように、平均受給額には約2.5倍もの差があります。国民年金は40年間保険料を納めても満額で月額6万9308円(令和7年度)ですが、厚生年金は収入や加入期間に応じて上乗せされるため、老後の生活の安定度が変わります。
生涯にわたって受け取る総額で考えると、その差は数千万円にもなる可能性があり、その差は無視できません。
メリット③:障害・遺族年金の保障が手厚い
厚生年金は、老後の生活費だけでなく、現役世代の万が一のリスクに備える「保険」としての機能も強力です。
障害年金
病気やケガで障害が残った場合に支給されます。国民年金の障害基礎年金が障害等級1級・2級のみを対象とするのに対し、障害厚生年金はより軽度の3級から保障の対象となります。
また、障害等級1級・2級に該当した場合、障害厚生年金に加えて障害基礎年金も受け取れます。さらに、障害等級に該当しない軽度の障害でも一時金(障害手当金)が支給される場合があります。
遺族年金
加入者が亡くなった場合に、遺族の生活を支えるために支給されます。国民年金の遺族基礎年金が「子のある配偶者」または「子」に限定されるのに対し、遺族厚生年金は子のいない配偶者や父母なども対象となる場合があります。
また、子のある会社員が亡くなった場合、配偶者には遺族基礎年金に加え遺族厚生年金が支払われることもあります。
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「意味ない」と感じる人が見落としがちなポイント
厚生年金の価値は、単純な手取り額の減少や将来の受給額だけで測れるものではありません。制度が持つ多面的な機能やメリットを理解することで、その本当の意味が見えてきます。
ここでは、「意味ない」と感じる人が見落としがちな3つの重要なポイントを解説します。
厚生年金は「保険」であり「貯蓄」ではない
厚生年金を単なる「老後のための貯蓄」と捉えると、保険料の負担が強く感じられるかもしれません。しかし、その本質は社会全体でリスクに備える「保険」です。
具体的には、以下の3つの大きなリスクをカバーしています。
- 老齢リスク:長生きにより生活資金が枯渇するリスクに、終身受給で対応します。
- 障害リスク:病気やケガで働けなくなるリスクを、障害年金で保障します。
- 死亡リスク:一家の働き手が亡くなるリスクを、遺族年金で支えます。
これらの保障を民間の保険だけで準備しようとすれば、高額な保険料が必要となります。厚生年金は、老後の生活費だけでなく、現役世代の万が一に備える総合的なセーフティネットといえます。
物価上昇に対応できる仕組み
銀行預金などは、低金利が長期化する中、インフレーション(物価上昇)によってその価値が実質的に目減りしています。例えば、物価が2%上昇すれば、100万円の価値は実質98万円に下がってしまいます。
一方、公的年金には物価や賃金の変動に応じて年金額が改定される「年金額改定ルール」が備わっています。これにより、物価が上昇した際には年金額も見直され、購買力がある程度維持されるように設計されています。
現在は「マクロ経済スライド」という仕組みによって給付額の伸びが調整されていますが、長期的に見てインフレリスクに一定程度対応できます。
社会保険料控除による税制メリット
毎月の給与から天引きされる厚生年金保険料は、その全額が「社会保険料控除」の対象となります。これは、年間の所得から支払った保険料の合計額を差し引くことができる制度で、結果として所得税や住民税の負担が軽減されます。
例えば、年収400万円で年間約36万円の厚生年金保険料を支払っている場合、その36万円が課税対象の所得から控除されます。所得税率が10%であれば、所得税だけで年間3万6000円の節税効果がある計算になります。
保険料の負担感は大きいですが、同時に税金の負担を軽くする効果もあるという点は、見落とされがちなメリットです。
それでも不安な人へ|厚生年金制度の持続可能性
「メリットは分かったけれど、やはり将来制度が破綻するのでは?」という不安は根強いものです。しかし、結論からいえば、少なくとも数十年内のうちに日本の公的年金制度が完全に破綻し、年金が一切もらえなくなる可能性は極めて低いと考えられます。
その理由として、制度を支えるための仕組みが幾重にも用意されているからです。ここでは、制度の持続可能性を支える2つの重要な要素について解説します。
年金積立金(GPIF)の運用実績
日本の年金制度は、現役世代からの保険料収入だけで運営されているわけではありません。将来の支払いに備えて、国民から集めた保険料の一部を積み立て、それを専門機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が長期的な視点で運用しています。
この年金積立金は、2025年度第2四半期末(2025年9月末時点)で277兆6147億円と世界トップクラスの規模を誇ります。GPIFは2001年度の市場運用開始以来、長期的に安定した収益を上げており、累積収益額は100兆円を超えています。
この運用収益が、少子高齢化が進む中でも年金財政を安定させるための重要な役割を担っており、制度の持続可能性を高めています。
参照:2025年度の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人
制度の持続可能性を高める制度改正
公的年金制度は、固定されたものではなく、社会情勢や経済状況の変化に対応するために、これまでもさまざまな改正が行われてきました。例えば、以下のような改正が実施されています。
- 支給開始年齢の段階的な引き上げ
- マクロ経済スライドによる給付水準の自動調整
- 在職老齢年金制度の見直し(働きながら年金を受け取りやすくする)
- 繰下げ受給の上限年齢の引き上げ(70歳から75歳へ)
少なくとも5年に一度行われる「財政検証」で将来の収支バランスをチェックし、必要に応じて保険料や給付水準を見直すことで、制度の持続可能性を確保しています。
時代に合わせて柔軟に変化し続けることで、将来世代も年金を受け取れる仕組みを維持しています。
厚生年金だけで足りる?老後資金の考え方
厚生年金制度が持続可能であるとしても、「厚生年金だけで老後の生活は安泰か?」というと、必ずしもそうとはいえません。
厚生年金はあくまで老後生活の「基盤」となる収入です。ゆとりある生活を送るには、公的年金に加えて自分自身で資産を準備する「自助努力」も不可欠です。
老後に必要な資金の目安は?
老後の生活費の目安を知ることは、資金計画の第一歩です。総務省の「家計調査 家計収支編(2024年)」によると、65歳以上の無職世帯における1ヶ月の平均的な消費支出は以下のようになっています。
- 夫婦のみの世帯:約25.8万円
- 単身世帯:約14.9万円
一方、厚生年金の平均受給額(国民年金含む)は約15.1万円です。仮に夫が平均額を受給し、妻が国民年金のみ(満額で約6.9万円)の場合、夫婦の合計年金額は約22万円となり、毎月約3.8万円が不足する計算になります。
これをベースに、旅行や趣味を楽しむ「ゆとりのある生活」を送るには、さらに上乗せの資金が必要となります。
NISA・iDeCoで上乗せする
公的年金だけでは不足する老後資金を補うためには、国が用意した税制優遇制度を積極的に活用することが推奨されます。代表的なものが「NISA(少額投資非課税制度)」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。
- NISA:年間最大360万円までの投資で得た利益が非課税になる制度です。いつでも引き出しが可能で、柔軟性が高いのが特徴です。
- iDeCo:自分で掛金を拠出し運用する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となり、高い節税効果があります。原則60歳まで引き出せないため、着実に老後資金を準備できます。
これらを活用し、厚生年金を「1階・2階」部分とすれば、自分年金という「3階」部分を築くことで、より安定した老後生活の基盤を構築できます。
繰下げ受給を検討する
65歳以降も働く意欲と健康な身体があり、当面の生活資金に余裕がある場合は、年金の「繰下げ受給」も有効な選択肢です。
繰下げ受給とは、年金の受給開始を66歳以降に遅らせることで、受給額を増やすことのできる制度です。1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%増額され、75歳まで繰り下げることで84%増額させることができます。
例えば、65歳で月15万円もらえる年金を70歳まで繰り下げると、42%増額されて月21.3万円になります。
その増額された年金額は一生涯続くため、長生きリスクに備える強力な手段となります。
厚生年金に関するQ&A
ここでは、厚生年金に関してよく寄せられる質問について、簡潔にお答えします。
Q. 厚生年金は何歳からもらえる?
原則として65歳から受給できます。ただし、本人の希望により受給開始時期を変更することが可能です。
- 繰上げ受給:60歳から64歳11ヶ月の間に前倒しで受け取る方法。1ヶ月早めるごとに0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの人は0.5% )減額されます。
- 繰下げ受給:66歳から75歳の間に遅らせて受け取る方法。1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されます。
受け取り開始時期は、今後のライフプランや健康状態、経済状況に合わせて慎重に選択する必要があります。
Q. 厚生年金は途中で脱退できる?
厚生年金は、加入要件を満たしている限り、任意で脱退することはできません。
厚生年金保険の適用事業所(株式会社など)に勤務する70歳未満の方は、本人の意思にかかわらず強制的に加入することになります。これは、国民皆年金制度の根幹をなす社会保険制度であるためです。
会社を退職したり、独立して自営業者になったりした場合は、厚生年金の被保険者資格を喪失し、国民年金の第1号被保険者への切り替え手続きが必要となります。
Q. 厚生年金の保険料はいつまで払う?
厚生年金保険の適用事業所に勤務している限り、70歳になるまで保険料を支払います。
70歳に達すると、厚生年金の被保険者資格を喪失するため、それ以降は働き続けていても保険料の負担はなくなります。
なお、60歳以降も厚生年金に加入して働き続けると、その期間に応じて将来受け取る老齢厚生年金額は増えていきます。
2022年4月からは「在職定時改定」が導入され、65歳以降も働き続ける場合は毎年10月に年金額が改定されるようになり、働きながら年金を増やすメリットがより分かりやすくなっています。
まとめ
「厚生年金は意味ない」という意見の多くは、毎月の保険料負担の重さや、年金制度への漠然とした不安から生じるものです。
しかし、制度を客観的に見ると、保険料の半分を会社が負担してくれる点や、国民年金のみの場合と比較して将来の受給額が格段に手厚くなる点など、大きなメリットがあることが分かります。
また、単なる老後の貯蓄ではなく、障害や死亡といった現役世代のリスクに備える「保険」としての機能、物価上昇に対応する仕組み、そして終身にわたって受給できる「長生きリスク」への備えなど、個人では準備が難しい保障を包括的に提供しています。
年金制度は、社会情勢の変化に対応しながら持続可能性を確保するための改正が続けられており、老後生活の基盤として重要な役割を担っています。
ただし、厚生年金だけでゆとりある老後が送れるわけではありません。本記事で解説したメリットを正しく理解した上で、厚生年金を老後資金の土台と位置づけ、NISAやiDeCoなどを活用した自助努力を組み合わせることが、これからの時代の賢明な「老後資金づくり」といえるでしょう。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。
