
iDeCoで厚生年金は減る?「選択制DC」との違いと社会保険料への影響を解説
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「iDeCoに加入すると、将来の厚生年金が減る」という噂を耳にして不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論からいうと、iDeCoで厚生年金が減ることはありません。厚生年金が減る可能性があるのは、給与の一部を確定拠出年金(DC)の掛金に充てる「選択制DC(選択制企業型DC)」という制度です。
そこで本記事では、iDeCoと選択制DCの仕組みの違いや、社会保険料の計算基礎となる標準報酬月額への影響を詳しく解説していきます。
- 個人型DC(iDeCo)に加入しても、将来の厚生年金の額は減らない
- 厚生年金が減少する可能性がある「選択制DC(選択制企業型DC)」の仕組み
- 選択制DCにおける税制・社会保険料の軽減効果と、将来の社会保険給付額への影響
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iDeCoで厚生年金は減る?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金制度のうち「個人型」に分類される私的年金で、制度の実施主体は国民年金基金連合会です。公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする仕組みであり、iDeCoに加入しても公的年金の受給額が減ることはありません。
掛金は加入者本人が自分の銀行口座などから拠出し、給与とは独立して管理されます。給与から天引きする場合でも、社会保険料の算定基準となる「標準報酬月額」には影響しません。
iDeCoの掛金は「社会保険料」も減らさない
「iDeCoで厚生年金が減る」という誤解に次いで多いのが、「iDeCoで社会保険料が安くなる」という誤解です。iDeCoの掛金は、健康保険料や厚生年金保険料の計算基礎となる標準報酬月額からは控除されません。
iDeCoの節税効果は、拠出された掛金が全額所得控除の対象となることで、所得税・住民税が安くなる仕組みです。
つまり、iDeCoの税制メリットは所得税・住民税の軽減に特化しており、社会保険料の計算には影響しないため、将来受け取る老齢厚生年金の額も変わりません。
厚生年金が減る可能性があるのは「選択制企業型DC」
将来の厚生年金が減る可能性があるのは、iDeCoとは異なる制度、すなわち企業型確定拠出年金(企業型DC)の一種である「選択制DC」を導入している企業で加入する場合です。
企業型DCは企業が従業員を対象に実施する制度で、選択制DCもこれに分類されます。選択制DCは、企業側が大きな費用負担なく福利厚生を充実させ、従業員側は税制優遇を受けながら資産形成ができる制度として注目されています。
選択制企業型DCとは?
選択制企業型DC(選択制DC)とは、「給与(賞与)の一部について、引き続き給与で受け取るか、確定拠出年金(企業型DC)の掛金とするかを従業員が選択する制度」です。この制度では、既存の給与を財源とし、その一部を「ライフプラン手当」や「キャリアデザイン手当」といった名称で再設計します。従業員は、この手当の全部または一部をDC掛金として拠出するか、従来通り給与として受け取るかを任意に選択します。
選択制DCの具体的なメリットは以下の通りです。
メリット1.社会保険料が安くなる
選択制DCの最大のメリットの一つは、社会保険料の軽減効果です。DC掛金として拠出された金額は給与等とはみなされない(会社掛金になる)ため、社会保険料の算定基礎に含まれません。社会保険料は企業と従業員が折半しているため、選択制DCの導入により、企業と従業員の社会保険料が減少する可能性があります。
メリット2.所得税・住民税が安くなる
選択制DCの掛金は給与所得の対象外となるため、拠出時の所得税・住民税が軽減されます。確定拠出年金は、拠出時、運用時、受取時の3段階すべてで税制優遇を受けられるのが特徴です。運用益は非課税で再投資され(特別法人税は現在凍結)、受取時には一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除が適用されます。
「選択制DC」で厚生年金が減る可能性がある理由
選択制DCにおいて、給与(賞与)の一部をDC掛金に充当することを選択すると、給与総額が減少します。これにより、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額が下がる可能性があります。標準報酬月額が下がると、将来受け取る老齢厚生年金(報酬比例部分)の給付額が低下することがあります。
また、老齢厚生年金だけでなく、標準報酬月額や給与を基礎として計算される社会保険給付金についても給付額が低下する可能性があります。これには、傷病手当金、出産手当金、育児・介護休業給付金といった休業中の生活を支える給付や、雇用保険の失業給付、労災保険の各種給付などが含まれます。
さらに、病気やケガで障害が残った場合に受給する「障害厚生年金」や、万が一の際に遺族が受け取る「遺族厚生年金」の額も、標準報酬月額を基に計算されるため、将来の受給額が減少する可能性がある点には注意が必要です。
iDeCoと選択制企業型DCの比較表
iDeCo(個人型DC)と選択制DC(企業型DC)の主な特徴は以下の通りです。
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厚生年金は減らない…が、知っておくべきiDeCoの注意点
iDeCoは税制優遇が手厚い制度ですが、老後の資産形成を確実なものとするために、以下の注意点を理解しておく必要があります。
1.原則60歳まで引き出せない(流動性の欠如)
確定拠出年金は、原則として老齢給付として60歳以降でなければ受け取れません。資金を積み立てて運用すると、受給開始年齢までは途中で解約や引き出しをすることはできません(脱退一時金の受給は一定の要件を満たす場合に限る)。流動性がないため、緊急性の高い資金をiDeCoに拠出するのは避けるべきです。
老齢給付金の受給開始時期は、60歳から75歳までの間で自身で選択することができます。
2.運用次第では元本割れのリスクがある
確定拠出年金は、加入者(従業員)自身が運用商品を選択し、運用指図を行います。運用商品には、元本が保証された定期預金などの「元本確保型」もありますが、投資信託などの商品の場合は、運用結果によっては元本を下回る可能性があります。
3.口座管理手数料が継続的にかかる
iDeCoでは、運営管理機関や資産管理機関などに支払う口座管理手数料が発生し、これは加入者が負担します。確定拠出年金制度は長期にわたるため、継続的に手数料が発生する点を踏まえておく必要があります。
4.企業型DCとの併用に制限がある
企業型DCに加入している方がiDeCoに加入する場合、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額に上限が設定されています(合計で月額5万5000円、うちiDeCoは月額2万円が上限)。
企業型DCと確定給付型年金(DB、厚生年金基金など)を併用している場合も、iDeCoの掛金額の上限は月額2万円となります(ただし、企業掛金の合計が月額5万5000円に近づくと、実質的に2万円未満になる場合あり)。
また、企業型DCでマッチング拠出(加入者掛金の拠出)をしている場合は、iDeCoに加入できません。
5.掛金の拠出は5000円から
iDeCoの掛金の拠出は、5000円以上、1000円単位で、加入者が決定します。また、掛金の変更には制限があり、原則として年1回しか変更できないため、無理のない範囲で拠出額を決定することが大切です。
なお、拠出の停止はいつでも可能です。
iDeCoと厚生年金の関係に関するQ&A
iDeCoや厚生年金について、よくある質問に回答します。
Q. iDeCoで厚生年金は減りますか?
iDeCo(個人型DC)で厚生年金が減ることはありません。
iDeCoの掛金は標準報酬月額に影響しないためです。厚生年金が減る可能性があるのは、給与を財源とする選択制DCに加入し、標準報酬月額が下がった場合のみです。
Q. iDeCoで2万3000円を拠出したら年末調整でいくら戻ってくる?
年末調整で「いくら戻ってくるか」は、年収(所得税率・住民税率)によって異なります。
iDeCoの年間拠出額は2万3000円 × 12ヶ月 = 27万6000円です。軽減額は、年間拠出額に所得税率と住民税率(通常10%)を乗じた金額になります。
- 例えば、年収が500万円程度で所得税率が10%の場合: 27万6000円 × (所得税10%+住民税10%) = 年間約5万5200円(概算)の税金が軽減されます。
- 例えば、年収が700万円程度で所得税率が20%の場合: 27万6000円 × (所得税20%+住民税10%) = 年間約8万2800円(概算)の税金が軽減されます。
Q. 夫の扶養に入っているパート主婦でもiDeCoに入るとお得?
所得税・住民税を支払っているかどうかによります。
iDeCoの最大のメリットは、掛金が全額所得控除になることです。ご自身で所得税や住民税を支払っている場合は、節税メリットが得られます。
しかし、所得が非課税限度額以下で、所得税・住民税を支払っていない場合、所得控除による節税効果はゼロとなるため、口座管理手数料の負担のみが発生し、メリットがない場合があります。
Q. iDeCoをやらないほうがいい人(向いていない人)は?
資金の流動性を優先すべき人や、税制メリットを得られない人は、慎重になったほうがよいでしょう。
iDeCoは原則60歳まで資金を引き出せないため、近い将来、大きな出費(住宅購入や教育資金など)が確定している人や、病気・失業に備える緊急予備資金が不足している人は、iDeCoを始める前に流動性の高い資産を優先的に確保するべきです。
また、所得が低く、所得税・住民税を支払っていない人も、節税メリットを享受できないため、向いていない可能性があります。
まとめ
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人の資産形成を税制優遇で支援する制度であり、拠出金は標準報酬月額に影響しないため、将来受け取る厚生年金が減ることはありません。iDeCoのメリットは、所得税・住民税の軽減と運用益の非課税にあります。
一方、選択制企業型DCは、給与をDC掛金に充てることで、社会保険料の軽減効果を得る仕組みです。この社会保険料軽減の裏返しとして、標準報酬月額が下がり、老齢厚生年金やその他の社会保険給付額が低下する可能性がある点に注意が必要です。
確定拠出年金制度は、老後の経済基盤を充実させるための有効な手段ですが、原則60歳まで資金の流動性がないことや、運用リスクがあります。これらを理解した上で、将来のライフプランや財務状況に合わせて慎重に制度を選択することが重要です。
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監修
鈴木 茂伸
- 特定社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
ブラック企業で働き、非正規従業員の経験から、弱い立場の方々の気持ちが理解でき、またひとりの事業主として、辛い立場の事業主の状況も共感できる社労士として、人事労務管理、経営組織のサポートを行っている。家族に障がい者がいることから、障害年金相談者に親身になって相談を受けて解決してくれると評判。また、(一社)湘南鎌倉まごころが届くの代表理事として、高齢者の身元引受、サポート、任意後見人も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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