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傷病手当金の申請は会社が嫌がる?その理由と拒否された場合の合法的な対処法

傷病手当金の申請は会社が嫌がる?その理由と拒否された場合の合法的な対処法

制度2025/11/26
  • #会社員

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病気やケガでやむを得ず会社を休むことになった際、生活を支えるために利用するのが傷病手当金です。この公的な給付金制度の申請に際し、会社が嫌がる素振りを見せるなど、非協力的な対応を受け、不安を感じている方もいるかもしれません。

本記事では、会社が傷病手当金の申請を嫌がる背景や、会社が負う負担、そして労働者が知っておくべき法的根拠を解説し、不安を解消し安心して申請を進めるための具体的な方法をご紹介します。

この記事を読んでわかること
  • 傷病手当金の支給条件と支給期間
  • 会社が傷病手当金の申請を嫌がる事務的・金銭的・法的リスクの5つの理由
  • 会社が申請を拒否した場合に申請を進めるための具体的な対処法


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傷病手当金とは?制度の基本

傷病手当金は、被保険者が業務外の病気やケガによる療養のために仕事に就くことができず、給与を受けられない場合に健康保険から支給される制度です。

この制度は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障する目的で設けられています。

傷病手当金の支給条件と支給期間

傷病手当金が支給されるには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
    • 業務上や通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や、病気と見なされないもの(美容整形など)は対象外です。
    • 自費診療や自宅療養の期間も、仕事に就くことができないことの証明があれば支給対象となります。
  • 仕事に就くことができないこと
    • この状態の判定は、療養担当者(医師等)の意見や被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
    • 仕事を休んだ日から連続する3日間は待期期間と呼ばれ、支給されません。
    • 待期期間には有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれ、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと
    • ただし、給与が支払われていても、その額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。


支給期間に関する改正:通算化

傷病手当金の支給期間は、原則として支給期間を通算して1年6ヶ月に達する日までです。

これは、治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障ができるように「健康保険法等の一部を改正する法律」により改正されたものです。この改正は令和4年1月1日から施行されています。

支給開始日以降に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間があった場合、その期間を除いて1年6ヶ月分が支給されるため、支給開始日から起算して1年6ヶ月を超えても、繰り越して支給が可能になります。

注意点

ただし、支給を始めた日が令和2年7月1日以前の場合には、これまでどおり支給を始めた日から最長1年6ヶ月と定められています。

傷病手当金の給付額シミュレーションと計算式

傷病手当金の1日当たりの支給金額は、以下の計算式に基づき算出されます。

健康保険加入期間12ヶ月以上の場合

1日当たりの金額:
(支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷ 30日×(2/3)

【計算例】
支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均額が28万円であったと仮定し、日額を計算します。

日額の基準額の算出(平均額を30日で割る) 28万円 ÷ 30日 = 9333.33...円
※計算上のルールに従い小数点以下は切り捨てます。 9333円

支給日額の算出(基準額に2/3を乗じる) 9333円 × 2/3 = 6222円 で 支給日額は6222円

もし30日間休業(待期期間を除く)した場合、支給される金額の合計は、6222円 × 30日 = 18万6660円となります。


支給開始日以前の健康保険加入期間が12ヶ月に満たない場合

支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。

  1. 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  2. 標準報酬月額の平均額
    • 32万円:支給開始日が令和7年4月1日以降の方
    • 30万円:支給開始日が令和7年3月31日以前の方


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会社が傷病手当金の申請を「嫌がる」5つの理由

傷病手当金の申請は労働者の権利ですが、会社側が非協力的な姿勢を示すことがあります。その背景には、主に以下の5つの理由が考えられます。

理由1. 事務手続きの手間と担当者の知識不足

傷病手当金の申請書には、被保険者本人が記入する欄や医師が記入する欄のほかに、事業主が勤務状況や賃金支給状況を証明する欄があります。人事労務担当者にとって、この申請書の記入作業は手間がかかる業務です。

特に担当者が健康保険制度や傷病手当金制度について深く理解していない場合、手続きの煩雑さから「面倒だ」と感じ、申請を渋る原因となることがあります。

理由2. 労災保険(業務災害)との混同・労災隠しの疑念

傷病手当金は「業務外の事由」による病気やケガが対象です。もし病気やケガの原因が業務にある場合、適用されるのは労災保険です。

中には、傷病手当金と労災保険を混同して、「傷病手当金を使うと保険料が上がる」という誤った認識から、非協力的な姿勢を示すケースがあります。

さらに、会社が業務起因性を認めることを恐れ、申請を通じて「労災隠し」の疑念を持たれることや、労災トラブルに発展することを警戒し、非協力的な態度を取る可能性もあります。

理由3. 休職中も続く「社会保険料」の会社負担

傷病手当金の申請を嫌がる理由の中でも、特に専門的なものとして挙げられるのが、休職中の社会保険料の負担です。

従業員が休職して給与の支払いがなくなっても、健康保険料や厚生年金保険料(社会保険料)の会社負担分(従業負担分も同様)は免除されません

つまり、会社にとっては、「働かない社員」の社会保険料(会社負担分)を支払わなければならない状態が続くため、コストがかかることを嫌がる場合があります。

理由4. 安全配慮義務違反を問われるリスクへの警戒

メンタルヘルス不調(うつ病など)が原因で休職する場合、会社は安全配慮義務違反を問われるリスクを警戒することがあります。

傷病手当金の申請を認めること、すなわち「病気の状態を公認する」ことは、「会社の管理体制が悪かった」「過重労働が原因だ」として、将来的に社員から訴訟を起こされるリスクにつながる可能性があります。

この法的リスクを回避したいという思惑から、会社側が申請に消極的になるケースがあります。

理由5. 人員配置と復職トラブルへの懸念

社員が長期休職に入ると、「いつ戻るか分からない」社員を抱えることになり、その間の人員配置や業務の代替に大きな影響が出ます。また、休職期間が満了し復職する際、スムーズな復帰ができず、復職トラブルに発展する懸念もあります。

会社によっては、こうした将来的なトラブルや不確実性を避けるため、いっそ社員に退職してほしいという思惑から、傷病手当金の申請手続きに非協力的な姿勢を取ることもあり得ます。


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会社による申請拒否は違法?知っておくべき労働者の権利と法的根拠

会社が傷病手当金の申請に非協力的であったり、手続きを拒否したりすることは、労働者の権利を侵害する行為につながる可能性があります。労働者は以下の法的根拠を知っておくべきです。

会社は「事業主証明」の記入を拒否できない

傷病手当金の申請書には、事業主が休業期間中の勤務状況や賃金支給状況を証明する欄(事業主証明欄)の記入が必要です。

会社(事業主)には、被保険者の申請に必要な証明を行う法的義務があるため、単なる事務手続きの煩雑さや申請を避けたい思いから、この記入を拒否することはできません

ポイントの解説

事業主が協力的でない場合は、まずこの法的義務を明確に伝えることが重要です。

申請を理由とした不当な扱いは「不利益な取り扱い」として違法

労働者が傷病手当金の申請を行ったことを理由として、会社が解雇や降格、減給などの不当な扱い(不利益な取り扱い)を行うことは、法的に許されていません。

傷病手当金の申請は、健康保険法に基づく労働者の正当な権利行使です。

もし会社が申請を理由に不利益な扱いを行った場合、それは違法行為となり、労働基準監督署や裁判所に訴える根拠となります。

会社が非協力的な場合の具体的な5つの合法的な対処ステップ

もし会社が傷病手当金の申請に非協力的な場合は、以下のステップを踏んで合法的に手続きを進めることが可能です。

Step1. 法的義務を明確にし、冷静に会社と交渉する

まず、会社に対して傷病手当金の申請は被保険者の権利であり、事業主には申請書への記入を含む協力義務があることを冷静に伝えます。

この際、可能であれば健康保険法などの根拠を示し、会社側の対応が法的義務に反する可能性があることを明確にしましょう。感情的にならず、あくまで事務手続きの履行を求めるスタンスが重要です。

Step2. 会社経由せず、保険者に直接申請手続きを進める

傷病手当金の申請は、会社を経由しなくても、被保険者本人が直接、加入している健康保険組合全国健康保険協会(協会けんぽ)といった保険者に対して行うことが可能です。

会社が事業主証明の記入を拒否したり、申請書の提出を保留したりする場合でも、申請書を取得し、病院の証明(医師の意見)を得た上で、保険者に直接提出しましょう。

Step3. 健康保険組合(協会けんぽ)に相談し、会社への指導を依頼する

会社が申請に非協力的な場合、加入している保険者(健康保険組合または協会けんぽ)に相談しましょう。

保険者は、健康保険制度の運営・管理や保険給付を行うための機関であり、会社が協力しない事例に対して、会社側に連絡を取り、制度に関する指導や協力要請を行う権限を持っています。この指導によって、会社が態度を改めるケースは多くあります。

Step4. 労務トラブルは労働基準監督署または社労士へ相談

会社との間で労務トラブル(不利益な取り扱い、申請拒否など)に発展した場合、専門的な第三者機関の力を借りるべきです。

  • 労働基準監督署:労働基準法やその他の労働法規に関する違反がある場合に相談できます。ただし、健康保険法上の申請トラブルよりも、申請を理由とした不当な人事(不利益な取り扱い)といった労使紛争に近いケースでの相談が有効です。
  • 社会保険労務士(社労士):健康保険制度を含む社会保険手続きの専門家です。申請代行や会社との交渉サポート、具体的な法的アドバイスを受けることができます。

Step5. 退職を検討する場合の「継続給付」の活用

傷病手当金の申請がきっかけで会社との関係が修復不可能になり、退職を検討せざるを得ない場合でも、傷病手当金の受給を諦める必要はありません。継続給付の要件を満たせば、資格喪失後(退職後)も引き続き傷病手当金の支給を受けることができます。

継続給付を受けるための主な条件は以下のとおりです。

  1. 資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間(任意継続期間や共済組合期間を除く)が継続して1年以上あること
  2. 資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、または受けられる状態(支給条件を満たしている)であること。

この制度を活用することで、療養に専念しつつ、経済的な不安を軽減できます。

傷病手当金の申請に関するQ&A(よくある質問)

傷病手当金に関するよくある疑問や質問に、Q&A形式で回答します。

Q. 会社とやり取りするのが辛いのですが、代行は可能?

はい、可能です。傷病手当金の申請手続きは、社会保険労務士(社労士)に代行を依頼できます

特に休職中や病状が重く会社とのやり取りが大きなストレスとなる場合、社労士に手続きを一任することで、療養に専念できます。

また、前述の通り、会社が非協力的な場合は、保険者(協会けんぽ等)に直接申請することも可能です。

Q. 傷病手当金の審査は厳しい?会社が協力的でないと落ちる?

傷病手当金の審査は、主に医師による労務不能の証明と、会社による休業期間中の給与支払いの有無の証明に基づいて行われます。

会社の協力が得られなくても、医師の証明が適切であり、その他の支給条件(待期期間の成立など)を満たしていれば、会社が非協力的であること自体が理由で審査に落ちることはありません

会社が事業主証明の記入を拒否した場合でも、被保険者が直接申請し、その経緯を保険者に説明すれば、保険者が必要な調査を行い、給付の可否を判断します。

Q. 会社が傷病手当金の申請を拒否し続けるとどうなる?

会社が申請書への記入や提出を拒否し続ける場合、労働者は法的手段や公的機関への相談を通じて対処できます。

会社が正当な理由なく証明義務を果たさない場合、健康保険組合や協会けんぽといった保険者から指導が入ります。それでも拒否が続けば、労働者が労務トラブルとして労働基準監督署や社労士に相談し、最終的には法的な紛争解決を目指すことになります。

会社が意図的に労働者の給付を妨害した場合、不法行為責任を問われる可能性も生じます。

まとめ

傷病手当金の申請は、病気やケガで働くことができない労働者の生活を守るための重要な法的権利です。会社が申請を嫌がる背景には、事務手続きの負担、労災との混同、休職中の社会保険料負担、安全配慮義務違反リスクへの警戒など、会社側のコストやリスクに対する懸念が主にあります。

しかし、事業主には申請に必要な証明を行う法的義務があり、申請を理由とした不当な扱いは許されません。もし会社が非協力的な姿勢を示した場合は、冷静に法的義務を伝え交渉するだけでなく、保険者(協会けんぽなど)に直接申請したり、相談して指導を依頼するといった合法的な対処ステップを踏むことが可能です。

また、令和4年1月1日からは支給期間が通算1年6ヶ月となり、制度の柔軟性が高まっています。現在、療養中で不安を抱えている方は、まずはご自身の権利と制度の詳細を理解し、必要に応じて社労士や保険者といった専門機関に相談して、安心して療養に専念できる環境を確保しましょう。

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監修
西岡 秀泰
  • 西岡 秀泰
  • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。

記事一覧

執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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