厚生年金と国民年金の差額はいくら?なぜ差が生まれる?働き方で変わる受給額を徹底解説
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厚生年金と国民年金では、将来受け取れる年金額に大きな差が生まれます。
しかし「具体的にどれくらい違うのか」「働き方を変えると年金はどれほど増えるのか」「扶養内・扶養外で差額はどれくらい?」といった疑問は、制度の複雑さからわかりにくいのが実情です。
本記事では、厚生年金と国民年金の仕組みの違いから、受給額の差額、扶養の壁による年金額の変化、会社員・パート・自営業など働き方別のモデルケースまで、専門家視点で徹底的に解説します。
また、国民年金だけでは不足する老後資金の補い方も紹介し、将来の生活に不安を残さないための具体的な方法を提供します。
- 月額・年間・生涯で見る具体的な差額
- 年金額に差が生まれる制度上の理由
- 働き方(扶養内外、自営業)による年金額の違い
- 将来の年金を増やすための具体的な方法
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厚生年金と国民年金の“差額”はいくら?
厚生年金と国民年金の平均受給額には、月額で約9万円、生涯に換算すると2000万円以上の差が生じる可能性があります。
この差は、日本の公的年金が「2階建て構造」になっていることに起因します。
1階部分にあたる「国民年金(老齢基礎年金)」は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。一方、2階部分の「厚生年金(老齢厚生年金)」は、会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入します。
「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局」によると、令和3年度の平均年金月額は以下の通りです。
- 国民年金のみ:約5.8万円
- 厚生年金(国民年金部分を含む):約14.7万円
このデータからも、両者には月額で約8.9万円の大きな差があることがわかります。
月額・年間・生涯受給額の差をわかりやすく比較
厚生年金と国民年金の受給額の差は、期間が長くなるほど拡大します。平均的な月額の差である約8.9万円を基に、年間および生涯(65歳から85歳までの20年間と仮定)で受け取る総額の差を比較すると、その影響の大きさが明確になります。
※令和5年度の平均年金月額を基に算出
表からわかるように、生涯で受け取る年金額の差は約2136万円にも達します。これは、老後の生活設計に大きな影響を与える金額です。
現役時代の働き方が、将来の経済的な安定に直結することを数字が示しています。
男女・年齢別の平均年金額
年金の受給額は、性別や年齢によっても傾向が異なります。厚生労働省のデータを見ると、年齢層が上がるにつれて厚生年金の平均受給額が高くなる傾向があります。
これは、過去の賃金水準や加入期間の長さが影響していると考えられます。
年齢別の平均年金受給額|受給権者|(月額)
(参考:令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局)
男女別の平均年金受給額|受給権者(月額)
(参考:令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局)
また、男女別に見ると、一般的に男性の方が女性よりも厚生年金の受給額が多い傾向にあります。これは、男性の方が平均勤続年数が長く、現役時代の平均収入が高いことが主な理由です。
厚生年金と国民年金の受給額に差が生まれる理由
厚生年金と国民年金の受給額に大きな差が生まれる理由は、日本の公的年金制度が持つ「2階建て構造」と、それぞれの保険料の算定・負担方法の違いにあります。
国民年金は、すべての国民の基礎的な生活を保障する「1階部分」です。一方、厚生年金は、会社員や公務員のより豊かな老後生活を支えるために、国民年金に上乗せされる「2階部分」として位置づけられています。
この構造的な違いに加え、厚生年金特有の仕組みが、結果として大きな受給額の差につながっています。
具体的には、「報酬比例部分の存在」「保険料の労使折半」という2つの大きな要因が挙げられます。
厚生年金と国民年金の違いと差額が生まれる主な理由
報酬比例部分が差額を大きくする
厚生年金と国民年金の差額を生む最大の要因は、厚生年金に「報酬比例部分」があることです。報酬比例部分とは、その名の通り、現役時代の報酬(給与や賞与)と加入期間に応じて年金額が計算される仕組みを指します。
具体的には、毎月の給与から算出される「標準報酬月額」と、賞与から算出される「標準賞与額」を基に保険料が決定され、その納付実績が将来の年金額に反映されます。
収入が高く、加入期間が長い人ほど、受け取る年金額も多くなります。
一方、国民年金の受給額は収入に関係なく、保険料を納めた月数によって一律に決まります。
この「収入に比例して年金額が増える」仕組みの有無が、両者の間に大きな差額を生み出す根本的な理由です。
会社が保険料の半分を負担している
厚生年金の保険料は、従業員と勤務先の会社が半分ずつ負担する「労使折半」という仕組みになっています。
例えば、厚生年金保険料が月額3万円の場合、従業員が給与から天引きされるのは1万5000円で、残りの1万5000円は会社が負担しています。
しかし、将来の年金額を計算する際には、会社負担分も含めた保険料の総額(この例では3万円)を納付したものとして扱われます。
保険料が高い人が年金を多く受給できますが、直接的には標準報酬月額と標準賞与額が高い人が年金を多く受給できるためです。
一方で、自営業者などが加入する国民年金(第1号被保険者)は、保険料を全額自己負担しなければなりません。
この負担方法の違いも、実質的に厚生年金加入者が手厚い保障を受けられる一因となっています。
国民年金は増えない構造
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、現役時代の収入にかかわらず、保険料を納付した期間によって決まります。収入が多い人でも少ない人でも、納める保険料は一律です。
20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)すべての期間で保険料を納付した場合に、満額の年金を受け取ることができます。保険料の未納や免除の期間があると、その分受給額は減額されます。
計算式は以下の通りです。
- 老齢基礎年金 = 満額 × 保険料納付月数 ÷ 480ヶ月
国民年金は加入期間によって受給額の上限が決まっている定額制の仕組みです。
収入に応じて年金額が増える厚生年金の報酬比例部分とは対照的であり、これが両者の差額が埋まらない構造的な理由の一つです。
働き方で生涯の差額が変動する理由
生涯で受け取る年金額は、どのような働き方を選択するかによって大きく変動します。その理由は、厚生年金への加入期間が働き方によって変わるためです。
例えば、以下のようなキャリアパスを考えてみましょう。
- ケースA:大学卒業後、60歳まで一貫して会社員
- この場合、約40年間にわたり厚生年金に加入し続けるため、報酬比例部分が積み上がり、受給額は多くなります
- ケースB:30歳で会社を辞めて独立し、自営業者になる
- 30歳までは厚生年金に加入しますが、それ以降は国民年金のみの加入となります。厚生年金の加入期間が短くなるため、ケースAに比べて老齢厚生年金の額は少なくなります
- ケースC:結婚を機に退職し、パートとして扶養内で働く
- 厚生年金から脱退し、第3号被保険者となります。この期間は国民年金保険料の自己負担はありません。この場合、加入していた分、老齢厚生年金の受給も可能です。
厚生年金に加入している期間が長ければ長いほど、2階部分である老齢厚生年金が手厚くなり、生涯の受給総額に大きな差が生まれます。
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扶養内と扶養外で年金額はどれだけ変わる?
パートタイマーとして働く際、「扶養内で働くか、扶養を外れて働くか」という選択は、現在の世帯収入だけでなく、将来の年金額にも大きな影響を与えます。
一般的に「扶養内」とは、税制上の扶養と社会保険上の扶養を指します。
年金に大きく関わるのが社会保険上の扶養で、年収が130万円未満などの条件を満たすと、配偶者が加入する厚生年金の「第3号被保険者」となります。
第3号被保険者は、自身で国民年金保険料を納めることなく国民年金の加入者として扱われます。しかし、将来受け取れるのは1階部分の老齢基礎年金のみです。
一方、扶養を外れて自ら厚生年金に加入すると、保険料負担は発生しますが、将来2階部分の老齢厚生年金も受け取れるようになります。
扶養内のままと扶養を外れる場合の差額
扶養内で働き続ける場合と、扶養を外れて厚生年金に加入する場合とでは、将来の年金額にどれくらいの差が生まれるのでしょうか。簡単なモデルケースで比較してみましょう。
【前提条件】
- 40歳から60歳までの20年間、パートとして働く
- 扶養を外れた場合の年収を150万円(月収約12.5万円)と仮定
ケース1:扶養内(第3号被保険者)で働き続けた場合
この20年間は国民年金保険料の自己負担はありません。しかし、将来の年金額への上乗せもありません。受け取れるのは、それまでの加入実績に応じた老齢基礎年金のみです。
ケース2:扶養を外れて厚生年金に加入した場合
年収150万円の場合、厚生年金保険料の自己負担額は月額1万円強となりますが、将来、老齢厚生年金が上乗せされます。
20年間加入した場合の上乗せ額(報酬比例部分)を概算すると、以下のようになります。
約12.5万円 × 5.481/1000 × 240ヶ月 ≈ 年額 約16.4万円
この場合、65歳以降、毎年約16.4万円(月額約1.3万円)の老齢厚生年金と老齢基礎年金を生涯にわたって受け取ることができます。
20年間で約328万円の差となり、長期的に見れば大きな違いです。
年金を増やしたいパートが選ぶべき働き方
将来の年金を増やしたいと考えるパートの場合は、厚生年金への加入を視野に入れた働き方を選択することが有効です。
目先の世帯手取り額は社会保険料の負担によって減少する可能性がありますが、長期的な視点で見れば自身の老後資産を形成する上で合理的な選択といえます。
厚生年金に加入するための具体的な働き方は以下の通りです。
- 勤務時間を増やす:週の所定労働時間を20時間以上に調整する
- 収入を増やす:月額賃金を8万8000円以上に調整する
- 勤務先を選ぶ:従業員数が51人以上の企業を選ぶ
近年、社会保険の適用拡大が進んでおり、パートタイマーでも厚生年金に加入しやすくなっています。自身のキャリアプランや家庭の状況と照らし合わせながら、将来の年金受給額も考慮に入れた働き方を検討することが大切です。
国民年金のみの自営業・フリーランスは老後どうなる?
自営業者やフリーランスは、働き方の自由度が高い一方で、老後の公的年金保障は会社員に比べて手薄になるという側面があります。
国民年金のみに加入する「第1号被保険者」となるため、将来受け取れる年金は1階部分の老齢基礎年金のみです。老齢基礎年金のみでは、老後の生活資金を公的年金だけで賄うのは難しいのが現実です。
そのため、現役時代から計画的に老後資金を準備する「自助努力」が不可欠となります。
老後の生活費と不足額
国民年金の受給額だけでは、老後の生活費を賄うのは困難です。「家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における消費支出は月額約25.7万円、単身無職世帯では約14.9万円となっています。
この生活費を国民年金だけで賄おうとすると、大きな不足額が生じます。
必要な生活費:約25.7万円
国民年金収入(令和5年度の平均額×2人):約11.6万円
不足額:月額 約14.1万円
必要な生活費:約14.9万
国民年金収入(令和5年度の平均額):約5.8万円
不足額:月額 約9.1万円
このように、公的年金だけでは生活費が不足する可能性が高く、退職金制度のない自営業者やフリーランスは、現役時代からこの不足額を補うための資産形成が必須となります。
将来の年金額を増やす方法
公的年金だけでは老後の生活に不安を感じる場合、将来の年金額を増やすための対策を早めに始めることが重要です。
対策は大きく分けて、公的年金制度内で受給額を増やす方法と、私的年金などを活用して上乗せする方法があります。
具体的には、国民年金保険料の追納や付加年金への加入、繰下げ受給の検討などが挙げられます。さらに効果的な方法として、私的年金制度の活用や、厚生年金に加入できる働き方を選ぶことが考えられます。
私的年金制度の活用
公的年金に上乗せして老後資金を準備する「私的年金」は、将来の年金額を増やすための有効な手段です。働き方によって利用できる制度が異なります。
- iDeCo(個人型確定拠出年金):自営業者、会社員、公務員、専業主婦(主夫)など、原則として20歳以上65歳未満のほとんどの人が加入できます。掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税になるなど税制上の優遇が大きいのが特徴です
- 国民年金基金:自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者専用の制度です。iDeCoと同様に掛金は全額所得控除の対象となります。将来受け取る年金額が確定しているため、計画的に資産形成ができます。
- 企業年金(企業型DC、DBなど):会社員の場合、勤務先が導入している企業年金制度を確認しましょう。企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などがあります
これらの制度を自身のライフプランに合わせて活用することで、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を計画的に補うことができます。
厚生年金に加入できる働き方を選ぶ
将来の公的年金額を最も効果的に増やす方法は、厚生年金の加入期間をできるだけ長くすることです。
厚生年金は国民年金に上乗せされる2階部分であり、報酬比例で年金額が増え、保険料も会社と折半になるため、個人で備えるよりも効率的に老後資産を形成できます。
目先の収入だけでなく、将来の年金という長期的な視点を持って働き方を選択することが、安定した老後生活につながります。
まとめ
厚生年金と国民年金では、将来受け取れる年金額に生涯で2,000万円以上もの大きな差が生じる可能性があります。この差額は、日本の公的年金制度の仕組みそのものに起因しています。
本記事の要点を以下にまとめます。
- 差額の大きさ:平均的な受給額で比較すると、月額約9万円、生涯(20年)で約2136万円の差があります
- 差額の理由:厚生年金には、現役時代の収入に応じて年金額が増える「報酬比例部分」があり、保険料を会社と折半で負担する点が大きな要因です
- 働き方の影響:厚生年金への加入期間が長いほど受給額は増えるため、会社員として長く働くか、自営業者や扶養内パートとして働くかで生涯年収は大きく変わります
- 将来への備え:国民年金のみに加入する自営業者やフリーランスは、iDeCoや国民年金基金などを活用した自助努力が不可欠です。また、パートタイマーの方も厚生年金への加入を視野に入れた働き方を検討することが有効です
ご自身の働き方やライフプランが、将来の年金にどう影響するのかを理解し、必要に応じて私的年金の活用や働き方の見直しを検討することが、豊かな老後生活への第一歩となります。
現役時代の収入・支出・働き方で、必要額は大きく変わります。まずは全体像を見える化することが重要です。
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監修
鈴木 茂伸
- 特定社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
ブラック企業で働き、非正規従業員の経験から、弱い立場の方々の気持ちが理解でき、またひとりの事業主として、辛い立場の事業主の状況も共感できる社労士として、人事労務管理、経営組織のサポートを行っている。家族に障がい者がいることから、障害年金相談者に親身になって相談を受けて解決してくれると評判。また、(一社)湘南鎌倉まごころが届くの代表理事として、高齢者の身元引受、サポート、任意後見人も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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