国民年金保険料の免除・納付猶予にはデメリットもある?注意点と対策を解説
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国民年金保険料の納付が経済的に難しい場合、免除制度や納付猶予制度は非常に役立つ選択肢です。しかし、「制度を利用すると将来の年金が減るのではないか」といった疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、国民年金保険料の免除・納付猶予制度のメリットとデメリットを詳しく解説し、後悔しないための判断基準や、デメリットを軽減するための具体的な対策をわかりやすくご紹介します。制度の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 国民年金保険料の免除・納付猶予制度の仕組みと、未納との決定的な違い
- 将来の年金受給額への影響など、制度を利用する上でのメリット・デメリット
- デメリットを軽減し、将来の年金を確保するための具体的な対策
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国民年金保険料の免除・納付猶予制度とは?
国民年金保険料の免除・納付猶予制度は、経済的な理由により保険料を納めることが難しい場合でも、年金の受給資格期間を確保し、万が一の際の障害年金や遺族年金への道を閉ざさないための重要な仕組みです。まずは制度の基本から押さえておきましょう。
免除・納付猶予の対象
国民年金保険料の免除・納付猶予制度は、所得が一定の基準以下であるなど、経済的に困難な状況にある人が対象となります。それぞれの対象となる人を確認しておきましょう。
保険料免除制度の対象
保険料免除制度の対象となるのは、本人、世帯主、配偶者の前年所得が一定基準額以下の場合や失業した場合などです。所得に応じて、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除といった区分があります。
保険料納付猶予制度の対象
保険料納付猶予制度の対象となるのは、20歳以上50歳未満で、本人と配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定基準額以下の人です。この制度は、主に若年層の経済的困難に対応するために設けられており、保険料の支払いを一定期間猶予することができます。
【重要】免除と未納の違い
国民年金保険料の「免除」と「未納」は、どちらも「保険料を納 収めていない」という意味では同じですが、実際にはまったく異なる状態であり、その違いを理解することは非常に重要です。
未納の場合、保険料が支払われていない期間は年金の受給資格期間に算入されず、将来受け取る年金額が減るだけでなく、年金そのものを受け取れなくなる可能性もあります。
これに対し、免除制度が承認された期間は、保険料は支払われていないものの、年金の受給資格期間には算入されます。これにより、経済的に困難な状況でも、将来の老齢基礎年金、障害年金、遺族年金を受け取る権利を維持できる点が大きな違いです。
また、保険料の未納期間は年金額が増えないのに対し、免除期間は年金額に反映します。
国民年金保険料の免除・納付猶予のデメリットは?
国民年金保険料の免除・納付猶予制度は経済的負担を軽減する一方で、いくつかのデメリットも存在します。詳しく見ていきましょう。
将来受け取る老齢基礎年金額が減る
免除・納付猶予制度を利用した場合、将来受け取る老齢基礎年金の金額が、全額納付した場合と比較して減額されます。これは、免除された期間は、納付した期間と比べて年金額への反映率が異なるためです。
免除・猶予の区分ごとの年金額は以下のとおりです。
追納しないと年金額は増えない
免除・納付猶予期間は、追納(後から保険料を納めること)をしない限り、年金額を増やすことはできません。追納できる期間は、免除・猶予を受けた月から10年以内と定められています。
この期間を過ぎると追納ができなくなるため、将来の年金額を最大限にしたい場合は、経済状況が改善した際に積極的に追納を検討することが重要です。
付加年金や国民年金基金に加入できない
国民年金保険料の免除・納付猶予を受けている期間は、老齢基礎年金に上乗せして給付を受けられる「付加年金」や「国民年金基金」に加入することができません。また、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」も加入不可です。
これらの制度は、将来の年金額をより手厚くするための選択肢であるため、利用できないことはデメリットの1つとなります。
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国民年金保険料を免除・納付猶予するメリットもチェック
デメリットがある一方で、国民年金保険料の免除・納付猶予制度には大きなメリットも存在します。しっかり確認しておきましょう。
経済的負担を軽減できる
最大のメリットは、現在の経済的負担を大幅に軽減できる点です。収入が減少したり、失業したりした場合でも、保険料の支払いに追われることなく、生活の立て直しに集中することができます。これにより、滞納による督促や差し押さえといったリスクを回避できます。
所得が低い場合でも、将来の年金を一部確保できる
保険料を免除してもらうことで、所得が低い期間でも将来の年金を一部確保できるというメリットがあります。例えば、全額免除であっても、保険料の2分の1が国庫負担として将来の年金額に反映されるため、まったく納付しない未納期間と比べて、確実に年金受給につながります。
免除・猶予期間も年金の受給資格期間に算入される
老齢年金を受給するためには、原則として10年以上の受給資格期間が必要です。免除や猶予が認められた期間は、実際に保険料を納付していなくても、この受給資格期間に算入されます。
そのため、経済的な理由で保険料を納付できなかった期間があっても、将来、年金を受け取るための資格を満たしやすくなります。
障害年金や遺族年金の保険料納付要件を満たしやすい
国民年金に加入している人が病気や事故で障害を負った場合に支給される「障害年金」や、加入者が亡くなった場合に遺族に支給される「遺族年金」には、保険料の納付要件があります。
免除期間は、これらの納付要件を判定する際に「保険料を納めた期間」に準じて扱われるため、万が一の事態が起こった際にも、年金を受給できる可能性が高まります。これは、「未納」状態では得られない重要な保障です。
免除・納付猶予のデメリットを軽減するポイント
免除・納付猶予制度のデメリットを理解した上で、将来の年金額への影響を最小限に抑えるために以下のような対策を講じることが重要です。
追納制度を積極的に活用する
経済状況が改善したら、免除・猶予期間の保険料を「追納」することを積極的に検討しましょう。追納することで、将来受け取る年金額を満額に近づけることができます。追納できる期間は10年以内と限られているため、早めに計画していきましょう。
状況が改善したら納付を再開・切り替えする
所得状況が好転した場合は、速やかに国民年金保険料の納付を再開するか、免除区分を見直して一部免除や全額納付に切り替えることを検討しましょう。これにより、将来の年金額の減少を抑え、より多くの年金を受け取れるようになります。
iDeCoなどで私的年金を準備する
公的年金だけでなく、私的年金を準備することもデメリット軽減につながります。例えば、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、掛金が全額所得控除の対象となるなど税制優遇があり、老後資金を効率的に準備できる制度です。公的年金が減額される可能性を考慮し、私的年金で補填する戦略は有効です。
国民年金保険料の免除に関するQ&A
国民年金保険料の免除・納付猶予制度について、よくある疑問にお答えします。
Q. 免除と納付猶予、どちらの制度を利用すべき?
どちらの制度を利用すべきかは、個人の経済状況、年齢、将来の年金受給計画などによって異なります。
納付猶予は50歳未満の方に限定されるため、50歳以上の方は免除を申請することになります。将来の年金受給額を少しでも確保したい場合は、国庫負担がある免除制度が有利です。
ただし、所得基準が一部免除に該当し保険料の支払いをゼロにしたい場合は、納付猶予を利用するという選択肢もあります。
Q. 過去に未納期間があっても免除申請はできる?
国民年金保険料の免除申請は、原則として2年1ヶ月前まで遡って申請が可能です。未納期間であっても、申請時に所得基準を満たしていれば、過去の未納期間を免除に変更することが可能です。これにより、過去の未納期間が受給資格期間に算入されるようになります。
Q. 一度免除が却下になった後に再度申請して通ることはある?
免除申請が一度却下された場合でも、状況が変われば再度申請して承認される可能性があります。例えば、所得状況の変化や、家族構成の変化など、申請時の状況から変化があった場合は、再申請を検討してみましょう。
詳細については、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口や年金事務所に相談してみることをおすすめします。
まとめ
国民年金保険料の免除・納付猶予制度は、経済的な困難を抱える人にとって、現在の負担を軽減しつつ、将来の年金受給権を確保するための重要なセーフティネットです。
しかし、将来の年金受給額が減少する付加年金や国民年金基金、iDeCoに加入できないといったデメリットも存在します。
これらのデメリットを軽減するためには、経済状況が改善した際の「追納」の活用や、私的年金制度「iDeCo」などを利用した自己資金形成が有効です。
制度のメリットとデメリットを正しく理解し、自身のライフプランに合わせて賢く活用することで、将来の「安心」を築いていきましょう。
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※本記事の内容は予告なしに変更することがあります。予めご了承ください
監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。