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国民年金の死亡一時金とは?寡婦年金との違いや受給要件、金額を徹底解説

国民年金の死亡一時金とは?寡婦年金との違いや受給要件、金額を徹底解説

年金2025/11/19
  • #自営業者・個人事業主

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国民年金の「死亡一時金」は、主に自営業者など第1号被保険者であった方が、年金を受け取る前に亡くなった際に、遺族が受け取れる一時金制度です。

本記事では、死亡一時金の受給要件や金額、そして特に重要な「寡婦年金との選択」について、徹底解説します。

この記事を読んでわかること
  • 国民年金の死亡一時金の受給要件と、受給できる遺族の優先順位
  • 死亡一時金と寡婦年金、遺族基礎年金との制度上の違い
  • 死亡一時金と寡婦年金の両方の要件を満たした場合に、どちらの制度を選択すべきかの判断基準


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国民年金の死亡一時金とは

死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者(自営業者、フリーランス、学生など)が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らないまま亡くなった場合に、遺族に対して一時金として支給される制度です。これは、第1号被保険者独自の給付制度であり、保険料を一定期間納付していたにもかかわらず年金を受け取れなかった方への救済的な措置として機能します。

支給される一時金の金額は、故人が国民年金保険料を納めた月数に応じて決定されます。

注意点

ただし、遺族がより保障の手厚い遺族基礎年金の支給を受けられる場合は、死亡一時金は支給されません。

死亡一時金の受給要件

死亡一時金を受け取るためには、主に亡くなった方(故人)と遺族について、以下の要件を満たしている必要があります。 

  1. 故人が第1号被保険者であること: 故人が国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)として被保険者である間に死亡したこと、または、第1号被保険者としての保険料納付済期間等があり、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま、日本国内に住所を有していた60歳以上65歳未満の方が死亡したことが必要です。
  2. 保険料納付期間: 死亡日の前日において、第1号被保険者として保険料を納めた月数(一部免除期間は所定の割合で換算)が36月(3年)以上あることが絶対条件です。
  3. 年金受給歴がないこと: 故人が、すでに老齢基礎年金または障害基礎年金を受けないまま亡くなっていることが必要です。
  4. 遺族が遺族基礎年金を受け取れないこと: 遺族が遺族基礎年金(主に子のある配偶者や子に支給される年金)の支給を受けられる場合は、死亡一時金は支給されません。

ここでいう納付月数の計算では、全額納付のほか、4分の3納付、半額納付、4分の1納付の月数も、それぞれの割合(4分の3月、2分の1月、4分の1月)で換算されて計算されます。

死亡一時金を受け取れる遺族の優先順位

死亡一時金を受け取れる遺族は、亡くなった方に生計を同じくしていた遺族であり、以下の優先順位の高い順に1人だけが受け取ることができます。 

  1. 配偶者
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

ポイントの解説

この順位は厳格に適用され、例えば、故人に配偶者がいる場合、その配偶者がもっとも優先され、子や父母は受給できません。また、受給できる権利の時効は死亡日の翌日から2年であるため、手続きは速やかに行う必要があります。

死亡一時金がもらえない主なケース

死亡一時金は、国民年金保険料を納めていたとしても、特定の条件に該当する場合、遺族が受け取れないことがあります。ここでは、主な4つのケースについて解説します。

1. 遺族が「遺族基礎年金」をもらえる場合

遺族がすでに遺族基礎年金の支給を受けられる場合は、死亡一時金は支給されません。遺族基礎年金は、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「」がいる場合に支給されます。

遺族基礎年金は毎年支給される年金であるのに対し、死亡一時金は一時金であるため、原則として、受給要件を満たす場合は、より保障が手厚い遺族基礎年金が優先されます。遺族基礎年金を受け取るためには、故人の保険料納付期間の要件を満たしている必要があります。 

2. 故人の保険料納付期間が36月(3年)未満の場合

死亡一時金の受給要件として、亡くなった方が死亡日の前日において、第1号被保険者として保険料を納めた月数(一部免除期間は換算)が36月(3年)以上あることが必須です。もし、納付月数が36月に満たない場合は、死亡一時金の受給要件を満たさないため、支給されません。

3. 故人がすでに老齢基礎年金などを受給していた場合

亡くなった方が、死亡時にすでに老齢基礎年金、または障害基礎年金を受給していた場合、死亡一時金は支給されません。死亡一時金は、保険料を納めていたにもかかわらず、年金を受け取る前に亡くなった方への救済的な措置としての側面が強いためです。

この原則は、寡婦年金にも共通しており、亡くなった夫が老齢基礎年金等を受けたことがある場合は、寡婦年金も支給されません。 

4. 請求期限(2年)を過ぎた場合

死亡一時金を受け取る権利には時効があり、死亡日の翌日から2年で時効が成立します。この期限を過ぎてしまうと、他の受給要件をすべて満たしていたとしても、死亡一時金を受け取る権利を失ってしまいます。遺族は、故人の死亡後に速やかに手続きを行うことが重要です。 

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死亡一時金の金額はいくら?

死亡一時金の金額は、故人が国民年金保険料を納めた月数に応じて、12万円から32万円の範囲で定められています。納付月数が長くなるほど、支給される金額も高くなります。 

保険料納付済期間(月数)

死亡一時金の額

死亡一時金の額

36月以上 180月未満

死亡一時金の額

12万円

180月以上 240月未満

死亡一時金の額

14万5000円

240月以上 300月未満

死亡一時金の額

17万円

300月以上 360月未満

死亡一時金の額

22万円

360月以上 420月未満

死亡一時金の額

27万円

420月以上

死亡一時金の額

32万円

※付加保険料の納付済期間が36月以上ある場合は、上記金額に一律8,500円が加算されます。

参照:【死亡一時金の詳細】|東京都がんポータルサイト

さらに、故人が国民年金に付加保険料を納めていた月数が36月以上ある場合は、上記の金額に一律8500円が加算されます。付加保険料を納付していた方の遺族は、より多くの金額を受け取ることができます。


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「死亡一時金」と「寡婦年金」どちらを選ぶべき?

死亡一時金と寡婦年金は、いずれも国民年金の第1号被保険者として一定期間保険料を納めていた場合に支給される遺族給付です。ただし、死亡一時金は妻に限らず遺族の順位に沿って支給される一方、寡婦年金は一定条件を満たす妻のみが対象です。

また、両方の要件を満たしていても併給はできず、どちらか一方を選んで受け取ります。遺族は、どちらの総受給額が大きくなるか、また生活設計上どちらが有利かを慎重に検討し、一度選択すると原則として変更できないため、十分な比較検討が必要です。

【寡婦年金の主な要件】

  • 亡くなった夫が第1号被保険者として保険料納付期間(免除期間含む)が10年以上あること(※平成29年7月31日以前の死亡の場合は25年以上)。
  • 夫と10年以上継続して婚姻関係(事実婚含む)にあり、夫に生計を維持されていた妻であること。
  • 妻が60歳に達した日(60歳誕生日の前日)の属する月の翌月から、65歳に達する日(65歳誕生日の前日)の属する月までの間、支給されること。
  • 年金額は、夫の第1号被保険者期間について、保険料納付済期間と保険料免除期間で計算した老齢基礎年金額の4分の3の額であること。
  • 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがある場合や、妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合は支給されないこと。

死亡一時金を選んだほうがよいケース

死亡一時金は一時金としてまとまった金額を受け取れるため、以下のようなケースでは死亡一時金の選択が有利になる場合があります。 

  1. すぐにまとまった資金が必要な場合: 葬儀費用や当面の生活費など、急な出費を賄うために、迅速に現金が必要である場合。
  2. 寡婦年金の総額が少ないと予想される場合: 寡婦年金は妻が60歳から65歳までの間に支給されますが、妻がすでに65歳に非常に近く、寡婦年金を受け取れる期間が短い場合、総支給額が死亡一時金(32万円が上限)を上回らない可能性があります。
  3. 妻が60歳に達する前に、死亡一時金の時効(2年)が来る場合:寡婦年金は60歳からしか請求できませんが、死亡一時金はすぐに請求できます。両方の権利がある場合、どちらか一方を選択します。 妻が60歳になる前に死亡一時金の時効(2年)が到来する場合、時効前に死亡一時金を請求するか、それとも死亡一時金は請求せず、60歳になってから寡婦年金(時効5年)を請求するか、有利な方を選択する必要があります。

寡婦年金を選んだほうがよいケース

寡婦年金は、年金(定期的な収入)として受け取れるため、長期的な生活設計において安定した収入源を確保したい場合に適しています。 

  1. 年金総額が死亡一時金を大きく上回る場合: 寡婦年金は、夫の年金額の4分の3が毎年支給されるため、5年間(60歳から65歳)受け取った場合の総額が、死亡一時金の最高額である32万円を大きく超える可能性が高いです。
  2. 生活費を定期的に賄いたい場合: 寡婦年金は、60歳になった妻に対して5年間、毎年支給されるため、生活費を定期的に補填する安定収入として期待できます。
  3. 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けていない場合: 妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合は寡婦年金は支給されませんが、そうでない場合は、定期的な年金を受け取れる寡婦年金が選択肢となります。

国民年金の死亡一時金に関するよくある質問(Q&A)

国民年金の死亡一時金に関して、遺族や請求者からよく挙がる質問について、Q&A形式で解説します。

Q. 死亡一時金に税金はかかる?相続税の対象?

死亡一時金は、所得税法上は非課税のため、受け取った年の所得税はかかりません。

ただし、公的年金制度の死亡一時金は相続税も非課税 である一方、企業年金や退職金制度による死亡一時金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象 になります。

生命保険金や死亡退職金に適用される

「500万円×法定相続人数」の非課税枠は、死亡一時金には適用されません。ただし、相続税には基礎控除(例:3000万円+600万円×法定相続人数)があるため、相続財産全体の合計額が基礎控除以下であれば、結果的に相続税はかかりません

Q. 故人に年金未納期間がある場合、死亡一時金はもらえない?

未納期間が1ヶ月でもあると絶対にもらえない、というわけではありません。死亡一時金の受給要件は、あくまで「保険料を納めた月数(一部免除期間は換算して含む)が合計で36月(3年)以上あること」です。

「未納期間」は、この36月の計算に算入されません。 したがって、未納期間があったとしても、それを除いた納付月数の合計が36月以上あれば、死亡一時金は支給されます。逆に、未納期間が長いために、納付月数の合計が36月に満たない場合は支給されません。

Q. 故人が厚生年金にも入っていた場合はどうなりますか?

故人が会社員や公務員として働き、厚生年金保険にも加入していた期間がある場合は、遺族はまず遺族厚生年金の受給資格があるかどうかを検討することになります。

死亡一時金は、原則として第1号被保険者(国民年金のみ)独自の制度です。故人が第1号被保険者期間と厚生年金加入期間の両方を持っていた場合でも、死亡一時金や寡婦年金は、第1号被保険者としての期間が要件を満たしているかどうかに基づいて判断されます。 

Q. 手続きは遺族本人でないとできない?

死亡一時金の手続きは、原則として受給権を持つ遺族本人が行うことになります。

しかし、遺族が病気や遠方に住んでいるなどの理由で手続きが困難な場合は、代理人による手続きが可能です。ただし、代理人が手続きを行う際には、委任状や代理人の本人確認書類など、年金事務所が定める所定の書類が必要となります。

この制度の請求期限は故人の死亡日の翌日から2年間と短いため、手続きが難しい場合は、早めに年金事務所に相談することをおすすめします。 

Q. 故人が死亡したのは何年も前ですが、今から請求できる?

死亡一時金には時効があり、故人の死亡日の翌日から2年で請求権が消滅します。したがって、故人が死亡してから2年以上経過している場合は、残念ながら請求することはできません。

もし、死亡から2年以内で、まだ手続きを行っていない場合は、速やかに市区町村役場の国民年金担当窓口または年金事務所にて手続きを行いましょう。 

まとめ

国民年金の死亡一時金は、主に第1号被保険者(自営業者など)が老齢年金を受け取らずに亡くなり、かつ遺族基礎年金を受け取れない遺族に対する、納付実績に応じた救済的な一時金です。受給には「保険料納付期間36月以上」や「請求期限2年以内」などの厳格な要件があります。

特に重要な点は、受給要件を満たした場合に、死亡一時金と寡婦年金のどちらか一方を選択しなければならないことです。寡婦年金は年金(定期的な収入)であり、死亡一時金は一時金(まとまった現金)であるため、妻(死亡一時金は夫を含む)の年齢や今後の生活設計、必要とする金額の総額を考慮して、慎重に判断することが不可欠です。

遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金は複雑な制度です。自分がおかれている状況でどれがもっとも有利か判断に迷う場合は、年金事務所や社会保険労務士などに相談することが、もっとも確実な方法です。

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監修
鈴木 茂伸
  • 鈴木 茂伸
  • 特定社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

ブラック企業で働き、非正規従業員の経験から、弱い立場の方々の気持ちが理解でき、またひとりの事業主として、辛い立場の事業主の状況も共感できる社労士として、人事労務管理、経営組織のサポートを行っている。家族に障がい者がいることから、障害年金相談者に親身になって相談を受けて解決してくれると評判。また、(一社)湘南鎌倉まごころが届くの代表理事として、高齢者の身元引受、サポート、任意後見人も行っている。

記事一覧

執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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