個人年金保険は解約したほうがいい?「お宝保険」判定&解約以外の選択肢を解説
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「個人年金保険は解約したほうがいい」と聞いたけど本当?と不安に感じていませんか?老後資金の準備方法が多様化する中で、かつて主流だった個人年金保険の扱いに迷う方も少なくないようです。
本記事では、個人年金保険の解約を検討すべき人と継続すべき人の具体的な基準や、いわゆる「お宝保険」の判断方法などを紹介します。ご自身の状況に合わせて最適な判断を下すために、ぜひ最後までご覧ください。
- 解約を検討すべき人と継続すべき人の特徴
- 「お宝保険」かどうかを判断する具体的な方法
- 解約のメリット・デメリットと「払済保険」という選択肢
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個人年金保険を「解約したほうがいい人」と「続けたほうがいい人」
個人年金保険を解約すべきか、それとも継続すべきかは、加入時期や個人の資産運用に対する考え方によって結論が異なります。一概に「解約したほうがいい」とはいえず、自身の状況に合わせた判断が欠かせません。
ここでは、個人年金保険を解約したほうがいい人と、継続したほうがいい人について詳しく解説します。
解約を検討してもいいケース:投資積極派・2000年以降の契約
個人年金保険の解約を検討してもよいのは、以下のようなケースです。
自分で資産運用をしたい場合
積極的に資産運用を行いたいと考えている方は解約が視野に入ってきます。投資に関する知識や経験があり、NISAやiDeCoといった制度を活用して、より高いリターンを目指したい方にとっては、個人年金保険の運用効率は物足りなく感じられることがあります。
個人年金保険は、保険会社が運用を行うため、どうしても手数料などのコストが内包されます。そのため、同じ金額を積み立てる場合でも、NISAやiDeCoで低コストの投資信託を運用したほうが、より多くのリターンを期待できる場合があります。
予定利率が低い場合
契約した時期も重要な判断材料です。2000年代以降の低金利時代に契約した個人年金保険は、予定利率が低く設定されているため、大きなリターンは期待しにくいのが実情です。
そのようなケースでは、元本割れのリスクを許容できるのであれば、解約して得た資金をNISAなどで運用する方が、長期的には大きな資産形成につながる可能性があります。
継続すべきケース:お宝保険・元本保証重視・貯蓄が苦手
個人年金保険の継続を推奨するのは、以下のケースです。
「お宝保険」を契約している場合
まず「お宝保険」と呼ばれる、予定利率が高い時期に契約した方です。バブル期など、金利が高かった時代に契約した保険は、現在の金融商品では実現が難しい高い利回りが約束されており、解約すると大きな機会損失につながります。
元本保証を重視している場合
資産運用のリスクを避け、元本が保証されている安心感を重視する方にも継続が向いています。定額型の個人年金保険は、満期まで継続すれば契約時に定めた年金額が確実に受け取れるため、投資信託のような価格変動リスクを負いたくない方にとって有力な選択肢です。
貯蓄が苦手な場合
貯蓄が苦手な方にとっても、個人年金保険は有効な手段です。毎月決まった額が自動的に引き落とされるため、強制的に老後資金を積み立てる仕組みとして機能します。簡単には引き出せない性質が、ついお金を使ってしまうという方の資産形成をサポートします。
節税対策をしたい場合
個人年金保険料控除の枠を節税対策として活用したい方も、継続するメリットがあります。所得税・住民税の負担を軽減できるため、返戻率以上の実質的なリターンを得られる場合があります。
「お宝保険」はどう見分ける?年代別・予定利率判定リスト
「お宝保険」とは、主に1990年代半ばまでの金利が高い時期に契約された、予定利率の高い個人年金保険を指します。現在の低金利下では考えられないような好条件で運用されるため、安易に解約すべきではありません。
ここでは、契約中の保険がお宝保険に該当するかどうかを見極める判断基準を紹介します。
契約時期で判定!バブル期から現在までの利率推移
保険会社が保険料を算出する際に用いる「予定利率」は、金融庁が定める「標準利率」を参考に決定されます。標準利率は国債の利回りなどをもとに設定されるもので、予定利率は保険会社が契約者に対して約束する運用利回りのことを指します。
この予定利率の数値が高いほど有利な契約といえます。予定利率の推移を大まかに見ると、以下のようになります。
参考:民間生命保険会社の予定利率の変遷と 生保商品動向|社団法人 農協共済総合研究所
特に90年代半ばまでに契約した個人年金保険は、現在の金融商品では実現困難な高い利回りが期待できるため、解約は慎重に判断すべきです。一方で、2001年以降の低金利時代に契約したものは、他の運用方法と比較検討する価値があると言えます。
保険証券のどこを見る?「予定利率」の確認方法
契約中の個人年金保険の正確な価値を判断するためには、保険証券に記載されている「予定利率」を確認することが不可欠です。予定利率は、保険証券の「契約概要」や「ご契約の内容」といったページに記載されていることが一般的です。ただし、商品によっては「基準利率」など異なる名称で記載されている場合もあります。
もし保険証券を見ても予定利率が見つからない、または記載がない場合は、保険会社のコールセンターに問い合わせるか、契約者向けのウェブサイトで確認することができます。契約時期が古く、お宝保険の可能性がある場合は、手間を惜しまずに必ず確認しましょう。その予定利率が、解約か継続かを判断する一番の指標となります。
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個人年金保険が「解約したほうがいい」といわれる3つの理由
個人年金保険が「解約したほうがいい」と言われる背景には、主に3つの理由があります。契約している保険がこれらの点に当てはまるかを確認し、解約を判断する材料としましょう。
理由1:インフレによる資産価値の目減り
個人年金保険、契約時に将来受け取る年金額が決まっている「定額型」のものは、インフレに弱いという性質があります。インフレとは、物やサービスの価格が上昇し、相対的にお金の価値が下がることです。
例えば、年率2%のインフレが続くと、現在の100万円の価値は20年後には実質約67万円、30年後には約55万円にまで目減りします。個人年金保険で将来受け取る年金額が固定されていると、契約時には十分だと思えた金額でも、実際に受け取る頃には物価の上昇に追いつけず、実質的な価値が目減りしてしまうリスクがあります。
老後の生活を支えるための資金が、インフレによって想定よりも価値が低くなってしまう可能性は、個人年金保険を検討する上で重要な論点です。
理由2:資金拘束と流動性の低さ
個人年金保険は、長期的な資産形成を目的とした商品であるため、資金の流動性が低いという特徴があります。流動性が低いとは、必要な時にお金を引き出しにくいという意味です。
保険料の払込期間中に急な出費でまとまった資金が必要になった場合でも、個人年金保険を解約すると「解約返戻金」は受け取れますが、多くの場合、支払った保険料の総額を下回る「元本割れ」が発生します。契約から数年以内の早期解約では、戻ってくる金額が支払額を下回ることが一般的です。
その元本割れのリスクがあるため、気軽に解約することができず、資金が長期間にわたって拘束されてしまいます。預貯金や投資信託のように、必要な時に必要な分だけ引き出すといった柔軟な対応が難しい点は、デメリットといえるでしょう。
理由3:NISA・iDeCoと比較した運用効率の差
老後資金を準備する方法として、近年ではNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)が注目されています。これらの制度と比較した場合、個人年金保険は運用効率の面で見劣りする可能性があります。
NISAやiDeCoは、投資信託などを自分で選んで運用し、得られた利益が非課税になるという税制優遇が大きな特徴です。iDeCoは、掛け金が全額所得控除の対象になるなど、節税効果が高い制度です。
一方、個人年金保険は保険会社が運用を行うため、その手数料や経費が保険料に含まれています。そのため、同じ金額を積み立てる場合でも、NISAやiDeCoで低コストの投資信託を運用したほうが、より多くのリターンを期待できる場合があります。
もちろん、NISAやiDeCoには元本保証がなく、投資リスクは自己責任となります。しかし、運用効率を最優先に考えるのであれば、これらの制度のほうが有利な選択肢となることが多いでしょう。
【重要】見るべきは生命保険料控除を加味した「実質利回り」
個人年金保険の価値を判断する際、単純な返戻率(支払った保険料総額に対して受け取る年金総額の割合)だけでなく、「実質利回り」を考慮することが重要です。実質利回りとは、個人年金保険料控除による節税効果を加味した、実質的な運用利回りのことです。
個人年金保険料控除の対象となる契約(税制適格特約付き)の場合、年間の支払保険料に応じて所得税と住民税が軽減されます。その節税額は、いわば運用リターンの一部と考えることができます。
例えば、年間8万円以上の保険料を支払っている場合、所得税で最大4万円、住民税で最大2.8万円の所得控除が受けられます。仮に所得税率が10%、住民税率が10%の方であれば、所得税で4000円、住民税で2800円、合計6800円が毎年軽減される計算になります。
その節税効果を考慮すると、表面的な返戻率が低く見える保険でも、実質的な利回りは銀行預金を上回ることがあります。解約を検討する際は、ご自身の年間の節税額を計算し、それを加味した上でNISAなど他の運用方法と比較することが、より正確な判断につながります。
この「年間6800円の節税効果」を「投資のリターン」として捉えると、年利回りは8.5%相当(6800円 ÷ 8万円)となります。ただし、この効果は「支払っている期間」に限られるため、払込完了後(据置期間など)はメリットが消滅する点に注意が必要です。
個人年金保険を解約する3つのデメリット
個人年金保険の解約を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも十分に理解しておく必要があります。契約期間やご自身の健康状態によっては、解約が不利に働くケースも少なくありません。ここでは、解約に伴う主な3つのデメリットを解説します。
デメリット1:解約返戻金の元本割れリスク
個人年金保険を解約する際の最大のデメリットは、解約返戻金がそれまでに支払った保険料の総額を下回る「元本割れ」のリスクです。
個人年金保険は長期運用を前提として設計されており、契約初期の保険料は、保険会社の運営経費や手数料に多く充てられます。そのため、払込期間の途中で解約すると、多くの場合で元本割れが発生します。契約から年数が浅いほど、元本割れの幅は大きい傾向にあります。
例えば、3年間で総額120万円を支払ったとしても、解約返戻金は90万円程度しか戻ってこないというケースも珍しくありません。老後のために積み立ててきた資金が、解約によって減ってしまう可能性があることは、必ず念頭に置いておくべきです。
デメリット2:付帯する特約(医療保障など)の消滅
個人年金保険は、主契約である年金機能に加えて、さまざまな特約が付帯している場合があります。例えば、病気やケガに備える医療特約や、万が一の場合の死亡保障を手厚くする特約などです。
個人年金保険を解約するということは、これらの付帯している特約もすべて同時に消滅することを意味します。もし、その特約によって得られていた保障が必要なものであった場合、解約後に別途、医療保険や生命保険に加入し直す必要があります。
解約を検討する際には、主契約の年金部分だけでなく、どのような特約が付いているのかを保険証券で確認し、その保障がなくなっても問題ないかを慎重に判断することが欠かせません。
デメリット3:年齢・健康状態による再加入のハードル
一度個人年金保険を解約した後、将来的に再び保険商品での資産形成を考えた場合、解約時と同じ条件で再加入することは難しい可能性があります。
保険料は、契約時の年齢が上がるほど高くなるのが一般的です。そのため、解約後に期間を空けて同等の保険に加入しようとすると、月々の保険料負担が増加してしまいます。
また、個人年金保険は貯蓄性が高いため、健康状態の告知が不要な商品も多いですが、医療特約などが付帯している場合は告知が必要です。解約後に健康状態が悪化してしまった場合、新しい保険に加入できなかったり、特定の条件が付いたりする可能性も考えられます。
安易に解約してしまうと、将来的に保険の必要性を感じた際に、より不利な条件でしか加入できなくなるリスクがあることを理解しておく必要があります。
解約ではなく「払済保険」という選択肢も
保険料の支払いが困難になったものの、元本割れを避けるために解約はしたくない、という場合に有効な選択肢が「払済保険」への変更です。
払済保険の仕組み
払済保険とは、今後の保険料の支払いを停止し、その時点での解約返戻金を一時払いの保険料に充当することで、保障を継続する制度です。この手続きを行うことで、将来の保険料負担をなくしつつ、契約自体は維持することができます。
個人年金保険の場合、将来受け取れる年金額は減額されますが、解約するよりも多くの資産を残せる可能性があります。
払済保険に切り替えるメリット
個人年金保険を払済保険に切り替える主なメリットは以下の通りです。
- 将来の保険料負担がゼロになる:家計の状況が変わり、保険料の支払いが厳しくなった場合に有効です。
- 解約による元本割れを回避できる:途中解約すると元本割れしてしまうケースでも、払済にすることで契約を継続し、将来の年金受取に繋げることができます。
- 契約時の予定利率が維持される:お宝保険のように予定利率が高い契約の場合、その有利な利率を維持したまま保障を継続できます。
払済保険に切り替えると、将来受け取れる年金額は元の契約よりも少なくなります。また、付帯していた特約は消滅するのが一般的です。保険料の支払いは止めたいけれど、解約はしたくないという状況であれば、保険会社に連絡し、払済保険に変更した場合の年金額シミュレーションを依頼してみることをおすすめします。
個人年金保険の解約に関するQ&A
ここでは、個人年金保険の解約に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。解約手続きを進める前に、疑問点を解消しておきましょう。
Q. 個人年金保険の解約返戻金はいつ、どのくらい戻ってくる?
解約返戻金が振り込まれるタイミングは、保険会社や手続きの状況によって異なりますが、一般的には解約書類が保険会社に到着してから1週間から2週間程度が目安です。
戻ってくる金額(返戻率)は、契約からの経過年数、払込保険料総額、保険商品、契約時の予定利率などによって変動します。契約初期は返戻率が低く、10年程度経過してようやく払込保険料に近づくのが一般的です。正確な金額は、保険証券や保険会社の契約者向けサイトで確認するか、コールセンターに問い合わせて試算してもらう必要があります。
Q. 個人年金の解約返戻金は10年でいくら戻ってくる?
契約から10年が経過すると、元本割れの幅は小さくなるのが一般的です。ただし、これはあくまで目安であり、実際の返戻率は契約した保険商品の予定利率や種類によって異なります。
金利が高かった時代に契約した「お宝保険」であれば、10年を待たずに100%を超えることもあります。逆に、近年の低金利下で契約した商品や、外貨建てで為替が円高に振れた場合などは、10年経過しても元本割れしている可能性があります。正確な金額を知りたい場合は、保険会社に個別のシミュレーションを依頼しましょう。
Q. 個人年金保険の損しない受け取り方はある?
個人年金保険の受け取り方で損をしないためには、税金の仕組みを理解することが肝となります。年金の受け取り方には、毎年分割で受け取る「年金形式」と、一括で受け取る「一時金形式」があります。
契約者と受取人が同じ場合、年金形式では「雑所得」、一時金形式では「一時所得」として課税されます。一時所得には50万円の特別控除があるため、受け取る利益(総受取額-総支払保険料)が50万円以下であれば、税金はかかりません。
どちらの受け取り方が有利かは、その年の他の所得や、公的年金の受給額などによって異なります。一般的に、利益が少ない場合は一時金、利益が大きい場合は年金形式の方が税負担を抑えられる傾向にあります。受け取り開始前に、ご自身の状況に合わせて税額を試算してみることが大切です。
まとめ
本記事では、個人年金保険を解約すべきかどうかの判断基準について、多角的に解説しました。
個人年金保険の解約は、契約時期(予定利率)や投資スタンスによって慎重に判断すべきです。1990年代半ばまでに契約した「お宝保険」は、継続する価値が高いといえます。
一方で、近年の低金利下で契約した保険については、インフレリスクやNISA・iDeCoとの運用効率の差を考慮し、解約や「払済保険」への変更を検討する余地があります。その際は、元本割れのリスクや生命保険料控除による節税効果(実質利回り)も踏まえて総合的に判断することが大切です。
本記事の内容を参考に、将来のライフプランに合った最適な選択をしましょう。
≫あなたの老後は大丈夫?将来の不足額をシミュレーション
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高橋 明香
- ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者
みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。




