
寡婦年金と遺族年金の違いとは?受給条件・金額・選び方を解説
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一家の支えであった夫を亡くし、今後の生活に不安を感じている人もいらっしゃるでしょう。
公的年金には遺族の生活を支える制度がありますが、「寡婦年金」と「遺族年金」、どちらが自分に関係するのか、違いがよく分からないという声も聞かれます。
本記事では、寡婦年金と遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の制度内容や受給条件、金額の違いを専門家が分かりやすく解説します。
自身の状況に合わせてどちらの制度が利用できるのか、正しく理解するための参考にしてみてください。
- 寡婦年金と遺族年金(基礎・厚生)の受給条件や金額の違いがわかる
- 亡くなった夫の職業や子の有無によって、受け取れる年金の種類がわかる
- 複数の年金の受給権がある場合の併給ルールや選択の判断基準がわかる


寡婦年金と遺族年金の違いを比較表で確認
寡婦年金と遺族年金は、どちらも一家の支え手を亡くした遺族の生活を保障するための公的年金制度ですが、この仕組みは異なります。
一番の違いは、亡くなった人の職業(年金の加入状況)です。
寡婦年金は自営業者など国民年金の第1号被保険者だった夫を亡くした妻のための制度である一方、遺族年金は会社員や公務員だった人も含め、子の有無や遺族の状況に応じて支給される制度です。
まずは、それぞれの制度の主な違いを比較表で確認しましょう。
比較表で見る7つの違い
寡婦年金、遺族基礎年金、遺族厚生年金の主な違いを7つの項目で比較します。
寡婦年金とは?国民年金独自の制度
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者(自営業者、フリーランス、学生など)として保険料を納めてきた夫が亡くなった場合に、一定の要件を満たす妻が受け取れる国民年金独自の給付制度です。
この制度は、夫の死亡によって遺族基礎年金を受け取れない「妻」の生活を支えることを目的としています。
妻自身が老齢基礎年金を受け取り始める65歳までの、いわば「つなぎ」の年金としての役割を担っています。
寡婦年金を受給できる条件
寡婦年金を受給するためには、亡くなった夫と受け取る妻のそれぞれに条件が定められています。両方の条件を満たす必要があります。
【亡くなった夫の条件】
- 国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上あること
- 障害基礎年金や老齢基礎年金を受給したことがないこと
【受け取る妻の条件】
- 夫の死亡時に、夫によって生計を維持されていたこと
- 夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続していたこと
- 妻が65歳未満であること
重要なのは、夫が国民年金の保険料を10年以上納めている点と、妻との婚姻期間が10年以上ある点です。また、夫がすでに自身の年金を受け取っていた場合は対象外となります。
寡婦年金の金額と支給期間
寡婦年金の支給額と受け取れる期間は以下の通りです。
- 年金額:亡くなった夫が受け取るはずだった老齢基礎年金額の4分の3
- 支給期間:妻が60歳に達した日の属する月の翌月から、65歳に達する日の属する月まで
例えば、夫が満額の老齢基礎年金(令和7年度で約83万円)を受け取れる予定だった場合、この4分の3である約62万円(年額)が寡婦年金として支給されます。
注意点として、この年金は夫の死亡後すぐに支給が開始されるわけではなく、妻が60歳になってから支給が始まる期間限定の給付です。
寡婦年金がもらえないケース
前述の受給条件を満たしていても、以下のようなケースでは寡婦年金は支給されません。
- 亡くなった夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していた場合
- 妻が、自身の老齢基礎年金を繰上げ受給している場合
- 夫の死亡により、妻が遺族基礎年金を受け取れる場合(子のいる妻など)
寡婦年金はあくまで、他の公的年金を受け取れない妻を救済するための制度です。
そのため、夫自身がすでに年金を受け取っていたり、妻が自身の年金を前倒しで受け取っていたりする場合には対象外となります。
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遺族年金とは?遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者(または被保険者だった方)が亡くなった時に、その人によって生計を維持されていた遺族に支給される年金です。
日本の公的年金制度は2階建て構造になっており、遺族年金もそれに準じています。
- 1階部分:遺族基礎年金(国民年金から支給)
- 2階部分:遺族厚生年金(厚生年金保険から支給)
亡くなった人が自営業者などであれば遺族基礎年金のみ、会社員や公務員であれば、要件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給される可能性があります。
遺族基礎年金の受給条件と金額
遺族基礎年金は、国民年金に加入している人が亡くなった場合に、主に「子のある配偶者」または「子」に支給されます。
【受給条件】 亡くなった人が以下のいずれかに該当し、かつ保険料納付要件を満たしている必要があります。
- 国民年金の被保険者である
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人
- 老齢基礎年金の受給権者または受給資格期間を満たした人
【保険料納付要件】 死亡日の前日において、保険料納付済期間等が加入期間の3分の2以上あることが原則です。特例として、死亡日が令和18年3月末日までの場合は、死亡日を含む月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとされています。
【年金額(令和7年度の例)】 年金額は定額で、子の数によって加算があります。
- 基本額:83万1700円
- 子の加算額:
- 1人目・2人目:各23万9300円
- 3人目以降:各7万9800円
例えば、子が一人の妻が受け取る場合、年金額は「83万1700円 + 23万9300円 = 107万1000円」となります。
遺族厚生年金の受給条件と金額
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者(または被保険者だった人)が亡くなった場合に支給されます。遺族基礎年金とは異なり、子のいない配偶者も対象となるのが特徴です。
【受給条件】 亡くなった人が以下のいずれかに該当し、かつ保険料納付要件を満たしている必要があります。
- 厚生年金保険の被保険者である間に死亡した時
- 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した時
- 1級・2級の障害厚生年金を受けとっている人が死亡した時
- 老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たした人が死亡した時
【年金額】 年金額は、亡くなった人の厚生年金加入期間や給与(標準報酬月額)に基づいて計算される「報酬比例部分」の4分の3が基本となります。加入期間が短い場合でも、最低300月(25年)分として計算される保障措置があります。
さらに、特定の条件を満たす妻には、40歳から65歳になるまで「中高齢寡婦加算」(年額62万3800円)が上乗せされる場合があります。これは、子の成長などにより遺族基礎年金が受け取れなくなった後の収入を補うための制度です。
遺族年金を受給できる遺族の範囲
遺族年金を受け取れる遺族の範囲と優先順位は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で異なります。
【遺族基礎年金】
- 子のある配偶者
- 子
配偶者が受給している間は、子には支給されません。
【遺族厚生年金】 一番優先順位の高い人が受給できます。
- 配偶者、子
- 父母(55歳以上)
- 孫
- 祖父母(55歳以上)
遺族厚生年金では、子のいない配偶者も対象となり、さらに父母や祖父母まで範囲が広がります。ただし、夫や父母、祖父母には年齢要件があり、原則として60歳からの支給開始となります。
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寡婦年金と遺族年金は両方もらえる?併給ルールを解説
公的年金は、原則として「1人1年金」が基本です。
そのため、複数の年金の受給権が発生した場合、どちらか一方を選択する必要があったり、支給額が調整されたりすることがあります。
寡婦年金と遺族年金についても、両方を満額受け取れるわけではありません。
ここでは、具体的な併給ルールについて解説します。
遺族基礎年金と寡婦年金は選択制
寡婦年金と遺族基礎年金は、両方の受給要件を満たすことは通常ありません。万が一、両方の受給権が発生した場合は、どちらか一方を選択することになります。
また、寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たす場合も、どちらか一方を選択して受給します。両方を同時に受け取ることはできません。
60歳〜65歳の間に寡婦年金を受給できるケース
寡婦年金は、妻が60歳から65歳になるまでの期間限定の年金です。この制度が役立つのは、主に以下のようなケースです。
- 夫が自営業者(国民年金第1号被保険者)だった
- 妻が60歳以上65歳未満である
この場合、妻は遺族基礎年金を受け取ることができません。そこで、自身の老齢基礎年金が始まる65歳までの収入を補うために、寡婦年金が支給されます。
65歳以降は自分の老齢年金に切り替わる
65歳になると、妻は自身の老齢基礎年金を受け取る権利が発生します。
寡婦年金は65歳までの「つなぎ」の制度であるため、65歳に達すると支給が終了し、自身の老齢年金に切り替わります。
遺族厚生年金を受給している場合は、65歳以降、自身の老齢厚生年金も受け取る権利が発生します。
この場合、まず自身の老齢厚生年金が全額支給されます。その上で、遺族厚生年金の額が自身の老齢厚生年金の額を上回る場合に、この差額分が遺族厚生年金として支給される仕組みになっています。
両方を満額受け取れるわけではない点に注意が必要です。
どちらを選ぶべき?状況別の判断基準
寡婦年金と遺族年金(または死亡一時金)のどちらかを選択する必要がある場合、どちらを選べばよいか迷うかもしれません。
基本的には、総受給額が多くなるほうを選ぶのが合理的です。ここでは、状況に応じた判断基準を解説します。
子供がいる場合は遺族基礎年金を優先
自身が60才未満で18歳年度末までの子供がいる場合は、基本的に遺族基礎年金の受給要件を満たします。
その場合には、遺族基礎年金を受給します。
亡くなった夫が会社員などで厚生年金に加入していた場合は、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も受け取れる可能性があります。この組み合わせが一番手厚い保障となります。
子供がいない場合の選択肢
子供がいない、またはすでに成人している場合は、亡くなった夫の職業によって受け取れる年金が決まります。
- 夫が会社員・公務員だった場合:遺族厚生年金の対象となります。子のいない30歳未満の妻は5年間の有期給付となるなどの条件がありますが、寡婦年金は受け取れません。
- 夫が自営業者だった場合:寡婦年金または死亡一時金のどちらかを選択することになります。
一般的に、寡婦年金は60歳から65歳までの5年間、継続して年金が支給されるため、一時金として一度だけ支給される死亡一時金よりも総受給額は多くなる傾向があります。
ただし、自身の健康状態やライフプランを考慮して、どちらが有利か年金事務所で試算してもらうとよいでしょう。
60歳前に夫が亡くなった場合
妻が60歳になる前に夫が亡くなった場合、寡婦年金はすぐには支給されません。支給開始は妻が60歳になってからです。
一方、夫が会社員で、妻が40歳以上65歳未満で生計を同じくしている子がいない場合、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が上乗せされます。この加算は、夫の死亡後すぐに開始され、65歳まで続きます。
このように、夫の職業や妻の年齢によって、受け取れる年金の種類や支給開始時期が異なるため、自身の状況を正確に把握することが欠かせません。
寡婦年金・遺族年金の申請方法と必要書類
寡婦年金や遺族年金は、自動的に支給が開始されるものではなく、自身で請求手続きを行う必要があります。
手続きには期限が設けられているものもあるため、速やかに行動することが大切です。ここでは、基本的な申請方法と必要書類について解説します。
申請先と申請期限
年金の請求手続きは、近くの年金事務所または街角の年金相談センターで行います。
亡くなった人の年金加入状況によって窓口が異なる場合があるため、事前に問い合わせるとスムーズです。
【申請期限】
- 遺族年金:受給権が発生してから5年以内に請求する必要があります。
- 寡婦年金:受給権が発生してから5年以内に請求する必要があります。
- 死亡一時金:死亡日の翌日から2年以内に請求する必要があります。
死亡一時金は期限が短いため注意が必要です。期限を過ぎると時効となり、受け取れなくなる可能性があります。
共通して必要な書類
年金の請求手続きには、基本的に以下の書類が必要です。事前に準備しておくと手続きが円滑に進みます。
- 年金請求書(窓口で入手)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書(亡くなった方と請求者分)
- 戸籍謄本(死亡の事実や続柄を確認するため)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡診断書(または死体検案書)のコピー
- 請求者の収入が確認できる書類(所得証明書、課税・非課税証明書など)
- 受取先金融機関の通帳など(請求者本人名義)
これらの書類は、死亡の事実、請求者との関係、生計維持関係などを証明するために必要となります。
ケース別の追加書類
ご家庭の状況によっては、上記の共通書類に加えて、追加で書類の提出を求められることがあります。
【主な追加書類の例】
- 子が障害の状態にある場合:医師の診断書
- 生計を同一にしていたことを証明する書類:亡くなった人と別居していた場合、仕送りの事実がわかる預金通帳のコピーや、健康保険証のコピーなど
- 第三者の行為によって死亡した場合:交通事故証明書など
必要書類は個別の状況によって異なります。手続きを始める前に、必ず年金事務所に問い合わせて、自身のケースで必要な書類一式を確認することをおすすめします。
寡婦年金・遺族年金に関するよくある質問
ここでは、寡婦年金と遺族年金に関して、多くの人が疑問に思う点についてQ&A形式で解説します。
寡婦年金と遺族年金は同時に受給できる?
いいえ、原則として同時に受給することはできません。
公的年金は「1人1年金」が基本であり、複数の年金の受給権が発生した場合は、いずれか有利なほうを1つ選択して受給することになります。
夫が会社員の場合、寡婦年金はもらえる?
いいえ、もらえません。
寡婦年金は、自営業者など国民年金の第1号被保険者だった夫を亡くした妻のための制度です。
夫が会社員(厚生年金被保険者)だった場合は、寡婦年金の対象外となり、代わりに遺族厚生年金の受給を検討することになります。
再婚したら寡婦年金・遺族年金はどうなる?
再婚(事実上の婚姻関係を含む)した場合、寡婦年金や遺族年金を受け取る権利はなくなります(失権)。
これは、新たな配偶者によって生計が維持されると考えられるためです。
また、直系血族・直系姻族以外の人の養子になった場合も同様に権利を失います。
まとめ
寡婦年金と遺族年金は、どちらも大切な家族を亡くした遺族の生活を支える重要な制度ですが、対象者や受給要件が異なります。
寡婦年金は、国民年金第1号被保険者だった夫を亡くした妻が60歳から65歳まで受け取れる、つなぎの年金です。
一方、遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、子の有無や亡くなった方の職業に応じて、より広い範囲の遺族が対象となります。
現在の状況でどの制度が利用できるのか、いくら受け取れるのかを正確に知ることが、今後の生活設計の第一歩です。
また、将来の生活に備えて、どれくらいの資金が必要になるのかも把握しておくことも大切です。 無料の診断ツールで不足額をチェックしてみましょう。
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監修
山本 務
- 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者
東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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