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寡婦年金は65歳以降どうなる?受給継続の可否と老齢年金との選択ルール

寡婦年金は65歳以降どうなる?受給継続の可否と老齢年金との選択ルール

年金2025/12/23
  • #老後資金

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夫に先立たれた後、60歳から65歳までの生活を支える「寡婦年金」。しかし、65歳以降は年金はどうなるのか、自分自身の老齢年金とどちらを受け取ることになるのか、不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、65歳を境にした年金制度の切り替わりの仕組みについて詳しく解説します。ぜひ記事の内容を参考に、不安のない老後の生活設計にお役立てください。

この記事を読んでわかること
  • 寡婦年金が65歳で終了する理由と老齢年金への切り替え
  • 繰上げ受給や死亡一時金との選択における注意点
  • 65歳以降の年金を増やすための具体的な方法


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寡婦年金とは?基本的な仕組みをおさらい

寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた夫が亡くなった際に、一定の要件を満たす妻の生活を支えるために設けられた制度です。

制度は、夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取る前に亡くなった場合に、妻が自身の老齢基礎年金を受け取れるようになる65歳までの間の収入を補うことを目的としています。いわば「つなぎの年金」としての役割を担っています。

寡婦年金を受給できる条件

寡婦年金を受給するためには、亡くなった夫と受け取る妻の両方が、それぞれ以下の条件をすべて満たす必要があります。

対象者

条件

条件

亡くなった夫

条件

1. 死亡日の前日時点で、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間と免除期間の合計が10年以上あること 2. 障害基礎年金や老齢基礎年金を受給したことがないこと

受け取る妻

条件

1. 夫によって生計を維持されていたこと 2. 夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続していたこと 3. 夫が亡くなった時点で65歳未満であること 4. 自身の老齢基礎年金を繰り上げて受給していないこと

寡婦年金の受給期間と金額

寡婦年金の受給期間と年金額は、以下のように定められています。

  • 受給期間:妻が60歳に達した月の翌月から65歳になるまでの間
  • 年金額:亡くなった夫が受け取るはずだった老齢基礎年金額の4分の3

夫が亡くなった時点で妻が60歳未満の場合、実際に支給が開始されるのは60歳になってからです。

そして、妻自身が老齢基礎年金を受け取れるようになる65歳になると、寡婦年金の支給は終了します。

例えば、夫が満額の老齢基礎年金(令和7年度で年額83万1700円と仮定)を受け取れる予定だった場合、妻が受け取る寡婦年金の年額は、その4分の3である約62万3775円となります。

寡婦年金は65歳以降受給できない理由

寡婦年金は、65歳になると受給資格を失います。これは、寡婦年金が制度上、妻自身の老齢基礎年金の受給が開始されるまでの「つなぎ」として位置づけられているためです。65歳からは、寡婦年金に代わって自分自身の年金を受け取ることになります。

寡婦年金が65歳で終了する法的根拠

寡婦年金は、夫を亡くした妻が自身の老齢基礎年金を受け取るまでの間の収入を保障するために設計されています。したがって、妻が65歳に達し、自身の老齢基礎年金の受給権が発生すると、寡婦年金はその役割を終え、支給が終了する仕組みになっています。

これは、公的年金制度における「1人1年金」の原則にも関連しており、異なる事由(死亡と老齢)に基づく給付が重複しないように調整されています。

65歳到達月の寡婦年金の扱い

寡婦年金の受給権は、65歳の誕生日の前日に消滅します。つまり、寡婦年金は「受給権がなくなった月」の当月分まで支給され、誕生日の前日が属する月の翌月からは支給されません。代わりに、その月からご自身の「老齢基礎年金」の受給権が発生します。

【例:8月15日が65歳の誕生日の場合】 

  • 8月分まで:寡婦年金を受給
  • 9月分から:自分の老齢基礎年金(+老齢厚生年金)を受給 

年金は原則偶数月に「前2ヶ月分」が支払われるため、実際の振込時期には注意が必要です。

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65歳以降は老齢年金に切り替わる仕組み

65歳になると、寡婦年金の支給は終了し、自分自身の「老齢基礎年金」の受給が始まります。これは、自分が国民年金保険料を納めてきた実績に基づいて支給される年金です。もし厚生年金に加入した期間があれば、老齢基礎年金に上乗せして「老齢厚生年金」も受け取ることができます。

老齢基礎年金の受給額はどう決まる?

老齢基礎年金の受給額は、20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)の国民年金保険料または厚生年金保険料の納付状況によって決まります。

保険料を40年間すべて納付した場合に、満額の年金を受け取ることができます。納付期間が40年に満たない場合や、保険料の免除・猶予を受けた期間がある場合は、その期間に応じて年金額が減額されます。

令和7年度の老齢基礎年金の満額は、年額83万1700円(69歳以下の場合)です。実際の受給額は、個人の年金記録に基づいて計算されます。

寡婦年金と老齢年金、どちらが多い?

寡婦年金と自身の老齢基礎年金のどちらの受給額が多くなるかは、個人の状況によって異なります。

  • 寡婦年金が多くなる可能性のあるケース:亡くなった夫の国民年金納付期間が長く、妻自身の納付期間が短い場合。
  • 老齢基礎年金が多くなる可能性のあるケース:妻自身の国民年金納付期間が40年に近い場合。

寡婦年金は夫の老齢基礎年金の4分の3であるため、夫が満額に近い年金を受け取れる予定だった場合、妻の納付期間が短いと寡婦年金の方が高額になることがあります。

ただし、65歳以降は寡婦年金を受給することはできず、自身の老齢基礎年金を受け取ることになります。

ポイントの解説

どちらの金額が有利かという比較は、65歳前の繰上げ受給を検討する際に重要となります。

65歳到達前後で必要な手続き

65歳になり、寡婦年金から老齢基礎年金へ切り替わる際には、原則として老齢年金を受け取るための手続きが必要です。手続きを忘れると年金の受け取りが遅れる可能性があるため、注意しましょう。

老齢基礎年金の受給手続き

老齢基礎年金の受給資格がある方には、65歳になる約3ヶ月前に、日本年金機構から「年金請求書」が送付されます。

請求書に必要事項を記入し、戸籍謄本や住民票、受取口座の通帳の写しといった必要書類を添えて、お近くの年金事務所または年金相談センターに提出します。

寡婦年金を受給していた場合でも、老齢年金の請求手続きが必要となるため、書類が届いたら速やかに準備を進めましょう。

手続きを忘れた場合はどうなる?

老齢基礎年金の請求手続きを忘れても、年金を受け取る権利がすぐになくなるわけではありません。年金の受給権には5年の時効があり、5年以内であれば遡って年金を受け取ることができます。

ただし、請求が遅れるとその分、年金の受け取り開始も遅れてしまいます

注意点

また、5年を過ぎてしまうと、過ぎた期間分の年金は受け取れなくなってしまうため注意が必要です。日本年金機構から年金請求書が届いたら、忘れずに手続きを行いましょう。


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寡婦年金と老齢年金の併給ルール

公的年金は、原則として「1人1年金」が基本です。そのため、寡婦年金と自身の老齢年金を同時に受け取ることはできません。65歳になる前に老齢年金を繰り上げて受給する場合には、慎重な判断が求められます。

自身の年金を繰上げ受給すると寡婦年金は消滅

60歳から64歳までの間に自身の老齢基礎年金を繰上げ受給した場合、その時点で寡婦年金は支給停止となり受け取れません。

繰上げ受給を選択すると、年金額が生涯にわたって減額されるだけでなく、寡婦年金という選択肢も失うことになります。どちらの制度を利用する方が有利かは、個々の年金加入状況や健康状態によって異なります。

例えば、自身の老齢基礎年金の受給額が寡婦年金の額よりも多いと見込まれる場合は繰上げ受給も選択肢になりますが、逆の場合は寡婦年金を受給し、65歳から繰上げによる減額なしの老齢基礎年金を受け取る方が有利になります。

決定する前に年金事務所で試算をしてもらうことを推奨します。

寡婦年金と死亡一時金の選択

亡くなった夫が国民年金第1号被保険者としての保険料納付済期間が3年以上ある場合、遺族は「死亡一時金」を受け取れる可能性があります。

寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たす場合、どちらか一方を選択して受け取ることになり、両方を同時に受給することはできません

制度

特徴

特徴

寡婦年金

特徴

・年金形式で60歳から65歳まで支給される ・夫の納付期間が長いほど総受給額が多くなる傾向

死亡一時金

特徴

・一時金として一括で受け取れる ・すぐにまとまった資金が必要な場合に有効

一般的には、夫の保険料納付期間が長い場合、総受給額は寡婦年金のほうが多くなる傾向があります。しかし、葬儀費用など、すぐにまとまったお金が必要な場合は死亡一時金を選択することも有力な選択肢になります。どちらを選択するかは、家計の状況に応じて慎重に判断する必要があります。

65歳以降の年金を増やす方法

65歳から受け取る老齢年金は、いくつかの方法で増額させることが可能です。将来の生活をより豊かにするために、これらの制度を理解し、活用を検討することが欠かせません。

老齢年金の繰下げ受給で増額する

老齢基礎年金や老齢厚生年金は、65歳で受け取らずに66歳以降に繰り下げて受給することができます。これを「繰下げ受給」といいます。

受給を1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額され、最大で75歳まで繰り下げることが可能です。75歳まで繰り下げた場合の増額率は84%になります。

増額率は生涯にわたって適用されるため、長生きするほど総受給額が多くなるというメリットがあります。ただし、受給を開始するまでの期間は年金収入がないため、その間の生活費をどのように確保するかを計画しておく必要があります。

60歳以降の任意加入で年金額を増やす

国民年金(または厚生年金)の保険料納付期間が40年(480ヶ月)に満たないために、65歳から受け取る老齢基礎年金が満額にならない方は、60歳以降65歳になるまで国民年金に「任意加入」することができます。

任意加入して保険料を納めることで、満額の40年に近づけることができ、将来受け取る老齢基礎年金の額を増やすことが可能です。

過去に保険料の未納期間がある方や、海外在住などで加入していなかった期間がある方にとって、年金額を増やす有効な手段となります。

遺族厚生年金との関係

亡くなった夫が会社員や公務員で厚生年金に加入していた場合、妻は「遺族厚生年金」を受け取れる可能性があります。

65歳以降、妻自身に老齢厚生年金の受給権がある場合、年金の受け取り方は以下のようになります。

  1. まず、妻自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金が全額支給されます。
  2. 次に、遺族厚生年金の額と妻自身の老齢厚生年金の額を比較します。
  3. 遺族厚生年金の額が妻自身の老齢厚生年金の額を上回る場合、その差額分が遺族厚生年金として支給(妻自身の老齢厚生年金相当額は支給停止)されます。

つまり、自身の老齢厚生年金と、遺族厚生年金のうち、高い方の金額が保障される仕組みになっています。

ポイントの解説

寡婦年金とは異なり、遺族厚生年金は65歳以降も条件を満たせば受け取れる可能性があります。

寡婦年金・65歳以降に関するQ&A

ここでは、寡婦年金と65歳以降の年金に関してよく寄せられる質問について、Q&A形式で解説します。

Q. 寡婦年金を受給中に65歳になった時の手続きは?

寡婦年金の受給は65歳に達すると自動的に終了するため、終了のための特別な手続きは不要です。

ただし、65歳からは自身の老齢基礎年金を受け取ることになるため、そのための「年金請求手続き」が必要です。通常、65歳になる約3ヶ月前に日本年金機構から年金請求書が届きますので、必要事項を記入し、受給権発生日(65歳の誕生日前日)以降に提出しましょう。

Q. 寡婦年金と老齢年金、どちらが多くもらえる?

どちらが多くなるかは、亡くなった夫とご自身の国民年金の納付状況によります。

寡婦年金は「夫の老齢基礎年金額の4分の3」であるのに対し、ご自身の老齢年金は「ご自身の納付期間」に応じて決まります。一般的に、ご自身の納付期間が40年に近いほど老齢年金が多くなり、短い場合は寡婦年金の方が多くなる可能性があります。

注意点

ただし、65歳以降はご自身の老齢年金のみを受給することになります。

Q. 65歳以降も寡婦年金を受給し続けることはできない?

できません。寡婦年金は、法律で支給期間が「60歳から65歳になるまで」と定められています。これは、寡婦年金が、自分自身の老齢基礎年金を受け取れるようになるまでの間の生活を支える「つなぎの年金」という位置づけだからです。

65歳からは、寡婦年金に代わって自分の老齢基礎年金(厚生年金に加入していればプラス老齢厚生年金)が支給されます。

まとめ

寡婦年金は、夫を亡くした妻の60歳から65歳までの生活を支える重要な制度ですが、65歳以降は支給されず、自身の老齢基礎年金(またはプラス老齢厚生年金)の支給が始まります。

  • 寡婦年金は65歳までの「つなぎ」の年金
  • 65歳以降は自身の老齢年金を受給
  • 老齢年金の繰上げ受給を選択すると寡婦年金は受給不可
  • 死亡一時金の受給権もあれば一方を選択して受給
  • 65歳以降の年金は繰下げ受給や任意加入で増額可能

65歳という節目で年金の仕組みは変わります。自身の年金記録を確認し、繰上げ受給や死亡一時金との選択など、将来を見据えた判断をすることが大切です。

不明な点があれば、年金事務所などの専門機関に相談しましょう。

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監修
西岡 秀泰
  • 西岡 秀泰
  • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。

記事一覧

執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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