
専業主婦は年金をいくらもらえる?満額・平均額&振替加算などの増額要素を解説
≫年金で足りる?あなたの老後の必要額をチェック
「専業主婦は、将来年金をいくらもらえるのだろう?」
「今のうちから、年金を増やす方法があれば知りたい」
このような疑問やお悩みはありませんか?
本記事では、専業主婦の方が受け取れる年金の満額や平均額、さらに将来の年金を増やすための具体的な方法について、専門家が分かりやすく解説します。
- 専業主婦の年金タイプの違い
- もらえる年金の満額と平均額
- 将来の年金を増やす5つの方法
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あなたはどっち?専業主婦の2つの年金タイプ
専業主婦が加入する年金の種類は、夫の働き方によって「第3号被保険者」と「第1号被保険者」の2つに分かれます。どちらのタイプに該当するかで、保険料の支払い義務が異なるため、基本的な違いを理解しておきましょう。
夫が会社員・公務員なら「第3号被保険者」
会社員や公務員などの「第2号被保険者」の夫に扶養されている20歳以上60歳未満の専業主婦は、「第3号被保険者」に分類されます。
第3号被保険者の大きな特徴は、自分で国民年金保険料を直接納付する必要がない点です。保険料は配偶者が加入している厚生年金や共済組合などの制度全体で負担する仕組みになっています。
そのため、保険料の自己負担なしで国民年金の保険料を納付したとみなされ、65歳以降は老齢基礎年金を受け取ることができます。
夫が自営業・フリーランスなら「第1号被保険者」
夫が自営業者やフリーランス、学生などの「第1号被保険者」である場合、その妻である専業主婦も同様に「第1号被保険者」となります。
第3号被保険者とは異なり、第1号被保険者は自分で国民年金保険料を毎月納付する義務があります。
特に注意が必要なのは、夫が退職して自営業になった時や、夫が70歳未満で会社を退職して第2号被保険者の資格を喪失した時です。これらの場合、妻が60歳未満であれば、「第3号」から「第1号」への種別変更手続きを妻自身が行う必要があります。
手続きが遅れると「未納期間」となり、将来の年金額が減ったり、万一の際の障害年金などが受け取れなくなったりするリスクがあります。
専業主婦は年金をいくらもらえる?
専業主婦が将来受け取る年金は、基本的に「老齢基礎年金」です。ただし、過去に会社員として働いた経験があれば、その期間に応じた「老齢厚生年金」も上乗せされます。ここでは、専業主婦が受け取れる老齢基礎年金の満額と、実際の平均受給額について解説します。
令和7年度の満額は年額83万1700円
20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)、保険料の未納や免除がなく、すべて納付済み期間または第3号被保険者期間である場合、老齢基礎年金を上限額で受け取ることができます。
令和7年度における老齢基礎年金の満額(年額)は、83万1700円です。月額に換算すると約6万9308円となります。
その金額は、毎年の物価や賃金の変動に応じて改定されるため、将来的に変動する可能性があります。
老齢基礎年金の平均受給額は月額5万7700円
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和5年度末時点での国民年金(老齢年金)受給者の平均年金月額は5万7700円です。
その金額が、先述した満額(月額約6.9万円)よりも低い水準にあるのは、過去の保険料の未納期間や免除期間がある人も含まれているためです。
老齢基礎年金の受給額は、保険料を納めた期間に応じて決まるため、未納などがあると満額よりも少なくなります。
正確な見込み額については「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認しましょう。
専業主婦の年金が増える「振替加算」の仕組み
振替加算は、特定の条件を満たす配偶者の老齢基礎年金に金額が上乗せされる制度です。これは、夫(または妻)に支給されていた「加給年金額」が、妻が65歳に達したことなどにより打ち切られた後、代わりに妻(または夫)の老齢基礎年金に加算されるものです。
振替加算の対象となる主な条件は以下の通りです。
- 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
- 65歳に達した時点で、配偶者に生計を維持されていること
- 配偶者が、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある老齢厚生年金などを受け取っていること
- 自身の厚生年金・共済組合等の加入期間が20年未満であること
- 自身の共済組合等の加入期間を除く35歳以降(夫は40歳以降)の厚生年金加入期間が一定の年数(※生年月日で異なる)未満
加算額は、本人の生年月日に応じて定められており、年齢が若いほど金額は少なくなります。
振替加算には生年月日による制限があり、対象者は大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた方です。これ以降に生まれた方(2025年時点で59歳以下の方など)には、振替加算は支給されません。
夫が亡くなったら専業主婦の年金はどうなる?
生計を支えていた夫が亡くなった場合、残された妻の生活を支えるために「遺族年金」制度が設けられています。受け取れる遺族年金の種類は、亡くなった夫の年金加入状況や、子の有無によって異なります。主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、条件によってはさらに独自の加算給付が受けられる場合もあります。
子がいる場合:「遺族基礎年金」
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者などが亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」に支給される年金です。
ここでの「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある方を指します。
したがって、夫が亡くなった時点で、これらの条件を満たす子がいない場合は、遺族基礎年金を受け取ることはできません。年金額は定額で、子の人数に応じて加算されます。
夫が会社員だった場合:「遺族厚生年金」
亡くなった夫が会社員や公務員で厚生年金に加入していた場合、遺族は遺族厚生年金を受け取ることができます。その年金は、遺族基礎年金の対象となる子がいない妻でも受け取ることができます。
受給額は、亡くなった夫の厚生年金加入期間や、その間の給与(平均標準報酬額)に基づいて計算されます。基本的に、夫の加入期間が長く、給与が高かったほど、受け取れる遺族厚生年金の額は多くなります。
子がいて遺族基礎年金も受け取れる場合は、遺族厚生年金はそれに上乗せして支給されます。
子のない妻でも遺族厚生年金を受け取れますが、夫の死亡時に妻が30歳未満で子がない場合は、5年間の有期給付となります(30歳以上であれば生涯受け取れます)。
ただし、遺族厚生年金制度は2028年4月から段階的に見直しが行われ、60歳未満で配偶者と死別して子がいなければ、男女とも5年間の有期給付となる予定です。
40歳以上で子がいない場合:「中高齢寡婦加算」
夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいないために遺族基礎年金を受けられない妻には、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」が上乗せされる場合があります。
これは、子がいないために遺族基礎年金が支給されず、また自身の老齢基礎年金もまだ受け取れない期間の生活を支えるための制度です。
その加算は、妻が65歳になって自身の老齢基礎年金を受けられるようになると終了します。
夫が自営業だった場合:「寡婦年金」と「死亡一時金」
亡くなった夫が自営業者などで、国民年金の第1号被保険者として保険料を一定期間以上納めていた場合、妻は「寡婦年金」または「死亡一時金」のどちらか一方を選択して受け取ることができます。
- 寡婦年金:夫が10年以上保険料を納めていた場合、夫との婚姻期間が10年以上あり、夫に生計を維持されていた妻に対し、60歳から65歳までの間支給されます。
- 死亡一時金:保険料を3年以上納めた方が年金を受けずに亡くなり、遺族が遺族基礎年金を受けられない場合に支給される一時金です。
これらの給付は、厚生年金に加入していない自営業者の遺族を支えるための、国民年金独自の制度です。
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離婚した場合、専業主婦の年金はどうなる?
離婚する際には、夫婦が婚姻期間中に築き上げた財産を分け合う「財産分与」が行われますが、年金についても同様の考え方に基づき「年金分割」という制度が設けられています。
これにより、専業主婦であった期間の夫の年金記録を分けてもらい、将来の受給額に反映させることが可能です。
分割されるのは「厚生年金記録」のみ
年金分割制度で分割の対象となるのは、婚姻期間中における夫婦の「厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)」のみです。
国民年金である老齢基礎年金は、個人の加入記録に基づくため、分割の対象にはなりません。あくまで、夫婦が協力して形成した資産という考え方から、給与に比例する厚生年金部分が分割対象となります。
この制度により、専業主婦で自身の厚生年金加入記録がない場合でも、元配偶者の厚生年金記録の一部を分割してもらい、将来自分の老齢厚生年金として受け取ることができます。
「3号分割」と「合意分割」の違い
年金分割には「3号分割」と「合意分割」の2種類があります。
3号分割は、専業主婦(第3号被保険者)であった期間について、相手の合意がなくても厚生年金記録の半分を分割してもらえる制度です。
一方、合意分割は、婚姻していた全期間を対象に、夫婦間の話し合い(または家庭裁判所の決定)によって分割割合を決めます。
両方の対象となる期間がある場合は、合意分割の請求をすれば、同時に3号分割の請求があったものとみなされます。手続きは原則として、離婚をした日の翌日から2年以内に行わなければなりません。
なお、年金分割の請求期限は、2026年4月の改正民法施行に伴い、離婚日の翌日から5年以内に延長される見込みです。
老後資金が不安な専業主婦が年金を増やす5つの方法
専業主婦が受け取る老齢基礎年金だけでは、ゆとりのある老後生活を送るには心もとないと感じる方も少なくありません。しかし、今から準備を始めることで、将来の年金額を増やす方法はいくつかあります。ここでは、状況に合わせて選択できる5つの方法をご紹介します。
1. 任意加入制度で満額に近づける
60歳になった時点で、国民年金の保険料納付済期間が40年(480ヶ月)に満たない場合、60歳から65歳までの間、国民年金に任意で加入することができます。
学生時代に保険料を納めていなかった期間や、海外在住で未加入だった期間がある方などがその制度を利用することで、納付期間を増やし、将来受け取る老齢基礎年金の額を満額に近づけることが可能です。
ただし、任意加入期間中の保険料は全額自己負担となります。メリットと保険料負担を考慮した上で検討しましょう。
2. 税制優遇制度で「自分年金」作り
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、用意された金融商品で運用して、60歳以降に年金または一時金として受け取る私的年金制度です。
専業主婦の場合、所得がないため掛金の全額所得控除というメリットは受けられませんが、運用によって得られた利益がすべて非課税になるという大きな利点があります。通常、投資の利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoではこれがかかりません。
公的年金に上乗せする形で、自分自身の老後資金を効率的に準備する手段として有効です。
3. 「自分年金」としてNISAの活用も有効
NISA(少額投資非課税制度)も、老後資金準備に活用できる制度です。年間投資枠の範囲内であれば、投資で得られた利益(配当金、分配金、譲渡益)が非課税になります。
iDeCoと異なり、原則としていつでも資金を引き出すことができるため、老後資金だけでなく、教育資金や住宅資金など、さまざまなライフイベントに備えるための資産形成にも柔軟に活用できます。
iDeCoのような掛金の所得控除はありませんが、その自由度の高さから、多くの方が利用しています。
4. 付加年金(※第1号被保険者のみ)
付加年金は、国民年金第1号被保険者および任意加入被保険者が利用できる制度です。毎月の国民年金保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めることで、将来受け取る老齢基礎年金に「200円 × 付加保険料を納めた月数」で計算された金額が生涯にわたって加算されます。
例えば、5年間(60ヶ月)付加保険料を納めると、支払う保険料の総額は2万4000円ですが、将来の年金額は毎年1万2000円増額されます。つまり、年金を受け取り始めてから2年で元が取れる計算になり、長生きするほど有利になるお得な制度といえます。
会社員の妻である「第3号被保険者」の方は、付加年金には加入できません。60歳以降に任意加入をする場合や、夫が退職して第1号になった場合などに加入を検討しましょう。
5. 繰下げ受給で最大84%増額
老齢年金の受給開始は原則65歳ですが、66歳から75歳までの間に繰り下げて受け取ることで、年金額を増額させることができます。これを「繰下げ受給」といいます。
1ヶ月繰り下げるごとに受給額は0.7%ずつ増額され、この増額率は生涯変わりません。例えば、70歳まで5年間繰り下げると年金額は42%増額、上限である75歳まで10年間繰り下げると、最大で84%も増やすことが可能です。
ただし、繰り下げている期間は年金を受け取れないため、その間の生活費を他の収入や貯蓄で賄えることが前提となります。健康状態や家計の状況を考慮して慎重に判断する必要があります。
専業主婦の年金に関するQ&A
ここでは、専業主婦の年金に関してよく寄せられる質問について、簡潔にお答えします。
Q. ずっと専業主婦だと年金はいくらもらえる?
一度も厚生年金に加入せず、継続して第3号被保険者だった場合、受け取れる年金は老齢基礎年金のみです。
令和7年度の満額は年額83万1700円(月額約6万9308円)が目安となります。
Q. 専業主婦の夫が死んだら年金はもらえる?
はい、一定の要件を満たせば遺族年金を受け取れます。
夫が会社員だった場合は「遺族厚生年金」、18歳未満の子がいる場合は「遺族基礎年金」も対象です。夫が自営業だった場合は「寡婦年金」などの制度があります。
Q. 専業主婦は年金を払わなくていい?
夫が会社員や公務員で、その扶養に入っている「第3号被保険者」は、ご自身で国民年金保険料を納める必要はありません。
ただし、夫が自営業などの「第1号被保険者」の場合は、ご自身も第1号として保険料を納付する義務があります。
まとめ
専業主婦の方が将来受け取る主な年金は、国民年金から支給される「老齢基礎年金」です。20歳から60歳まで継続して第3号被保険者だった場合の満額の受給額は、月額6万9308円(令和7年度)ですが、これだけでゆとりのある老後を送るのは難しいでしょう。
ただし、老後資金を増やすための方法は複数あります。国民年金の任意加入や付加年金、iDeCoやNISAといった私的年金制度の活用、そして繰下げ受給など、自身のライフプランや家計状況に合わせて最適な方法を選択することができます。
もちろん、将来の年金制度がどう変わるか不透明な部分もありますが、制度に依存しすぎず、自主的に資産形成に取り組むことが、将来の安心につながります。この記事を参考に、ぜひ早めの対策を検討してみてください。
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監修
森本 由紀
- ファイナンシャルプランナー/AFP(日本FP協会認定)/行政書士
行政書士ゆらこ事務所(Yurako Office)代表。愛媛県松山市出身。神戸大学法学部卒業。法律事務所事務職員を経て、2012年に独立開業。メイン業務は離婚協議書作成などの協議離婚のサポート。離婚をきっかけに自立したい人や自分らしい生き方を見つけたい人には、カウンセリングのほか、ライフプラン、マネープランも含めた幅広いアドバイスを行っている。法律系・マネー系サイトでの記事の執筆・監修実績も多数。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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