

加給年金は"ずるい"?デメリットと損しないための注意点を社労士がわかりやすく解説
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「加給年金は一部の人だけがもらえてずるい」「デメリットがあるなら知っておきたい」と感じていませんか。
加給年金は、条件を満たせば老後の生活を支える心強い制度ですが、仕組みを理解していないと、損をしてしまう可能性があります。
本記事では、加給年金が「ずるい」と言われる背景から、知っておくべき4つの注意点、そしてデメリットを回避して制度を最大限活用するための戦略まで、お金の専門家がわかりやすく解説します。
- 加給年金が「ずるい」と言われるのは、厚生年金加入者限定の「家族手当」的な給付で、国民年金のみの加入者は対象外となるため
- 加給年金の4つの注意点は「繰下げ受給での支給停止」「配偶者の厚生年金20年加入による支給停止」「共済期間がある場合の請求もれ」「支給停止事由発生後の過払い金返納リスク」
- デメリットを回避するには、繰下げ受給の損益分岐点を計算し、必要に応じて専門家に相談することが重要
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加給年金は「ずるい」と言われる?その理由と実際
加給年金が一部で「ずるい」と言われることがありますが、制度の仕組みへの誤解という背景があります。
実際には、加給年金は特定の条件を満たした人に与えられる正当な権利です。
(参考:加給年金 | 日本年金機構)


「ずるい」と言われる背景(配偶者手当・もらえない人との差)

加給年金が「ずるい」と言われる主な理由は、支給対象になる人とならない人がいることです。
加給年金は、厚生年金に20年以上加入していた人が65歳になったときに扶養する配偶者や子がいる場合に老齢厚生年金に上乗せされる、いわば「年金の家族手当」のような制度です。
給付は厚生年金の制度の一部であるため、国民年金のみに加入している自営業者やフリーランスの人は対象外となります。
また、同じように厚生年金保険料を納めていても、要件を満たす家族がいる人だけが加算を受けられることから、対象外の人が不公平感や「ずるい」という気持ちを感じることがあります。
実際は要件を満たせば正当な給付
加給年金が「ずるい」という見方は、制度の成り立ちや趣旨を考えると必ずしも正しくありません。
加給年金は、国民共通の基礎年金制度が導入される以前に、厚生年金の独自給付として設けられました。厚生年金に加入していた年金受給者に対し、家族を扶養する経済的負担を支援することが目的です。
そのため、国民年金のみの加入者が支給対象とならないのは当然のことです。ただし、加給年金の対象者は、原則20年以上厚生年金保険料を負担してきた人に限定されます。
したがって、定められた加入期間や家族構成などの要件を満たした人が受け取る正当な権利であり、不当な優遇措置ではありません。
加給年金の4つのデメリット(注意点)

加給年金は老後の収入を増やす上でメリットがありますが、制度の仕組みを理解していないと損をしてしまう可能性もあります。
ここでは、注意すべき4つのデメリットについて解説します。

デメリット①繰下げで支給停止
老齢年金の受給額を増やすために受給開始を遅らせる「繰下げ受給」は、加給年金を受け取る権利がある人にとってはデメリットとなる可能性があります。
老齢厚生年金を繰下げ待機中(65歳から受給開始までの期間)、加給年金は支給されません。
例えば、配偶者が5歳以上年下で70歳まで5年間繰り下げた場合、5年間に受け取れるはずだった加給年金(年間42万3700円とすると総額211万8500円)は全額受け取れなくなります。
繰下げ待機中に配偶者が65歳に達すると、加給年金を一度も受け取ることができないまま支給対象期間が終了します。
デメリット②20年以上厚生年金加入の配偶者が老齢厚生年金受給で支給停止
加給年金は、配偶者が65歳になると支給が停止されます。注意が必要なのは、配偶者が厚生年金(共済期間を含む)に20年以上加入しているケースです。
配偶者が、厚生年金(共済期間を含む)被保険者期間20年以上の老齢厚生年金の受給権が発生した時点で、加給年金は支給停止となります。
従来は配偶者の老齢厚生年金が全額支給停止の場合、加給年金は支給されていましたが、2022年4月の制度改正により受給権が発生した時点で加給年金は支給されなくなりました。
ルール変更を知らないと、想定よりも早く加給年金が打ち切られる可能性があります。
デメリット③共済期間の請求もれ
過去に公務員などで共済組合に加入していた期間がある場合、年金の記録が複雑になるため、加給年金や配偶者の振替加算の手続きで請求もれが発生するリスクがあります。
加給年金の支給対象は厚生年金被保険者期間が20年以上の人ですが、この期間には共済期間も含まれます。
自身の年金記録を正確に把握していないと、本来受け取れるはずの加給年金を申請し忘れたり、振替加算の手続きが正しく行われなかったりする可能性があります。
デメリット④過払い金の発生
加給年金の支給が停止される条件に該当した場合、速やかに届出をしないと、年金を受け取りすぎてしまう「過払い」が発生し、後日、返納を求められるリスクがあります。
加給年金の支給停止事由には、配偶者が65歳になった、子が18歳年度末を迎えたといった年齢到達のほか、離婚や死亡によって生計維持関係がなくなった場合、配偶者が自身の年金を受け取る権利を得た場合などがあります。
これらの事由が発生した際には、「加給年金額支給停止事由該当届」を年金事務所への提出が必要になるケースもあります。ただし、配偶者65歳到達による支給停止の場合、過払いが発生(実際には振込手配)するまでに配偶者が老齢年金請求手続きを完了していれば、加給年金は自動的に停止します。
手続きを忘れると、過払い分を後から一括または分割で返還しなければならなくなります。
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繰下げ受給で加給年金が全額支給停止(損得の分岐)

加給年金における最大の注意点は、老齢厚生年金の「繰下げ受給」を選択すると、繰り下げている期間中の加給年金が全額支給停止になる点です。
年金額を増やすための繰下げ受給が、結果的に受給額を減らしてしまう可能性があるため、慎重な判断が求められます。
例えば、受給開始時期を70歳までの5年間遅らせ繰下げ受給すると、加給年金を除く老齢厚生年金は42%増額されます。
しかし、繰下げ待機中に受け取れるはずだった配偶者加給年金(令和8年度の特別加算込みで年額42万3700円の場合)総額約211万8500円(配偶者が5歳以上年下の場合)は、受け取れなくなります。
65歳受給開始と70歳繰下げ受給の損益分岐点(総受給額が逆転するタイミング)は「81歳11ヶ月」ですが、繰下げ受給によって加給年金を受給できない場合、損益分岐点は後ろズレします。

デメリットを考慮する上で参考となる3つの視点
加給年金には注意すべき点がありますが、制度を正しく理解し、事前に対策を立てることで、デメリットを回避しメリットを最大限に享受することが可能です。
ここでは、損をしないための3つの具体的な戦略を紹介します。
戦略1:繰下げ受給の「トータル損益分岐点」を計算する
加給年金が受給できる場合、老齢年金の繰下げ受給を検討する際には、加給年金を受給できないデメリットを考慮して損益分岐点を考えましょう。
繰下げ受給における損益分岐点は、受給開始年齢から「11年11ヶ月後」(68歳受給開始なら79歳11ヶ月)が目安ですが、繰下げ受給によって加給年金を受給できない場合、損益分岐点は後ろズレします。
対策として、老齢厚生年金は65歳から受け取って加給年金をもらい、老齢基礎年金だけを繰り下げて増額させるという選択肢も有効です。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給開始時期を同じにする必要はないため、最適な組み合わせを検討することが鍵となります。
戦略2:配偶者が振替加算の対象となるかを確認する

加給年金が終了した後、配偶者の老齢基礎年金に上乗せされる「振替加算」が受け取れるかどうかを事前に確認しておきましょう。
振替加算の対象となるのは、主に以下の条件を満たす配偶者です。
- 生年月日: 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること。昭和41年4月2日以降に生まれた人は対象外です。
- 年金加入期間: 厚生年金や共済組合の加入期間が合計で240月(20年)未満であること。
配偶者の厚生年金加入期間が20年を超えるかどうかが分岐点となります。20年以上の加入期間があると、配偶者自身の老齢厚生年金が一定額に達する代わりに、振替加算は受けられなくなります。
夫婦それぞれの年金記録などを確認し、振替加算の有無を把握しておきましょう。
(参考:振替加算 | 日本年金機構)
戦略3:年金事務所や専門家に「相談すべき」具体的なケース
年金制度は複雑で、個人の状況によって最適な選択が異なります。以下のようなケースでは、自己判断せずに年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
- 繰下げ受給を検討している: 加給年金への影響を含めた詳細な損益シミュレーションが必要な場合。
- 配偶者の年金加入期間が20年に近い: 加給年金の停止や振替加算の有無が微妙で、正確な判定が必要な場合。
- 離婚や再婚、死別など家族構成に変化があった: 加給年金の支給・停止に関する手続きが必要になる場合。
専門家に相談することで、自身の状況に合わせた年金受給プランを検討でき、手続きのもれや判断ミスを減らすことにつながります。
加給年金に関するよくある質問

加給年金について、多くの人が抱く疑問にお答えします。制度への理解を深め、自身の状況と照らし合わせてみましょう。

Q. 加給年金は「ずるい」の?
加給年金が「ずるい」と感じられるのは、厚生年金加入者で特定の家族構成を持つ人のみが対象となるためです。国民年金のみの加入者は対象外となることから、不公平感を持つ人がいるのは事実です。
しかし、加給年金はそもそも厚生年金の独自給付として設けられたもので、厚生年金に長期間加入していた年金受給者に対し、家族を扶養する経済的負担を支援することを目的としています。法律で定められた要件を満たした場合に受け取れる正当な給付です。
Q. 加給年金の落とし穴は?
加給年金の主な落とし穴は、老齢厚生年金の「繰下げ受給」を選択すると、繰下げ待機中は加給年金が一切支給されない点です。
また、配偶者が厚生年金加入20年以上の老齢厚生年金を受け取る「権利」を得た時点で、実際に年金を受け取っていなくても加給年金が停止される点も注意が必要です。
これらのルールを知らないと、想定していた受給額を得られない可能性があります。
Q. 加給年金はいつ廃止・見直し?
2025年度に成立した年金制度改正法では、2028年4月より配偶者に対する加給年金額の引き下げが予定されています。以下の通り(2024年度価格)、現在より1割減額となる予定です。
- 現在:40万8100円
- 改定後:36万7200円
一方、子どもに対する加給年金は増額予定です。また、現在は第1子・2子より少ない第3子以降の加算額は、一律となります。2024年度価格は以下の通りです。
- 現在:第2子までは23万4000円、第3子以降は7万8300円
- 改定後:28万1700円
Q. 加給年金(65歳受給開始)と繰下げ受給、どっちが得?
どちらが得かは、個人の状況によって異なります。
繰下げ受給における損益分岐点は、受給開始年齢から「11年11ヶ月後」が目安ですが、繰下げ受給によって加給年金を受給できない場合、損益分岐点は後ろズレします。影響は加給年金を受け取れる期間によって異なります。
配偶者が年下であることが前提ですが、年齢差が大きいほど影響は大きくなることを覚えておきましょう。
Q. 加給年金は月額いくら?
加給年金額は年額で定められており、月額に換算すると、配偶者対象の場合は約3万5308円です(令和8年度の年額42万3700円)。
子(1人目・2人目)の場合は、1人あたり月額約2万316円です。
Q. 突然、加給年金が止まったのはなぜ?
加給年金が突然停止する主な原因として、以下の3つが考えられます。
- 配偶者が65歳に到達した: 加給年金は配偶者が65歳になるまでの給付のため、到達と同時に終了し、条件を満たせば振替加算に切り替わります。
- 配偶者が自身の年金受給権を得た: 配偶者が厚生年金加入20年以上の老齢厚生年金などを受け取る権利を得た時点で停止します。
- 生計維持関係がなくなった: 離婚や死別、あるいは配偶者の収入が増えて生計維持の要件を満たさなくなった場合も停止事由となります。 これらの事由に該当した場合は届出が必要なケースがあるため、年金事務所に確認しましょう。
まとめ

加給年金は、厚生年金に長期間加入し、扶養家族がいる人にとって老後の生活を支える重要な制度です。
しかし、「ずるい」という印象を持たれることがあるのも事実であり、制度を正しく理解しないと損をすることもあります。
老齢年金の繰下げ受給を選択すると加給年金が全額支給停止になる点は、最大の注意点です。また、配偶者が厚生年金加入20年以上の年金受給権を得た時点で支給停止になることなど、知っておくべきルールがいくつかあります。
これらのデメリットを回避するために、繰下げ受給の損益分岐点や加給年金を受給できる期間、配偶者の振替加算の有無などを確認しましょう。
判断に迷う場合は、年金事務所や専門家への相談も有効な手段となります。自身の状況を正確に把握し、最適な年金受給戦略を立てましょう。
自身の年金受給額や老後資金について、より具体的に知りたい方は、簡単なシミュレーションで確認してみるのがおすすめです。
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ご留意事項
- 本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品の取引を勧誘するものではありません。
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- 投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任とご判断のもとで行っていただきますようお願いいたします。
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監修

西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆

マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。








