親の介護費用はいくら必要?平均額と負担を減らす準備の始め方をお金の専門家が解説

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「親の介護費用はいくらかかる?」と年末年始やお盆の帰省で考え始める人もなかにはいるかもしれません。

親の介護は、ある日突然始まることも多く、「自分の家計にどんな影響があるのか」と不安を感じる人は多いです。

介護費用は、在宅介護か施設介護か、要介護度、利用するサービス内容によって大きく異なり、月数万円で済むケースもあれば、長期的に大きな負担となる場合もあります。

さらに、公的介護保険でカバーできる範囲と自己負担が必要な費用を正しく理解していないと、想定外の出費に戸惑うことになりかねません。

本記事では、親の介護にかかる主な費用の目安や内訳、利用できる公的制度、家計への影響を抑えるための準備ポイントを徹底解説します。

この記事を読んでわかること
  • 介護にかかる費用の平均額(月額・総額)
  • 在宅介護と施設介護の費用比較
  • 負担を軽減する公的制度と準備のポイント

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親の介護費用、実際にいくらかかる?

親の介護にかかる費用は、一時的に発生する「初期費用」と、継続的にかかる「月額費用」の2種類に大別されます。

「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査|生命保険文化センター」によると、老後の介護費用は以下のとおりです。

【二人以上世帯】

  • 全体平均月額:9万円
  • 一時費用平均:47万円
  • 介護期間:平均55ヶ月(約4年7ヶ月)

介護期間を基に単純計算すると、介護費用の総額は以下のようになります。

  • 月額費用9万円 × 55ヶ月 + 一時費用47万円 = 542万円

あくまで平均値ですが、親一人あたり約550万円近い費用がかかる可能性があると認識しておくことが欠かせません。

その金額は、要介護度や利用するサービス、介護を行う場所によって変動します。

一時費用として必要な金額

介護が始まる際には、月々の費用とは別に、まとまった初期費用(一時費用)が必要になることがあります。

主な内訳は以下の通りです。

  • 住宅改修費:自宅での介護をしやすくするための費用です。手すりの設置、段差の解消、和式トイレから洋式トイレへの変更などが含まれます
  • 介護用品の購入費:介護用ベッドや車椅子、ポータブルトイレなど、日常生活をサポートするための用品購入にかかる費用です
  • 施設入居時の初期費用:有料老人ホームなどに入居する場合、入居一時金が必要になることがあります。その費用は施設によって異なり、0円の施設から数千万円にのぼる施設までさまざまです

在宅介護と施設介護、費用はどう違う?

介護の方法は、「在宅介護」と「施設介護」に分けられ、どちらを選択するかによって費用は異なります。

生命保険文化センターの調査によると、月額費用の平均は在宅介護が約5.3万円、施設介護が約13.8万円と、2倍以上の差があります。それぞれの内訳を理解し、自身の家庭の状況に合った選択をすることが鍵となります。

在宅介護にかかる費用の内訳

在宅介護は、住み慣れた自宅で生活を続けられるメリットがありますが、さまざまな費用が発生します。主な内訳は以下の通りです。

  • 介護サービス利用料:訪問介護(ホームヘルプ)やデイサービス、ショートステイなどの利用料です。介護保険を利用すれば自己負担は1〜3割に抑えられますが、利用頻度やサービス内容によって金額は変動します
  • 介護用品・消耗品費:おむつや防水シーツ、介護食などの購入費用です。これらは介護保険の対象外となることが多く、継続的な出費となります
  • 住宅改修費:手すりの設置や段差解消など、安全な生活環境を整えるための費用です。介護保険から住宅改修費として最大20万円の補助が受けられる場合がありますが、それを超える部分は自己負担です
  • 家族の負担(見えないコスト):金銭的な費用だけでなく、介護にあたる家族の時間的な拘束や、介護離職による収入減といった「見えないコスト」も考慮する必要があります

施設介護にかかる費用の内訳

施設介護は、専門スタッフによる24時間体制のケアが受けられる安心感がありますが、在宅介護に比べて費用は高くなる傾向があります。

費用の内訳は施設の種類によって異なりますが、主に以下の項目で構成されます。

  • 入居一時金:入居時に支払う初期費用です。施設によっては0円の場合もありますが、数百万円以上かかることもあります
  • 月額利用料:家賃、管理費、食費、水道光熱費などが含まれます
  • 介護サービス費:介護保険サービスの自己負担分(1〜3割)です
  • その他の費用:医療費、理美容代、日用品費、レクリエーション参加費などが別途必要になる場合があります

施設ごとの特徴は以下の通りです。

施設の種類
特徴
特別養護老人ホーム(特養)
公的施設で費用が比較的安いが、原則要介護3以上が入居条件
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰を目指すリハビリ中心の施設
介護付き有料老人ホーム
民間施設でサービスが充実しているが、費用は高め
グループホーム
認知症の高齢者が共同生活を送る施設

(参考:介護施設でかかる費用について|施設区分ごとの平均・払えない場合の対処法など【みんかい】)

要介護度別の費用目安

介護費用は、心身の状態を示す「要介護度」によって変動します。要介護度は「要支援1・2」と「要介護1〜5」の7段階に区分され、数字が増えるほど、より多くの介護が必要な状態を意味します。

要介護度が高くなると、利用できる介護保険サービスの量(支給限度額)が増える一方で、自己負担額も増加する傾向にあります。

生命保険文化センターの調査による、要介護度別の月額平均費用は以下の通りです。

要介護度
月額費用の平均
状態の目安
要支援1
5.8万円
日常生活はほぼ自立しているが、一部支援が必要
要支援2
7.0万円
立ち上がりや歩行に不安定さが見られる
要介護1
5.4万円
排泄や入浴などで一部介助が必要
要介護2
7.5万円
立ち上がりや歩行に介助が必要
要介護3
8.5万円
排泄、入浴、着替えなど全面的に介助が必要
要介護4
12.4万円
介護なしでは日常生活を送ることが困難
要介護5
11.3万円
寝たきりなど、生活全般で全面的な介助が必要

そのように、要介護度が上がるにつれて費用も段階的に増加していくため、将来的な状態の変化も見越して資金計画を立てることが大切です。

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介護費用の負担を軽くする公的支援制度

高額になりがちな介護費用ですが、負担を軽減するための公的な支援制度が複数用意されています。これらの制度を正しく理解し、活用することで、経済的な不安を和らげることが可能です。

申請が必要な制度が多いため、知らないうちに損をしてしまうことがないよう、どのような制度があるかを確認しておきましょう。

介護保険制度の自己負担割合

公的介護保険制度を利用すると、介護サービスにかかる費用の自己負担を大幅に抑えることができます。

自己負担の割合は、サービスを受ける本人の所得に応じて原則1割と定められています。ただし、一定以上の所得がある場合は2割または3割となります。

具体的な負担割合は、前年の合計所得金額や世帯の状況によって市区町村が判定し、「介護保険負担割合証」で通知されます。

例えば、65歳以上(第1号被保険者)の場合、本人の合計所得金額が160万円未満であれば1割負担となります。所得が多くなるにつれて、2割、3割と負担割合が上がっていく仕組みです。

まずはその基本的な自己負担の仕組みを理解し、自身の家庭がどの区分に該当するかを把握しておくことが、費用計画の第一歩となります。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度は、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。

これにより、介護サービスの利用が重なっても、家計への負担が過大になるのを防ぐことができます。

上限額は世帯の所得状況によって区分されており、例えば住民税課税世帯の場合、月々の負担上限額は4万4400円です。これを超えた金額が、後日市区町村から支給されます。

ただし、その制度の対象となるのは介護保険が適用されるサービス費用のみで、施設の食費や居住費、福祉用具の購入費などは対象外です。

多くの場合、初回に申請すれば、その後は該当するたびに自動的に払い戻しが行われますが、自治体によっては都度申請が必要な場合もあるため、お住まいの市区町村の窓口で確認することが推奨されます。

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度は、医療保険と介護保険の両方を利用している世帯の負担を軽減するための制度です。

1年間(毎年8月1日から翌年7月31日まで)に支払った医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、その合計額が所得に応じて定められた年間上限額を超えた場合に、超過分が支給されます。

例えば、70歳以上で住民税が課税される一般的な所得の世帯の場合、年間上限額は56万円です。医療費と介護費の合計がその額を超えれば、申請によって差額が戻ってきます。

ポイントの解説

この制度は持病などで医療費もかさみがちな高齢者世帯にとって、大きな支えとなります。ただし、自動的に適用されるわけではなく、加入している医療保険の窓口への申請が必要です。領収書などを保管し、忘れずに手続きを行いましょう。

医療費控除(確定申告)

介護にかかった費用の一部は、確定申告をすることで「医療費控除」の対象となり、所得税や住民税が還付される可能性があります。

医療費控除の対象となる介護費用は、利用したサービスの種類によって異なります。

  • 医療費控除の対象となる主なサービス

  • 訪問看護、訪問リハビリテーションなどの医療系サービス
  • 介護老人保健施設(老健)や介護医療院の施設サービス費(自己負担額)
  • 特別養護老人ホーム(特養)の施設サービス費(自己負担額の2分の1)
  • おむつ代の控除:寝たきり状態で、治療上おむつの使用が必要であると医師が認めた場合、おむつ代も医療費控除の対象となります。その際は、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です
注意点

医療費控除を受けるには、年末調整ではなく、個人で確定申告を行う必要があります。介護サービスの領収書やおむつ使用証明書などを大切に保管しておきましょう。

自治体独自の助成制度

国の制度に加えて、各市区町村が独自に設けている助成制度も存在します。これらを活用することで、さらに介護費用の負担を軽減できる可能性があります。

制度の内容は自治体によってさまざまですが、以下のような例があります。

  • 介護用品購入費の助成:紙おむつや尿取りパッドなどの購入費用の一部を助成する制度。多くの自治体で実施されています
  • 住宅改修費の上乗せ助成:介護保険の給付(最大20万円)とは別に、自治体が独自に改修費用の一部を助成する制度
  • 家族介護慰労金:在宅で高齢者を介護している家族に対して、慰労金を支給する制度。
  • 利用者負担額の助成:低所得者などを対象に、介護保険サービスの利用者負担額の一部を助成する制度

これらの制度は、申請しなければ利用できないものがほとんどです。お住まいの市区町村の高齢者福祉担当窓口や、地域包括支援センターに問い合わせて、利用できる制度がないかを確認してみましょう。

親の介護費用、誰がどう負担する?

介護費用の負担は、多くの家庭で課題となるテーマです。原則として、介護を受ける親自身の資産や収入で賄うのが基本ですが、それだけでは不足する場合も少なくありません。

その際に誰が、どのように負担するのかを事前に話し合っておくことが、後のトラブルを避けるために不可欠です。

親自身の年金・貯蓄で賄えるケース

介護費用の負担における理想は、親自身の資産で全てを賄うことです。厚生労働省の調査でも、多くのケースで介護費用は被介護者本人またはその配偶者の収入や貯蓄から支払われています。

これを実現するためには、まず親の経済状況を正確に把握することが不可欠です。具体的には、以下の情報を確認する必要があります。

  • 年金収入:毎月どのくらいの年金を受け取っているか
  • 預貯金:どの金融機関に、いくらの預貯金があるか
  • その他の資産:株式や投資信託、生命保険、不動産など、現金化できる資産はあるか

これらの情報をもとに、月々の介護費用や将来必要になる一時費用を、親の資産だけで賄えるかどうかを試算します。

資産の取り崩しペースをシミュレーションし、介護が長期化した場合にも対応できるかを見極めることが欠かせません。

子世代が負担するケース

親自身の年金や貯蓄だけでは介護費用を賄いきれない場合、子世代が負担を補うことになります。これは多くの家庭で現実的に起こりうることです。

子世代が負担する場合、兄弟姉妹がいる家庭では、その分担方法が重要な課題となります。誰か一人に負担が偏ると、不公平感から家族間のトラブルに発展しかねません。

負担の分担方法に決まったルールはありませんが、以下のような方法が考えられます。

  • 均等に分担する:兄弟姉妹で費用を平等に割る方法
  • 収入に応じて分担する:それぞれの経済状況に合わせて負担割合を決める方法
  • 役割に応じて分担する:主に介護を担う人は金銭的負担を軽くし、遠方に住んでいるなど直接的な介護が難しい人が金銭面で多くサポートする方法

重要なのは、それぞれの家庭の事情を尊重し、全員が納得できる形でルールを決めることです。

自分たちの生活や老後資金を過度に切り崩すことのないよう、無理のない範囲で協力し合うことが、長期的な介護を支える上で不可欠です。

(参考:有料老人ホームの費用|介護付きと住宅型の費用相場・払えなくなったときの対処法【みんかい】)

家族で話し合うべきタイミングと内容

介護に関する話し合いは、親が元気で判断能力がしっかりしているうちに行うことが必須です。病気や認知症が進行してからでは、本人の意思を確認することが難しくなり、手続きも複雑になります。

話し合いを始めるタイミングとしては、親が定年退職した時や、70歳、75歳といった節目の年齢を迎えた時などが考えられます。

話し合いでは、以下の内容について具体的に確認し、家族で共有しておくことが望ましいでしょう。

  • 親の希望:将来どのような介護を受けたいか(在宅か施設かなど)、延命治療に関する意向などを確認します
  • 経済状況の共有:親の年金収入、預貯金、保険、不動産などの資産状況を正確に把握します。通帳や印鑑の保管場所も確認しておくと、いざという時にスムーズです
  • 介護の役割分担:誰が主に介護を担うか、他の家族はどのようにサポートするかを決めます
  • 費用負担のルール:親の資産で不足する場合、誰がどのように補填するかを具体的に話し合います

お金の話は切り出しにくいものですが、「親の希望を尊重するため」という視点でコミュニケーションをとることで、円滑に話し合いを進めやすくなります。

今からできる介護費用の準備方法

「いつか来る」と分かっていても、具体的な準備は後回しにしがちな介護費用。しかし、早めに行動を開始することで、いざという時の選択肢が広がり、精神的な余裕にも繋がります。

親のためだけでなく、自分たちの将来を守るためにも、今からできる具体的な準備方法を確認していきましょう。

目標金額を設定する

介護費用の準備を始める第一歩は、具体的な目標金額を設定することです。漠然と不安を抱えるのではなく、必要な金額を可視化することで、計画的な準備が可能になります。

目標金額は以下の手順で算出します。

  1. 介護費用の総額を概算する:平均的な月額費用に、親の年齢や健康状態から想定される介護期間を掛け合わせ、一時費用を加えます
  2. 親の資産で賄える金額を算出する:親の年金収入から生活費を引いた余剰分や、預貯金、その他の資産から、介護費用に充てられる金額を計算します
  3. 不足額を算出する 「1. 介護費用の総額」から「2. 親の資産で賄える金額」を差し引きます。その金額が、子世代で準備すべき目標金額の目安となります

これはあくまでシミュレーションですが、具体的な数字を把握することで、月々の積立額などを現実的に設定できるようになります。

計画的に貯蓄する

目標金額が設定できたら、次は具体的な貯蓄計画を立てて実行に移します。介護費用は目的が明確なため、他の生活費とは分けて管理するのが成功の鍵です。

以下のような方法で、計画的に貯蓄を進めましょう。

  • 介護費用専用の口座を開設する:生活費の口座とは別に、介護費用を貯めるための専用口座を作りましょう。資金の流れが明確になり、使い込みを防ぐことができます
  • 先取り貯金で確実に積み立てる:給与が振り込まれたら、まず決まった額を専用口座に自動で移す「先取り貯金」の仕組みを作りましょう。「余ったら貯金する」という方法では、なかなか貯まりません
  • 少額からでも始める:現時点での家計に余裕がなくても、月々1万円、あるいは数千円からでも始めることが必須です。早く始めるほど、長期的にまとまった金額を準備できます

無理のない範囲でコツコツと続けることが、将来の大きな安心に繋がります。

民間の介護保険を検討する

公的な介護保険だけではカバーしきれない費用に備えるため、民間の介護保険への加入も有効な選択肢です。

民間の介護保険は、保険会社が定める要介護状態になった際に、一時金や年金形式で給付金を受け取れる商品です。

受け取った給付金の使い道は自由なため、介護サービス費用の自己負担分だけでなく、おむつ代や交通費、あるいは介護のために仕事を休んだ際の収入補填など、柔軟に活用できます。

メリット

  • 公的保険の対象外費用もカバーできる
  • まとまった資金を確保でき、精神的な安心に繋がる

デメリット

  • 保険料の負担が発生する
  • 健康状態によっては加入できない場合がある

貯蓄が十分でない場合や、公的年金だけでは不安が残る場合には、民間の介護保険が心強い支えとなります。

ただし、商品によって保障内容や保険料は異なるため、複数の商品を比較検討し、ご自身の家計状況やニーズに合ったものを選ぶことが鍵となります。

親の資産を把握し、活用方法を考える

介護費用の準備において、子世代の貯蓄や保険だけでなく、親自身の資産を有効活用することも重要な視点です。親が元気なうちに資産状況を共有してもらい、いざという時にどのように活用できるかを家族で話し合っておきましょう。

確認すべき資産には、預貯金、有価証券、生命保険、不動産などがあります。不動産は、活用方法によってまとまった資金を生み出す可能性があります。

また、親の判断能力が低下する前に、資産管理の方法について話し合っておくことも大切です。必要に応じて、財産管理を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する「成年後見制度」の利用も検討しましょう。

介護費用で失敗しないための注意点

親の介護では、費用面で思わぬ失敗をしてしまうことがあります。事前に注意点を知っておくことで、後悔やトラブルを未然に防ぐことができます。

「制度の不知」「施設選びの誤り」「家族間の対立」は、よくある失敗パターンです。これらのポイントを押さえ、賢く介護と向き合いましょう。

制度を知らずに損をする

介護費用の負担を軽減するための公的制度は数多く存在しますが、その多くは自分から申請しなければ利用できません。制度の存在を知らないまま、本来受けられるはずの助成を受けられず、全額自己負担で支払い続けてしまうケースは少なくありません。

例えば、「高額介護サービス費制度」や「医療費控除」などは、多くの人が対象になる可能性があるにもかかわらず、見過ごされがちな制度です。

こうした失敗を避けるためには、まず情報収集が不可欠です。しかし、複雑な制度を一人で全て理解するのは困難です。そこで頼りになるのが、地域の専門家です。

  • 地域包括支援センター:高齢者の総合相談窓口で、利用できる制度について無料で相談できます。
  • ケアマネジャー:介護プランを作成する専門家で、個々の状況に合った制度の活用法を提案してくれます

介護が始まる前や始まった直後に、これらの専門機関に相談し、利用できる制度を漏れなく確認することが、経済的な負担を抑える上で欠かせません。

施設選びで後悔する

介護施設を選ぶ際、月額費用や入居一時金といった費用面だけで判断してしまうと、後悔に繋がることがあります。費用が安い施設には、それなりの理由がある場合も少なくありません。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • スタッフの人数が少なく、手厚いケアが受けられない
  • レクリエーションやリハビリの機会が少ない
  • 立地が悪く、家族が面会に行きづらい

施設選びで失敗しないためには、費用とサービスのバランスを総合的に見極めることが必須です。必ず複数の施設をリストアップし、実際に見学しましょう。

可能であれば、短期間の体験入居を利用して、施設の雰囲気やスタッフの対応、食事の内容などを肌で感じることを推奨します。

また、契約前には、契約書を隅々まで確認し、退去条件や追加で発生する可能性のある費用について、不明な点は全て質問して解消しておくことが不可欠です。

家族間でトラブルになる

介護は、家族の協力なしには成り立ちません。しかし、その過程で費用負担や介護の役割分担を巡って、家族間で意見が対立し、トラブルに発展するケースは後を絶ちません。

こうしたトラブルの多くは、事前の話し合い不足が原因です。介護が本格化してからでは、精神的な余裕がなくなり、冷静な話し合いが難しくなります。

トラブルを避けるためには、親が元気なうちから、介護について家族全員で話し合う機会を設けることが鍵となります。その際、誰か一人が意見を押し付けるのではなく、それぞれの状況や考えを尊重し、全員が納得できるルール作りを目指しましょう。

もし家族だけでの話し合いが難しい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員といった第三者に間に入ってもらうのも有効な方法です。

専門家の客観的な視点を交えることで、感情的な対立を避け、建設的な話し合いを進めやすくなります。

親の介護費用に関するQ&A

親の介護費用に関しては、多くの方が共通の疑問や悩みを抱えています。ここでは、よく寄せられる質問について、専門家の視点からわかりやすく回答します。

Q1. 親の介護費用は子どもが払う義務がある?

法律上、子どもが親の介護費用を全額支払う直接的な義務はありません。

ただし、民法では親子や兄弟姉妹などの間で互いに助け合う「扶養義務」が定められています。これは、親が自身の資産や収入だけでは生活できない場合に、子どもが経済的な援助を行う義務があることを意味します。

しかし、この扶養義務は、子どもの生活を犠牲にしてまで援助することを求めるものではありません。あくまで「自身の生活に余裕がある範囲で」援助する義務と解釈されています。

現実的には、まず親の年金や貯蓄で費用を賄い、不足分を子どもが補填する形が一般的です。どうしても費用が捻出できない場合は、生活保護の利用も選択肢となります。

Q2. 介護費用が払えない場合はどうすればいい?

介護費用がどうしても払えない場合でも、一人で抱え込まずに専門機関に相談することが大事です。

まずは、市区町村の高齢者福祉担当窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。専門の相談員が状況をヒアリングし、利用できる公的な支援制度や費用の安い施設などを紹介してくれます。

具体的な対処法としては、以下のような選択肢が考えられます。

  • 負担軽減制度の活用:高額介護サービス費や、所得の低い方向けの食費・居住費の軽減制度などを申請します。
  • 生活保護の申請:世帯の収入や資産が国の定める基準を下回る場合、生活保護を受給することで介護費用(介護扶助)が支給されます。
  • 親の資産の活用:持ち家がある場合は、リバースモーゲージなどの制度を利用して資金を調達する方法もあります。

Q3. 介護費用は相続財産から差し引ける?

子どもが親の介護費用を立て替えて支払った場合、その費用を親の亡き後に相続財産から精算することは可能です。

ただし、そのためにはいくつかの注意点があります。一番大切なのは、立て替えた費用の記録を明確に残しておくことです。いつ、何のために、いくら支払ったのかが分かるように、領収書やレシート、銀行の振込記録などを必ず保管しておきましょう。

相続が発生した際、他の相続人(兄弟姉妹など)の同意が得られれば、立て替えた分を相続財産から差し引いて精算できます。

もし話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に「寄与分」を主張して、自身の貢献度に応じた財産の増額を求めることも可能です。しかし、寄与分が認められるハードルは高く、認められたとしても立て替えた全額が返ってくるとは限りません。

相続時のトラブルを避けるためにも、費用を立て替える際は事前に家族間で合意を書面で残しておくことが望ましいでしょう。

まとめ

親の介護費用は多くの家庭にとって大きな負担となり得ます。しかし、公的な支援制度を正しく活用することで、その負担を軽減することが可能です。

重要なのは、介護が始まる前から情報を集め、準備を進めておくことです。まずは「高額介護サービス費制度」や「医療費控除」といった制度の存在を知り、利用方法を確認しておきましょう。

そして何よりも、親が元気なうちに、介護の方針や費用負担について家族で話し合うことが不可欠です。

まずは、親の介護費用を見据えた場合に、自分の老後資金が足りるのか、不足するのかを整理してみましょう。

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親の介護と自分の老後、両方を見据えた現実的な備え方が見えてきます。

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ご留意事項

  • 本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品の取引を勧誘するものではありません。
  • 本記事の内容は記事公開時または更新時点の情報に基づいています。制度・法令・税制等の変更により、現在の情報と異なる場合があります。
  • 本記事の内容の正確性、完全性、最新性を保証するものではなく、予告なく変更または更新する場合があります。
  • 投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任とご判断のもとで行っていただきますようお願いいたします。

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執筆・監修
高橋 明香
  • 高橋 明香
  • ファイナンシャルアドバイザー/CFP®認定者

みずほ証券(入社は和光証券)では、20年以上にわたり国内外株、債券、投資信託、保険の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事。2021年に株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)に入社し、現在は資産運用に役立つコンテンツの発信に注力。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、一種外務員資格(証券外務員一種)保有。