
iDeCoの途中解約は原則不可。例外で受け取れる「脱退一時金」の条件とは?
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iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の生活資金を準備することを目的とした国の私的年金制度です。大きな税制優遇が提供されますが、原則として60歳になるまで資産の引き出し(途中解約)はできません。
しかし、予期せぬ経済状況の変化などにより、やむを得ない事由が認められる限定的な条件をすべて満たす場合のみ、「脱退一時金」として例外的に資産を受け取ることが可能です。
この記事では、iDeCoの解約に関する基本的なルールと、厳格な脱退一時金の要件、そして解約が難しい場合の現実的な対処法について解説します。
- iDeCoが原則として60歳まで引き出しできない理由と制度上の位置づけ
- 例外的に資産を引き出せる「脱退一時金」を受け取るための7つの要件
- 解約が認められない場合に現実的に取るべき対処法
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iDeCoは原則60歳まで解約・引き出しができない
iDeCoが中途解約できない最大の理由は、この制度が老後の経済的備えを目的として設けられているからです。国は老後の資産形成を促すため、iDeCoの掛金が全額所得控除になるなど、強力な税制優遇措置を提供していますが、これと引き換えに、原則60歳まで資産の流動性(引き出しやすさ)を制限しています。
したがって、「お金に困っている」または「掛金が払えない」といった状況が生じたとしても、原則として中途解約は認められません。
掛金の支払いが困難になった場合は、解約ではなく「掛金の停止(資格喪失手続き)」や「掛金の減額」といった手続きを検討することになります。
例外でiDeCoを途中解約する「脱退一時金」とは
確定拠出年金(DC)制度では、中途退職しても60歳までポータビリティを活かして資産形成を継続することが基本です。しかし、やむをえない事由と認められる「法令で定める限定的な条件」に当てはまる場合に限り、60歳未満であってもDCから脱退し、一時金を受取ることが許可されています。この制度を脱退一時金といいます。
ただし、脱退一時金は厳密には「解約」というよりも「制度からの脱退」にあたり、その受給要件は極めて厳格に定められています。
脱退一時金の受給要件
iDeCoに加入していた方が脱退一時金を請求するためには、次のすべての要件を満たす必要があります。
- 60歳未満であること。
- 企業型DCの加入者でないこと。
- iDeCoに加入できない者であること。
- 国民年金第1号被保険者のうち、国民年金保険料の全額免除、一部免除、または納付猶予を受けている方(※障害基礎年金を受給している方などを除く)
- 日本国籍を有しない方で、日本国内に住所を有しなくなった方(非居住者となった方)
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと。
- 障害給付金の受給権者でないこと。
- 通算拠出期間が5年以内、または、個人別管理資産額が25万円以下であること。
- 最後に企業型DCまたはiDeCoの資格喪失日から2年以内であること。
脱退一時金の請求手続きと税金
上記の要件をすべて満たしていることを確認できた場合は、自ら脱退一時金を請求する必要があります。手続きは、ご利用の運営管理機関(金融機関など)のiDeCo専用コールセンターにて行います。脱退一時金の受給要件や手続きの進め方については、運営管理機関に確認することが重要です。
脱退一時金は、本来60歳以降に受け取るべき資産を早期に受け取ることになるため、積み立て時のような税制上の優遇措置は受けられません。
この一時金は「一時所得」として課税対象となるため、請求前には税金についても考慮する必要があります。
60歳未満でiDeCoを受け取れる他のケース
脱退一時金は「制度からの脱退」という例外的な措置ですが、それ以外にも、加入者が特定の不測の事態に陥った場合に資産を受け取ることができるケースが存在します。
障害給付金(一定の障害状態になった場合)
加入者が一定以上の障害状態になった場合、障害給付金を受け取ることができます。
この給付金は、脱退一時金の受給要件として「障害給付金の受給権者でないこと」と明記されていることから、60歳前でも資産を受け取れる給付の一つであることが分かります。障害給付金は、一時金または年金として受け取る方法が選択できます。
死亡一時金(加入者が死亡した場合)
iDeCo加入者が死亡した場合、その遺族が死亡一時金として積み立てた資産を受け取ることができます。
受け取る遺族の順位については法令で定められています。税制上、死亡一時金はみなし相続財産として扱われ、「死亡保険金等の非課税枠(500万円×法定相続人数)」の対象となります。
ただし、死亡後3年経過すると一時所得の対象となり所得税がかかり、5年経過すると死亡一時金自体が受け取れなくなります。
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iDeCoを途中解約できない場合の対処法
脱退一時金の要件を満たせず、経済的な理由などで掛金の拠出が困難になった場合でも、iDeCoの資産形成を維持しつつ、負担を軽減する現実的な対処法があります。
対処法1:掛金の支払いを「停止」する(加入者資格喪失)
資金繰りの都合で掛金の支払いが一時的に難しい場合は、iDeCoの掛金の拠出を停止する手続きが可能です。これにより、掛金を拠出する「加入者」から、それまでの資産の運用のみを行う「運用指図者」へと切り替わります。
掛金を停止すると、新たな拠出は行われなくなりますが、それまでに積み立てた資産はiDeCoの口座内で運用が継続されます。掛金の停止を希望する場合は、iDeCoの掛金の停止方法(資格喪失手続き)を確認しましょう。
なお、掛金の停止後も再び加入資格を得ることで再開することが可能です。
対処法2:掛金の支払いを「減額」する
掛金の拠出は継続したいが、現在の金額では継続が厳しい場合は、掛金を減額することも可能です。
iDeCoの掛金は月額5000円から1000円単位で設定できるため、最低月額である5000円まで減額することで、資産形成を途切れさせずに経済的な負担を軽減することができます。
iDeCo解約より先に検討すべき「資金を確保する方法」
iDeCoの資産は、老後の生活を支えるための最後の砦ともいえる資金です。その解約(脱退一時金の受給)を検討する前に、利用できる公的制度や、他の金融資産の見直しを優先したほうがよいケースもあります。
1.失業・休職した場合(社会保険)
iDeCoの掛金が払えない理由が「失業」や「病気・ケガによる休職」である場合、まずは公的な社会保険制度(雇用保険や健康保険)からの給付が受けられないか確認しましょう。
- 失業した場合:雇用保険「基本手当(失業給付)」 ハローワークで手続きし、失業中の生活資金として受給できます。
- 病気やケガで休職した場合:健康保険「傷病手当金」 業務外の病気・ケガで連続4日以上休み、給与がない場合、給与のおおむね2/3が最長1年6ヶ月支給されます。
2.生活に困窮した場合(公的貸付)
失業や休職により一時的に生活資金が不足した場合、国や自治体が提供する公的な貸付制度を利用できる可能性があります。これらはiDeCoを取り崩すことと異なり、将来の老後資金を失うことはありません。
- 生活福祉資金貸付制度:市区町村の社会福祉協議会が窓口で、低所得者世帯などに低利子・無利子で貸付を行います(緊急小口資金、総合支援資金など)。
- 求職者支援資金融資:ハローワークの職業訓練受講者(職業訓練受講給付金の受給者)が生活費として利用できる貸付です。
これらは返済義務のある「貸付」ですが、iDeCoの資産を守る手段となります。
3.他の金融資産を見直す(私的保険など)
iDeCo以外の金融資産や私的保険に、流動性(現金化のしやすさ)の高いものがないか見直します。
- 生命保険などの「契約者貸付」:解約返戻金のある保険(終身・養老保険など)では、保障を継続したまま解約返戻金の一定範囲内で借り入れができます(要利息)。
- 流動性の高い金融資産の売却:株式や投資信託、財形貯蓄など、iDeCoより先に売却できる資産がないか検討します。
iDeCoの途中解約に関するQ&A
iDeCoの解約や運用に関するよくある質問に回答します。
Q. iDeCoの掛け金を払えなくなった場合、ペナルティはある?
iDeCoの掛金を停止した場合、直接的なペナルティは発生しません。
しかし、掛金の拠出が停止している間も、運営管理機関や資産管理機関に支払う口座管理手数料が発生し続けるため、その結果として、年金資産が目減りする可能性がある点には注意が必要です。
掛金の停止をご希望の場合は、iDeCoの掛金の停止方法(資格喪失手続き)を確認してください。
Q. 転職・退職した場合、iDeCoは解約になる?
転職や退職をした場合でも、iDeCoは原則として解約にはなりません。
企業型DCからiDeCoへの積立資産の移換(ポータビリティの仕組み)や、iDeCoの加入者区分の変更によって、資産形成を継続することが基本です。
ただし、最後に企業型DCまたはiDeCoの資格喪失日から2年以内など、限定的な要件をすべて満たす場合に限り、例外的に脱退一時金を請求できる可能性があります。
Q. 海外に移住する場合、iDeCoは解約になる?
海外に移住しても自動的に解約にはなりませんが、脱退一時金を請求できる可能性があります。ただし、国籍によって以下のように結果が異なります。
- 日本国籍を有しない人(外国籍の人)が海外移住する場合: 要件3の「iDeCoに加入できない者」に該当するため、他の6要件(資産額25万円以下など)をすべて満たせば、脱退一時金を請求できる可能性があります。
- 日本国籍を有する人が海外移住する場合: 原則として脱退一時金を受け取ることはできません。これは、海外在住の日本国籍者(20歳以上65歳未満)は国民年金に任意加入することができ、国民年金に任意加入すればiDeCoの加入資格も継続できるため、「iDeCoに加入できない者」という要件を満たせないためです。
Q. 掛金を停止した場合、それまでの資産はどうなる?
掛金の支払いを停止した場合、それまでの資産は引き続きiDeCoの口座内で運用されます。
停止期間中も、その資産は市場の動向に応じて増減を続けます。この資産は、60歳以降に老齢給付金として受け取ることになります。
まとめ
iDeCoは老後のための資産形成を目的としており、税制優遇を受ける代償として、原則60歳まで中途解約や引き出しはできません。
例外的に資産を一時金として受け取れる脱退一時金の制度は存在しますが、受給要件は厳しく、60歳未満であること、企業型DC加入者でないこと、通算拠出期間が5年以内または資産額が25万円以下であることなど、すべての条件を満たす必要があります。脱退一時金を受け取る場合は、一時所得として課税対象となる点にも注意が必要です。
要件を満たせないものの掛金拠出が困難になった場合は、資産形成を継続しつつ負担を軽減するために、掛金の「停止」や「最低額(5000円)」への「減額」を検討したほうがよいでしょう。
もし脱退一時金の手続きや、掛金の停止・老齢給付金の受け取りなど、具体的な手続きについて不安な場合は、利用している運営管理機関のコールセンターで確認しましょう。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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