
転職すると退職金はどうなる?基本の仕組みと損をしない受け取り方
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「転職を考えているけれど、退職金が減ってしまわないか」とお悩みではありませんか?
退職金は老後の生活を支える大切な資金ですが、この仕組みは企業によって異なり、転職が不利に働くこともあります。
そこで本記事では、転職時における退職金の基本から、損をしないための税金対策、賢い受け取り方まで詳しく解説します。
- 退職金制度の基本と支給条件
- 退職金にかかる税金と手続き
- 退職金の引き継ぎ(ポータビリティ)制度
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転職すると退職金はどうなる?基本の仕組み
転職時に退職金が受け取れるかどうかは、勤務先の退職金制度の有無や内容によって決まります。退職金は法律で義務付けられた制度ではないため、まずは自身の会社のルールを確認することが欠かせません。
また一般的に、退職金の額は勤続年数や退職理由(自己都合か会社都合か)によって変動します。
転職を検討する際は、これらの基本を理解しておきましょう。
退職金制度がある企業は約75%
退職金は、正式には「退職給付制度」と呼ばれます。この制度は法律で定められた義務ではないため、導入していない企業も存在します。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度がある企業は全体の74.9%でした。つまり、約4社に1社は退職金制度がないのが現状です。
企業規模別に見ると、従業員1000人以上の企業では90.1%が制度を導入しているのに対し、30〜99人の企業では70.1%にとどまります。
転職を考える際は、まず現職および転職先の企業に退職金制度があるかを確認することが不可欠です。
退職金の支給条件と最低勤続年数
退職金制度がある企業でも、入社後すぐに退職した場合は支給されないことがほとんどです。多くの企業では、退職金の支給対象となるための「最低勤続年数」を就業規則で定めています。
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、自己都合退職の場合、最低勤続年数を「3年以上4年未満」と定めている企業が57.0%と一番多くなっています。会社都合の場合でも同様の傾向が見られます。
ただし、企業によっては1年や2年から支給対象となる場合もあるため、いずれにしても自社の規定を正確に確認することが必須です。
自己都合退職と会社都合退職の違い
退職金は、退職理由によっても支給額が変わるのが一般的です。具体的には、「自己都合退職」か「会社都合退職」かによって、支給率が異なるケースが多く見られます。
- 自己都合退職:転職や家庭の事情など、従業員側の都合による退職。
- 会社都合退職:倒産やリストラ、事業所の閉鎖など、会社側の都合による退職。
一般的に、自己都合退職の場合は会社都合退職に比べて退職金が少ない傾向にあります。
これは、会社都合は従業員に離職の責任はない一方、自己都合は従業員の責任であるという考え方などに基づいて退職金の支給率に差を設ける企業が多いからです。
各種調査データを見ても、同じ勤続年数であれば、会社都合退職のほうが自己都合退職よりも支給額が高くなっています。
勤続年数が短いほど、この減額率は高くなる傾向があるため注意が必要です。
転職で退職金は減る?
転職によって退職金が減る可能性は十分にあります。
多くの退職金制度は勤続年数が長くなるほど支給率が上がる累進的な仕組みを採用しているため、勤続年数がリセットされる転職は、生涯で受け取る退職金の総額に影響を与えます。
転職を繰り返すと生涯退職金が減る理由
短期間での転職を繰り返すと、1つの会社に長く勤めた場合に比べて、生涯で受け取る退職金の総額が少なくなる可能性があります。
その主な理由は、多くの退職金制度が勤続年数に応じて支給率が累進的に(加速度的に)上昇する仕組みを採用しているためです。例えば、勤続5年の支給率が1.0、10年で3.0、20年で10.0といったように、長く勤めるほど有利になります。
一方、転職をすると、その都度勤続年数がリセットされます。仮に5年ごとに4回転職して合計20年働いた場合、「勤続5年分の退職金×4回」となります。これは、1社で20年勤続した場合の退職金に比べて、総額で下回るのが一般的です。
キャリアアップのための転職は大事ですが、退職金という観点では、短期的な転職の繰り返しが不利に働く可能性があることを理解しておく必要があります。
転職時の退職金にかかる税金と手続き
退職金を受け取る際には、所得税や住民税などの税金がかかります。
しかし、退職金は長年の勤労に対する報奨という性格から、税制上の優遇措置が設けられています。この優遇措置を最大限に活用するためには、適切な手続きが必要です。
「退職所得の受給に関する申告書」の提出は、手取り額に直接影響するため、忘れてはならない重要なポイントです。
ここでは、退職金にかかる税金の仕組みと、必要な手続きについて解説します。
退職所得控除の仕組み
退職金を一時金で受け取る場合、この所得は「退職所得」として扱われます。退職所得の計算では、「退職所得控除」という大きな控除が適用されるため、税負担が軽減されます。
退職所得控除額は勤続年数に応じて決まり、計算式は以下の通りです。
課税対象となる退職所得は、以下の式で計算されます。
(収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2
このように、控除額が大きいうえ、さらに残った金額も半分になるため、他の所得に比べて税金が優遇されています。
「退職所得の受給に関する申告書」の重要性
退職所得控除の適用を受けるためには、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金が支払われるまでに会社へ提出することが不可欠です。
この申告書を提出することで、会社側が退職所得控除を適用した上で所得税の計算と源泉徴収を行ってくれます。これにより、課税関係は完結するため、原則として自分で確定申告をする必要がなくなります。
もしこの申告書を提出しなかった場合、退職金の支給額に対して一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。
この場合、本来よりも多くの税金を支払うことになり、払い過ぎた税金を取り戻すためには、翌年に自分で確定申告をしなければなりません。
余計な手間と一時的な資金負担を避けるためにも、必ず提出しましょう。
確定申告が必要なケース
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、原則として退職金の確定申告は不要です。
しかし、以下のようなケースでは確定申告が必要、または申告したほうがよい場合があります。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合
退職金の額面に対して一律20.42%の税金が源泉徴収されているため、確定申告をすることで、退職所得控除などを適用した正しい税額が再計算され、払い過ぎた税金が還付される可能性があります。
年内に複数の会社から退職金を受け取った場合
転職後の退職により年度内に複数の退職金を受け取った場合、転職先の退職金については、退職所得控除が正しく計算されていない可能性があります。確定申告で合算して再計算することで、税金が還付されることがあります。
退職所得以外の所得が少ない場合
年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合など、給与から源泉徴収された所得税の計算には所得控除が正しく反映されていない可能性があります。確定申告をすることで給与所得に対する税額が下がり、還付を受けられることがあります。ただし、退職金に対する税額は変わりません。
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転職前に確認すべき退職金のチェックポイント
転職活動を進めるにあたり、退職金について事前に確認しておくことは、後悔のない選択をするために欠かせません。
現職の制度を正しく理解し、転職先の制度についても情報を得ることで、より有利な条件でのキャリアチェンジを目指せます。
ここでは、現職と転職先それぞれで確認すべき具体的なチェックポイントを解説します。
現職で確認すべきこと
転職を決める前に、まずは現在勤務している会社の退職金制度について正確に把握しましょう。確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 退職金制度の有無:そもそも退職金制度があるかを確認します。
- 制度の種類:退職一時金制度、企業型確定拠出年金(DC)、確定給付企業年金(DB)など、どの制度が導入されているか。
- 最低勤続年数:退職金が支給されるために必要な最低勤続年数。
- 自己都合退職時の支給額:現時点で自己都合退職した場合、いくら受け取れるのかの概算。
- 引き継ぎ(ポータビリティ)の可否:企業型DCなどの場合、転職先に資産を引き継げるか。
これらの情報は、就業規則や退職金規程に記載されています。書類が手元にない場合は、社内のイントラネットで閲覧したり、人事・総務部門に問い合わせたりして確認しましょう。
転職先で確認すべきこと
転職先の企業を選ぶ際には、給与や業務内容だけでなく、退職金制度についても確認することが望ましいでしょう。内定後、労働条件を提示される際に確認するのが一般的です。
- 退職金制度の有無:制度があるかどうかは重要な判断材料です。
- 制度の種類:退職一時金、企業型DC、中退共など、どのような制度か。
- 加入時期:入社後いつから退職金制度の対象となるか。(支給要件に最低勤続年数がある場合はその年数)
- 前職からの引き継ぎ可否:企業型DCや中退共の場合、前職の資産を移換できるか。
これらの情報は、求人票に記載されていることもありますが、詳細は内定後の面談や労働条件通知書で確認するのが確実です。
もし選考段階で質問しづらい場合は、転職エージェントを通じて確認してもらうのも1つの方法です。退職金は長期的な資産形成に関わるため、納得のいくまで情報を集めましょう。
退職金がない会社への転職、どう考える?
転職活動をしていると、退職金制度がない企業に出会うこともあります。退職金がないことは一見デメリットに思えますが、その分他の条件が有利になっている場合もあり、一概に悪い選択とは限りません。
重要なのは、退職金という1つの要素だけでなく、給与、賞与、福利厚生、そして自身のキャリアプランなど、総合的な報酬パッケージ(トータルリワード)で判断することです。
ここでは、退職金がない会社への転職をどう考えるべきか、その判断基準を解説します。
退職金なしのメリット・デメリット
退職金制度がないことには、メリットとデメリットの両側面があります。これらを理解した上で、自身の価値観に合うか判断しましょう。
メリット
- 月々の給与や賞与が高い傾向:退職金として将来支払う原資を、毎月の給与に上乗せして還元している場合があります。目先のキャッシュフローを重視する方には魅力的です。
- 報酬体系が分かりやすい:将来の不確定な退職金よりも、現在の給与額で評価が明確になります。
デメリット
- 老後資金をすべて自己責任で準備する必要がある:会社からの退職金というまとまった収入が見込めないため、計画的に資産形成を行う必要があります。
- 退職所得控除の税制優遇が受けられない:退職金がないため、税制上優遇されている退職所得控除を活用できません。
- 資金管理能力が求められる:給与が高くても、それを浪費せずに将来のために貯蓄・投資する自己管理能力が不可欠です。
自分で老後資金を準備する方法
退職金制度がない企業へ転職する場合、自身で計画的に老後資金を準備することが不可欠です。
国も個人の資産形成を後押しする税制優遇制度を用意しており、これらを活用しない手はありません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受け取り時にも税制上の優遇措置が適用される強力な制度です。原則60歳まで引き出せないため、着実に老後資金を貯められます。
NISA(少額投資非課税制度)
年間最大360万円までの投資で得た利益が非課税になります。いつでも引き出し可能で自由度が高く、iDeCoと並行して活用することで効率的な資産形成が可能です。
企業型DC(企業型確定拠出年金)
転職先に退職一時金制度はなくても、企業型DCが導入されている場合があります。会社の掛金に加えて、自分でも掛金を上乗せ(マッチング拠出)できる場合もあり、有効な資産形成手段となります。
転職と退職金に関するよくある質問
ここでは、転職と退職金に関して多くの人が抱く疑問や質問について、Q&A形式で簡潔にお答えします。
Q. 転職したら退職金は減る?
キャリアトータルで見ると減る可能性が高いといえます。
退職金制度は勤続年数が長くなるほど支給率が上がるのが一般的であるため、転職によって勤続年数がリセットされると、1社に長く勤めた場合よりも生涯で受け取る退職金の総額は少なくなる傾向にあります。
Q. 自己都合退職でも退職金はもらえる?
退職金制度がある会社で、支給条件となる最低勤続年数を満たしていれば、自己都合退職でも退職金は支給されるのが一般的です。
ただし、定年退職や会社都合退職と比較すると減額されるのが一般的です。
就業規則で「自己都合退職の場合は支給率を減ずる」といった規定が設けられていることが多く、会社都合退職に比べて支給額は低くなります。勤続年数が短いほど、この減額率は高くなる傾向にあります。
まとめ
転職を考える際、退職金は将来の資産形成に影響する重要な要素です。退職金制度は法律で義務付けられておらず、この有無や内容は企業によって異なります。
一般的に、勤続年数が短い段階での自己都合退職は、支給額が大幅に減額されたり、そもそも支給対象外となったりする可能性があります。転職を繰り返すと、1社で長く勤めた場合に比べて生涯で受け取る退職金の総額が減ってしまうことも理解しておく必要があります。
一方で、厳密には退職金とは異なりますが、企業型DCや中退共など、転職先に資産を引き継げる制度もあります。これらのポータビリティ制度を上手く活用すれば、転職によるデメリットを軽減できます。
後悔のない転職を実現するためには、まず現職の退職金制度を就業規則でしっかりと確認し、その上で転職先の制度についても情報を集めることが不可欠です。自身のキャリアプランとライフプランを総合的に見据え、最適な選択をしましょう。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
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