
児童手当と児童扶養手当の違いとは?対象者・金額・併給の可否を解説
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「児童手当」と「児童扶養手当」、名前の似ている2つの制度の違いは?両方もらえることはあるの?といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2つの手当の目的や対象者、支給額の違いを詳しく解説します。ご家庭の状況に合った支援を正しく受けるために、ぜひ参考にしてみてください。
- 2つの手当の基本的な違い
- 対象者、支給額、所得制限など5つの比較ポイント
- 児童手当と児童扶養手当の併給について
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児童手当と児童扶養手当、何が違う?まずは基本を整理
児童手当と児童扶養手当は、どちらも子育て世帯を経済的に支援する国の制度ですが、その目的と対象者が異なります。
児童手当は、次代の社会を担う子どもの健やかな成長を支援することを目的とし、原則としてすべての子育て世帯が対象です。
一方、児童扶養手当は、ひとり親世帯などの生活の安定と自立を促進することを目的としており、対象者が限定されています。まずは、それぞれの基本的な内容を理解しましょう。
児童手当:すべての子育て世帯が対象
児童手当は、家庭における生活の安定と、次代の社会を担う児童の健やかな成長を目的とした制度です。
対象となるのは、日本国内に住所を有する0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日まで(高校生年代まで)の児童を養育している方です。そのため、両親のいる世帯だけでなく、ひとり親世帯や児童を養育している祖父母なども対象に含まれます。
児童扶養手当:ひとり親世帯が対象
児童扶養手当は、離婚や死別などにより、父または母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進を目的とした制度です。
主な対象者は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(または一定の障害がある場合は20歳未満)を養育している、ひとり親家庭の父または母、あるいは父母に代わってその児童を養育している方です。
つまり、児童手当とは異なり、特定の状況にある家庭を支えるための制度となっています。
5つのポイントで比較する児童手当と児童扶養手当の違い
児童手当と児童扶養手当の基本的な違いを理解したところで、さらに具体的な相違点を5つのポイントで詳しく比較していきます。
対象者、支給額、所得制限、支給期間、そして支給月の5つの観点からそれぞれの制度を比較することで、両者の違いがより明確になります。ご家庭の状況と照らし合わせながら確認していきましょう。
対象者の違い
児童手当と児童扶養手当のもっとも大きな違いは対象者です。
児童手当は、日本国内に住所があり、高校生相当年齢(18歳到達後最初の3月31日)までの児童を養育するすべての方が対象となります。
一方、児童扶養手当は、ひとり親家庭など特定の要件を満たす方が対象です。具体的には、離婚や死別、または配偶者が重度の障害を持つなどの理由で、児童を一人で養育している父、母、または養育者が対象となります。
支給額の違い
支給される手当の金額も、両制度で異なります。
児童手当は、児童の年齢や出生順によって月額が定められています。2024年10月の制度拡充により、第3子以降の支給額が大幅に増額されました。具体的には、3歳未満は一律1万5000円、3歳から高校生年代までは第1子・第2子が1万円ですが、第3子以降は年齢にかかわらず一律3万円となります。
また、「第3子」をカウントする際の対象年齢も拡大されており、親等の経済的負担がある場合は「22歳到達後の最初の年度末(大学生年代)」の子から順に第1子と数えることができます。
児童扶養手当は、受給資格者の所得に応じて支給額が変わる仕組みです。所得が一定額未満の場合は「全部支給」、所得がそれを超える場合は所得に応じて段階的に減額される「一部支給」となります。
それぞれの支給額は以下の通りです。
【児童手当(月額)】
【児童扶養手当(月額・令和7年4月~)】
所得制限の違い
児童手当には所得による支給制限はありませんが、児童扶養手当には所得制限があります。
児童手当は、2024年10月分から所得制限が撤廃され、所得にかかわらず対象児童を養育する保護者に全額支給されるようになりました(高校生年代までの対象拡大や第3子以降の多子加算拡充と併せて改正されています)。
一方、児童扶養手当の所得制限は複雑です。受給者本人の所得だけでなく、生計を同じくしている扶養義務者(例: 祖父母、兄弟姉妹など)の所得も審査対象となります。本人の所得が限度額内であっても、扶養義務者の所得が限度額を超えると手当は全額支給停止となる場合があります。また、本人の所得に応じて「全部支給」と「一部支給」(所得が増えるほど支給額が段階的に減額)に分かれる点も特徴です。
支給期間の違い
児童手当と児童扶養手当の支給期間(対象児童の年齢)は、ともに原則として0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日まで(高校卒業相当年齢まで)で違いはありません。
ただし、児童扶養手当では、対象児童に中程度以上の障害がある場合、20歳未満まで支給期間が延長されます(児童手当にはこの特例はありません)。
支給月の違い
手当が振り込まれるタイミングも異なります。
児童手当は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月(偶数月)の年6回に、それぞれの前月分までの2ヶ月分がまとめて支給されます。
児童扶養手当は、年6回、奇数月(1月・3月・5月・7月・9月・11月)に、それぞれの前月分までの2ヶ月分が支給されます。
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児童手当と児童扶養手当は併給できる?
「ひとり親家庭の場合、児童手当と児童扶養手当の両方を受け取ることはできるのか?」という点は、多くの方が気になるポイントでしょう。
結論からいうと、それぞれの支給要件を満たしていれば、児童手当と児童扶養手当を両方とも受給すること(併給)は可能です。ひとり親家庭は、児童扶養手当の対象であると同時に、子育て世帯として児童手当の対象でもあるためです。
併給可能だが、それぞれの要件を満たす必要がある
児童手当と児童扶養手当を併給するためには、両方の制度が定める支給要件をそれぞれ満たす必要があります。
例えば、離婚して10歳の子どもを1人で養育している場合を考えてみましょう。
- 児童手当の要件:中学校卒業までの児童を養育しているため、要件を満たします。
- 児童扶養手当の要件:離婚によりひとり親家庭となっているため、要件を満たします。
そのため、両方の要件を満たすため、2つの手当を併給できます。
ただし、児童扶養手当には所得制限があるため、申請者本人や扶養義務者の所得によっては、減額されたり、支給停止になったりする可能性があります。
併給時の注意点
児童手当と児童扶養手当の併給自体に特別な調整はありませんが、児童扶養手当と公的年金(遺族年金、障害年金、老齢年金など)との間には併給調整が存在します。
以前は、公的年金の受給額が児童扶養手当の額を上回る場合、児童扶養手当は受給できませんでした。しかし、制度改正により、現在では年金額が児童扶養手当額より低い場合は、その差額分を児童扶養手当として受給できるようになっています。
障害基礎年金を受給している場合は、子の加算部分との差額が支給されるなど、計算方法が異なります。
公的年金を受給している、または受給する予定がある場合は、必ずお住まいの市区町村の窓口で相談してください。
あなたはどちらを受給できる?ケース別チェック
ここまで解説した内容をもとに、具体的な家庭の状況別に、どの手当を受給できる可能性があるかを確認してみましょう。ただし、最終的な支給決定は所得状況などを審査した上で行われるため、あくまで一般的な目安としてご覧ください。
ケース①:両親がいる世帯
両親と子どもで構成される世帯の場合、ひとり親家庭などを対象とする児童扶養手当の支給要件には該当しません。
したがって、そのケースで対象となるのは児童手当のみです。子どもが年齢の条件を満たしていれば、児童手当を受給できます。
ケース②:離婚してひとり親になった世帯
離婚により、父または母が1人で子どもを養育している世帯は、ひとり親家庭に該当します。
その場合、ひとり親家庭向けの児童扶養手当と、子育て世帯向けの児童手当の両方の支給要件を満たすため、両方の手当を併給できる可能性があります。特に児童扶養手当については所得制限を確認した上、申請手続きを行いましょう。
ケース③:未婚のひとり親世帯
婚姻歴がなく、1人で子どもを養育している未婚の父または母の世帯も、ひとり親家庭として扱われます。したがって、離婚した世帯と同様に、児童扶養手当と児童手当の両方を併給できる可能性があります。
ただし、注意点として「事実婚」の状態にあると判断された場合は、児童扶養手当の受給資格がなくなります。事実婚とは、住民票の有無にかかわらず、異性と同居していたり、頻繁な訪問や生活費の援助を受けていたりする状態を指します。該当する可能性がある場合は事前に自治体に確認しておきましょう。
ケース④:配偶者が死亡した世帯
配偶者と死別し、1人で子どもを養育している世帯も、ひとり親家庭に該当します。その場合も、児童扶養手当と児童手当の両方を併給できる可能性があります。
ただし、亡くなった配偶者の公的年金(遺族年金など)を受給している場合(ただし、児童が公的年金の額の加算の対象になっているとき)は、児童扶養手当との併給調整が行われます。年金額が児童扶養手当額より低い場合は、その差額分が支給されることになるため、注意が必要です。
申請方法と必要書類
児童手当も児童扶養手当も、受給するためにはお住まいの市区町村の担当窓口で申請手続きが必要です。自動的に支給が開始されることはないため、支給要件に該当した場合は速やかに手続きを行いましょう。
どちらの手当も、原則として申請者本人が窓口で手続きを行う必要があります。
必要書類は個々の状況によって異なる場合があるため、事前に電話などで確認することをお勧めします。
児童手当の申請方法
児童手当は、出生や転入などにより新たに受給資格が発生した場合、その事由が発生した日の翌日から15日以内に申請する必要があります。申請が遅れると、遅れた月分の手当が受け取れなくなる可能性があるため注意が必要です。
【主な必要書類】
- 認定請求書(窓口で入手)
- 申請者名義の金融機関の口座がわかるもの(通帳やキャッシュカード)
- 申請者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 申請者および配偶者のマイナンバー、または個人番号がわかるもの
児童扶養手当の申請方法
児童扶養手当は、原則として申請した月の翌月分から支給対象となります。こちらも申請が遅れると、その分受給できる総額が減ってしまうため、離婚成立など支給要件に該当したら速やかに申請しましょう。
【主な必要書類】
- 認定請求書(窓口で入手)
- 請求者および対象児童の戸籍謄本(発行から1ヶ月以内のもの)
- 請求者名義の金融機関の口座がわかるもの
- 年金手帳
- 請求者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 請求者、対象児童、扶養義務者のマイナンバー、または個人番号がわかるもの
それ以外にも、離婚や死別などの事由を証明する書類や、所得証明書、民生委員の証明など、個々の状況に応じた書類の提出を求められる場合があります。
申請時の注意点
受給継続のための手続き(現況届)については、2つの制度で扱いが異なります。
児童手当:原則不要
以前は毎年提出が必要でしたが、現在は自治体が住民基本台帳などで状況を確認できる場合、現況届の提出は原則不要です(※離婚協議中で別居している場合など、一部の方は引き続き提出が必要です)。
児童扶養手当:毎年必要
児童扶養手当は、毎年8月に「現況届」の提出が必須です。この届出を忘れると、11月分以降の手当が受け取れなくなるため、必ず期限内に手続きを行いましょう。
また、住所変更、結婚(事実婚を含む)、家族構成の変更など、申請内容に変更があった場合もその都度届出が必要です。
届出が遅れると、手当の返還を求められるケースもあるため注意しましょう。
児童手当・児童扶養手当に関するQ&A
ここでは、児童手当と児童扶養手当に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。制度をより深く理解するための参考にしてみてください。
Q. 児童手当と児童扶養手当、どちらが金額が多い?
子どもの人数や所得によりますが、多子世帯では児童手当の額も大きくなります。
児童1人の場合、児童扶養手当(全部支給で月4万6000円台)のほうが高額です。 しかし、児童手当は第3子以降が月額3万円に増額されたため、子供が3人以上いる家庭では児童手当の総額も大きくなります。
ひとり親家庭であれば、両方の制度を併給(ダブル受給)することで、家計の安定により大きな効果が期待できます。
Q. 離婚調停中でも児童扶養手当は申請できる?
離婚が成立していなくても、児童扶養手当の支給要件に該当する場合があります。例えば、配偶者から1年以上「遺棄」されている状態や、裁判所から「DV保護命令」が出されている場合などです。
ただし、これらの状況に該当するかの判断は個別の事情に応じて行われるため、一概には「申請できる」とはいえません。離婚調停中で配偶者と別居している場合は、まずお住まいの市区町村の担当窓口に相談することをおすすめします。
Q. 児童手当・児童扶養手当は課税対象になる?
いいえ、児童手当と児童扶養手当はどちらも非課税所得です。したがって、これらの手当を受け取っても所得税や住民税が課されることはありません。
また、税金の計算上で配偶者控除や扶養控除の対象となるかどうかを判断する際の合計所得金額にも含まれません。
まとめ
児童手当と児童扶養手当は、子育て世帯を支える重要な制度ですが、その目的と対象は明確な違いがあります。
- 児童手当:次代を担うすべての子どもの成長を社会全体で応援するための制度
- 児童扶養手当:ひとり親家庭などの生活の安定と自立を支えるための制度
ひとり親家庭の場合は、両方の要件を満たせば併給が可能です。ただし、児童扶養手当には所得制限があり、さらに同居家族の所得も影響するなど、複雑な面があります。
ご家庭の状況がどの手当の対象になるかを確認し、支給要件に該当した場合は、速やかにお住まいの市区町村の窓口で申請手続きを行いましょう。
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将来の資金が気になるあなたへ
この先、お金の不安なく暮らすために、将来の必要額を早めに把握して準備を始めましょう。マネイロでは、将来資金の準備を便利に進められる無料ツールを利用できます。
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監修
山本 務
- 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者
東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。
