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年金は将来もらえない?制度の現状と老後資金の備え方を専門家がわかりやすく解説

年金は将来もらえない?制度の現状と老後資金の備え方を専門家がわかりやすく解説

年金2025/12/18
  • #老後資金

»将来の年金と不足額を無料診断!今できる対策も

「将来、年金はもらえないのでは?」と感じる背景には、少子高齢化、年金財政悪化、給付水準の低下といった不安があります。しかし、実際には年金制度がすぐに破綻する可能性は低く、国は給付を維持するための複数の仕組みを導入しています。

一方で、将来の年金給付水準が現在より減る可能性は現実的であり、個々のライフプランに応じた備えが欠かせません。

本記事では、年金制度の現状と将来シナリオ受給額がどこまで下がり得るかを専門家視点でわかりやすく整理します。

また、iDeCo・NISA・任意加入など“年金を補う資産形成方法”を踏まえた今からできる最適な備え方を徹底解説します。

この記事を読んでわかること
  • 年金制度の現状と今後の見通し
  • 将来の年金額はどこまで減るのか
  • 公的年金を増やし、老後に備える方法


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「年金は将来もらえない」は本当?

結論として、公的年金制度が破綻して年金が将来全くもらえなくなる、という可能性は極めて低いです。

日本の公的年金は、現役世代が納めた保険料をその時々の年金受給者への支払いに充てる「賦課(ふか)方式」で運営されています。少子高齢化が進む中で、その方式の持続性を疑問視する声もありますが、制度が破綻しないための仕組みが組み込まれています。

国は「100年安心」という言葉を使っていますが、これは給付水準を保証するものではなく、「年金制度そのものが100年先も持続可能である」という意味です。

財政状況に応じて給付額を自動的に調整する「マクロ経済スライド」などの仕組みにより、制度の破綻は回避される設計になっています。

ポイントの解説

したがって、「年金がゼロになる」という心配は不要ですが、将来の給付水準が現在よりも低下する可能性は考慮しておく必要があります。

年金制度の現状と今後の見通し

公的年金制度の持続可能性は、定期的に行われる「財政検証」によって評価・確認されています。その検証結果を基に、将来の給付水準の見通しが立てられます。

国の財政見通しや給付水準の推計、そして将来に影響を与える社会構造の変化について解説します。

公的年金の財政見通し

国は、公的年金制度の健全性を確認するため、少なくとも5年に一度「財政検証」を実施しています。これは、年金制度の長期的な健康診断のようなものです。

財政検証では、将来の人口(出生率や平均寿命など)や経済(物価、賃金、運用利回りなど)に関する複数の前提を置いて、今後おおむね100年間の年金財政の収支見通しを試算します。

検証を通じて、年金制度の持続可能性が評価され、必要に応じて制度改正の検討が行われます。

現行制度には、年金財政のバランスを自動的に調整する「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されており、給付削減や負担増を前提に制度の破綻を防ぐ設計となっています。

給付水準の将来推計

将来の年金がどの程度の水準になるかを示す指標として「所得代替率」があります。所得代替率は年金受給開始時点の年金額(夫婦の合計金額)が、現役世代の平均手取り収入額に対してどのくらいの割合かを示すものです。

2024年の財政検証では、今後の経済成長の前提ごとに複数のケースが示されています。例えば、経済が過去30年と同様の低成長で推移する「過去30年投影ケース」では、所得代替率は2024年度の約61%から約50%まで低下すると見込まれています。

これは、将来の年金受給額が、その時点の現役世代の手取り収入の約半分になることを意味します。

一方で、経済が堅調に成長する「成長型経済移行・継続ケース」では、所得代替率は57%程度を維持する見通しです。将来の給付水準は経済状況によって変動する可能性があります。

(参考:令和6(2024)年財政検証結果の概要|厚生労働省

将来の年金に影響する人口構造と働き方の変化

日本の公的年金制度は、現役世代が高齢者世代を支える「賦課方式」を基本としています。そのため、少子高齢化の進行は制度にとって大きな課題です。

保険料を納める現役世代が減少し、年金を受け取る高齢者が増加すれば、一人ひとりの負担が重くなるか、給付水準を調整する必要が生じます

一方で、近年は女性の社会進出や高齢者の就労意欲の高まりなど、働き方にも変化が見られます。65歳を過ぎても働き続け、厚生年金に加入する人が増えることは、年金制度の支え手を増やすことにつながります。

こうした社会構造や働き方の変化は、将来の年金財政に影響を与える重要な要素です。

2024年の財政検証でも、女性や高齢者の労働参加が進むことを前提とした試算が行われており、これらの変化が制度の持続可能性を支える一因として期待されています。


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将来の年金額はどこまで減る?

「年金がゼロにはならないとしても、一体いくらもらえるのか」という点が一番気になるところでしょう。

将来の年金額は、今後の経済成長や物価の動向、そして個人の働き方によって変動します。

現役世代が65歳で受け取る金額は?

2024年の財政検証では、現役世代が将来受け取る年金額の目安が、経済成長のシナリオ別に示されています。

「令和6(2024)年財政検証結果の概要」によると、モデル年金の将来見通し(2060年・夫婦2人世帯)は次の通りです。収入や年金額は物価上昇率で2024年度に割り戻した実質額です。

(2060年・夫婦2人世帯のモデル年金額)

経済成長の前提

現役男子の手取り収入

現役男子の手取り収入

夫婦の年金額

夫婦の年金額

所得代替率

所得代替率

(2024年度)

現役男子の手取り収入

37.0万円

夫婦の年金額

22.6万円

所得代替率

61.2%

成長型経済移行・継続ケース

現役男子の手取り収入

58.6万円

夫婦の年金額

33.8万円

所得代替率

57.6%

過去30年投影ケース

現役男子の手取り収入

42.5万円

夫婦の年金額

21.4万円

所得代替率

50.4%

経済が順調に成長すれば、現在の受給者よりも多い金額を受け取れる可能性があります。一方で、経済が低迷した場合は、現在の水準をやや下回る程度になる見込みです。

注意点

ただし、どちらのケースも実質賃金上昇率がプラスになることが前提で、現在のようにマイナスになった場合は現役世代の収入も年金額も上記より少なくなります。

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インフレと物価スライドが与える影響

年金額は、物価や賃金の変動に合わせて改定される仕組みになっています。しかし、年金財政を安定させるために導入された「マクロ経済スライド」が適用される期間は、年金額の伸びが物価や賃金の伸びよりも低く抑えられます。

マクロ経済スライドとは、年金の支え手である現役世代の減少や、平均寿命の延びに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

具体的には、物価や賃金の上昇率から「スライド調整率」を差し引いて年金額が改定されます。これにより、年金の額面は増えても、物価の上昇に追いつかず、実質的な価値が目減りします。

ポイントの解説

その仕組みは、制度の持続可能性を確保するために欠かせませんが、個人の生活設計においては、年金の実質的な価値が低下する可能性を考慮に入れる必要があります。

賃金上昇率・就労期間が年金額に与える差

将来受け取る年金額は、個人の働き方によって変わります。会社員や公務員が加入する厚生年金は、現役時代の収入(標準報酬月額・標準賞与額)と加入期間に応じて年金額が決まる「報酬比例」の部分が大部分を占めます。

賃金が高いほど、また、厚生年金に加入して働く期間が長いほど、将来の年金額は多くなります。日本の公的年金制度では、厚生年金には最長で70歳まで加入することが可能です。

60歳以降も働き続けることで、老齢厚生年金の受給額を増やすことができます。これは、老後の収入を増やす上で有効な手段の一つです。

自身のキャリアプランを考える際には、それが将来の年金額にどう影響するかも視野に入れると良いでしょう。

自分の年金見込み額を確認する方法

自身の将来の年金見込み額を把握するためには、日本年金機構が提供する2つのツールが役立ちます。

一つ目は、毎年誕生月に郵送される「ねんきん定期便」です。これには、これまでの保険料納付実績や、それに基づいた将来の年金額が記載されています。50歳以上の人のねんきん定期便には、現在の加入条件が60歳まで続いた場合の年金見込額が示されており、より具体的な老後のイメージを持つことができます。

二つ目は、インターネットサービス「ねんきんネット」です。24時間いつでも最新の年金記録を確認できるほか、将来の年金見込み額をさまざまな条件でシミュレーションすることが可能です。

例えば、「65歳以降も働き続けた場合」や「保険料を追納した場合」など、自身のライフプランに合わせた試算ができます。

まずはこれらのツールを活用し、現状を正確に把握することが、将来への備えの第一歩となります。

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公的年金を増やすための方法

将来の年金給付水準が低下する可能性に備え、自らの意思で受給額を増やすための制度が複数用意されています。

これらの制度をうまく活用することで、より豊かな老後生活の基盤を築くことが可能です。

任意加入で受給額を増やす

国民年金の保険料納付期間は原則として20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)です。もし、未納期間などがあり、60歳時点で480ヶ月に満たない場合、「任意加入制度」を利用できます。

任意加入制度は、60歳から65歳までの間、国民年金に任意で加入し保険料を納めることで、納付期間を増やし、将来受け取る老齢基礎年金を増額させるものです。

また、受給資格期間である10年に満たない場合も、この制度を利用して期間を満たすことができます。

ただし、60歳以降も厚生年金に加入して働いている場合は任意加入できません。老齢基礎年金を少しでも満額に近づけたい場合に有効な選択肢です。

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付加年金(2年で元が取れる制度)

自営業者など国民年金の第1号被保険者の場合は、「付加年金」という制度を利用して将来の年金額を上乗せできます。

これは、毎月の国民年金保険料に加えて、月額400円の付加保険料を納めることで、将来受け取る老齢基礎年金に「200円 × 付加保険料を納付した月数」分の金額が加算される制度です。

例えば、1年間(12ヶ月)付加保険料を納めると、4800円(400円×12ヶ月)の負担で、将来の年金額が毎年2,400円(200円×12ヶ月)増えます。

つまり、年金を受け取り始めてから2年で元が取れる計算になり、それ以降は生涯にわたって増額された年金を受け取れる、効率の良い制度です。

注意点

ただし、国民年金基金との併用はできません。

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国民年金基金で上乗せ

自営業やフリーランスなど、国民年金の第1号被保険者には、会社員のような厚生年金(2階部分)がありません。その上乗せ部分を自分で準備するための制度が「国民年金基金」です。

国民年金基金は、毎月一定の掛金を支払うことで、老後に終身年金などを受け取ることができる制度です。掛金は全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できるという税制上のメリットもあります。

掛金の上限は月額6万8000円で、iDeCo(個人型確定拠出年金)と併用する場合は、その合計額が上限となります。

注意点

付加年金との併用はできないため、どちらかを選択する必要があります。

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60歳以降も厚生年金に加入して働く

国民年金の加入義務は原則60歳までですが、厚生年金は会社員や公務員として働く限り、70歳まで加入しなければなりません

60歳以降も厚生年金に加入して働くことで、老齢厚生年金の受給額を増やすことが可能です。

厚生年金の受給額は、加入期間と現役時代の収入に基づいて計算されるため、長く働くほど、また収入が高いほど年金額は増加します。

高齢期にも安定した収入を得ながら、将来の年金をさらに手厚くできるため、大きなメリットがある選択肢と言えるでしょう。

繰下げ受給で最大84%増額

老齢年金は原則として65歳から受給を開始しますが、この開始時期を66歳から75歳までの間に遅らせる「繰下げ受給」を選択できます。

受給開始を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額され、最大の75歳まで繰り下げると、年金額は84%(0.7% × 120ヶ月)も増加します。この増額率は生涯変わりません。

例えば、65歳時点での年金額が月15万円(年180万円)の場合、70歳まで繰り下げると42%増の月21万3000円に、75歳まで繰り下げると84%増の月27万6000円になります。

60歳以降も働いて収入がある場合や、十分な貯蓄がある場合には、繰下げ受給は老後の収入を大幅に増やすための有力な選択肢となります。

公的年金以外で備える方法|資産運用

公的年金は老後の生活を支える重要な基盤ですが、それだけでゆとりある生活を送ることは難しいかもしれません。将来の給付水準が低下する可能性も踏まえると、自助努力による資産形成が不可欠です。

ここでは、国が税制優遇で後押しする代表的な資産運用制度を紹介します。

資産運用を行うメリット

老後資金を準備する上で、預貯金だけでなく資産運用を取り入れることには大きなメリットがあります。

一つは、インフレへの備えです。物価が上昇すると、お金の価値は実質的に目減りしてしまいます。資産運用によって預貯金の利息を上回るリターンを目指すことで、インフレに負けない資産づくりが期待できます。

もう一つは、複利効果の活用です。複利とは、運用で得た利益を元本に加えて再投資することで、利益が利益を生む仕組みです。時間をかければかけるほど雪だるま式に資産が増える効果が期待できるため、30代・40代といった早い段階から始めることが有効です。

iDeCoやNISAといった税制優遇制度を活用すれば、さらに効率的に資産を形成できます。

①iDeCo

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、自ら選んだ金融商品で運用して、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。老後資金作りに特化した制度であり、税制上のメリットが大きいのが特徴です。

主なメリットは以下の3点です。

  1. 掛金が全額所得控除:毎年の所得税・住民税が軽減されます
  2. 運用益が非課税:通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの運用益は非課税です
  3. 受取時にも控除:年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が適用され、税負担が軽くなります

公的年金に上乗せする私的年金として、税金の負担を抑えながら効率的に老後資金を準備できる制度です。

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②NISA

NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)は、個人投資家のための税制優遇制度です。NISA口座内で得た投資の利益(配当金、分配金、譲渡益)が非課税になるのが最大のメリットです。

2024年から始まった新NISAでは、制度が恒久化され、非課税で投資できる上限額も大幅に拡大しました。

  • つみたて投資枠:年間120万円まで。長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象
  • 成長投資枠:年間240万円まで。個別株や投資信託など、比較的幅広い商品が対象

この2つの枠は併用可能で、生涯にわたって利用できる非課税保有限度額は合計で1800万円です。

iDeCoと異なり、いつでも自由に資金を引き出せるため、老後資金だけでなく、教育資金や住宅資金など、さまざまなライフイベントに備えるための資産形成にも活用できます。

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まとめ

「年金は将来もらえない」という言説は、制度の仕組みを考えると正確ではありません。公的年金制度は破綻しないように設計されており、将来の受給額がゼロになることは考えにくいです。

しかし、少子高齢化の影響で、将来の給付水準が現在よりも実質的に低下する可能性は十分にあります。

大切なのは、「もらえない」と悲観するのではなく、「年金は老後の生活の基盤であり、足りない分は自分で準備する」という視点を持つことです。

まずは「ねんきんネット」などで自身の年金見込み額を把握し、繰下げ受給任意加入といった公的年金を増やす方法を検討しましょう。

その上で、iDeCoNISAといった税制優遇制度を活用し、計画的に資産形成を進めることが、安心できる老後につながる一番現実的な対策と言えます。

将来もらえる年金額を前提に、老後にいくら必要で、どれくらい不足するのかを把握することです。明確になれば、今から何を備えるべきかが見えてきます。

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監修
西岡 秀泰
  • 西岡 秀泰
  • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。

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マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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