物価上昇の実態—食品・光熱費の負担増

現在の物価上昇は、私たちの生活に身近な品目に大きな影響を与えています。

特に価格高騰が顕著なのは、日々の生活に欠かせない食品やエネルギーです。例えば、主食である米の価格は高騰し、かつて「物価の優等生」と呼ばれた卵の価格も高止まりしています。

「物価高による家計への影響を調査｜おとなの自動車保険」によれば、家計への影響を最も感じている支出項目は「食料」が約半数を占め、次いで「光熱費」が約2割という結果も出ています。これにガソリン代などの燃料費が加わり、生活インフラに関わるコストが全般的に上昇しています。

賃金が伸び悩む中で、これらの生活必需品の価格が上昇し続けることは、家計にとって深刻な負担増となっているのが実情です。

実質賃金の低下が家計を圧迫している理由

「実質賃金」とは、従業員が受け取る給与（名目賃金）から、消費者物価指数の変動による影響を差し引いて算出した指標です。これは、給与で実際にどれだけのモノやサービスを購入できるか、つまり「購買力」を示します。

近年、多くの企業で賃上げが行われているものの、その上昇率が物価の上昇率を下回る状況が続いています。「毎月勤労統計調査　2025(令和7)年9月分結果速報等｜厚生労働省」の調査でも、実質賃金指数が前年比でマイナスとなる月が続いており、これは物価高に賃上げが追いついていないことを明確に示しています。

ステップ1｜家計の現状把握

物価高対策の第一歩は、自身の家計の状態を正確に「見える化」することです。まずは家計簿アプリや表計算ソフトなどを活用し、毎月の収入と支出を記録しましょう。

このとき、単に記録するだけでなく、以下の3つの指標を算出することが重要です。

• 支出割合：食費や住居費など、何にどれくらいの割合でお金を使っているか
• 固定費比率：収入に対して、家賃や保険料、通信費といった固定費が占める割合
• 貯蓄率：収入から支出を引いた残額（貯蓄額）が、収入の何パーセントにあたるか

これらの数値を把握することで、家計全体のどこに問題があるのか、どこから手をつけるべきかが明確になります。

特に、見落としがちなサブスクリプションサービスなどの継続的な支出も洗い出すことが、改善の第一歩となります。

ステップ2｜即効性のある支出削減

家計の現状を把握したら、次に取り組むべきは支出の削減です。ここで重要なのは、食費や交際費といった「変動費」よりも、まず「固定費」から見直すことです。

固定費とは、家賃や通信費、保険料、サブスクリプションサービスなど、毎月一定額がかかる費用のことです。固定費を優先する理由は、一度見直すだけでその削減効果が毎月継続し、長期的に大きな節約につながるためです。

例えば、スマートフォンの料金プランを変更したり、利用していないサブスクを解約したりするだけで、無理なく支出を減らすことができます。

日々の細かな節約を続けるよりもストレスが少なく、確実な効果が期待できるため、家計改善において最も即効性のあるステップと言えます。

ステップ3｜中長期の改善

短期的な支出削減と並行して、中長期的な視点での家計改善も計画することが不可欠です。節約だけでは物価上昇のペースに追いつかない可能性があるため、多角的なアプローチが求められます。

具体的には、以下の3つの視点を持ちましょう。

• 収入の増加：現在の勤務先での昇進や昇給を目指すだけでなく、専門スキルを活かした副業や、より良い条件を求めての転職も有効な選択肢です
• 資産形成の開始：物価上昇は現金の価値を実質的に目減りさせます。預貯金だけでなく、NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用し、インフレに負けない資産形成を始めることが将来の安心につながります

固定費を体系的に減らす

固定費の見直しは、家計改善において最も効果的な手段の一つです。

一度手をつければ節約効果が自動的に続くため、優先的に取り組みましょう。効果が大きいとされる順に解説します。

変動費を“習慣単位”で管理する

食費や日用品費などの変動費は、日々の小さな選択の積み重ねです。そのため、無理な我慢ではなく、節約につながる「良い習慣」を身につけることが長続きの秘訣です。

買い物の習慣を見直す

スーパーに行く回数を減らし、週に1〜2回の「まとめ買い」を習慣にしましょう。計画的に購入することで、衝動買いや予定外の出費を防ぎます。

また、小売業者が自社で企画・販売する「プライベートブランド（PB）商品」は、有名メーカー品と同等の品質でありながら低価格な場合が多いため、積極的に活用する習慣をつけましょう。

収入に見合った生活設計に調整する

物価上昇が続く中で、以前と同じ生活水準を維持しようとすると、家計が破綻しかねません。重要なのは、現在の収入と支出のバランスを冷静に評価し、持続可能な生活設計へと調整することです。

すべての支出を切り詰める「我慢の節約」は長続きせず、精神的なストレスにもつながります。そこで推奨されるのが、支出に「メリハリ」をつける考え方です。

自分や家族にとって何が大切か、価値観の優先順位を明確にしましょう。例えば、「子どもの教育費は削らないが、外食の頻度は減らす」「趣味の旅行は続けたいので、普段の衣料品は安価なもので済ませる」といった形です。

このように、お金をかける部分とかけない部分を意識的に選択することで、生活の満足度を大きく下げることなく、全体の支出をコントロールすることが可能になります。

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物価上昇はいつまで続く？

物価上昇の勢いは、経済予測機関によると緩やかになる見通しが示されています。しかし、為替の変動、国際的な資源価格、世界情勢など不確定要素が多く、明確な終息時期を予測するのは困難です。

当面は物価が高い水準で推移する可能性を念頭に、家計の防衛策を継続することが賢明です。

給料が上がらないのに生活が苦しいのはなぜ？

物価は原材料費やエネルギー価格の高騰、円安などで上昇しますが、企業の賃金上昇がそのペースに追いついていないためです。給与の額面（名目賃金）が多少増えても、物価上昇率が高ければ、実質的に買えるモノの量は減ってしまいます。

この「実質賃金」の低下が、生活が苦しいと感じる直接的な原因です。

節約だけで乗り切れる？

食費や光熱費など、生活に不可欠な支出の値上がりが続く中、節約だけで対応するには限界があります。支出を管理することは重要ですが、それだけでは生活水準が低下し続ける可能性があります。

節約と並行して、副業やスキルアップによる収入増、NISAなどを活用した資産形成といった、複数の対策を組み合わせることが不可欠です。

将来の備えはどうすればいい？

物価上昇は、銀行に預けているお金の実質的な価値を目減りさせます。そのため、現金や預貯金だけでなく、インフレに強いとされる株式や投資信託などの資産を持つことが重要になります。

NISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用し、少額からでも長期的な視点でコツコツと資産形成を始めることを推奨します。