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厚生年金は個人で払うことができる?退職後の手続きと個人事業主の代替案を解説

厚生年金は個人で払うことができる?退職後の手続きと個人事業主の代替案を解説

年金2025/12/16
  • #老後資金

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「会社を辞めた後も、厚生年金保険料を個人で払うことはできる?」「個人事業主になったら、年金はどうすればいい?」といった疑問をお持ちではありませんか?

厚生年金は、会社員や公務員のための制度というイメージが強いですが、個人で支払う方法があるのか気になる方も多いでしょう。

本記事を読めば、厚生年金に個人で加入できるのかという疑問が解消し、個人事業主やフリーランスの方が将来のために備える具体的な方法がわかります。公的年金の仕組みを正しく理解し、自分の働き方に合った老後資金の準備を進めましょう。

この記事を読んでわかること
  • 厚生年金に個人で加入できない理由
  • 個人事業主が厚生年金に加入するための例外的な方法
  • 厚生年金の代わりとなる年金上乗せ制度


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厚生年金は原則個人で払うことはできない

結論からいうと、原則として厚生年金保険料を個人が任意で支払うことはできません。

厚生年金保険は、主に会社員や公務員など、適用事業所に雇用されている人々が加入する公的年金制度です。制度の設計上、個人が自らの意思で加入を選択したり、保険料を直接納付したりする仕組みにはなっていません。

保険料は、毎月の給与や賞与から天引きされる形で、事業主と従業員が半分ずつ負担し、事業主がまとめて国に納付します。したがって、会社を退職して被保険者資格を喪失した後は、個人(個人事業主やフリーランス含む)で厚生年金保険料を支払い続けることはできません。

個人事業主・フリーランスが厚生年金に入れない構造的理由

個人事業主やフリーランスが厚生年金に加入できないのは、単に制度がないからというだけでなく、厚生年金保険制度の根本的な構造に理由があります。

制度は個人を対象としたものではなく、特定の条件を満たす「事業所」を単位として適用されるためです。以下で、その構造的な理由を詳しく解説します。

厚生年金は「事業所単位」で適用される制度

厚生年金保険は、個人ではなく「事業所」を単位として適用される制度です。株式会社などの法人は、従業員の人数にかかわらず強制的に適用事業所となり、厚生年金への加入が義務付けられています。

また、個人事業所であっても、法律で定められた特定の業種(法定17業種)に該当し、従業員を常時5人以上雇用している場合は、同様に強制適用事業所となります。

厚生年金はまず事業所が適用対象となり、そこに「使用される者」として雇用されている従業員が被保険者になるという二段階の構造になっています。

そのため、どこにも雇用されていない個人事業主やフリーランスは、制度の入り口である「適用事業所に使用される」という条件を満たせず、加入することができません。

従業員を雇っても事業主本人は「適用除外」

個人事業主が従業員を5人以上雇用し、事業所が厚生年金の強制適用事業所になった場合でも、事業主本人は厚生年金の被保険者になることはできません。

これは、厚生年金法において被保険者が「適用事業所に使用される者」と定義されているためです。事業主は従業員を「使用する側」の立場であり、「使用される側」ではありません。したがって、事業主自身は被保険者の定義から外れるため、適用除外となります。

その点も、個人事業主が厚生年金に加入できない構造的な理由の1つです。従業員の保険料を納付する義務は負いますが、自身の老後保障は国民年金やその他の制度で別途準備する必要があります。

ポイントの解説

法人成り(株式会社や合同会社を設立)して自分に給与を払えば、その時点から事業の代表である社長本人も厚生年金に加入できます。

なぜ「厚生年金を個人で払える」と誤解される?3つの要因

厚生年金は原則として個人で支払うことはできませんが、「個人で継続できる」といった誤解が生まれることがあります。その背景には、厚生年金と似た仕組みを持つ他の社会保険制度や、特定の条件下での例外的な制度が存在するためです。

ここでは、そうした誤解が生まれる主な3つの要因について解説します。

要因1:健康保険の「任意継続」と混同している

厚生年金と個人で払える制度が混同される要因の1つに、健康保険の「任意継続被保険者制度」の存在が挙げられます。

健康保険には、会社を退職した後も、希望すれば最大2年間、それまで加入していた健康保険を継続できる仕組みがあります。その制度を利用する場合、保険料は全額自己負担となりますが、退職後も会社員時代と同様の保険給付を受けられるメリットがあります。

健康保険の任意継続制度のイメージから、「厚生年金も同じように個人で継続できるのではないか」という誤解が生じやすいのです。しかし、厚生年金には健康保険のような任意継続の制度は存在しません。

要因2:国民年金の「任意加入」と混同している

国民年金に存在する「任意加入制度」との混同も、誤解を生む大きな要因です。

国民年金は、原則として60歳で保険料の納付義務が終了します。しかし、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていない場合や、納付期間が40年に満たず満額受給できない場合に、60歳以降も希望して国民年金保険料を納めることができる「任意加入制度」が設けられています。

「任意加入」という名称から、厚生年金にも同様に個人で任意に加入できる制度があるのではないかと誤解されがちです。

しかし、これはあくまで国民年金の制度であり、厚生年金とは仕組みが異なることを理解しておく必要があります。

要因3:「任意単独被保険者」という例外制度の存在

任意単独被保険者」という制度も、厚生年金を個人で払えるという誤解を生む一因です。これは、厚生年金の適用事業所ではなくなった事業所で働く70歳未満の従業員が、事業主の同意と厚生労働大臣の認可を得ることで、個人として厚生年金に加入し続けられる例外的な制度です。

例えば、従業員数が5人未満になり強制適用の対象から外れた個人事業所で、引き続き厚生年金への加入を希望する場合などが該当します。

しかし、その制度はあくまで事業所の状況が変わった際の経過措置的な意味合いが強く、誰でも自由に個人で加入できるわけではありません。 そのような特殊なケースの存在が、「個人で厚生年金に加入できる」という一般的な誤解につながることがあります。

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それでも厚生年金に入りたい!個人がとれる2つの方法

原則として個人事業主やフリーランスは厚生年金に加入できませんが、どうしても加入したい場合には、自身の働き方や事業形態を工夫することで被保険者になる方法がまったくないわけではありません。

ここでは、個人が厚生年金に加入するための2つの具体的な方法を紹介します。

方法1:法人化(マイクロ法人)して厚生年金の被保険者になる

個人事業主が厚生年金に加入するための一般的な方法が、事業を法人化することです。株式会社や合同会社といった法人を設立し、その法人から自分自身が役員報酬を受け取る形にすれば、厚生年金の被保険者になることができます。

法人を設立すると、個人事業主は「法人」という別人格の代表者(使用者)であると同時に法人の役員となります。法人の代表者や役員、フルタイムの正社員などは厚生年金の加入者になります

近年では、社会保険料の負担を最適化する目的で、一人社長の「マイクロ法人」を設立するケースも増えています。

注意点

ただし、法人設立には登記費用や税理士費用などのコストがかかるほか、会計処理も複雑になるため、メリットとデメリットを慎重に比較検討する必要があります。

方法2:適用事業所でパート・アルバイトをする

もう一つの方法は、個人事業主としての活動を続けながら、厚生年金の適用事業所でパートタイマーやアルバイトとして働くことです。以下の要件をすべて満たす働き方をすれば、個人事業主であっても厚生年金の被保険者になることができます。

※勤務先が「従業員数51人以上の企業」または「労使合意により社会保険の適用拡大を行っている企業」である必要があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8万8000円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない(休学中や夜間学生は除く)

この方法であれば、法人化のような手間やコストをかけずに厚生年金に加入できます。ただし、個人事業との両立が可能か、また勤務時間や収入の条件を満たせるかどうかが課題となります。自身のライフスタイルや事業の状況に合わせて検討する選択肢の1つといえるでしょう。


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「厚生年金なし」をカバーする年金上乗せ戦略

厚生年金に加入できない個人事業主やフリーランスにとって、老後の所得保障は国民年金(老齢基礎年金)が基本となります。しかし、国民年金だけでは十分な生活費を確保するのが難しい場合も少なくありません。

そこで重要になるのが、国民年金に上乗せする形で老後資金を準備する「私的年金」やそれに類する制度の活用です。ここでは、厚生年金の代わりとして機能する代表的な4つの制度を紹介します。

終身年金が魅力「国民年金基金」

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者のために国が用意した、公的な年金上乗せ制度です。会社員の厚生年金のように、国民年金に上乗せして加入することで、将来受け取る年金額を増やすことができます。

国民年金基金の大きな特徴は、生涯にわたって受け取れる「終身年金」が基本である点です。これにより、長生きリスクに備えることができます。

掛金は月額6万8000円を上限に、加入時の年齢や性別、選択するプランによって決まります。また、支払った掛金は全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できる高い節税効果も魅力です。

節税効果が高い「iDeCo(個人型確定拠出年金)」

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、投資信託などの金融商品を選んで運用する私的年金制度です。
運用成果によって将来の受取額が変動しますが、大きな税制優遇が受けられる点が特徴です。iDeCoのメリットは以下の3つのタイミングで税金が軽減される点にあります。

  • 掛金:支払った掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が安くなる。
  • 運用中:通常、投資の利益にかかる20.315%の税金が非課税になる。
  • 受取時:年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」が適用される。

国民年金の第1号被保険者は月額6万8000円まで拠出可能です(国民年金基金との併用の場合は合算)。

注意点

ただし、原則60歳まで資産を引き出せない点や、運用次第では元本割れのリスクがある点には注意が必要です。

コスパ最強「付加年金」

付加年金は、国民年金の定額保険料に月額400円の付加保険料を上乗せして納めることで、将来の老齢基礎年金を増額できる制度です。

増額される年金額は「200円 × 付加保険料を納めた月数」で計算されます。例えば、1年間(12ヶ月)納付した場合、支払う保険料は4800円(400円×12ヶ月)ですが、将来受け取る年金額は年額2400円(200円×12ヶ月)増えます。

この制度の最大の魅力は、年金を2年間受け取れば、支払った保険料の元が取れるというコストパフォーマンスの高さです。少額から始められる手軽な年金上乗せ制度として優れています。

注意点

ただし、国民年金基金に加入している場合は、付加年金を利用することはできないため、どちらか一方を選択する必要があります。

経営者の退職金「小規模企業共済」

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者のための退職金制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、事業をやめたり役員を退職したりした場合に、それまで積み立てた掛金に応じた共済金を受け取ることができます。

年金制度ではありませんが、老後の生活資金を準備するという目的では有効な手段です。

掛金は月額1000円から7万円の範囲で自由に設定でき、支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、iDeCoと同様に高い節税効果が期待できます。

共済金の受け取り方も、一括、分割、またはその併用から選べるなど、柔軟性が高いのも魅力です。

厚生年金に関するQ&A

ここでは、厚生年金の個人での支払いに関するよくある質問とその回答をまとめました。

Q. 厚生年金は無職でも払える?

いいえ、無職の場合は厚生年金保険料を支払うことはできません。

厚生年金は、適用事業所に雇用されていることが加入の前提条件です。会社を退職して無職になった場合は、厚生年金の被保険者資格を喪失するため、保険料を支払うことはできなくなります。

ポイントの解説

退職後は、お住まいの市区町村役場で国民年金への切り替え手続き(第2号被保険者から第1号被保険者への種別変更)を行い、国民年金保険料を自分で納付する必要があります。

Q. 個人事業主本人は厚生年金に入れる?

いいえ、個人事業主本人は厚生年金に加入できません。

たとえ従業員を雇用して事業所が厚生年金の適用事業所になったとしても、事業主自身は「使用される者」ではないため、被保険者の対象外となります。

ただし、事業を法人化して自身が役員として報酬を得る形にするか、別の適用事業所でパート・アルバイトとして働くことで、厚生年金に加入することは可能です。

Q. 厚生年金の納付書を個人でもらうことはできる?

いいえ、原則として個人が納付書をもらうことができません。

厚生年金保険料は、毎月の給与から天引き(控除)され、会社(事業主)が従業員負担分と会社負担分を合わせて国に納付する仕組みです。納入告知書(納付書)は、事業所(会社)宛に送付されるため、国民年金保険料のように、個人宛に納付書が送られてくることはありません。

Q. 個人事業主ですが、従業員の厚生年金はどうすればいい?

従業員を常時5人以上雇用している場合、法律により厚生年金への加入が義務付けられています(強制適用事業所)

事業主は、管轄の年金事務所で「新規適用届」を提出し、従業員を厚生年金に加入させる手続きを行う必要があります。保険料は、従業員の給与から本人負担分を天引きし、事業主負担分と合わせて納付します。

ポイントの解説

従業員が5人未満の場合でも、従業員の半数以上の同意を得て申請すれば、任意で適用事業所になることができます(任意適用事業所)。

まとめ

厚生年金は、適用事業所に雇用される人を対象とした制度であり、原則として個人が任意で加入して保険料を支払うことはできません。 健康保険の任意継続制度や国民年金の任意加入制度と混同されがちですが、仕組みが異なることを理解しておくことが欠かせません。

個人事業主やフリーランスの方は、厚生年金に加入できない代わりに、国民年金に上乗せする形で老後資金を準備する必要があります。

  • 国民年金基金:公的な終身年金で安心感が高い
  • iDeCo:高い節税効果が魅力
  • 付加年金:少額から始められコストパフォーマンスに優れる
  • 小規模企業共済:節税しながら退職金を準備できる

これらの制度にはそれぞれ特徴があります。今後の事業計画やライフプランに合わせて、最適な制度を組み合わせて活用し、将来に備えましょう。

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監修
山本 務
  • 山本 務
  • 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者

東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。

記事一覧

執筆
マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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