
育児休業給付金(育休手当)はいつの給与で計算?手取りを増やす働き方を専門家が解説
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「育休手当はいくらもらえるの?」「いつの給与が計算に使われる?」と、育児休業給付金を受け取る際、こうした疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
給付金の支給額は、育休開始前の給与額をもとに決まりますが、具体的に“いつの給与”が対象になるのかは、制度を正しく理解していないと見落としがちです。
本記事では、育児休業給付金の計算に使われる給与の期間や含まれる手当、働き方による影響を専門家がわかりやすく解説します。
さらに、手取り金額のシミュレーションや、育休前に確認・準備しておくべきポイントもご紹介します。
- 育休手当は育児休業を開始する前の給与額に基づいて計算される
- 育休開始前平均賃金月額が20万円の場合、育休開始から6ヶ月間受け取れる育休手当のおおよその金額は「月13万4000円」
- 育休手当を最大化するための賢い働き方は「育休開始前の給与水準を意識する」など
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育休手当の計算はいつの給与?→育休開始前の給与
育児休業給付金、通称「育休手当」は、雇用保険から支給される給付金です。その支給額は、原則として育児休業を開始する前の給与額に基づいて計算されます。
具体的には、育休開始前(産休を取得した場合は産休開始前)の6ヶ月間の賃金(休業開始時賃金日額)が計算の基礎となります。
ただし、計算基礎となるのは「賃金支払基礎日数が11 日以上の月、または賃金支払基礎の時間数が80 時間以上の月」のみです。
育休開始前の6ヶ月間で条件を満たさない月がある場合、それ以前で条件を満たす月の賃金を使用します。
計算に含まれる給与・含まれない給与
基本給
残業手当
役職手当
住宅手当(ただし、住宅に現物給与として支給される場合は含まれない場合があります)
家族手当、通勤手当(通勤定期券など現物支給の場合は含まれない場合があります)
ボーナス(賞与)
結婚祝い金、出産祝い金などの不定期に支払われるもの
退職金
育休手当の計算対象となる「賃金」には、原則として毎月定期的に支払われる賃金が含まれます。
一方、賞与(ボーナス)や出張旅費、結婚祝い金など一時的、または不定期に支払われるものは含まれません。
また、欠勤や時短勤務がある月はその分賃金が下がるため、平均額も低くなります。
給与明細の見方
休業開始時賃金日額の計算で使用する各月の賃金は「手取り額」ではなく、社会保険料や税金が控除される前の「額面金額」を見ることが大切です。
給与明細では、毎月定期的に支払われる手当と臨時に支払われる手当を分けて確認しましょう。
また、育休開始前6ケ月間の給与明細をすべてそろえておくと、申請時の確認やシミュレーションがスムーズに進みます。
育児休業給付金(育休手当)の計算方法
育児休業給付金の支給額は、育休期間に応じて支給率が変わります。
- 育休開始から6ヶ月まで(180日間): 「休業開始時賃金日額」の67%
- 育休開始から6ヶ月以降(181日目以降): 「休業開始時賃金日額」の50%
支給率は、夫婦で育休を交代取得したり、同時に取得したりする場合でも基本的に変わりません。ただし、2025年4月に新設された「出生後休業支援給付金」が支給されるのは、夫婦で育休を取得するなどの所定の要件を満たした場合だけです。
出生後休業支援給付金は、育児休業給付金に加算して支給(最大28日)されます。支給額は休業開始時の13%で、育休開始後6ヶ月の給付金(67%)と合計すれば80%となり、育休開始前の手取り額とほぼ同額です。
支給額の上限・下限
育児休業給付金には、支給される金額に上限と下限が設定されています。これらの基準額は、毎年8月1日に見直しが行われます。
令和6年8月1日以降の基準は以下の通りです。
※この金額を超える給与の場合でも、育児休業給付金の計算は上限額が基礎となります
※この金額を下回る給与の場合でも、育児休業給付金の計算は下限額が基礎となります
この賃金月額を基に算出される支給額の上限と下限は以下のようになります。
上限額:31万5369円
下限額:5万7666円(8万6070円 × 0.67)
育休開始から6ヶ月以降(支給率50%の場合)
上限額:23万5350円
下限額:4万3035円(8万6070円 × 0.50)
育児休業給付金(育休手当)のシミュレーション【給与別】
育休手当はいくらもらえるのか、具体的な例でシミュレーションしてみましょう。
育児休業開始前6ヶ月間の平均賃金月額(休業開始時賃金日額×30日)を基準とします。育休開始から6ヶ月間(支給率67%)の目安です。
育休手当を最大化するための賢い働き方
育休手当の金額は、育休開始前の給与額に基づいて計算されています。そのため、休業前の働き方を工夫することで、受け取れる手当を最大化できる可能性があります。
育休開始前の給与水準を意識する
育休手当の計算期間は、原則として育休開始前の6ヶ月間です。この期間の給与が落ち込まないように、できる範囲で業務量や残業を調整することが、手当額の最大化につながります。
計算対象期間の残業や手当
通常の賃金(基本給)だけでなく、残業手当や各種手当も計算対象に含まれます。
計算期間中に残業が増えたり、何らかの手当が支給されたりすれば、その分、育休手当の算定基礎となる賃金月額が上がります。結果として受け取れる手当額も増えることになります。
育休取得のタイミングを検討する
産休取得時期や育休取得時期をある程度調整できるのであれば、育休開始前の6ヶ月間の給与が高くなるような時期を選ぶのも一つの方法です。
ただし、仕事の状況や体調、出産時期など、さまざまな要因との兼ね合いになるため、あくまで可能性の一つとして検討しましょう。
育児休業給付金(育休手当)の支給要件と手続き
育児休業給付金を受け取るためには、いくつかの要件を満たし、所定の手続きを行う必要があります。
支給要件
手続きの手順
育児休業給付金の申請手続きは、原則として会社を経由してハローワークに提出されます。
(参考:育児・介護休業法(Q&A) | 岩手労働局)
(参考:Q&A~育児休業等給付~|厚生労働省)
育休手当の支給スケジュールと家計への影響
育休手当がいつ振り込まれるのか、家計にどう影響するのかを把握しておくことが大切です。
振り込みのタイミング
育児休業給付金は、原則として2ヶ月に1回、まとめて支給されます。
育児休業開始日から約2ヶ月後に最初の支給決定が行われ、その1週間後~2週間後程度で振り込まれることが多いです。そのため、育休に入ってから最初の支給までには、約2~3ヶ月程度かかる見込みで準備しておく必要があります。
初回以降は、おおむね2ヶ月に1回のペースで支給が続きます。
正確な支給タイミングは、会社の人事・総務担当者やハローワークで確認しましょう。
出産手当金との兼ね合い
出産前に産休(産前産後休業)を取得している場合、健康保険から出産手当金が支給されます。
産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日の範囲内で、会社を休み給与の支払いがない期間に支給されます。支給額は、1日あたり「標準報酬日額の3分の2」です。
出産手当金の支給期間が終わった後、続けて育児休業に入ると、育児休業給付金に切り替わります。
出産手当金が途切れることなく、育休手当へとスムーズに移行できるよう、会社との連携を密にしておくことが大切です。
家計シミュレーションで備えるコツ
育休中は収入が減るため、事前に家計の見直しを行い、備えておくことが大切です。
家計簿アプリなどを活用して現在の支出を整理し、住居費・通信費などの固定費と、食費・光熱費といった変動費を分けて把握しましょう。
あわせて、育児休業給付金の支給額をシミュレーションし、月々の手取り見込みを確認します。夫婦で育休を取る場合は、それぞれの給付額を合算して検討しましょう。
また、出産費用やベビー用品、ミルク・おむつ代など、育児にかかる出費もリストアップして予算に組み込んでおくと安心です。
不足が見込まれる場合は、貯蓄の取り崩し計画や節約の工夫も検討しましょう。
育休手当の計算に関するよくある疑問
育児休業給付金(育休手当)の制度について、よくある質問に回答します。
Q.育児休業給付金から税金や社会保険料は引かれる?
いいえ、育児休業給付金は非課税です。 所得税や住民税はかかりません。
また、育児休業期間中(育休開始月から育休終了予定日の翌日が属する月の前月まで)は、会社が年金事務所や健康保険組合に申請することで、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)が免除されます。
これにより、給付金を全額受け取ることができます。
Q.育休を延長した場合、育児休業給付金の金額はどうなる?
育休の延長が認められる場合(保育所に入れないなど)、給付金も一定期間延長して受け取れます。
ただし、支給率は原則として延長期間も50%で固定されます。延長期間中も2ヶ月ごとの申請が必要です。
Q.育休中に働いた場合はどうなる?
育休中に就業した場合、その月の賃金が休業開始時賃金月額の13%(給付率50%の時は30%)を超えると、給付金は減額されます。
さらに、80%を超えると全額支給停止になります。
(参考:育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について|厚生労働省)
Q.パート・契約社員は支給される?
はい、パートや契約社員でも、育児休業給付金の支給要件を満たせば受け取ることができます。
計算方法は正社員と同様で、直近6ヶ月の平均賃金に基づいて支給額が決まります。就労形態に関係なく、加入期間や賃金で計算されます。
まとめ
育児休業給付金は、育休開始前の賃金を基準に計算され、休業期間に応じて支給率が変動します。育休開始前の6ヶ月間の賃金が手当額に大きく影響するため、その期間の働き方や給与明細の確認が重要です。
育休手当は非課税であり、育休期間中の社会保険料も免除されます。出生後休業支援給付金(最大28日)を加えると、育休開始前の手取り額とほぼ同額が受け取れます。
しかし、支給までにはタイムラグがあること、育休中の就業には条件があることなど、注意すべき点も存在します。
今回解説した計算方法や支給要件、よくある疑問点を理解し、家計シミュレーションを行うことで、育休中の経済的な不安を軽減し、安心して子育てに専念できるでしょう。
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監修
西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。