
退職慰労金とは?退職金との違いや計算方法、税金の扱いを解説
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「退職慰労金」と「退職金」、似ている言葉ですが実は明確な違いがあります。退職慰労金は、会社の役員にとって、退職後の生活を支える重要な資金となるお金です。
本記事では、退職慰労金の基本的な意味から、具体的な計算方法、税制上の優遇措置まで、専門家監修のもと、分かりやすく解説します。
- 退職慰労金と退職金の根本的な違い
- 役員退職慰労金の具体的な計算方法
- 退職慰労金にかかる税金の優遇措置
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退職慰労金とは?退職金との違いを理解する
退職慰労金は、主に企業の役員が退任する際に、この在任中の功績や貢献に報いるために支払われる金銭です。
一般的な従業員に支払われる退職金とは、この性質や支給の根拠が異なります。
このセクションでは、退職慰労金の正確な定義と、退職金との明確な違い、そして役員と従業員での位置づけの違いについて詳しく解説します。
退職慰労金の定義
退職慰労金とは、主に退職する役員の長年の勤務における功労をねぎらう目的で支給される金銭のことを指します。
「退職金」や「退職手当」と呼ばれることもありますが、取締役や監査役といった役員に対して、この貢献に報いる「功労報償」としての意味合いが強いのが特徴です。
従業員への退職金が労働の対価の後払いという性質を持つのに対し、退職慰労金は会社の業績への貢献度などを考慮して支払われる特別な報酬と位置づけられています。
退職金との3つの違い
退職慰労金と退職金は混同されがちですが、主に以下の3つの点で明確な違いがあります。
一番大きな違いは支給根拠です。従業員の退職金は、労働契約の一部として退職金規程に基づき支払われます。
一方、役員の退職慰労金は、金額や支払い方法などを株主総会で決議する必要があり、「お手盛り」を防ぐ仕組みが取られています。
役員と従業員で異なる退職慰労金の位置づけ
退職慰労金は、主に役員に対して支給されるものとして認識されています。これは、役員が会社の経営に貢献したことへの報奨という意味合いが強いためです。
一方で、従業員に対して「慰労金」という名目で金銭が支払われるケースもあります。これは、正社員向けの退職金制度が適用されない契約社員やパートタイマーなどが長期間勤務した場合に、感謝の意を示すために支給されることが考えられます。
このように、役員にとっては制度化された報酬の一部である一方、従業員にとっては退職金制度を補完する特別な手当という位置づけになる点が異なります。
役員退職慰労金の計算方法と相場
役員退職慰労金の金額は、法的に定められた計算式があるわけではありません。
しかし、税務上「不相当に高額」と判断されると損金として認められないため、多くの企業では客観的な基準に基づいた計算方法を採用しています。
ここでは、一般的な計算方法である「功績倍率法」と、役職ごとの功績倍率の目安について解説します。
功績倍率法による計算式
功績倍率法は、役員退職慰労金の計算で広く用いられている方法です。以下の計算式で算出されます。
役員退職慰労金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率
- 最終報酬月額:役員が退任する直前に受け取っていた月額の役員報酬です。
- 勤続年数:この会社で役員として勤務した年数を指します。
- 功績倍率:役職や在任中の貢献度に応じて設定される係数です。社長や専務など、役職が高いほど倍率も高くなる傾向があります。
この方法は、役員の在任期間と報酬額、そして役職に応じた貢献度を客観的に反映できるため、税務署に対しても妥当性を説明しやすいというメリットがあります。
役職別の功績倍率の目安
功績倍率は、会社の規模や業績によって異なりますが、一般的には以下のような水準が目安とされています。
この倍率を大幅に超える設定にすると、税務調査で過大と判断され、超過分が損金として認められない可能性があるため注意が必要です。退職慰労金規程を整備し、算定根拠を明確にしておくことが欠かせません。
社長の退職慰労金の相場
社長の退職慰労金の相場は、企業の規模によって水準が異なりますが、日本の企業のうち約99.7%を占めるといわれる中小企業のケースで見ていきましょう。
エヌエヌ生命保険が2020年に実施した『中小企業の退職金に関する調査』によると、中小企業の場合、社長の役員退職金の平均支給額は約2476万円という結果がでています。
ただし、これはあくまで平均値であり、実際の支給額は企業によって異なります。
同調査の金額分布を見ると、1000万円未満を受け取るケースが全体の4割以上を占める一方で、1億円以上の高額な退職慰労金を受け取る社長も8%以上存在します。
上記を見ても分かるとおり、社長の退職慰労金は会社の財務状況や業績、社長自身の在任期間や会社への貢献度などによって大きなばらつきがあります。さまざまな要素を総合的に考慮して決定されるため、一概に「いくらが相場」とはいえません。
退職慰労金にかかる税金と社会保険の扱い
退職慰労金は、給与や賞与とは異なる税金の計算方法が適用されるため、税制面で優遇されています。これは、長年の功労に報いるという性質を考慮し、退職後の生活保障を目的としているためです。
このセクションでは、退職慰労金がどのように課税されるのか、そして社会保険料の扱いについて解説します。
退職所得としての税制優遇
退職慰労金は、税法上「退職所得」として扱われます。退職所得には、勤続年数に応じて計算される「退職所得控除」という大きな非課税枠が設けられています。
退職所得控除額の計算方法は以下の通りです。
- 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
- ※80万円に満たない場合は80万円
- 勤続年数が20年超の場合:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
この控除額を退職慰労金の総額から差し引くことができるため、課税対象となる金額を大幅に抑えることが可能です。
退職所得の計算方法
退職所得の課税対象額は、以下の計算式で算出されます。
課税退職所得金額 = (収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2
まず、退職慰労金の総額から退職所得控除額を差し引きます。そして、この残額をさらに2分の1にした金額が、実際に所得税や住民税の計算対象となります。
給与所得などの他の所得とは合算せずに、この課税退職所得金額に対して所定の税率をかけて税額を計算する「分離課税」が適用されるため、税負担が軽減される仕組みになっています。
社会保険料が不要になるメリット
退職慰労金を受け取る際の大きなメリットの1つは、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料の徴収対象外であることです。
これにより、受け取る側は手取り額が減らず、支払う会社側も対応する保険料負担(会社負担分)が発生しないため、双方にとって利点があります。
この根拠は、社会保険料が「労働の対償」として支払われる「報酬」や「賞与」を基準に計算される点にあります。
健康保険法において、退職を理由として支払われる退職金(退職慰労金)は、この「報酬」や「賞与」に該当しないと定められています。
これは、退職慰労金が毎月の生活を支える経常的な収入ではなく、長年の功労に報いる一時的な給付と位置づけられているためです。
厚生労働省の通知(平成15年10月1日庁保険発第1001001号など)でも、「退職を事由に支払われる退職金であって、退職時に支払われるもの又は事業主の都合等により退職前に一時金として支払われるものについては、従来どおり、健康保険法第3条第5項又は第6項に規定される報酬又は賞与には該当しない」と明確に示されています。
名目上は退職金でも、この実態が給与や賞与に上乗せして分割で前払いされるようなケース(いわゆる退職金の前払い制度)では、「労働の対償」とみなされ、社会保険料の対象となる場合があります。あくまで退職という事実に基づいて一時金として支払われることが、社会保険料の対象外となるための要件です。
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従業員への退職慰労金の支給ケース
退職慰労金は主に役員を対象とする制度ですが、従業員に対して支給されるケースもあります。
これは、通常の退職金制度の対象外である従業員の長年の貢献に報いるためなど、特別な目的で導入されることが一般的です。
ここでは、従業員に退職慰労金が支給される具体的なケースについて解説します。
支給対象となる従業員
従業員への退職慰労金は、多くの場合、正社員向けの退職金規程が適用されない非正規雇用の従業員が対象となります。
例えば、長年にわたり会社に貢献してきたパートタイマーや契約社員が退職する際に、感謝の意を込めて慰労金を支給する企業があります。
これは、法的な支払い義務があるわけではありませんが、従業員のモチベーション向上や人材定着を目的とした福利厚生の一環として導入されることがあります。
支給額の決定方法
従業員への退職慰労金の支給額には、法的な基準や一律の計算式はありません。そのため、金額は会社の裁量によって決定されます。
一般的には、この従業員の勤続年数、役職、会社への貢献度などを総合的に考慮して決められます。
ただし、役員退職慰労金や正社員の退職金と比較すると、支給額は少額になる傾向があります。
支給にあたっては、他の従業員との公平性を保つために、社内で一定の基準を設けておくことが望ましいでしょう。
税務上の取り扱い
従業員に支給される退職慰労金も、税務上は役員の場合と同様に「退職所得」として扱われます。
したがって、勤続年数に応じた「退職所得控除」が適用され、税制上の優遇措置を受けることができます。
ただし、退職の事実がなく、賞与の代替として支給された場合などは、退職所得として認められない可能性もあります。支給する際には、この金銭が退職に起因するものであることを明確にしておく必要があります。
退職慰労金に関するよくある質問
ここでは、退職慰労金に関して多くの人が抱く疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。
Q. 退職金と退職慰労金は両方もらえる?
はい、両方を受け取れる可能性があります。
例えば、長年従業員として勤務した後に役員に昇格し、その後退任した場合です。
このケースでは、「従業員として勤務した期間」に対応する退職金と、「役員として在任した期間」に対応する退職慰労金が、それぞれ別のものとして計算され、両方支給されることがあります。
ただし、これは会社の退職金規程や役員退職慰労金規程の定め方によるため、必ずしもすべての会社で両方が支給されるわけではありません。
Q. 退職慰労金の支給時期は?
役員退職慰労金の支給時期は、株主総会で支給額が具体的に決議された日以降となります。一般的には、役員の退任後、速やかに一括で支払われることが多いです。
ただし、会社の資金繰りの状況などによっては、分割で支払われることもあります。
具体的な支払日や支払い方法については、支給を決議する株主総会で決定されます。
Q. 退職慰労金は必ず支給しなければならない?
いいえ、退職慰労金の支給は法律で義務付けられているものではなく、あくまで会社の任意です。
多くの会社では、役員の功労に報いるために定款や社内規程で定めていますが、制度自体を設けていない会社もあります。
ただし、支給することを決定した場合は、役員への退職慰労金は会社法に基づき、株主総会の決議を経る必要があります。この手続きを経ずに支給すると、法的に無効となる可能性があるため注意が必要です。
まとめ
退職慰労金は、主に役員の長年の功労に報いる制度です。従業員向けの退職金とは、この性質や支給の決定プロセスが異なります。
役員への支給にあたっては、功績倍率法など客観的な基準で適正額を算出し、必ず株主総会の決議を経る必要があります。
退職所得として税制上の優遇を受けられるメリットがありますが、不相当に高額と判断されないよう注意が求められます。
退職慰労金制度を正しく理解し、適切に運用することが、円満な役員退任と会社の健全な経営につながります。
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監修
山本 務
- 特定社会保険労務士/AFP/第一種衛生管理者
東京都練馬区で、やまもと社会保険労務士事務所を開業。企業の情報システム、人事部門において通算28年の会社員経験があるのが強みであり、情報システム部門と人事部門の苦労がわかる社会保険労務士。労務相談、人事労務管理、就業規則、給与計算、電子申請が得意であり、労働相談は労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができる。各種手続きは電子申請で全国対応が可能。また、各種サイトで人事労務関係の記事執筆や監修も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。
