

65歳以降満額の年金をもらいながら働くには?収入調整と働き方の選択肢
»あなたの年金はいくら?老後に不足する金額を3分でシミュレーション
「65歳を過ぎても働き続けたいけれど、年金が減ってしまうのは避けたい」と考えていませんか。年金をもらいながら働く場合、「在職老齢年金」という制度によって年金が減額されることがあります。
本記事では、年金を減らさずに働くための具体的な方法や注意点を専門家が解説します。
- 65歳以降に働きながら年金をもらうと年金が減る「在職老齢年金」の仕組み
- 年金を減らさずに働くための収入調整や働き方の具体的な方法
- 年金がいくら減額されるのかがわかる計算方法とシミュレーション
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65歳以降も働くと年金が減る?在職老齢年金の基本

65歳以降も厚生年金に加入して働くと、収入に応じて年金受給額が調整される「在職老齢年金」という制度があります。
しかし、年金のすべてが減額対象になるわけではありません。まずは、制度の基本的な仕組みと、今後の改正点について理解を深めましょう。
在職老齢年金とは
在職老齢年金とは、60歳以上の方が老齢厚生年金を受け取りながら、厚生年金保険に加入して働く場合に、給与(総報酬月額相当額)と年金(基本月額)の合計額に応じて、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止される制度です。年金(基本月額)は、老齢厚生年金の報酬比例部分(加算を含まない基本額)の月額です。
年金は本来、退職して収入がなくなった後の生活を支えるためのものという考え方に基づいています。
そのため、現役世代並みの収入を得ている場合は、年金の支給額を調整することで、年金受給世代と保険料を納める現役世代との公平性を保つ目的があります。
減額されるのは老齢厚生年金のみ
在職老齢年金制度で支給停止の対象となるのは、老齢厚生年金のみです。日本の公的年金は、2階建て構造になっており、1階部分にあたる「老齢基礎年金」は、収入にかかわらず満額を受け取ることができます。
したがって、在職中の収入が基準額を超えた場合でも、年金のすべてが受け取れなくなるわけではありません。
減額されるのは、あくまで厚生年金に加入していた期間や給与額に応じて決まる2階部分の老齢厚生年金だけです。
2026年4月から基準額が引き上げに
現在、在職老齢年金の支給停止の基準額は、毎年の賃金変動に応じて見直されています。2025年度の基準額は51万円ですが、2026年4月からは、この基準額が「65万円」へと大幅に引き上げられました。
この改正により、給与と年金の合計が65万円以下であれば、年金が減額されずに済むようになります。これまでよりも多くの人が、年金の減額を気にせずに働ける環境が整いました。
満額の年金をもらいながら働く3つの方法

在職老齢年金制度による年金の減額を避け、満額を受給しながら働くためには、いくつかの方法があります。
収入を調整する方法から、制度の対象外となる働き方を選ぶ方法まで、主な3つのアプローチを理解し、自身の状況に合った選択をしましょう。
方法①月収と年金の合計を基準額以内に抑える
基本的な方法は、老齢厚生年金の月額(基本月額)と、給与・賞与の月額換算額(総報酬月額相当額)の合計を、支給停止の基準額以内に抑えることです。2026年4月から基準額は65万円に引き上げられています。
具体的には、「65万円 − 自身の基本月額」で算出される金額が、総報酬月額相当額の上限となります。例えば、基本月額が15万円の場合、上限は50万円です。
この金額を超えないように、勤務日数や労働時間を調整したり、賞与のない雇用形態を選んだりすることで、年金の支給停止を避けることが可能です。
方法②厚生年金に加入しない働き方を選ぶ
在職老齢年金制度は、厚生年金保険に加入している人が対象です。そのため、厚生年金に加入しない働き方を選択すれば、収入額にかかわらず老齢厚生年金が減額されることはありません。
厚生年金の加入義務が発生しない働き方の代表例は、週の所定労働時間が20時間未満の短時間勤務などです。パートやアルバイトとして働く際に、この条件を満たすように労働時間を調整することで、年金を満額受給しながら収入を得ることが可能になります。
方法③個人事業主・フリーランスとして働く
個人事業主やフリーランスとして働くことも、年金を減額されずに収入を得る有効な方法です。会社に雇用されるのではなく、業務委託契約を結んで仕事をする場合、厚生年金保険の加入対象外となります。
そのため、在職老齢年金制度が適用されず、事業による収入がどれだけ多くても老齢厚生年金がカットされることはありません。
これまでのキャリアで培った専門知識やスキルを活かして、コンサルタントや技術顧問、講師などとして独立・起業する道も選択肢の1つです。
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在職老齢年金の計算方法と減額の仕組み
年金がいくら減額されるかを正確に知るためには、計算の仕組みを理解しておくことが大切です。
計算には「総報酬月額相当額」という専門用語が使われますが、これは月給だけでなく賞与も含まれる点に注意が必要です。具体的な計算方法と例を見ていきましょう。

総報酬月額相当額の計算方法
総報酬月額相当額とは、年金の減額を計算する際に用いられる、月々の収入の基準額です。
これは、毎月の給与である「標準報酬月額」と、過去1年間の賞与(ボーナス)の合計を12で割った額を足して算出します。
- 総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 + (過去1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12)
例えば、月給が30万円(標準報酬月額30万円)、年間の賞与が60万円だった場合、総報酬月額相当額は「30万円 + (60万円 ÷ 12) = 35万円」となります。
月給だけでなく賞与も計算に含まれるため、年収全体で考えることが欠かせません。
年金減額の計算例
基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)と総報酬月額相当額の合計が基準額(2026年4月から65万円)を超えた場合、老齢厚生年金の支給停止額は、超えた金額の半分です。
支給停止額(月額)= (基本月額 + 総報酬月額相当額 − 65万円) ÷ 2
例えば、基本月額が15万円、総報酬月額相当額が60万円の場合で計算してみましょう。
- 合計額の算出:15万円 + 60万円 = 75万円
- 基準額との差額(超過分):75万円 − 65万円 = 10万円
- 支給停止額の計算:10万円 ÷ 2 = 5万円
この場合、毎月の老齢厚生年金15万円のうち5万円が支給停止となり、実際に受け取れる年金額は10万円となります。
厚生年金に加入して働くメリット

年金の減額を避けるために厚生年金への加入を避ける働き方もありますが、老後生活を見据えた場合、65歳以降も厚生年金に加入し続けることにはメリットもあります。
目先の受給額だけでなく、長期的な視点で働き方を検討することが大切です。

在職定時改定で毎年年金額が増える
65歳以降も厚生年金に加入して働き続けると、「在職定時改定」という仕組みにより、毎年受け取る年金額が増えていきます。
在職定時改定とは、65歳から70歳になるまでの間に納めた厚生年金保険料を、毎年1回、年金額に反映させる制度です。
具体的には、毎年9月1日を基準日として、前年9月から当年8月までの加入実績を加えて年金額を再計算し、当該年の10月分の年金から年金額を増額します。
退職を待たずに、働きながらでも年金額の増額を実感できるのが、この制度のメリットです。在職定時改定制度が設けられるまで、65歳以降に支払った保険料は、退職するまで年金額に反映しませんでした。
将来の年金総額は増える
在職定時改定によって毎年年金額が見直される結果、70歳まで厚生年金保険料を納め続けると、その分だけ生涯にわたって受け取る年金の総額が増加します。長く働くほど、将来の年金受給額が上乗せされていく仕組みです。
また、会社の健康保険に加入し続けることで、配偶者などを扶養に入れることができ、世帯全体の保険料負担を軽減できる場合もあります。
さらに、一定の条件を満たせば、病気やけがで働けなくなった際に傷病手当金の保障を受けられるなど、社会保険の恩恵も継続されます。
目先の年金減額だけでなく、こうした長期的なメリットも考慮して、働き方を総合的に判断することが推奨されます。
働きながら年金を受給する際の注意点

65歳以降に働きながら年金を受け取る場合、年金の減額以外にも注意すべき点があります。
社会保険料の負担や税金の問題など、手取り収入に影響する要素を事前に把握しておくことで、安心して働くことができます。

社会保険料の負担
厚生年金に加入して働く場合、給与から厚生年金保険料と健康保険料が天引きされます。これは65歳以降も70歳になるまで同様です。
70歳になると厚生年金の被保険者資格はなくなりますが、75歳までは会社の健康保険に加入し続けることができます(勤務状況による)。
保険料は会社と折半で負担しますが、給与額に応じた負担が発生するため、手取り額に影響します。
働き方を考える際には、年金減額の有無だけでなく、社会保険料の負担も考慮に入れる必要があります。
税金と確定申告
年金と給与の両方を受け取ると、確定申告が必要になる場合があります。具体的には、以下のいずれかに該当する場合です。
- 公的年金等の収入金額が年間400万円を超える場合
- 公的年金等以外の所得(給与所得など)が年間20万円を超える場合
65歳以降も仕事を続けると、多くの場合、給与所得が年間20万円を超えるため、確定申告が必要となります。
年金は「雑所得」、給与は「給与所得」として扱われ、それぞれに控除が適用された後、合算して所得税が計算されます。申告漏れがないように注意しましょう。
自分に合った働き方を見つけるためのチェックポイント

65歳以降の働き方を決める際には、年金制度を理解するだけでなく、自身の状況を客観的に把握することが不可欠です。
年金額、必要な収入、そして理想のライフスタイルという3つの視点から、最適な選択肢を見つけ出しましょう。
まずは自分の年金額を確認する
計画を立てる第一歩は、自身が受け取る老齢年金額を正確に把握することです。
年金額は、日本年金機構から送付される「年金証書」や、オンラインサービス「ねんきんネット」で確認できます。
まずは自身の年金額がいくらなのかを調べ、老後収入のベースとなる金額を確認しましょう。
必要な収入額を逆算する
次に、毎月の生活にいくら必要かを計算し、年金収入だけでは不足する金額を算出します。不足額が、仕事で得るべき収入の目標額となります。
例えば、毎月の生活費が30万円で、年金収入が15万円の場合、少なくとも15万円を仕事などで稼ぐ必要があります。
この目標収入額が、在職老齢年金の基準額(65万円)との関係でどの位置にあるかを確認することで、収入調整が必要かどうかを判断できます。
ライフスタイルの優先順位を決める
収入面だけでなく、自身がどのような生活を送りたいかを考えることも大事です。
- 社会とのつながりを重視したい:フルタイムに近い働き方で、やりがいを求める
- 趣味や家族との時間を大切にしたい:パートタイムで、時間にゆとりを持つ
- 健康を第一に考えたい:無理のない範囲で、短時間勤務を選ぶ
収入の最大化だけが目的ではありません。仕事を通じて得られるやりがいや健康維持、社会との接点といったメリットも考慮し、自身の価値観に合った働き方の優先順位を決めましょう。
65歳以降の働き方に関するよくある質問
ここでは、65歳以降に働きながら年金を受給する際によく寄せられる質問について、簡潔にお答えします。具体的な疑問を解消し、自身の働き方選びの参考にしてください。
Q. いくらまで稼げば年金が減らない?
老齢厚生年金の月額(基本月額)と、給与・賞与の月額換算額(総報酬月額相当額)の合計が、2026年度の基準額である65万円以下であれば、年金は減額されません。
自身の年金額を差し引いた残りの金額が、稼げる収入の上限の目安となります。
Q. 厚生年金に加入しないで働く方法は?
厚生年金に加入せずに働くには、①個人事業主やフリーランスとして業務委託契約で働く、または②パート・アルバイトとして厚生年金の加入条件を満たさない範囲で働く、という2つの方法などがあります。
②を選択する場合、週の所定労働時間を20時間未満に抑えることなどが必要です。
Q. 厚生年金に加入して働くメリットは?
主なメリットは2つあります。
1つ目は、「在職定時改定」により、働きながら納めた保険料が毎年年金額に反映され、将来受け取る年金が増えることです。
2つ目は、会社の健康保険や傷病手当金など、社会保険の保障が継続される点です。
目先の年金減額だけでなく、長期的な視点でのメリットも存在します。
まとめ

65歳以降も働きながら満額の年金を受け取るためには、「在職老齢年金」の仕組みを正しく理解することが欠かせません。
老齢厚生年金と月々の収入の合計が基準額(2026年4月から65万円)を超えると年金が減額されますが、収入調整や働き方の工夫で回避できます。
厚生年金に加入しないパートタイムやフリーランスという選択肢がある一方、加入し続けることで将来の年金を増やすメリットもあります。
自身の年金額や必要な生活費を把握し、ライフプランに合った最適な働き方を選びましょう。
自身の状況に合わせた働き方や資産計画を立てるために、まずは将来必要となるお金を把握することから始めてみませんか。
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監修

西岡 秀泰
- 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。
執筆

マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。



