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不動産を活用した相続税対策とは?圧縮率と収益制の仕組みと具体的な方法を徹底解説

不動産を活用した相続税対策とは?圧縮率と収益制の仕組みと具体的な方法を徹底解説

お金2026/06/12

    相続税の負担を少しでも軽くしたい」「現金で相続するより不動産のほうが有利と聞いたけど、本当だろうか」といったお悩みはありませんか。

    相続税対策として不動産の活用は有効な手段の1つですが、不動産活用の仕組みや注意点を正しく理解しておくことが欠かせません。

    本記事では、不動産が相続税対策になる理由から、具体的な3つのアプローチ、物件ごとの特徴、そして最新の税制改正の動向まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。自身の資産状況に合った最適な対策を見つけるための一助となれば幸いです。

    この記事を読んでわかること
    • 不動産が相続税対策に有効なのは、現金より評価額が低くなるため
    • 賃貸物件にしたり、ローンを活用したりすることでさらに節税効果が高まる
    • タワーマンション節税への規制強化など、最新の税制改正に注意が必要


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    不動産を活用した相続税対策の仕組み

    不動産が相続税対策として注目される背景には、現金や預貯金とは異なる、不動産特有の財産評価方法があります。この評価方法の仕組みを理解することが、効果的な相続税対策の第一歩です。

    現金と不動産の評価額の違い

    相続税を計算する際、財産の価値は「相続税評価額」という基準で評価されます。現金や預貯金の場合、相続税評価額は額面通りの金額です。例えば、1億円の現金は1億円として評価されます。

    一方、不動産の相続税評価額は、時価(実際に市場で取引される価格)よりも低く設定されるのが一般的です。

    路線価は、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められています。ただし、実際の売買価格とは地域や物件ごとに乖離することがあるため、必ずしも「時価の80%」になるとは限りません。

    建物は「固定資産税評価額」が評価額となり、これは建築費の50%~70%程度になることが多いです。

    ポイントの解説

    このように、同じ価値の資産でも、現金のまま保有するより不動産に換えておくことで、相続税の計算の基礎となる評価額を圧縮できる可能性があります。この「時価」と「相続税評価額」の差額こそが、不動産が相続税対策に有効とされる最大の理由です。

    賃貸物件でさらに評価が下がる仕組み

    購入した不動産を自宅として使用するのではなく、アパートやマンションとして第三者に賃貸することで、相続税評価額をさらに引き下げることが可能です。

    これは、賃貸に出している不動産は、所有者が自由に使用・処分することに制約がかかるため、その分だけ評価額が減額されるという考え方に基づいています。

    具体的には、賃貸アパートなどが建っている土地は「貸家建付地」として評価され、更地の場合よりも評価額が下がります。

    計算式は「自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」となり、借地権割合や賃貸割合に応じて評価額が圧縮されます。借家権割合は全国一律で30%と定められています。

    同様に、賃貸用の建物自体も「貸家」として評価され、「固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)」という計算式で評価額が下がります。

    賃貸割合が100%(満室)の場合、建物の評価額は固定資産税評価額から30%減額されることになります。

    このように、不動産を賃貸活用することで、土地と建物の両方で評価額の圧縮効果が期待できるため、相続税対策として広く用いられています。

    (参考:No.4614 貸家建付地の評価|国税庁

    不動産を活用した相続税対策の3つのアプローチ

    不動産を用いた相続税対策には、3つのアプローチがあります。それぞれの方法を組み合わせることで、より高い節税効果を期待できます。

    自身の資産状況や目的に合わせて、最適な方法を検討することが鍵となります。

    評価額の圧縮による対策

    基本的なアプローチは、現金や預貯金といった金融資産を不動産に組み換えることで、財産全体の相続税評価額を圧縮する方法です。前述の通り、不動産の相続税評価額は時価よりも低く評価されるため、現金のまま相続するよりも税負担を軽減できます。

    更地に賃貸アパートやマンションを建設したり、収益物件を購入したりすることで、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として評価され、さらなる評価額の圧縮が可能です。

    この方法は、相続税対策と同時に、家賃収入というインカムゲインを得られる点もメリットです。

    なお、不動産による相続税対策では、「相続税がいくら減るか」だけで判断してはいけません。購入価格が割高だったり、空室・修繕費・家賃下落・売却損が発生したりすれば、節税額を上回る損失が生じる可能性があります。

    そのため、相続税評価額の圧縮効果だけでなく、不動産投資としての収益性・出口価格・キャッシュフローまで含めて判断することが重要です。

    借入金(ローン)の活用

    不動産を購入する際に金融機関から融資を受けることも、有効な相続税対策の1つです。相続が発生した際、被相続人が残した借入金は「債務」として扱われ、相続財産総額から差し引くことができます。これを「債務控除」と呼びます。

    例えば、自己資金と借入金を合わせて不動産を購入した場合、相続財産には評価額が圧縮された不動産が加わる一方で、借入金の額面全額がマイナスの財産として控除されます。

    結果として、課税対象となる遺産総額を減らすことが可能です。

    ただし、借入金を利用した不動産投資には、空室や家賃下落による返済計画の悪化といったリスクも伴います。節税効果だけを目的とするのではなく、賃貸経営としての収益性やリスクを十分に検討し、無理のない資金計画を立てることが不可欠です。

    (参考:No.4126 相続財産から控除できる債務|国税庁

    特例・贈与の活用

    不動産に関連する税制上の特例や贈与制度を活用することも重要なアプローチです。

    代表的なものに「小規模宅地等の特例」があります。これは、被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地を相続した場合に、一定の面積まで土地の評価額を最大80%減額できる制度です。

    賃貸アパートなどを経営していた土地(貸付事業用宅地等)も対象となり、200平方メートルまで50%の評価減が受けられます。

    また、生前に不動産や購入資金を贈与する方法もあります。

    例えば、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、最大2000万円まで贈与税がかからない「贈与税の配偶者控除」や、親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受ける場合に一定額が非課税になる特例などがあります。

    これらの制度を計画的に利用することで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することが可能です。

    (参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
    (参考:No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁
    (参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

    物件種類別の相続税対策の特徴

    相続税対策として不動産を購入する場合、どの種類の物件を選ぶかによって、節税効果や運用上の特徴が異なります。

    代表的な「一棟アパート・マンション」「区分マンション」「戸建賃貸」の3つのタイプについて、それぞれのメリットや注意点を理解し、自身の目的や資産状況に合った物件を選びましょう。

    賃貸アパート・マンション一棟

    一棟アパートやマンションは、土地と建物の両方を所有するため、資産規模が増加し、相続税評価額の圧縮効果も高くなる傾向があります。

    すでに土地を所有している場合は、土地を有効活用して賃貸経営を始めることで、初期投資を抑えつつ節税効果が期待できます。

    ポイントの解説

    また、建物全体を所有するため、リフォームや設備投資、家賃設定など、経営方針を自由に決められる点もメリットです。入居者ニーズに合わせて柔軟な運営が可能で、区分マンションと比較して利回りが高くなる傾向もあります。

    金融資産が多く、資産の組み換えを検討している人や、主体的に賃貸経営を行いたい人に適した選択肢といえるでしょう。

    区分マンション

    区分マンションは、一棟物件に比べて価格が手頃で、比較的少額から始められるのが特徴です。相続税対策の観点からは、いくつかのメリットがあります。

    まず、土地の権利は「敷地権」として全戸で共有するため、1戸あたりの土地の持ち分が小さくなり、土地の評価額を抑えやすくなります。

    さらに、一棟物件に比べて流動性が高く、必要な時に売却しやすい点もメリットです。相続人が複数いる場合でも、複数の物件を所有していれば、現物で公平に分割しやすいため、相続トラブルのリスクを軽減できます。

    戸建賃貸

    戸建賃貸は、アパートやマンションとは異なる特徴を持つ投資対象です。主な入居者はファミリー層であり、一度入居すると長期間住み続ける傾向があるため、安定した家賃収入が期待できます。

    また、入居者が変わる頻度が少ないため、原状回復費用や広告費などのコストを抑えやすい点もメリットです。

    相続税対策としては、土地と建物を所有する点で一棟アパートと同様の評価減が適用されます。土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として評価されるため、評価額の圧縮が可能です。

    ただし、1つの物件に1世帯しか入居しないため、空室になると家賃収入がゼロになるリスクがあります。また、建物の修繕やメンテナンスはすべてオーナーの負担となるため、計画的な資金準備が必要です。

    アパートやマンションに比べて物件数が少なく、希望のエリアや条件に合う物件を見つけるのが難しい場合もあります。

    2026年度税制改正内容と注意点

    不動産を活用した相続税対策は、税制改正の影響を受けます。改正内容について詳しく見ていきましょう。

    (参考:令和8年度税制改正の大綱

    賃貸用不動産の「5年ルール」とは

    改正された内容の1つに賃貸用不動産に関する「5年ルール」の導入が挙げられます。

    改正後は、対象となる貸付用不動産について、通常の取引価額に相当する金額で評価することとされ、課税上弊害がない場合には、取得価額を基に地価変動等を考慮した価額の80%相当額で評価します。

    相続直前に不動産を購入して評価額を圧縮するという、短期的な節税スキームの効果が限定的になる可能性があります。

    これは、不動産を利用した過度な節税を抑制し、課税の公平性を確保する目的があると考えられます。

    今後の相続税対策では、短期的な節税効果だけでなく、長期的な保有や安定した収益を前提とした計画がより一層重要になります。

    対象となる不動産と適用除外

    新しい評価ルールの対象は、相続開始前5年以内に有償で取得または新築した一定の貸付用不動産とされています。

    これは、区分マンションに比べて資産規模が増加し、節税効果も高額になりやすいことが背景にあると考えられます。

    一方で、どのようなケースが適用除外となるかなど、詳細な要件はまだ明らかになっていません。例えば、長期的な賃貸経営を目的として購入した場合や、事業として継続的に不動産投資を行っている場合などがどのように扱われるかは、今後の議論を注視する必要があります。

    この改正は、あくまで短期的な租税回避を目的とした取引を規制するものであり、健全な不動産投資そのものを否定するものではないと考えられます。しかし、ルールが確定するまでは、相続を意識した大規模な不動産投資には慎重な判断が求められます。

    タワーマンション節税への規制強化

    2024年1月1日以後の相続・贈与から、いわゆるタワーマンション節税を含む「居住用の区分所有財産」の評価方法が見直されました。

    対象はタワーマンションに限られず、一定の区分所有マンションについて、築年数・総階数・所在階・敷地持分などを考慮した補正計算が行われます。

    新しいルールでは、マンション1戸ごとの評価額を算出する際に、築年数、総階数、所在階、敷地持分などを考慮した補正計算が行われます。

    具体的には、評価額が市場価格の60%に満たない場合は、60%まで評価額が引き上げられることになります。

    この改正により、高層階の住戸ほど評価額が上がり、従来の節税メリットは縮小しました。ただし、タワーマンションが相続税対策として全く無効になったわけではありません。依然として現金よりは評価額を圧縮できるケースが多いですが、以前のような過度な期待は禁物です。

    購入を検討する際は、改正後のルールに基づいた評価額を正確にシミュレーションすることが不可欠です。

    過度な節税スキームへの否認リスク

    不動産を活用した相続税対策で注意すべきリスクの1つが、税務署による「否認」です。

    形式的には合法でも、取引が相続税を不当に減少させることだけを目的としていると判断された場合、税務署は路線価などによる評価を認めず、時価(実勢価格)で評価し直すことがあります。

    この根拠となるのが、財産評価基本通達の「総則6項」です。例えば、被相続人が亡くなる直前に多額の借金をして不動産を購入し、相続後すぐに不動産を売却して借金を返済するようなケースは、典型的な租税回避行為とみなされる可能性が高いです。

    過去の裁判例でも、経済的な合理性がなく、節税目的が明らかであるとされた不動産取引が否認されています。税務署に否認されると、想定外の多額の追徴課税や延滞税が発生し、対策が逆効果になりかねません。

    不動産を活用した対策は、あくまで長期的な資産運用の一環として、経済合理性を持って行うことが欠かせません。

    不動産を活用した相続税対策の実行手順

    不動産を活用した相続税対策を成功させるためには、計画的な手順を踏むことが不可欠です。

    思いつきで行動するのではなく、現状分析から専門家への相談、そして実行後の見直しまで、一連の流れを理解しておきましょう。

    現状の財産状況と相続税額の把握

    相続税対策の第一歩は、自身の財産を正確に把握することから始まります。預貯金、有価証券、不動産、生命保険など、すべての財産をリストアップし、財産目録を作成しましょう。

    次に、それぞれの財産を相続税のルールに基づいて評価し、相続税評価額の合計を算出します。そこから基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引くことで、課税対象となる遺産総額がわかります。

    この金額を基に、法定相続人が法定相続分で相続したと仮定して、おおよその相続税額を試算します。

    この作業を通じて、現状のままだとどれくらいの相続税が発生するのか、対策の必要性がどの程度あるのかを客観的に把握することができます。

    対策の優先順位を決める

    相続税額の概算が把握できたら、次に対策の方向性を決めます。

    ポイントの解説

    相続対策には、「節税対策」「納税資金対策」「遺産分割対策」の3つの柱があります。不動産の活用は主に「節税対策」に有効ですが、他の2つの側面も同時に考慮することが肝となります。

    例えば、節税のために現金の大部分を不動産に換えてしまうと、いざ相続が発生した際に相続税を納める現金が不足してしまう可能性があります。

    また、分割しにくい不動産が財産の大部分を占めると、相続人間で公平な分割が難しくなり、争いの原因になることもあります。

    これらのバランスを考え、自身の家族構成や財産状況に応じて、

    • 節税を最優先するのか
    • 円満な分割を重視するのか
    • 納税資金の確保を第一に考えるのか

    といった優先順位を明確にすることが、後悔しない対策につながります。

    専門家によるシミュレーション

    対策の方向性が定まったら、税理士やファイナンシャルアドバイザーなどの専門家に相談し、具体的なシミュレーションを行うことをおすすめします。

    専門家は、最新の税制や評価方法に基づき、より正確な相続税額を算出できます。

    不動産を購入する場合、どの物件を、いくらで、自己資金と借入金の割合をどうするかによって、節税効果は変わります。専門家であれば、複数のパターンを想定し、それぞれのケースで相続税がいくらになるのか、賃貸経営を始めた場合の収支はどうなるのか、といった詳細なシミュレーションが可能です。

    また、遺産分割への影響や、二次相続(配偶者の次に子どもが相続するケース)まで見据えた長期的な視点でのアドバイスも得られます。

    客観的なデータに基づいて判断することで、より効果的でリスクの少ない対策を選択できます。

    実行後の定期的な見直し

    相続税対策は、一度実行したら終わりではありません。不動産価格の変動、税制の改正、家族構成や資産状況の変化など、状況は常に変わる可能性があります。

    例えば、不動産価格が上昇すれば、それに伴い路線価も上がり、想定していたほどの節税効果が得られなくなることも考えられます。また、新たな税制改正によって、既存の対策が不利になる可能性もあります。

    そのため、対策を実行した後も、数年に一度は専門家とともに財産状況を再評価し、対策内容を見直すことが不可欠です。定期的なメンテナンスを行うことで、常に最適な状態を保ち、安心して将来に備えることができます。

    不動産を活用した相続税対策のメリットとデメリット

    不動産を活用した相続税対策は、節税効果が期待できる一方で、デメリットやリスクも存在します。

    両方の側面を正しく理解し、自身の状況と照らし合わせて慎重に判断することが、対策の成功につながります。

    メリット

    不動産を活用した相続税対策のメリットは、主に以下の点が挙げられます。

    • 相続税評価額の圧縮効果:現金や預貯金に比べて相続税評価額が低く計算されるため、直接的な節税につながります。賃貸物件にすることで、圧縮効果はさらに高まります。
    • インカムゲイン(家賃収入):収益物件として運用すれば、相続税対策を行いながら、毎月安定した家賃収入を得ることができます。これは、将来の年金代わりや、資産形成の一助となります。
    • インフレ対策:インフレ局面では現金の価値は目減りしますが、不動産のような実物資産は物価上昇に伴って価値が上昇する傾向があります。資産をインフレから守る効果が期待できます。
    • 生命保険の代替効果:不動産購入時に団体信用生命保険(団信)に加入すれば、ローン返済中に万が一のことがあっても、保険金でローン残債が完済されます。これにより、相続人は負債のない不動産を相続できるため、生命保険と同様の効果が得られます。

    デメリットとリスク

    一方で、不動産活用には以下のようなデメリットやリスクも伴います。

    • 賃貸経営のリスク:空室が発生すると家賃収入が得られなくなる「空室リスク」や、周辺相場の下落に伴う「家賃下落リスク」があります。また、入居者トラブルや建物の老朽化による修繕費の発生も考慮しなければなりません。
    • 流動性の低さ:不動産は現金や株式と異なり、すぐに現金化することが難しい資産です。売却したくても買い手が見つからなかったり、希望の価格で売れなかったりする「流動性リスク」があります。
    • 維持管理コスト:固定資産税や都市計画税、修繕積立金、管理費など、不動産を所有しているだけで継続的にコストが発生します。
    • 遺産分割の難しさ:不動産は物理的に分割することが難しいため、相続人が複数いる場合に遺産分割で揉める原因になりやすいです。誰が相続するのか、あるいは売却して現金で分けるのか、といった点で意見が対立する可能性があります。
    • 税務否認のリスク:節税目的があからさまで経済合理性に欠ける取引は、税務署から否認され、追徴課税を受けるリスクがあります。

    対策が向いている人・向いていない人

    不動産を活用した相続税対策は、誰にでも最適な方法というわけではありません。自身の状況によって、向き不向きがあります。

    【向いている人】

    • 金融資産(現金・預貯金など)の割合が高く、相続税の負担が増加することが予想される人
    • 賃貸経営のリスクを理解し、長期的な視点で資産運用に取り組める人
    • 納税資金や当面の生活資金に十分な余裕がある人
    • 遺産分割について、相続人間の合意形成がある程度見込める人

    【向いていない人】

    • 資産の大部分が不動産であり、納税資金となる金融資産が少ない人
    • 賃貸経営の手間やリスクを負いたくない人
    • 相続人が複数おり、不動産の分割で揉める可能性が高い人
    • 近い将来に資産を現金化する可能性があるなど、資産の流動性を重視する人

    自身がどちらのタイプに近いかを冷静に判断することが、対策を始める上での重要なポイントです。

    不動産以外の相続税対策との比較

    相続税対策は不動産の活用だけではありません。他の方法と比較し、組み合わせることで、より自身の状況に合った対策を構築できます。

    代表的な「生前贈与」「生命保険の活用」「養子縁組」との違いを見ていきましょう。

    生前贈与

    生前贈与は、被相続人が生きているうちに財産を配偶者や子・孫などに贈与することで、将来の相続財産そのものを減らす方法です。

    年間110万円までの贈与なら贈与税がかからない「暦年贈与」や、最大2500万円まで贈与税が非課税になる「相続時精算課税制度」などがあります。

    不動産活用が財産の「評価額」を圧縮するのに対し、生前贈与は財産の「総額」を直接減らす対策です。時間をかけて計画的に行えば、着実に相続財産を減らすことができます。不動産対策と並行して、毎年コツコツと贈与を進めるのも有効な手段です。

    (参考:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
    (参考:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁

    生命保険の活用

    生命保険は、相続税対策において有効なツールです。被相続人が契約者・被保険者となり、相続人を受取人とする生命保険に加入しておくと、死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が適用されます。

    例えば法定相続人が3人いれば、1500万円までの死亡保険金は相続税の対象になりません。この非課税枠を活用して、現金を生命保険に換えておくだけで節税になります。

    また、死亡保険金は受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割協議の対象外となり、手続き後すぐに現金で受け取れます。そのため、相続税の納税資金や当面の生活費として活用できるというメリットがあります。

    不動産対策による「節税」と、生命保険による「納税資金対策」を組み合わせるのが効果的です。

    (参考:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金|国税庁

    養子縁組

    養子縁組を行い、法定相続人の数を増やすことでも相続税を軽減できます。法定相続人が1人増えるごとに、相続税の基礎控除額が600万円生命保険金の非課税枠が500万円増加します。

    例えば、子の配偶者(義理の息子・娘)や孫を養子にすることが考えられます。ただし、相続税法上、法定相続人の数に含めることができる養子の数には制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと定められています。

    ポイントの解説

    この方法は税法上のメリットはありますが、親族関係に変化をもたらすため、慎重な判断が必要です。他の相続人の理解を得ずに進めると、深刻な家族トラブルに発展する可能性があります。節税目的だけで安易に行うべきではなく、家族全員の合意形成が不可欠です。

    相続税対策における不動産活用のよくある質問

    不動産を活用した相続税対策を検討する際には、多くの人が同じような疑問を抱きます。ここでは、よくある質問と回答をまとめました。

    Q. 相続直前の不動産購入は有効?

    A. 相続開始の直前に不動産を購入する、いわゆる「駆け込み購入」は、税務署から租税回避行為とみなされ、否認されるリスクが高いです。

    財産評価基本通達「総則6項」に基づき、路線価による評価が認められず、時価(購入価格)で評価される可能性があります。過去の裁判例でも、節税目的が明らかで経済合理性のない取引は否認されています。

    不動産による相続税対策は、あくまで長期的な資産運用の一環として、時間に余裕を持って計画的に行うことが欠かせません。

    Q. 現金と不動産どちらで相続するのがよい?

    A. 一概にどちらがよいとは言えません。相続税の節税効果という観点では不動産にメリットがありますが、不動産には流動性の低さや遺産分割の難しさといったデメリットがあります。

    現金のまま相続すれば相続税は高くなる可能性がありますが、納税資金に充てやすく、相続人間で公平に分割しやすいというメリットがあります。重要なのは、資産全体のバランスです。節税、納税資金、遺産分割の3つの観点から、自身の家族や財産の状況に合った最適なポートフォリオを考える必要があります。

    Q. 不動産を活用した対策で失敗しないためには?

    A. 失敗を避けるためには、3つのポイントが鍵となります。

    1. 節税効果だけでなく、不動産投資としての収益性を冷静に分析する:立地や将来性を見極め、空室リスクや家賃下落リスクを考慮した事業計画を立てましょう。
    2. 遺産分割の問題を事前に考えておく:遺言書を作成したり、生命保険を活用して代償分割の資金を準備したりするなど、相続人が揉めないための対策を講じることが不可欠です。
    3. 必ず税理士などの専門家に相談する:最新の税制に基づいた正確なシミュレーションと、客観的なアドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑えることができます。

    まとめ

    不動産を活用した相続税対策は、現金や預貯金を不動産に組み換えることで相続税評価額を圧縮できる有効な手段の1つです。賃貸物件として運用したり、ローンを活用したりすることで、節税効果はさらに高まります。

    しかし、賃貸経営には空室や家賃下落といったリスクが伴い、不動産は分割が難しいため遺産分割でトラブルになる可能性もあります。また、タワーマンション節税への規制強化や、相続直前の購入が税務署に否認されるリスクなど、最新の税制改正にも注意が必要です。

    不動産を活用した相続税対策は、相続税評価額を下げられる可能性がある一方で、節税効果だけを目的に行うと失敗するリスクがあります。

    特に、収益性の低い物件を高値で購入した場合や、相続直前に多額の借入をして不動産を取得した場合には、資産全体で損をしたり、税務署から評価方法を否認されたりする可能性があります。

    大切なのは、「相続税がいくら下がるか」だけでなく、「その不動産を長期的に保有して収益を生むか」「相続人が円満に分けられるか」「納税資金を確保できるか」まで含めて判断することです。

    不動産を活用した相続税対策は、専門的な知識が不可欠です。自身の状況に最適な方法を見つけるために、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。


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    監修
    叶 温
    • 叶 温
    • 税理士/宅地建物取引士/マンション管理業務主任者

    不動産投資に特化した税理士。2006年に自身の投資を開始し、約20年にわたり不動産投資における税務戦略および資産形成支援に従事。購入前の段階から収益設計と節税提案を行う点を強みとする。独自に不動産投資シミュレーションソフト「REITISS」を開発し、特許を取得。これまでに多数の投資家を支援してきた実績を有する。

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    執筆
    マネイロメディア編集部
    • マネイロメディア編集部
    • お金のメディア編集者

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