
社会保険はさかのぼって加入できる?2年前まで遡れる理由と手続きを解説
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社会保険への加入漏れが判明し、「さかのぼって加入する必要があるのか」「保険料はどうなるのか」とお悩みではありませんか?
本記事では、社会保険の遡及加入について、手続きの流れから保険料の支払い方法、注意点までを網羅的に解説します。本記事を読めば、複雑な手続きもスムーズに進められるようになります。
- 社会保険をさかのぼって加入できる期間が最大2年である理由
- 遡及加入時の保険料の支払い方法と手続きの具体的な流れ
- 国民健康保険などとの二重払いを解消するための還付手続き
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社会保険の遡及加入が必要になるケース
社会保険の遡及加入は、主に「企業側の手続き漏れ」「年金事務所からの指摘」「従業員からの申し出」の3つのケースで発生します。
いずれの場合も、本来加入すべきだった時点にさかのぼって手続きを行う必要があります。
企業側の手続き漏れによるケース
企業側の手続き漏れは、社会保険の遡及加入(さかのぼっての加入)が発生する原因として多いケースです。
例えば、従業員の入社時に加入手続きを失念していた場合や、パート・アルバイトの労働時間が変更になり加入要件を満たしたにもかかわらず、手続きが漏れていた場合などが該当します。
社会保険の加入要件は法改正によっても変更されるため、企業側が最新の情報を把握しておらず、意図せず未加入状態になってしまうこともあります。
こうした手続き漏れが後から発覚した場合、企業は速やかに遡及加入の手続きを行わなければなりません。
年金事務所の立入検査による指摘
社会保険の加入義務があるにもかかわらず未加入のままでいる企業に対しては、日本年金機構(年金事務所)による調査が行われることがあります。
調査はまず、文書や電話による加入指導から始まります。それでも企業が応じない場合、職員が事業所を訪問して指導を行います。
度重なる指導にもかかわらず加入手続きを行わない悪質なケースでは、厚生年金保険法に基づき、最終的に「立入検査」が実施されます。
立入検査では、賃金台帳や労働者名簿などの書類が確認され、加入義務のある従業員がいた場合は強制的に加入手続きが進められます。
この強制加入の際には、過去2年分の保険料がさかのぼって請求されることになります。
従業員からの申し出によるケース
従業員自身が、自分が社会保険の加入要件を満たしていることに気づき、会社に申し出ることで遡及加入に至るケースもあります。
例えば、同僚との会話や自身の給与明細を確認する中で、未加入であることに疑問を持つかもしれません。
従業員から遡及加入の申し出があった場合、企業は速やかに事実確認を行う必要があります。
確認の結果、従業員が過去のある時点から加入要件を満たしていたことが判明すれば、加入要件を満たした時点までさかのぼって加入手続きを行わなければなりません。
従業員側は、当時の労働条件を証明するために、雇用契約書や給与明細、勤務記録などを提示することが有効です。
遡及加入できる期間は最大2年間
社会保険料を徴収する権利には法律上の時効があり、時効期間は2年間と定められています。そのため、社会保険にさかのぼって加入できる期間も、最大で過去2年間となります。
これは、健康保険法および厚生年金保険法で定められているルールです。
時効の起算点はいつから?
社会保険料の徴収権の時効は2年ですが、この期間は「保険料を徴収する権利を行使することができる時」から計算が始まります。
具体的には、給与の支払い日の翌月末日が納付期限となり、納付期限の翌日から時効のカウントが開始されると解釈するのが一般的です。
例えば、2026年4月分の保険料(2026年5月支払い給与から控除)の納付期限は2026年6月末日です。したがって、この保険料を徴収する権利の時効は、2年後の2028年7月1日に成立します。
遡及加入の手続きを行う時点から見て、2年の時効が成立していない期間の保険料がすべて請求の対象となります。
2年を超える未加入期間があった場合
もし従業員の未加入期間が2年を超えている場合でも、さかのぼって加入できるのは直近の最大2年間分のみです。2年以上前の期間については、時効が成立しているため、健康保険および厚生年金保険の保険料を納付することはできません。
例えば、5年間にわたって未加入だったことが発覚した場合、遡及加入の対象となるのは手続きを行う時点からさかのぼった2年間だけで、それ以前の3年間については加入期間として認められません。
なお、雇用保険については法改正により、2年を超えてさかのぼって加入することが可能(給与から雇用保険料が天引きされていたことが明らかな(賃金台帳や源泉徴収票などで確認できる)場合)になっていますが、健康保険・厚生年金保険とはルールが異なるため注意が必要です。
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遡及加入時の保険料の支払い方法
遡及加入が決定すると、過去の未納分保険料の支払い義務が生じます。支払い方法は、原則として会社と従業員の折半負担となり、一括での納付が求められます。
従業員負担分の徴収方法には法律上の制約があるため、注意が必要です。
保険料は一括納付が原則
遡及加入によって発生した過去数ヶ月、あるいは最大2年分の社会保険料は、原則として一括で納付する必要があります。年金事務所から送付される納付書に基づき、会社が従業員負担分と会社負担分の合計額をまとめて支払います。
遡及する期間が長いほど納付額は高額になり、例えば月給20万円の従業員が2年間遡及加入する場合、合計で100万円を超える保険料が発生することもあります。
この支払いは、企業にとっても従業員にとっても金銭的負担となるため、遡及加入が発生した際には、資金計画を慎重に立てる必要があります。
従業員負担分の給与からの控除
会社が遡及分の保険料を全額納付した後、従業員負担分を本人から徴収する必要があります。しかし、ここで注意が必要なのは、法律上の給与控除のルールです。
健康保険法や厚生年金保険法では、給与から控除できる社会保険料は「前月分」に限ると定められています。
つまり、前々月以前の遡及分については、企業の判断で一方的に給与から天引きすることは法律上認められていません。
遡及分を給与から控除するためには、事前に「賃金控除に関する労使協定」を締結しておくか、対象となる従業員から個別に同意を得る必要があります。
同意なく控除すると賃金未払いとしてトラブルになる可能性があるため、必ず従業員と話し合い、支払い方法について合意を形成することが欠かせません。
企業が全額負担するケースもある
社会保険料は、法律上、会社と従業員が折半で負担することが定められています。
しかし、遡及加入の原因が完全に会社側の手続きミスであり、従業員に金銭的負担を強いることになる場合、企業が道義的責任から従業員負担分を肩代わりし、全額を負担するケースも考えられます。
これは法的な義務ではありませんが、従業員との信頼関係を維持し、円満な解決を図るための1つの選択肢です。従業員がすでに退職している場合など、本人からの徴収が困難な状況では、結果的に会社が全額を負担せざるを得ないこともあります。
ただし、会社が従業員負担分を肩代わりした場合、肩代わりした金額は従業員への給与(賞与)とみなされ、所得税の課税対象となる可能性がある点には注意が必要です。
遡及加入の手続きの流れ
社会保険の遡及加入手続きは、必要書類を準備し、管轄の年金事務所へ届け出て、指定された保険料を納付するという流れで進みます。
遡及期間中の労働実態を証明する書類の準備が鍵となります。
必要書類の準備
遡及加入の手続きには、まず以下の書類を準備する必要があります。
- 被保険者資格取得届: さかのぼって加入する従業員ごとに作成します。資格取得年月日には、本来加入すべきだった日付を記入します。
- 基礎年金番号がわかるもの: 従業員の基礎年金番号通知書や年金手帳、マイナンバーカードなどで確認します。
- 遡及期間中の労働実態がわかる書類: さかのぼって加入する期間、従業員が社会保険の加入要件を満たしていたことを証明するために、以下の書類が必要となります。
- 賃金台帳
- 出勤簿(タイムカードなど)
- 雇用契約書
これらの書類を揃え、事実関係を正確に証明できるようにしておくことが、スムーズな手続きの鍵となります。
年金事務所への届出
必要書類が準備できたら、事業所の所在地を管轄する年金事務所(または事務センター)へ届け出ます。提出方法は、窓口持参、郵送、電子申請のいずれかを選択できます。
「被保険者資格取得届」を提出する際には、備考欄などに「遡及加入」である旨を記載しておくと、手続きが円滑に進む場合があります。
年金事務所は提出された書類を基に、遡及期間中の加入資格について審査を行います。審査の過程で、追加の資料提出や事実確認を求められることもあります。
保険料の納付
年金事務所での審査が完了し、遡及加入が承認されると、会社宛に遡及期間分の保険料の納付書が送付されます。この納付書には、会社負担分と従業員負担分の合計額が記載されています。
会社は、納付書に記載された期限までに、金融機関などで保険料を一括で納付します。この納付をもって、遡及加入の手続きは完了となります。
その後、会社は納付した保険料のうち、従業員が負担すべき分を本人から徴収します。
前述の通り、徴収方法については従業員と十分に話し合い、合意の上で進めることが肝となります。
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国民健康保険・国民年金との二重払いの解消方法
従業員が社会保険に未加入だった期間、多くは自身で国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を納付しています。
社会保険にさかのぼって加入すると、同じ期間に対して保険料を二重に支払うことになりますが、この二重払い分は手続きをすれば還付されます。
二重払いが発生する理由
日本の公的医療保険と公的年金制度は、すべての国民がいずれかの制度に加入する「国民皆保険・皆年金」が原則です。
会社の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していない人は、市区町村が運営する国民健康保険と、国民年金(第1号被保険者)に加入する義務があります。
そのため、本来は会社の社会保険に加入すべきだった従業員が未加入だった期間は、国民健康保険料と国民年金保険料を自ら納付しているケースがほとんどです。
後から会社の社会保険にさかのぼって加入すると、同じ期間に対して「健康保険料・厚生年金保険料」と「国民健康保険料・国民年金保険料」を両方支払った状態になり、二重払いが発生します。
還付手続きの流れ
二重に支払った保険料の還付を受けるためには、従業員自身が手続きを行う必要があります。会社が代行するものではないため、従業員へ丁寧に案内することが大切です。
国民年金保険料の還付
社会保険の遡及加入手続きが完了すると、日本年金機構から従業員宛に「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」が送付されます。この通知書に同封されている請求書に必要事項を記入し、返送することで、払い過ぎた国民年金保険料が還付されます。
国民健康保険料の還付
従業員が居住地の市区町村役場の窓口で、国民健康保険の資格喪失手続きを行います。その際に、社会保険の健康保険証(または資格取得証明書)と、国民健康保険証、本人確認書類、印鑑などを持参します。
手続きが完了すると、後日、払い過ぎた国民健康保険料が還付されます。
還付されない場合の対処法
原則として、二重払いとなった保険料は手続きをすれば還付されます。しかし、国民健康保険に関しては注意すべき点があります。
遡及期間中に、国民健康保険証を使って医療機関を受診していた場合、問題が複雑になります。社会保険にさかのぼって加入したことで、遡及期間は本来、社会保険の健康保険が適用されるべきだったことになります。
そのため、国民健康保険が負担した医療費(自己負担3割の場合、残りの7割分)を、一度市区町村に返還し、その後、加入した社会保険の保険者(協会けんぽなど)にあらためて療養費として請求し直す手続きが必要になることがあります。
手続きは煩雑で、一時的に従業員が医療費の7割分を立て替える必要も生じます。
医療機関を受診していた場合は、まず市区町村の国民健康保険担当窓口や、加入する健康保険組合に相談し、具体的な手続き方法を確認することをおすすめします。
社会保険の遡及加入に関するよくある質問
社会保険の遡及加入に関して、多くの人が疑問に感じる点をQ&A形式でまとめました。
Q. 国保から社保にさかのぼって加入できる?
はい、可能です。
会社の社会保険にさかのぼって加入した場合、それまで支払っていた国民健康保険(国保)料は二重払いとなるため、市区町村に申請すれば還付されます。
ただし、国保証で医療を受けていた場合は手続きが複雑になることがあります。
Q. 遡及加入の保険料は分割払いできる?
年金事務所への支払いは一括納付が原則です。
ただし、会社が従業員から徴収する従業員負担分については、双方の合意があれば分割での徴収も可能です。
会社の給与から一方的に天引きすることはできないため、必ず話し合いましょう。
Q. 2年以上前の未加入期間はどうなる?
社会保険料の徴収時効は2年間のため、2年以上前の期間についてはさかのぼって加入し、保険料を納付することはできません。
例えば、未加入期間が3年間あった場合でも、遡及加入の対象となるのは直近の2年間のみとなります。
まとめ
社会保険の遡及加入は、法律上の時効により最大で過去2年間まで可能です。手続き漏れが発覚した場合は、速やかに対応する必要があります。
保険料は原則として一括納付となり、企業と従業員の双方にとって負担となるため、注意が必要です。本記事で解説したポイントを参考に、適切な管理を行いましょう。
社会保険の手続きは将来の資産形成にも関わる重要な要素です。無料の診断ツールで、働き方や将来設計に合った資産運用をチェックしてみましょう。
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監修
鈴木 茂伸
- 特定社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー
ブラック企業で働き、非正規従業員の経験から、弱い立場の方々の気持ちが理解でき、またひとりの事業主として、辛い立場の事業主の状況も共感できる社労士として、人事労務管理、経営組織のサポートを行っている。家族に障がい者がいることから、障害年金相談者に親身になって相談を受けて解決してくれると評判。また、(一社)湘南鎌倉まごころが届くの代表理事として、高齢者の身元引受、サポート、任意後見人も行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。




